高齢者の方がかかる疾患の中で今回は【関節リウマチ】【リウマチ性多発筋痛症】【糖尿病】の3つを原因、症状、治療法、予防・ケア に分けて詳しくご紹介します。
【関節リウマチとは】
体のあちこちの関節に炎症が起こり、関節が腫れて痛む病気です。進行すると、関節の変形や機能障害が起こります。
【原因】
残念ながら病気の原因が完全にわかっているわけではありません。ただ、患者さんの免疫系に異常があることはよく知られています。遺伝子の何らかの異常や感染した微生物の影響、あるいはこの両方の組み合わせによって起こるのではないかと考えられています。
この免疫系が異常に活動する結果として、関節の毛細血管が増加し血管内から関節滑膜組織にリンパ球、マクロファージなどの白血球が出てくることがわかっています。
このリンパ球やマクロファージが産生するサイトカインと呼ばれる物質の作用により関節内に炎症反応がひきおこされ、関節の内面を覆っている滑膜細胞の増殖が起こり、痛みや腫れ、関節液の増加、軟骨・骨の破壊が進行していきます。
【症状】
関節リウマチの症状には、関節の症状と関節以外の症状があります。手指、足趾、手首の関節の痛みと腫れが数週間から数か月の間に徐々に起こります。触れると熱感があることもあり、肘や膝の関節にも痛みと腫れがみられます。
関節の痛みは最初、一つあるいは少数の関節から始まりますが、長い間には左右の同じ部位の関節に起こることになります。
さらに病気が進行すると、関節の骨や軟骨が破壊されて関節の変形が起こり、関節を動かせる範囲が狭くなってしまうのです。他にも全身症状として、疲れやすさ、脱力感、体重減少、食欲低下がみられます。
【治療法】
関節リウマチの原因が不明なので、関節リウマチの原因をとりのぞく根治療法は今のところ期待できません。
しかし、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬や生物学的製剤を積極的に使うことによって患者さんのQOLを維持し、寛解を導くことが治療の目標となっています。
薬物治療や手術治療、リハビリテーションを行って症状の緩和させます。
他にも関節の破壊変形の予防、すでに破壊されてしまった関節の働きの再建、身体機能の保持を目的に治療を行っていきます。
薬物治療の場合、メソトレキサートが重要な薬剤となっています。 21世紀になり、生物学的製剤が開発されました。
手術治療の場合、人工関節置換術、関節固定術、滑膜切除術、関節形成術などが代表的です。
リハビリテーションの場合、理学療法、作業療法、 装具療法などが行われます。
【予防・ケア】
発症原因が遺伝子によるものの方もいますが、半数ほどはウィルス感染や細菌感染、肉体的・精神的疲労やストレスなどによる免疫システムの微妙なバランスの崩れ が原因になっていると言われています。
およそ半数を占める遺伝子による発症の予防は難しいとされてきました。
しかし、とある研究ではタバコや受動喫煙をやめることが同じ遺伝子を持った患者さんのなかでの関節リウマチ発病率をある程度低下させることがわかっています。
つまりはリウマチの発症を予防する第一歩はタバコを吸わないことなのです。
喫煙者は口腔内細菌や腸内細菌のバランスが崩れることが原因ではないかと考えられています。
喫煙者の場合は禁煙を行い、非喫煙者の方もなるべく受動喫煙が発生しない場所に身をおくようにすると良いでしょう。
他にも生活習慣の乱れや食生活の乱れ、ストレスの溜め込みなどはなるべく避けるようにしましょう。
【リウマチ性多発筋痛症とは】
【原因】
関節リウマチ同様、はっきりした病因はわかっていません。
症状が似ていることや免疫の異常があることがわかっているので、関節リウマチや膠原病の病気のひとつとされています。
【症状】
リウマチ性多発筋痛症は、全身の症状、筋肉の症状、関節の症状3つが主な症状です。
それぞれ表にしてみましたので確認してみてください。
あまり高くならない発熱、食欲不振、体重減少、全身倦怠感、抑うつ症状などがみられます。 | 両側の肩、くび、腰、臀部、大腿などに痛みやこわばりがでます。半数以上の人ではこの肩周囲の症状が最初に現れます。 | 朝、手のこわばりや関節痛がみられます。とくに夜の痛みが多く、睡眠時の体動で痛みが起こり、目が覚めてしまうことがよく起こります。 手関節などが関節リウマチのように腫れることはあまりありませんが、全くないわけでもありません。元気がないことから初老期うつ病と間違えられたり、肩の痛みから五十肩と誤診されることもあります。 |
【治療法】
薬物治療がメインになります。
