「介護施設」と一口に言っても様々な形態の施設がありますが、今回はその中でも、“終の棲家”として人気のある「特別養護老人ホーム(特養)」について取り上げていきます。
特別養護老人ホームは、公的な老人ホーム施設となります。民間が運営している有料老人ホームと比べて、安い費用で入居できることが魅力の1つと言えましょう。しかし、実際どのようなサービスが行われているのか、更には“人員体制”や“入居待機期間”等々、気になる点も多くあるのではないでしょうか。
そこで当記事では、特別養護老人ホームの実情から、メリット・デメリットついてもお伝えしていきます。また、特別養護老人ホームで働いてみたいとお考えの方のために、気になる“給料事情”や“職場環境”についてもご紹介しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
特別養護老人ホーム(以下、特養)は「介護老人福祉施設」とも呼ばれる、社会福祉法人や地方自治体が運営している公的介護保険施設です。
施設数としては、全国に9,726施設あり、サービス受給者数は57.7万人です(共に、厚生労働省「介護老人福祉施設(参考資料)」より。平成29年4月審査分)。基本的に65歳以上の要介護度3~5(介護1、2の方でも特例あり)の高齢者を受け入れ、日々の日常生活を快適に送れるようにと“介護サービス”重んじた支援を行っています。
特養は、原則として終身利用を前提とした介護が受けられる施設になります。さらには介護保険サービスが受けられる施設なので、有料老人ホームと違い入居一時金もなく、月額使用料は収入状況と要介護度の基準で決定されるので、低所得の方でも入居が可能です。利用者やその家族にとっても心強い施設なのですが、反面、入居待機者が多くいることでも知られており、その数は全国に約29万5,000人(2017年時点)居るとされます。しかし以前までは要介護度1以上に方も特例なしで入居可能としておりましたが、2015年から入居条件が厳しくなり、全盛期の待機者約52万人と比べると大幅に減っているといえるのが現状となります。
特別養護老人ホームの主な特徴 |
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・公的な施設であり、有料の老人ホームと比べて比較的安価で利用可能 ・原則として終身利用が可能な“終の棲家” ・人気が高く、入居待機者が多い |
特養の入居条件は厳しく定められており、基本的には「65歳以上の要介護度3~5の認定を受けていること」となっております。しかし、特定の疾病にかかってしまい、要介護3以上の場合なら「40~64歳までの方」でも入居が認められます。また、特例により要介護1~2の方も下記の条件に当てはまる際は入居が可能となります。
※厚生労働省「特別養護老人ホームの「特例入所」に係る国の指針(骨子案)について 」より抜粋
特養の入居条件が厳しいことは事実ですが、場合によっては入居が認められるケースもありますので、上記の例を参考に検討してみるのもよいでしょう。
特養への入居方法は、いくつかのステップが必要となります。下記の流れを参考にしてみて下さい。
Step1 |
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入居希望の施設から、訪問や郵送で申し込み書類を入手 |
Step2 |
申込書や介護保険証のコピーなどの必要書類を揃える ※各施設・自治体よって介護認定調査票の写しや健康診断書など必要書類や申込書に記載する内容は違います。 |
Step3 |
必要書類を揃え記入したら、入居希望の施設に直接申し込む ※希望施設が複数ある場合には施設ごとに申し込みをしましょう。 |
Step4 |
入居希望の特養が審査を行い、入居可能の連絡を待つ |
Step5 |
入居可能の連絡が特養から来たら、施設側と入居予定日の調整 |
Step6 |
自宅又は施設にて、契約書や身元引受書、重要事項説明書などの書類に関する説明を受け、署名捺印 |
Step7 |
入居後、特養の所在地に住民票を異動 ※住所変更を行わない場合には、必要な郵便物が施設に届くようにしましょう |
実際に特養へ入居ができるかどうかの審査基準は、施設や各地方自治体よって異なっていることには注意が必要です。但し、多くは施設の中で点数制での審査をしています。入所希望者の介護度合いや年齢、認知症の進行具合、介護を行っている家族の環境などの要素に対して基準に合わせ点数化し、合算した数値で入居判断をする方法です。得点が高ければ高いほど、優先度が高くなり、入所できる可能性が高くなります。
