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介護老人保健施設(老健)について分かりやすく解説!特養との違いは?

近年、少子高齢化の影響により高齢者向け施設も多様化が進み、利用者のニーズや目的によって様々な特徴を持った介護施設が増えています。
そんな数ある介護施設の中でも今回は病気などで入院していた高齢者が退院後、自立復帰できるよう支援を行う“介護老人保健施設(老健)”について詳しくご紹介していたいと思います。介護老人保健施設に転職をお考えの方はもちろん、介護の仕事に興味のある方はぜひお読みください。

介護老人保健施設(老健)について

まず介護老人保健施設(以下:老健)とは、厚生労働省管轄の介護保険が適用される介護サービスの一つであり、「65歳以上の要介護度1以上の方」で病状が安定かつ入院治療が必要のない方を対象とした施設となっています。※ただし64歳以下でも入居できる場合があります。詳しくは当記事内の「介護老人保健施設(老健)の役割・目的と入居条件」をご覧ください。
老健は入院生活を送っていた高齢者が晴れて退院となり、家庭での自立した生活復帰ができるよう機能訓練などリハビリや医療ケアを受ける施設です。したがってターミナルケア(看取り)目的での入居は基本的には受け入れておらず、施設によって3ヶ月単位で入所・退所の判定が行われます。施設の人員配置には、介護士の他に医師や看護師、理学療法士・作業療法士などセラピストも配置の義務付けがされており、入浴介助や排泄介助など介護サービスに加えてリハビリや医療ケアも充実しています。このように老健は、病気や怪我でずっと寝たきりな生活をしていた高齢者が、急に以前の入院前までの生活と変わらない暮らしに戻るのは不安という高齢者の方にオススメです。

介護老人保健施設(老健)の役割・目的と入居条件について

老健では病状が安定した方が多く、機能維持や改善のためのリハビリを中心としているため「病院」と「老人ホーム」の中間のような役割をし、家庭へ復帰できるまでの自立支援を目的としています。
さらに詳しい老健の役割は以下の通りとなっています。

包括的ケアサービス
利用者の意思を尊重し、個々に応じた目標と支援計画を立てて必要な医療や介護、リハビリテーションを提供する
リハビリテーション
基本的な動作や体力回復、家庭環境の調整など、生活機能を向上させるために、集中的なリハビリテーションを行う。
在宅復帰
認知症や脳卒中などの状態に応じ、多職種からなるチームを編成して、早期の在宅復帰を目指す。
在宅生活支援
在宅での生活を継続できるよう、通所・訪問リハビリテーションなどのサービスを提供し、予防介護に努める。また、家族の介護負担の軽減を目指す。
地域に根差す施設
家族との情報共有を行い、様々な相談に対応する。また、市町村自治体や保健・医療・福祉機関等とも連携し、地域一体となったケアを積極的に行う。

※参照:公益社団法人 全国老人保健施設協会「介護老人保健施設の理念と役割」

入居条件としては「65歳以上で要介護1以上の高齢者」そして「40歳以上64歳以下の場合でも、特定疾病により介護認定がされている方は入所可能です。そのほか、施設によっては「伝染病・菅船長などの疾患がなく、病気での長期入院などを必要としないこと」「病状が安定しており入院の必要がないこと」などの条件を加えていることもありますので各老健の入居条件をよくご確認ください。またこれら入所条件を満たしていても、看護師が24時間常駐していない老健では、夜間の痰吸引など医療行為の受け入れができないこともあります。
ちなみに老健の入所の流れとしては下記のようになっています。

  1. 施設への申し込み
  2. 本人や家族と面談
  3. 主治医意見書・診断書を通して、本人の健康状態や介護度を審査

  4. 書類提出
  5. 施設利用申込書や健康情報提供書(健康診断書)、看護サマリーなど必要な書類を提出

  6. 入所判定
  7. 面談した結果と書類を元に入所の判断を行う

  8. 入所

このような流れで入所判定をするため、入所するまで数週間かかることもあり早めに手続き準備をすることをオススメします。
なお現在希望の老健が満室だとしても、すぐに空きができるので入所まで長期間待たされる可能性は低いとされます。とくに都内の場合は、老健の施設数が多く入所待機者が少ない傾向があります。

介護老人保健施設(老健)のサービス内容について

各老健の施設によって詳しいサービス内容は多少異なりますが、主には日常生活に戻るために、食事・入浴・排泄の介助や機能訓練などのリハビリテーションを行っています。ほか医療・看護、介護、栄養管理の面からも徹底サポートしていて、入居者が安心して過ごせる施設となっています。

