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介護福祉士と保育士が資格統合するって本当?フィンランドで導入されている資格「ラヒホイタヤ」って何?

ラヒホイタヤ、ラヒホイタヤ、ラヒ?マヒ?舌が曲がってしまいそうな、呪文のような言葉ですね。聞いたことがありますか?
言わずと知れた福祉大国フィンランドで使われている資格です。
認定介護士の勉強をしている人や介護の勉強をしていた方なら聞いたことがあるかもしれませんね。
ラヒは「身近な」ホイタヤは「世話をする人」の意味を持つフィンランド語です。
言葉としては聞きなれないのですが、日本でも導入されることが検討されている資格です。しかし昨年国会で見送りになってしまいました。
今回はこの資格がどのようなものなのか、福祉の向上につながるのか考えていきたいと思います。

ラヒホイタヤとは?

2015年厚生労働省が地域福祉の将来像と地方創生案である
「まち・ひと・しごと創生サポートプラン」を出しました。
これは福祉大国のフィンランドの「ラヒホイタヤ」を参考に)福祉職を統合してしまいましょうということです。
そもそも、ラヒホイタヤとは何かと思ったら、

ラヒホイタヤ (フィンランド語: Lähihoitaja、英訳: Licensed practical nurse。日本語では准看護師に相当) は、厚生労働省が少子高齢化で不足が懸念される福祉人材確保のために参考にしようとしていたフィンランドの医療・福祉系の共通基礎資格である。2015年6月、日本版ラヒホイタヤは導入見送りになり、結局は保育士と介護福祉士は試験科目を一部免除して双方の資格を取りやすくする検討がされる事になった。

出典:ウィキペディア

ラヒホイタヤとはフィンランド発祥の資格であることはわかりましたね。
どんな資格かというと、社会・保健医療共通基礎資格なのですが、
ヘルパーや救命救急士、保育士、歯科衛生士、リハビリ支援士、そして「準」看護師といった資格制度を統合して日常生活を総合的に支援する資格です。この資格を持っていれば、福祉分野の色々な仕事で働けるという資格です。
ラヒホイタヤのような資格を日本に導入し、福祉を活性化させようという計画だったのです。
福祉のエキスパート!
日中は介護士をして、夕方から保育士をするみたいなことも可能。
何といっても、10の資格が結合されているのが特徴ですから、「一生保育士」でいる必要はないのです。

フィンランドのラヒホイタヤでいえば10の資格が結合されています。

  1. 知的障害ケアワーカー
  2. ホームヘルパー
  3. 保育助手
  4. 保健医療部門の准看護婦
  5. 精神障害看護助手
  6. 歯科助手
  7. 小児看護助手
  8. リハビリ助手
  9. 足ケア士
  10. 救急救命士、救急運転士

助手がついているとはいえ、様々なことが出来ますね。
ラヒホイタヤを持っていると職種間を移動
例えば、若い時は救急救命士で働いていたけれど、
子どもが生まれて日中だけ働きたいので保育助手をして、
子どもも成長して時間に余裕が出来たので、ヘルパーになろう。
みたいに職種をまたぐことが出来るのです。
フィンランドでラヒホイタヤは、「日常生活に最も近いところでその生活を支援する。生活者と専門職の間に位置する。そんな資格のようです。これらの10の勉強をする為に、3年間の養成機関を経て、様々な福祉のといった各分野で活躍します。
フィンランドでは、安定した職業となっている、ということでした。

最初の2年間は極めて広範囲な一般教養と共通職業教育を学びます。
共通職業教育は、①発達の支援と指導②看護と介護③リハビリテーション支援といった専門分野の基礎も学びます。
さらに、2年間の教育は広範囲で、投薬から放射線に衛生境域、放射線、アルコール関係の勉強といった看護の基礎を学びます。
掃除・洗濯・食事そして衛生管理についての家事全般も学びます。これは、ケアワーカーであっても、おむつ交換も介護も家事援助全般ができる人材を育成するためです。
3年目には専門分野を学びます。
3年間みっちり基礎から専門分野を学び、就職していくのですが、学んだ知識を生かし福祉施設や医療業界にすすむ人が100%なのがフィンランドのラヒホイタヤなのです。

なんでフィンランドではラヒホイタヤを導入したの?

