「社会福祉法人」という言葉を聞いた事があるでしょうか。聞いた事はあっても正確な意味や概要について詳しく知らないというあなた。今現在福祉関連のお仕事に就いている人や転職を希望している人なら、この機会に社会福祉法人やその他法人の種類・特徴を知っておくと便利です。
そこで今回は、データも交えながらこれらについて解説していきます。
ここでは、社会福祉法人はどんなものか、その概要をご説明していきます。
上記の表現だけではかたすぎて分かりづらいですが、平たく言うと、【社会福祉事業を行うための民間企業】というものです。
社会福祉事業といっても様々な事業が存在していて、主に、
などの施設あります。
社会福祉法人の最大の魅力と言えば、法人税が一部を除き非課税になるところです。
社会福祉法人は株式会社ではありません。株式会社は営利を目的としますが、社会福祉法人は非営利組織(団体)です。事業内容が福祉に限定され、公益性を持った団体となります。株式会社も社会福祉法人も同じ民間企業ですが、「営利or非営利」というところで大きく異なります。
また、「非営利」の意味を、「利益を追求しない」と思っている方もいるかもしれませんが、そうではありません。
非営利団体である社会福祉法人も利益を追求しますが、得られた利益は「分配」されず、地域の福祉増進に使われます。
例えば、株式会社であれば、株主から出資を募り、利益は株主に分配されますね。利益を上げて、大きく成長していく株式会社など営利団体に対し、利益追求よりも社会的な使命を全うすることを目的としているのが、非営利団体になります。
社会福祉事業に従事したい人は、どこに就職すればよいか、不安になることもあるでしょう。社会福祉法人に入った方が安定する、昇給率が高いなどの憶測もありますが、これらが全て正しいわけではありません。社会福祉法人の中にも不安定な経営のところもありますし、昇給についてもわかりません。これは企業それぞれの体制によるでしょう。
社会福祉事業に関わりたいと考えていても、どんな法人企業を選べばいいか基準がわからないあなたのために、次のようなポイントをご紹介します。選ぶ上での参考にしてみてください。
福祉業界は進化し続ける業界で、そのスピードも想像以上に速いです。医療・介護技術は日々変化しています。福祉従事者たちも、常に率先して最新情報を取り入れていかなければ、時代に適合できない上、どんどん遅れをとってしまいます。そのため、企業は福祉業界の変化に即座に対応できるよう、研修体制を整備しておく必要があります。
企業の中には、職員のスキルアップを図るために随時研修制度を積極的に取り入れているところもあります。職員の育成にはお金も時間もかかるので、利益の少ない企業は研修をあまり導入しない傾向にあるので、研修制度が充実しているという事は健全な経営をしているとも言えます。従って、就職活動において、研修がたくさん盛り込まれているところを選ぶといいかもしれません。
職場環境によっては、自分のライフスタイルが変わったら働きづらくなり、辞職せざる得ないところもあります。ライフスタイルの変化に関わらず、勤務しやすいところだったら、将来的にも安心ですよね。企業によっては女性に優しいところも多く、産休復帰率9割以上の職場もあります。このようなところに勤めれば、自分の人生で大きなライフイベントがあっても、またもとの職場に戻って活躍する事ができるでしょう。たいていの人が、同じ職場で長く働く事を望んでいます。女性は特に結婚や出産などライフイベントによって、仕事にも影響が出てしまいますが、そのためにキャリアが振り出しに戻ってしまうのは勿体ないですよね。
会社の産休・育児制度の充実は、今の時代当然かもしれませんが、例えば上位資格をとっても活かせるチャンスのない会社に在籍するのも将来的に好ましくありません。転職するしか資格を活かせる道がなくなってしまうわけですが、もしも社内で異動で資格が活かせそうな職場を選んでおけば、自身のキャリアプランも描きやすくなるでしょう。
いずれにしても、就職前に自分の今後の見通しをある程度考えておいた方がよさそうです。
自分は一生結婚しないと決めている場合などは別として、人生は様々な出会いや出来事によって揺れ動き、思いがけない方向に向かっていくこともあります。
将来の可能性を広げ、リスクを回避するためにも、多くの選択肢を残しておきたいですね。
社会福祉法人はそれぞれ独自の理念を持っており、理念をもとに活動しています。
自分の考えと似ているな、この理念いいなと思えるようなところを選ぶと、就職してからもズレが生じません。転職活動する時は、その企業の条件や給料など待遇面ばかりに注目しがちですが、会社の理念や方針はその企業の核となる部分なので、一度読んでおくと企業の核心部分に触れることができるでしょう。
企業理念はただ理念に掲げているだけでなく、実際の活動内容や待遇、条件にも反映されているものです。興味を持つきっかけは給料や条件でもいいですが、気になった会社の理念には一度は目を通しておくことをオススメします。(企業理念をホームページに掲載していない会社は論外です)
せっかく働くなら充足感や達成感が得られるような職場がいいですよね。社会福祉法人を選ぶ時、給料などの待遇面ばかり見てしまうのではなく、なりたい理想の自分に近づけるような環境を選んでいくといいです。
ここでは、各種法人の特徴や違いについて分類していきます。どのような違いがあるか細かく知って見ましょう。
法人税 | 道府県民税 | 市町村民税 | 事業税 | 固定資産税 | |
公益社団・財団法人 | 非課税 | 非課税 | 非課税 | 非課税 | 課税 |