リハビリ面

利用者の在宅復帰を目的としているため、とくに力を入れているサービスがこのリハビリです。リハビリの回数は週2回以上で、時間は1回つき20~30分としている施設が多く見受けられます。老健でのリハビリは「維持期」と呼ばれ、病院と比較するとリハビリ回数が少なくなります。利用者が希望をすれば、週3回以上のペースでも可能な場合もあります。リハビリ内容としては、ベッドから起き上がって車椅子に移る訓練をしたり、歩行器の練習、自力歩行の訓練をしたりといった実用的なリハビリが行われています。

医療・看護面

老健では、常勤医師がおり看護師配置も特養よりも手厚く、利用者の体調管理を行っています。看護師が24時間常駐している老健も増えてきており、床ずれの予防・対応やたん吸引・インシュリンの注射や胃ろうなどの経管栄養などの医療行為が日中・深夜を問わずケアが必要な人にとってはかなり安心な施設です。また、人工透析患者については受け入れ自体は不可としているところも多いですが、透析クリニックを併設している老健もあります。

介護面

介護士による週2回程の入浴介助やオムツの交換・排泄介助・食事介助、着脱介助などの利用者の状況に合わせた必要な“身体介護”が行われます。そして“生活援助”は、定期的に居室の清掃やシーツ交換などがサービス提供されています。洗濯や買い物代行のサービスは、家族の協力か別途費用で外部業者に委託するケースが多いです

栄養管理面

基本的に老健では、専任の栄養士を雇っており毎日の献立を栄養士監修で食事提供しています。したがって、塩分制限の医療食、利用者の持病や嚥下能力などに合わせた配慮も個別で対応しています。
さらに老健は入所(ロングステイ)だけでなく、ショートステイや通所もできるので介護者の負担軽減も担っています。

ショートステイ
在宅での介護の中で、都合によって介護ができない場合において一時的または短期間、ロングステイ同様にリハビリや介護・看護といったサービスを、一般のロングステイの入所者に混ざってサービスを受けることができます。
デイケア(通所リハビリテーション)
利用者の方を家まで送迎し、日帰りで健康チェックや食事・入浴、施設専任の職員によるリハビリ、レクリエーションなど一日を通して、家にいるときとはまた違った時間を楽しく過ごしてもらうサービスです。

介護老人保健施設(老健)の設備や居室について

老健の居室は、定員4人以下の多床室が多く1人当たり8㎡以上の広さとなっています。ユニット型個室など個室の場合には、10.65㎡以上です。そこにベッド、タンス、エアコン、ナースコールが設けられています。入居期間が短く限定されている老健はまだまだ多床室が主流で、個室化への切り替えの動きはあまり見受けられないのが現状です。
また、老健は居室の他に設備面の共有スペースとして「診察室、機能訓練室、レクリエーションルーム、洗面所、トイレ、食堂、リビング、浴室、サービス・ステーション、調理室、洗濯室、汚物処理室」などがあります。とくにリハビリに重点を置いている老健の機能訓練室では、入所定員数により最低面積が決められているので余裕を持って、利用者がリハビリに取り組むうえで必要な「歩行訓練のための平行棒や階段」「マッサージのためのベッド」「筋力強化や関節可動域改善を目的とした運動療法機器」などが設置されています。

介護老人保健施設(老健)でかかる費用について

老健施設でかかる費用としては、介護保険法で定められた公的施設なため基本的には費用が低額で初期費用である入居一時金は必要ありませんが、介護サービス費を1割負担するほかに、生活するうえでの水道光熱費や食事代などを含む費用として“月額8万~16万円(部屋タイプ・世帯年収・課税状況により変わる)”がかかります。この他にも生活するうえで必要な洗濯代・電話代などは別途実費でかかってきます。また、施設サービス費の中に日頃必要な医療費が含まれているので、該当する医療行為であれば別途医療費はかかりません。さらに、老健の施設サービス費は医療費控除対象となり、場合によっては税金の還付も受けられることもあります。しかし、該当しない医療行為や高額な内服薬を使用する場合は入所コストがその分高くなるので注意しましょう。

ほとんどの方が想定していたよりも費用が上回ったのではないでしょうか。もし費用面が心配な方は、早めに担当のケアマネジャーに相談したほうが良いでしょう。
また、所得が少ない世帯に対しては、特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)※措置が認められることがあります。