特養は公的施設のため費用も安く、多くの入居希望の高齢者がいます。これには、特養の入所にあたって優先順位が決められているからです。要介護度4、5であったり、以前までいた施設がつぶれてしまった等、早急な対応が求められる場合や、自力で生活ができない事情がある方などは、優先的に入居が認められます。そのため、優先度が低い方は入居までに数年~10年ほど要することも。2014年3月の厚生労働省の発表では、全国に約52万人もの入居待機者がいました。
しかし、上図のとおりに2015年の4月の介護保険法が改正し、入居基準が要介護度1から要介護度3以上に変更となったため、2017年には約30万人となり、入居待機者数は減少傾向にあります。加えて、都心部を外れた郊外では、地価が安いため、特養の施設が多く建設されております。それ故に、競争が激しく待機者がほとんどないこともあり、生活相談員が入居者獲得のための営業をしないと、入所数を維持できないとなっている地域もあります。このように、最近では地域によってはそれほど待機期間を有せずに数ヵ月程度で入所できるところもあるようです。
また、待機時間を短くする方法としては、同時に複数の特養を申し込んでみたり、家族との同居を中断してみたりすると、優先度を高いと判断される可能性が上がります。地域によっては、複数申し込みが多いため想定より早い入居も考えられますので、何事も早めの行動が良いでしょう。特養入居待機者の人数は、各地方自治体のホームページや施設に問い合わせをして確認ができますので、是非利用してみて下さい。
ここで、入居にあたって気になる特養の設備環境をご紹介します。居室、トイレであってもそれぞれに厳格な基準が定められて作られています。代表的な設備とその基準をまとめました。
特別養護老人ホーム(特養)の設備基準 | |
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居室 | ・居室定員は4名 ・1人あたりの床面積は10.65㎡以上 ・ベッドまたはこれに代わる設備を備えること ・入居者の身の回り品を保管することができる設備を備えること ・ブザー又はこれに代わる設備を設けること・・・など |
浴室 | 介護を必要とする入居者が入浴するのに適した機械浴などにすること |
トイレ | ・居室のある階ごとに設けること ・ブザーまたはこれに代わる設備を設けること ・介護を必要とする入居者が使用するのに適したものとすること |
調理室 | ・火気を使用する部分は、不燃の材料や素材を用いること |
医務室 | ・入居者を診療するために必要な医薬品及び医療機器を備えること ・必要に応じて臨床検査設備を設けること |
廊下および階段 | ・廊下及び階段には手すりを設けること ・廊下の幅は1.8m以上、中廊下にあっては2.7m以上とすること ・廊下、トイレその他必要な場所に常夜灯を設けること・・・など |
特養の居室は、主に4つのタイプがあります。それぞれのタイプによって居住費(賃料)が
異なってきますので、よくご確認ください。
※詳しい費用については、次項の「特別養護老人ホーム(特養)にかかる費用について」にて
ご紹介しています。
特別養護老人ホーム(特養)の4つの居室タイプ | |
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従来型個室 | 「個室」というイメージそのままの1室を1人で利用するタイプです。以前では「個室」と呼んでいましたが最近になって「ユニット型個室」が増えたことによって「従来型個室」と称するようになりました。 |
多床室 | 定員2名以上で1室に複数のベッドが配置されているタイプとなっています。現在の多床室は「4人の相部屋」となっているケースが多いです。しかしプライバシーの保護から「ユニット型個室」へと改装する施設が増えています。 |
ユニット型個室 | 原則10.65㎡以上1室を1人で利用しているタイプです。一見従来型個室に見えますは、10名程度を生活単位(ユニット)としてロビー・ダイニング・簡易キッチン・浴室・トイレを共有して共同生活を送ります。1ユニットごとに専任の施設スタッフが担当します。これは従来型個室よりも入居者同士の交流も深めることができながらプライバシー確保もできるメリットがあります。 |
ユニット型個室的多床室 | こちらは多床室を改装、分割して作られた個室タイプとなります。そのため施設によっては、天井または床に隙間があるような仕切りで区切られている完全な個室になっていない場合もあるため、入居前に確認しておきましょう。 |
上表から見て分かるとおり、国の方針やニーズに合わせて個室化が促進されていますが、現状は特養の3割ほどは多床室となっています。また、家庭的な雰囲気を大切にする観点から、入所者同士の交流を重視しているため、「トイレ」「キッチン」「浴室」は共有となりシェアして生活しています。プライバシー重視で入居を決めたら、実際には個室タイプではなかった、などということがないように、事前にしっかりとした調査を心掛けるようにしましょう。