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実はフィンランドの高齢化率もすごく、少子高齢化で人材不足が懸念されていました
そこで、福祉人材確保を目的とし合理的なマンパワーの配置を行うために生まれたのが 「ラヒホイタヤ」です。

ラヒホイタヤを導入し、ケア労働者の資格を所有する従事者が増加することで、
縦の階層序列が少なくなりケアワーカー間の格差の縮小が起こりました。
また、ホームヘルパーの質の向上が見られました。
さらに、介護人材の離職者が少なくなったのです。

日本で導入したらどうなるの?「資格統一」の議論中

高齢化が深刻問題なのは日本も同じですね。
そこで日本でもラヒホイタヤを導入しよう!と厚生労働省がいいだしたのです。
「まち・ひと・しごと創生サポートプラン」です。その中にかかれているのが下の内容です。

福祉サービスの融合化を進めることにより、各サービスがコーディネートされ、ワンストップでサー ビス提供できる体制を構築することが必要
中山間地域においては、日常生活に不可欠な施設や地域活動を行う場を「小さな拠点」として集約することが重要

出典:厚生労働省

厚労労働省は、一人の職員が子供、高齢者、障害者、様々な福祉対象者にサービス提供できるような職員を育て、
小さな拠点でサービス提供してもらいたいということですね。
確かに、福祉の基礎となる勉強は同じ部分もあるし、
今現在無資格の人がケアしていることを考えると、
最低限の基礎知識を持った専門職が増えるのはいいかもしれません。
そして、各種専門職種間の流動性が高まると、「福祉」の中で職が選べて、働きやすいかもしれませんね。
しかし問題点も議論され、2015年6月に日本版ラヒホイタヤの導入は見送りになりました。
何が問題だったのでしょう。

介護施設で子どもや障害者を受け入れるようになれば、人手不足の解消や高齢者・障害者の生きがいづくりに役立つのだろうか?
ネット上にはさまざまな意見が投稿されている。

  • 良い試み
  • 地域全体で支えあう仕組み
  • これで介護職の負担が減るとはとても思えない
  • タダでも職員が不足してると言うのに…
  • 理想だけが突っ走ってる
  • 職員の待遇が良くなるようにして欲しい

「良い試み」という声もあったが、根本的な解決にならないのではないかという意見も。
出典:IRORIO

考えてみれば、乳幼児の世話と認知症患者も含めた高齢者のケアでは、求められる技術や知識が大きく異なりますよね。
すべて1人でこなすには高い能力が求められ、資格の一本化には、人材をどう育成し確保するかという課題が残ってしまいます。
介護、福祉の現場からは、資格統合に対する反発がありました。

厚生労働省は「介護・福祉サービス・人材の融合検討チーム」を設置

今後都市部では急速な高齢化の進展によりまして、介護ニーズの急激かつ大幅な増大が見込まれます。一方で、地方や中山間地域におきましては、介護・福祉に関する人材確保やサービス提供が非常に困難な地域が増加するだろうと見込まれておりまして、こういう問題意識から、先日取りまとめられました「厚生労働省まち・ひと・しごと創生サポートプラン」においても、介護・福祉サービスを融合させる推進方策とともに、これらのサービスの担い手となる専門職種を統合・連携させる方策を検討するための検討チームを省内に設置することが必要だと指摘をされたわけであります。これらを踏まえまして、本日14日に省内に介護・福祉サービスを融合させる推進方策と、これらのサービスの担い手となる専門職種の活用方策について検討するための検討チームを設置いたしました

出典:厚生労働省

すべて1人でこなすには高い能力が求められ、資格の一本化には人材をどう育成し確保するかという課題も残ってしまいます。
介護、福祉の現場からも、資格統合に対する反発もあります。
厚生労働省は時間をかけて検討することにしているのですが、実現するのでしょうか。

<まとめ>

今回、導入が見送られた「ラヒホイタヤ」はとても「理想的」な資格だと思います。
ラヒホイタヤが実現したら多くの人が共通の基礎知識を持ち福祉全体の質の向上になるではと個人的には期待していました。
違う職種間でも働けたら眠っているマンパワーを活用できそうな気もします。
人材不足は多少解消するようにも思います。
しかし、命をあずかる現場で、「福祉」というひとくくりで知識をひとまとめにされるのも違うなあとも思います。
人が足りないから1人で多様にこなせるようにとの発想は、現実無視の空論と言わざるを得ないという意見が出るのも納得ですね。

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