リウマチ性多発筋痛症には、ステロイド薬が大変よく効きくことがわかっていて、比較的少量で劇的な効果が期待されています。
注意しなければならないのは、簡単に減量したり中止してしまうと、再び病気が悪くなりますので、必ず医師の指示通りの服用をすることが大切です。
【予防・ケア】
リウマチ性多発筋痛症は非常に分かりにくい(他の病気と症状が似ている)病気ではありますが、早期発見により症状の悪化を食い止めることができるので、自分自身での診断が予防への第一歩となります。
「50歳以上の高齢者であること」、「筋肉の痛みとこわばり、”だるさ”などの全身症状がある」といった特徴的症状が見られた場合はすぐに病院で見てもらいましょう。
ほかにも血液検査で白血球の増加、血小板の増加、C反応性蛋白上昇などを調べることで発見される場合もあります。
こうした診断の結果からリウマチ性多発筋痛症の可能性を図ることはできますが、診断を確定できるような決定的な特徴や検査法はありませんので、定期的に検査を受けるなどして早期発見に努めましょう。
【糖尿病とは】
糖尿病とは血糖値が高くなる病気。
糖尿病になると、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが足りなくなったり、うまく細胞に作用しなくなり、ブドウ糖がエネルギーを必要としている細胞の中に運ばれず、血液の中にあふれてしまいます。
インスリンは、体の中で唯一血糖を下げるホルモンで、食後に血糖が上がらないように、調節する働きがあります。他にも血液中のブドウ糖を体の細胞に送り込んで、エネルギーに変えたり、脂肪やグリコーゲンに変えて、エネルギーとして蓄えておくようにする働きがあります。
ブドウ糖をコントロールしているインスリンが不足したりうまく作用しないと、ブドウ糖が細胞に取り込まれなくなり、血液中のブドウ糖が使えなくなってしまいます。
その結果、血糖値が上がってしまい、筋肉や内臓にエネルギーが運ばれず、全身のエネルギーが足りなくなってしまうのです。
この重要なインスリンがすい臓から分泌されない、その量が不足している、分泌されているのに十分に作用しないなどの原因で慢性的に高血糖になるのが糖尿病です。
【原因】
糖尿病の大半を占める2型糖尿病の発症原因は、大きく分けて遺伝因子と環境因子になります。
両親や兄弟が糖尿病であるという遺伝体質のこと | 肥満 過食 高脂肪食 運動不足 ストレス 喫煙など |
これらの因子が重なって、糖尿病は発症すると考えられています。
【症状】
糖尿病発症早期の場合は、あまり自覚症状が見られませんが進行が進んでいくと次のような症状が見られます。
そして糖尿病の怖いところは様々な合併症を引き起こしてしまうところにあります。
白内障や緑内障、脳梗塞に心筋梗塞、肺炎や感染症などなど・・・実に多くの合併症にかかってしまう恐ろしい病です。
【治療法】
糖尿病の基本的な治療法で代表的なのは食事療法、運動療法、薬物療法の3つです。
カロリー制限をするように医師から指導されます。 場合によっては、入院して徹底的に体重を落とすように指示される場合もありますが、「1日の摂取カロリーを1,600Kal以内にするように」というのが通常の指導です。日本糖尿病協会が出している、食品交換表を利用するように勧められます。 |
運動によってインスリンが活性化して、本来の働きをしやすくなります。特にインスリンが元気がないというパターンの方は、取り組むことで効果が得られます。 注意しなければならないのは「急激な運動は逆に身体にとって悪影響を及ぼす 」ということです。無理のない程度に運動を行います。 |
薬によって血糖値を下げる必要がある方の場合、医師から次のような薬を処方されます。 「α-グルコシダーゼ阻害薬」「スルフォニル尿素薬」「インスリン抵抗性改善薬」 など… |
【予防・ケア】
糖尿病の予防に必要なのは肥満を回避することです。
厚生労働省によると今までに一番重かったときの体重が重い人ほど糖尿病にかかりやすく、予防のためには肥満を防ぐことが最大のポイントだと言われています。
暴飲暴食を避け、適度に運動をしましょう。
心的ストレスも溜め込みすぎると良くないそうです。
その他の疾患同様に喫煙、受動喫煙を避けることも重要です。
規則正しい生活を送り、健康な身体を維持することが予防につながります。
早期発見もとても重要なので、定期的に病院で検査を受けたり、BMI値を計算してくれるサイト等もありますので一度自分で調べてみるのも良いでしょう。
以上3つの高齢者のかかる疾患をご紹介しました。
介護業界では多くの知識や経験が必要になりますので、一度詳しく調べてしっかり頭に入れておくと良いでしょう。