次に、利用者にとっては最も気になる特養にかかる費用についてご紹介します。
上述したように、特別養護老人ホーム(特養)は公的な施設であり、民間の施設と比べると、費用が安く抑えられます。更に、特養と民間の有料老人ホームとの大きな違いは、“入居一時金が不要”であることが挙げられます。具体的な数値としては、平均月額約6~15万円程を支払い、家族の世帯収入や課税状況・利用する部屋のタイプによって変動しています。それでは、月々の費用がどのようなもので構成されているのかを具体的に見ていきましょう。
特別養護老人ホーム(特養)にかかる費用 |
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・施設サービス費 ・居住費 ・食費 ・日常生活費 |
施設サービス費とは、いわゆる介護サービスとして、介護保険の支払上限額を示し1~2割を自己負担します。要介護度が高くなるほど、その費用は高額になります。居室のタイプによって異なることも注意が必要です。
部屋タイプ | 居住費 | |||
ユニット型 個室 | ユニット型 個室的 多床室 | 従来型個室 | 多床室 | 金額※ | 59,100円 | 49,200円 | 34,500円 | 25,200円 |
居住費は、いわゆる一般的な賃貸物件でいうところの「家賃」にあたる費用です。これは、国が定めた「基準費用額」を元に設定されていて、上表のように部屋のタイプ(ユニット型個室や多床室など)によって、大きく異なってきます。
食費に関しても、国が定めている「基準費用額」により、1日3食分を支払います。30日計算で月額41,400円(厚生労働省 2018年12月時点)となっています。ただ外出や外泊で施設内で食事をしてない時があっても、1日3食分が請求されることに注意が必要です。しかし、入院であったり、数日にわたる外泊の場合には、食事を停止することができ、その分の費用は請求されません。
特養では、四季まつわる行事やイベントなどのレクリエーションが行われています。その際に材料費や準備費がかかってしまうため、入居者側にも負担がかかります。その他に理美容代や被服費などの日用品も必要になります。ただ、おむつ代(尿取りパッドなども含まれます)や洗濯(クリーニングを必要としないもの)は施設側が負担します。
なお、低所得の世帯でも安心して入居してもらえるように「負担限度額認定」というものがあります。前もって役所に申請をし「負担限度額認定」を受ければ、負担限度額を超えた分の居住費および食費が介護保険から支給されるため、自己負担費用がさらに掛からずに済むことがあります。法人によっては「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度」が適用されることも。したがって、年金だけでも特養への入居は可能でしょう。
一方で、手厚い介護サービスによる費用が加算されることもあります。ターミナルケア(看取り)やリハビリにおいての個別機能訓練加算などで月額15万円を超えることも考えられますので、ケアマネージャーや地方自治体の窓口の相談サービスなどを利用する、または他施設も視野に入れつつ入居を検討しましょう。
特養は要介護度が高い利用者が中心の施設なため、入居者一人ひとりに対してケアマネージャーが作成したケアプランがあり、それに沿った介護サービス計画で「健康管理」「食事」「排せつ」「機能訓練」などを療養上必要な支援を行っています。そのためあまり自由度が高いとは言えませんが、特養で働く介護職員達は、できる限り利用者が自分の家のように生活できるように支援することを目的としたサポートを心掛けています。
気を付けておきたい点としては、特養は医療サービスを重んじている施設ではなく、常勤医師の配置義務がないということが挙げられます。そのため、受けられる医療行為は制限されており、施設によっては通院時の送迎も行っているところと行っていないところがあります。
特養が行っている主なサービスは、以下のようなものになります。
特別養護老人ホーム(特養)の主なサービス内容一覧 |
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・食事 ・入浴 ・排泄の介助 ・機能訓練(リハビリ)や体操 ・レクリエーション、イベント開催 ・部屋の掃除 ・洗濯 ・衣服管理 ・買い物代行 ・緊急時対応 ・健康相談 ・薬の管理 ・通院の付き添い ・近隣医療機関との提携 |
いくつかのサービスについて、具体的に説明してきます。