医療法人 | 所得の25.5%課税(ただし800万の所得までは19%課税) | 課税 均等割2~80万 法人税割 法人税の5% |
課税 均等割5~300万 法人税割 法人税の12.3% |
社会保険診療に関わる収益は含めない、経費は損金に入れず非課税 | 課税 一部の社会福祉事業や特定医療法人の医療関係者養成所に関わる固定資産は非課税 |
社会医療法人 | 非課税 | 課税 均等割 2万 法人税割 医療業以外の業務で発生した所得に限り法人税の5%課税 |
課税 均等割 5万 法人税割 医療保険事業以外の業務によって発生した所得に限り法人税の12.3% |
非課税 | 課税 一部の社会福祉事業、特定医療法人による医療関係者養成所のために使った固定資産は非課税 |
株式会社 | 課税(所得の25.5%) | 課税 均等割 2~80万 法人税割 法人税の5% |
課税 均等割 5~300万 法人税割 法人税の12.3% |
課税 所得のうち、400万円以下→5%課税 400万円以上800万円以下→7.3%k税 800万以上→9.6%課税 |
課税(税率1.4%) |
特定非営利活動法人(認定NPOは含まない) | 非課税 | 課税 均等割 2万 法人税割 収益事業により発生した所得に限って法人税の5% |
課税 均等割 5万 法人税割 収益事業により発生した所得に限り法人税の12.3% |
非課税 | 課税(税率1.4%) |
社会福祉法人 | 非課税 | 非課税 | 非課税 | 非課税 | 社会福祉事業のために出費する固定資産については原則非課税 |
学校法人 | 収益事業によって発生した所得に限っては19%課税 | 非課税 | 非課税 | 非課税 | 課税 ・学校において直接教育にかかった固定資産は非課税 ・学校や専門学校に関する寮のための固定資産は非課税 |
上記から分かるように、社会福祉法人は原則課税されないのが大きな特徴です。
社会福祉法人数は年々増加傾向にあります。統計結果を見てみると、社会福祉事業団の数は年々増えてきており、平成2年度には105だったのが、多少の高低はあるものの平成24年度には131になっています。(増減数26、増減率25%)
一番増減数が顕著だったのは施設経営法人で6910、増減率は69%です。年々増加し続け、平成24年度には16981に達しています。
福祉医療機構のデータに基づいた平成 26 年度の社会福祉法人の経営状況分析結果によると【法人規模労働者99人以下の法人約7割→中小規模の法人がほとんど】
という事が明らかになりました。
収支状況は前年度と大きな変化はなく、サービス活動収益対経常増減差額比率は 4.1%程度で落ち着いています。積立金は前年度比 14.9%増と大きく増加しています。
事業別の経営状況では、サービス活動収益対経常増減差額比率においては、【障害福祉サービス主体法人が最も高い6.5%】を記録し、【介護保険事業主体法人は 3.5%】と最も低い結果となりました。
黒字・赤字を比較してみると全体の【23.9%が赤字法人】であり、サービス活動収益が低い事が赤字要因として考えられます。
サービス活動収益規模別の経営状況では、サービス活動収益規模が大きい程赤字法人の割合は下がり経営は安定していますが、その一方で、サービス活動収益とサービス活動収益対経常増減差額比率に大きな差はありません。
社会福祉法人はスケールメリット(規模を大きくする事によって得られる効果や利益)により得られた経常増減差額を、収益発生が困難な事業や労働者の待遇改善にあてている事によると考えられます。
従事者一人あたりの人件費別に、法人の経営状態をリサーチしてみると、労働者一人あたりの人件費とサービス活動収益対経常増減差額との間にほぼ違いはなく、労働者一人当たり人件費が高い法人は、サービス活動収益規模も大きい傾向にあります。
今回の経営分析から、社会福祉法人の経営を安定させるには、複数事業を展開させるなどしてサービス活動収益規模拡大を図るのがいいのではと考えられます。
ここでは社会福祉法人の「規模別割合」と「領域別割合」の二つを比べてみます。
中小規模の法人が約9割です。
厚生労働省による福祉行政報告例によると、全国19.810法人のうち、社会福祉施設を経営している法人は17346法人(平成25年時点)というデータ結果が出ています。
退職手当共済制度というのがありますが、これに加入している社会福祉法人は16678法人あり、加入職員100人未満の法人がおよそ9割占めています。特別養護老人ホームについては強制ではないため、必ずしも加入人数=労働者数になりません。
中小企業基本法においては、サービス業における中小企業労働者を100人以下あるいは資本金5000万円と定義しています。
社会福祉事業は、複数の事業を別個の建物で実施している場合が最も多く、39%という割合になっています。
経営主体別事業所数の推移を見てみましょう。
<通所系事業所>
社会福祉法人経営の数も営利法人経営の数及びシェアも大幅に増加しています
<入所系事業所>
社会福祉法人経営の数は増加しているもののシェアはわずかに減っており、一方で営利法人経営の数やシェアは増加しています。
いかがでしたか。社会福祉法人や、その他の各種法人との違い、特徴がわかっていただけたでしょうか。あなたが福祉関係の仕事に就く上で、各種法人の違いを知っておくと転職活動の時に大変役立ちます。楽に給料を稼げたらいいですが、せっかく働くのであれば、どんなところであれ満足感や達成感を感じられるところの方が長続きします。
あなたがどんな福祉施設でどのように働きたいか、働く姿をイメージしながら、より良い福祉施設を選んでみてくださいね。