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生活行為向上マネジメントの活用で高齢者を元気にしよう!

生活行為向上マネジメントという言葉をはじめて聞いたという方もいるかもしれませんね。
介護の資格を持っている方や、今現在介護に係わっている方、介護へのお仕事へ転職を考えている方には是非知っておいてほしいマネジメント技術になります。

生活行為向上マネジメントってなに!?

生活行為向上マネジメントは、生活の行為を向上していきましょうということです。生活行為とは、生活全般の行為であり、生きているすべての行為を指します。
「生活行為向上マネジメント」はその生活行為をマネジメントし、「日常生活をより良くなるよう支援すること。」です。
具体的には、生活行為の中でも、利用者が「やりたい」「したい」と思っていることを向上することで、よりよい生活に導くというものなのです。
トイレや入浴などの必要最低限の動作ではなく、買い物や趣味のピアノ、旅行などを実行していきたいという、
利用者さんや、その家族が達成してみたい課題にとりくむことが、生活行為向上マネジメントなのです。

生活行為向上とは各生活行為について利用者が本来持っている能力を引き出し、在宅生活で実際のその能力を生かすこと、もしくは生かされるよう、身体的・精神的な支援を行うことであり、生活行為向上マネジメント(Management Tool for  Daily Life Performance:MTDLP )とは生活行為向上を図るために必要な要素を分析し、改善のための支援計画を立て、それを実行することである。

出典:一般社団法人岩手県作業療法士会

◆生活行為向上マネジメント行うポイント

実際に行うためには、「生活行為聞き取りシート」「生活行為アセスメント表」「生活行為向上プラン表」の3つのメインシートがあるのでそれを活用します。
生活行為向上を図るときに、家族にも焦点を当てて、双方の意見の調整やそのマネジメントを行うこともポイントになります。

◆生活向上マネジメントの背景

平成20年あたりから日本作業療法士協会が中心になって研究し、研修会を積極的に開催しているのが生活行為向上マネジメントです。
作業療法士の加点になるプログラムとして始められたものですが、加点だけでなく、実際有効な手段として作業療法士だけでなく、介護の分野でも注目されている技術になります。

◆メリット

生活行為向上マネジメントを利用する際のメリットとして挙げられるのは、
利用者の評価、プログラムの立案、実施までを視覚化出来ることと、誰でも手順を考えて出来るということです。
また、利用者自身が、行う目的や必要な作業を把握しやすいこと。援助者が一方的な目標を掲げるのではなく、利用者の意志を尊重したプログラムを作ることで、リハビリや支援の意味が理解してもらいやすくなることなのです。

生活行為向上マネジメントに必要なアセスメント項目とは?

アセスメント項目は3つあります。

  1. 心身機能・構造の分析(精神機能,感覚,神経筋骨格,運動)
  2. 活動と参加の分析(移動能力,セルフケア能力)
  3. 環境因子の分析(用具,環境変化,支援と関係)

生活行為向上マネジメントのプロセスとしては、下記の順序で行います。

1.聞き取り

本人と家族に聞き取りをします。生活状況だけでなく、興味、関心のあることを自己記入してもらうか、聞き取ります。
もしも目標が思い浮かばない場合、興味関心チェックシートを利用してもいいです。

2.状況分析

心身機能、活動と参加、環境の分析を行います。
下記のアセスメントシートを活用します。
達成の可能性を含み、「こうなったらいいな。」という予後予測を立てます。

生活行為向上マネジメントシート

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出典:一般社団法人 日本作業療法士協会

3.自己評価

予後予測の説明を聞いたうえで、本人自身に実行度、満足度について現在の頑張っている状況を評価してもらいます。

4.実施計画の作成

実際に計画を練ってみます。
生活行為アセスメントによって問題点を明確にしたら、生活行為向上プラン演習シートを使って、支援計画を具体的にどうやって実施していくか考えます。
基本プログラム、応用プログラム、社会適応プログラムに分け、療法士、本人、家族、その他の支援者のなど、誰がどのように支援を行うか詳しく決めていきます。

5.プログラムの実施

実際にプログラムを実行していきましょう。
途中点検をしていくことも忘れずに行いましょう。

6.再評価

必ず結果を評価し、見直す必要があれば再度アセスメントを行いましょう。

介護スタッフや家族の支援ポイントはこれだ!