食事の時間は毎日同じですが、施設の栄養士がメニュー作成をし栄養バランスや入居者一人ひとりの状態・嗜好を考慮した食事の提供がされています。また自立支援の一環として、できるだけベッドから離れて食事をとる、といったような取り組みも行われています。
日々の食事は、年齢に関係なく日常の中で大きな楽しみの1つと言えます。その点もきちんと考えられていて、旬の食材を使った彩の良い食事やイベントに応じた行事食、誕生日の特別な食事なども工夫している施設がよく見受けられます。
入浴は最低でも週2回、入居者の体調に合わせて入浴介助を行っています。寝たきりの入居者には、機械浴槽などを使用したサービスも。基本的に、入居者の安全と快適に入浴できるように努めています。
入浴時間は、入居者がリラックスできる大切な時間のため、入居希望の方は、可能であれば体験入居で一度入浴介助を受けることもオススメします。
排泄は、日常生活の中でも大切な生活行動と言えます。入居者のADL(日常生活動作)が低下することのないように、入居者の自立を促すような介助を行うことが基本となっています。介護保険制度の改定で、「排せつ支援加算」が導入されたこともあり、排泄介助の重要性は、今後ますます高まっていくことは間違いないでしょう。
リハビリサービスは、入居者の日常生活における自立支援を目的としたメニューが組まれています。食事をはじめとした日常の動作を、できるだけ自力でできるようにサポートしてくれます。施設によっては、専任の理学療法士(PT)作業療法士(OT)からの本格的なリハビリメニューを提供するところも増えています。
リハビリサービスは、入居者の日常生活における自立支援を目的としたメニューが組まれています。食事をはじめとした日常の動作を、できるだけ自力でできるようにサポートしてくれます。施設によっては、専任の理学療法士(PT)作業療法士(OT)からの本格的なリハビリメニューを提供するところも増えています。
最近の特養では、「看取り」に積極的に取り組んでいる施設が増えています。今後ますます高齢化が進む社会の中で、「高齢者がどこで最期を迎えるのか」というテーマは、避けては通れない重要なものと言えましょう。入居者が希望の場所で看取りを行いたい、というニーズも増えております。このニーズに対応するため、厚生労働大臣が定める基準に適合する入居者に、看取りに向けた介護ケアを行った場合に、施設側は介護報酬が加算されることとなり、看取りの体制を整える特養が多くなっているのです。
こちらも冒頭で説明した通り、基本的に特養は、“終の棲家”として一度入居をすれば最期の時まで居ることのできる施設です。しかし、絶対に安心というわけにもいかず、途中退居をしなければならない場合もある点には注意しておきましょう。具体的には、その施設ごとに退居条件は異なりますが、最も多いのは、特養では医療ケアに重点を置いていないため、入居者の体調が悪化し三ヶ月を超える入院や認知症が進行してしまった場合に、退居せざるを得ないケースです。また、本来なら喜ばしいことではあるのですが、入居者の心身機能が大きく改善し、「要介護度1、2」や「自立」と認定された場合には退居を余儀なくされます。
入居後の無用なトラブルを避ける為にも、“終の棲家”として特養の入居を検討する場合は、必ず退去条件も確認しておくようにしましょう。
続いて、特養の人員配置について解説していきます。特養では他の公的介護保険施設である介護老人保健施設(老健)等と比べると、医療サポートよりも“介護”に力を注いでいることが、その人員配置から伝わってきます。つまり、医師や看護師の配置基準は低く、医師は配置されていても非常勤の場合があるため、命や病気に関わる緊急の対応は期待できないでしょう。厚生労働省「介護老人福祉施設(参考資料)」によると、常勤医師がいる施設は1.1%、非常勤医師がいる施設は95.3%となっています。この最も多い非常勤医師の平均勤務時間は4時間以下という施設が約71%にのぼります。また、医師の定期診療回数は週に1度の日中に行われていることが4割強、夜間および休日での定期診療に関しては、0回が9割を超えているというのが現状です。このように、特養では医療従事者の人員配置が完全なわけではないため、点滴や胃ろう、痰吸引、経管栄養、気管切開をしている高齢者は、入居が断られてしまうケースもあります。特養の入居を考えている方は、あらかじめ各施設の医師や看護師の人員体制を必ずチェックしておきましょう。
特別養護老人ホーム(特養)の人員配置基準(入所定員100名の場合) | |
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職種 | 人数 |
医師 | 1名(非常勤可) |
看護職員 | 3名 |
介護職員 | 31名 |
機能訓練指導員※ | 義務付けなし |
生活相談員 | 1名以上 |
栄養士 | 1名以上 |
介護支援専門員(ケアマネージャー) | 1名以上 |