※特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
世帯全員が住民税非課税で預貯金等が1,000万円以下(夫婦であれば2,000万円以下)の方を対象に、居住費と食費の負担額が減免される制度のこと。
ただし、負担限度額は所得段階・施設種類・部屋のタイプによって異なるので確認が必要となります。また、老健の費用減免制度については、各市区町村にて手続きをしない限り支給や減免はされません。したがって担当ケアマネジャーや役所(介護保険担当等)に内容をきちんと確認し、対象となる場合は迅速に手続きをしましょう。

介護老人保健施設(老健)の人員配置について

では、老健の施設における人員体制について触れたいと思います。利用者の方の安全や健康管理、介助が行き届くよう義務づけられた人員の配置となっています。

介護老人保健施設(老健)の人員体制の配置(入所定員100名の場合)

職種 名数
医師 1名(常勤)
看護師 9名
介護士 25名
介護支援専門員 1名
リハビリ専門職員(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれか) 1名
栄養士 1名
ソーシャルワーカー 1名

※他調理員や事務員なども働いています。

この人員体制は、特養や介護老人福祉施設に比べて看護職員・介護職員が多く、リハビリ専門職員である理学療法士、作業療法士・言語聴覚士のいずれかがいる体制となります。さらに医師は常勤必ず1名配置されていることが特徴で、利用者の医療ケアや健康管理、緊急時対応などを行うことが必須とされています。

介護老人保健施設(老健)の入居期間と入所前に知っておくべきこと

老健は自宅への復帰を目的としているため、ケアプランに沿ったリハビリと介護が行われています。よって入所開始から“3か月ごと”に在宅復帰ができる状態かどうかを検討しているので、入居期間は3ヶ月から長くとも6ヶ月程となっています。介護保険上の期限などはありませんが、終身利用での設立はされていないので老健の平均在所日数は100.6日(平成26年度厚生労働省調査)となっています。

ここで老健に入所する前に知っておきたいこと!

前述のとおりに、老健は終身利用・ターミナルケア(看取り)を前提としていません。ほとんどが約3ヶ月~6ヵ月間でのリハビリや機能改善を行う施設として機能しています。したがってターミナルケアや長期入居を検討したい場合には、基本的に終身利用を前提としている特養など他介護施設を視野に入れてみる必要があります。担当ケアマネジャーや役所の介護相談窓口にて相談してみましょう。
しかし朗報としては、最近では元々も病院併設や医療体制が充実している老健なため、約10%の施設で実際にターミナルケアを行っています。ターミナルケアの需要は増える傾向にあるため、今後ターミナルケアを行う老健が増えることが予想されています。

介護老人保健施設(老健)におけるメリットとデメリットとは?

さて老健は、他介護施設と比べてどのようなメリット・デメリットがあるのかご紹介します。

介護老人保健施設(老健)のメリット

入居一時金(初期費用)なし!さらに月々の費用も安め!

なんといっても介護保険法にもとづいて設立されているため、入居一時金が掛からないことは利用者やその家族にとって嬉しいことではないでしょうか。また、月々に支払う料金も基本となる介護サービス費は1~3割になり、食費などの生活費を加えても10~16万円くらいとなります。これは民間で運営されている有料老人ホームよりも低額で、さらに所得が少ない世帯であれば減額措置も適用されることがあります。

在宅復帰を目指してるので機能訓練が充実!

リハビリサービスの質の高さはどこの介護施設よりも質は高いといえるでしょう。理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)といった専門的な職員からリハビリ指導をもらえ、利用できる機器や設備も完備されています。
また、利用者一人ひとりの家庭環境や状況に合わせた個別プログラムが設定され、在宅復帰後までもサポートを受けられるので福祉用具や住宅改修などについて具体的にアドバイスがもらえます。

常勤の医師による医療処置・医療ケアが受けられる!

医師の常勤と看護職員も勤務しているため経管栄養や痰吸引など本格的な医療措置にも対応でき、医薬品や薬に関しても施設内にて処方が可能となり安心した生活をおくることができます。また、看護師については夜間の勤務が義務付けられていませんが、最近ではニーズに応えて24時間体制をとっている老健が増えてきています。

要介護度が低い方も利用できる!