聞き取りの後に、対象者や家族と再度相談し、解決すべき課題と優先順位について合意を得ることが大切です。
プログラムの内容と、「いつ」「どこで」「誰が」行うかを記載することで、介護者だけでなく本人・家族も役割を明確にします。
そのことは利用者のエンパワメントにもつながるからです。
このように、「してもらう」のではなく、「自分で自分のやりたいことを実現していく」ことで、利用者や家族が目標を認識することになります。
しかし、本人と家族で求めている物が違う場合、(例えば、本人は在宅に帰りたいが、家族は施設にいて欲しいなど。)のニーズの修正が難しい場合もあります。

介護を行う立場から言えば、生活行為向上マネジメントを行ってみると「ICFに基づき」というところが少し難しいようです。
まず、ICFの概念について大まかに理解している必要があるので、慣れるまで演習シートを繰り返すことも有効だと言われています。
現場の人の意識が変わらないと、正直アセスメントをしていくのは面倒、大変と受け取られがちですが、漠然と「介護」するのではなく、アセスメントを活用して、よりよい支援をしていきたいですね。
リハビリの目標やプラン立案に困っている方はぜひ一度試してみるといいと思います。
問題としては、ニーズの把握に時間がかかり、提供可能でない場合もありますが、うまくすり合わせていきたいものです。
マネジメントシートの活用は研修会で研修を受けることでよりやりやすくなるでしょう。

◆生活行為向上マネジメント成功事例

手術を経て在宅へ復帰したTさんの例

90歳女性
和裁が得意で夫と暮らしていたが死別し、独居中
脊椎圧迫骨折で支援が必要になり、老健に入所

生活環境を含めたアセスメントの中から、「今までと同じように家で過ごせない」という不安と、「裁縫を続けたい」との希望あり。
裁縫はこたつ環境での正座が必要だったが、術後は畳に座る動作をしたことがなかった。

実際の動作や書面(マネジメントシート)を通し、出来ている部分や課題をしっかりと伝えることで「家でも出来るかな」と前向きに気持ちが変化したので、自宅での生活に必要な「こたつへの移動」と関連付けて「正座をし、趣味の和裁を楽しむことが出来る」という生活行為向上の目標をTさんと設定しました。

下記が生活行為向上マネジメントシートを埋めた状態です。

かいご
参考:月間ケアマネジメント2015

この後Tさんは、能力を活かせるように導線の確認など環境を整え、施設内移動を自力で行えるようにし、訓練場所は休憩場所も含めて設定して、裁縫を実施しました。
和室で正座をして裁縫が出来るようになると、編み物をしたいなど、さらなら趣味活動への興味も出てきました。
2か月後には動作確認のために職員と自宅を訪問しました。
実際の生活場面で歩行し、こたつへの移動や正座、トイレ動作を痛みなく行うことが出来ました。
したいと思っていた動作、活動を行えたことで在宅生活への不安が解消され、在宅生活を再開することが出来ました。

マネジメントシートに記載していくことでTさん自身が何を大切にしているかを考え、目標を定めました。
その目標に向かい、本人・家族・施設スタッフが同じ方向に向かい努力することが出来た良い例です。
正座をして趣味の裁縫を楽しむことが出来るというTさんの生活行為向上プランは達成し、自己評価は10点中実行度8点、満足度9点となりました。
「満点でもいいが出来ると思っていると安心すると失敗するから一人でも注意して行うための減点」と自分でリスク管理を行っての点数でした。

「裁縫を続けたい」という、一見生活から離れた内容に感じられるかもしれませんが、その活動がTさんの人生、生活の中でいかに重要であるか理解し、課題、目標とすることで本人、家族、支援スタッフが同じ方向に向かい合うことが出来ました。

上記のTさんの様に、支援の対象となる人の「人生」に対して、漠然と介護するのではなく、包括的な支援が行うことが出来るようになるのです。
そのことを明確にするのには、生活行為向上マネジメントは大変有効であると考えられます。

<まとめ>

介護は、身のまわりのお世話をするだけではなく、介護利用者の方たちが生きがいを持って楽しく生活出来るように支援することもとても重要なことです。そのためには、生活行為向上マネジメントを知り、介護利用者の方たちのやりたいことを叶え、生きること生活することの喜びを維持できるよう支えてあげることが必要です。

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