他介護施設では、要介護3以上とされていることが多い中、老健の入居条件は「要介護1以上」となっています。これは要介護1、2の高齢者でも入居できることを指します。幅広い高齢者に入居のチャンスがあることは大きなメリットだといえるでしょう。

介護老人保健施設(老健)のデメリット

長期や終身利用には不向き

在宅復帰を目的にしていることもあり、老健の入居期間は原則3ヶ月となっており、長くとも6ヵ月の期間限定でのサービスになります。3ヶ月毎の入所退所判定で「退所できる」と判断された場合、継続して住み続けることはできず、長期の入所や終の棲家にと終身目的での利用は望めません。

レクリエーションや生活支援サービスはあまり充実していない

入居中はリハビリに重点を置かれた生活となるため、自由時間やイベント・レクリエーションなどを行っている老健はほとんどありません。たとえレクリエーションがあっても機能訓練に通じる内容とされ、楽しんで充実した時間を過ごした方には物足りないでしょう。また、洗濯や買い物などの生活支援サービスが整っていることは少なく洗濯物は家族が持ち帰ったり外部業者に依頼します。

プライベート空間が少ない

老健の居室タイプは4人部屋の“多床室”が多く、個室や2人部屋にはっ追加料金がかかります。そのため大人数での生活が苦手な方やプライバシーの確保が十分でないことはデメリットと感じるかもしれません。

高額な薬を使用する場合には注意を

メリットでもお伝えしたように老健に入居中も薬の処方は可能です。しかし、入所中は医療保険の適用を受けられません。そのため、抗認知症薬等の高額な内服薬を使用したい場合には薬の費用が高くつくことあります。

介護老人保健施設(老健)と特別養護老人ホーム(特養)の違いについて

それでは、よく比較される“特別養護老人ホーム(以下:特養)”との違いについて詳しくまとめましたので下表をご覧ください。

介護老人保健施設(老健)
役割・目的 要介護高齢者のリハビリや医療ケアなどを行い在宅復帰を目指す施設
入居条件 要介護1~5
サービス内容 在宅復帰を目指す医療ケアとリハビリ
入居期間 原則3ヶ月間
入所難易度 比較的入所しやすい
設備 リハビリに重点がおかれた設備を充実させ、日常生活に戻れるよう居室や生活に必要な設備
居室タイプ 個室/多床室
居室面積 8㎡以上
費用 入居一時金(初期費用)なし
月額費用 数万~16万円
人員体制(定員100名の場合)
医師 常勤1人
看護職員 9名
介護職員 25名
リハビリ専門スタッフ 1名(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれか資格を持つもの)
特別養護老人ホーム(特養)
役割・目的 中度以上の要介護高齢者が身体介護や生活支援のサービスを受けて居住する施設
入居条件 原則要介護3~5
サービス内容 身体介護を中心とした自立支援
入居期間 終身利用
入所難易度 数ヵ月以上待機する可能性が高い
設備 居室・トイレ・浴室・食堂など生活に必要な設備が中心
居室タイプ 個室/多床室
居室面積 10.65㎡以上
費用 入居一時金(初期費用)なし
月額費用 数万~13万円
人員体制(定員100名の場合)
医師 1名(非常勤可)
看護職員 3名
介護職員 31名
リハビリ専門スタッフ ―(義務付けなし)

このようにどちらの施設も介護保険制度のもとで設立しているので、他介護施設よりも安めの費用で入居できるといった点が共通点となります。しかしその他の比較項目を見てみると、やはり違いが浮き彫りになります。とくに施設の目的が大きく違う為、入居期間や入所難易度などに差が出てきます。老健は3ヶ月程度の一定の期間で退去し家庭への復帰を前提している施設であることから、特養と比べても回転率は速く入居しやすいとされます。一方、特養は利用者に安定した介護サービスを提供することを最優先としてるため終身目的での利用も不可能ではありません。長期的な介護サービスを期待できるとあって特養の方が人気が高くそれ故、入所待機者も多くいます。

まとめ
“家庭と病院の橋渡しをする場所”である介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰を目指したリハビリを中心に行い短期で退所をします。なお老健は施設ごとの方針によって設備や費用が異なるケースがあります。したがって老健に入居を希望している方は「最も重視したいサービスは何か」そして「どのようにそのサービスを行っているか」を施設ごとによく確認することが重要です。
また老健は、1人の利用者に対して多くの専門職員が連携してサービス提供を行っています。そのため職員同士のコミュニケーションやチームワークは欠かせず、利用者一人ひとりと向き合う際にはしっかりと退所後の目標や方向性を決めて接することが、老健で働く介護士にとってとても重要なこととなっています。