※機能訓練指導員(リハビリ専門スタッフ):理学療法士、作業療法士、看護師、准看護師、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師
特養では介護に力を入れている事からも、一番多く配置されているのはやはり「介護職員」です。厚生労働省が指定する人員配置基準では、看護職員もしくは介護職員を入所者3人に対し最低1人配置しなければならず、これはどこの施設でも例外ありません。特養は看護師数が少ないため、緊急で看護ケアが必要な時に対応できるかどうかが、気がかりな点と言えます。特養における医療・リハビリサポートについては、ドクター人員は利用者に対して健康管理や指導に足りていればいいので、たとえ一人しかいなくても問題はありません。このように、特養は医療ケアのキャパシティが低いとことは否めません。利用者は入居を決断する時にはあらかじめ医師や看護師の人員体制をチェックしておくといいでしょう。
特養には、「広域型特別養護老人ホーム」「地域密着型特別養護老人ホーム」「地域サポート型特別養護老人ホーム」と3つのタイプがあります。それぞれどのような違いがあるのか、説明していきます。
“広域”と名付けられていることからも分かるように、入居希望者の居住地域がどこであっても、入居の申込みが可能な定員30名以上の施設です。
広域型とは反対に、原則、施設がある市区町村に居住する方が対象となる定員29名以下の施設となります。アットホームな雰囲気で、地域と家庭の繋がりを重視した方針が多いことも特徴です。さらにその中でも2つのタイプの施設があります。
定員30名以上の特養が本体施設となり、本体施設と密に連携を取りながら別の場所(原則として、本体施設から通常の交通手段を利用して20分圏内)に設置された施設です。
サテライト型の大きな特徴として、人員配置基準や設備基準が規制緩和されていることが挙げられます。特養と同じような、医師や生活相談員等の配置といった義務がないという点には注意が必要です。
通常の特養と同等の環境で単独に提供する小規模な施設です。他の施設との連携はありません。
こちらは、在宅介護ケアをしている方を対象とした、24時間体制の見守りなどのサービスを提供する施設となります。
それでは、特養のメリットとデメリットをまとめてみます。良い点も悪い点もきちんと理解した上で、入居を検討することが重要です。
要介護度が高い方でも、介護スタッフは24時間常駐している為、必要に応じて適切かつ手厚い介護が夜間でも安心して受けることができます。特養の介護職員の配置基準は入居者3名に対して1名(3:1)つき、日中は食事介助や日常生活の支援、リハビリやレクリエーションなどもしっかりと行われます。
特養は公的施設なため、低コストで利用できるのが最大の魅力です。高額な入居一時金がかからず、月々の支払いも平均にして月額10万円程度、といったように、民間の有料老人ホームと比べて安い傾向にあります。また、所得に応じた減免制度も申請し認定されれば自己負担が減る可能性も。
終身を前提とした利用が可能な施設の為、終の棲家として長期的に入居したい方にはピッタリの施設です。また、長く入居するからには他の入居者とも交流を深めたい方にも、しっかりと共有スペースがありますので楽しく過ごせる場所となります。行事やイベントなどの開催も、そういった利用者の希望に応えてくれることでしょう。
特養は公的施設な為、多くは地方自治体や社会福祉法人が運営しています。開設許可を得るにあたり、収支などといった厳格な審査を通っています。更に、補助金や税制面で優遇されているため、民間で運営されている介護施設と比較しても倒産のリスクは少ないことが特徴です。
特養の居室タイプは、個室タイプが多くなっているものの、3割の施設では未だ多床室である、というのが実情です。ユニット型個室的多床室でも、完全にプライバシー空間が確保できるわけではありませんので、パーソナルスペースの価値に重きを置いている、という利用者は注意が必要です。
特養では、一般的に医療ケアよりも介護ケアのサービスを重視しています。そのため医師の配置が少なく、看護師も夜間常駐は義務付けられていません。こういった点において、夜間対応や医療ケアが継続して必要な方にとっては、大きな不安を抱えてしまう場合があります。また、入居時に医療依存度が高いと入所を断られてしまうケースも。但し、最近では医療ニーズの高まりに対応して、医療ケアを充実させる施設も増加してきています。
入居にあたっては、原則要介護3以上という条件があります。認知症の有無や家族の環境によって、別途で入居が認められるケースもありますが、基本的には要介護2以下の方には入居が難しいでしょう。細かい入居条件に関しては、上述した「特別養護老人ホーム(特養)の入居条件について」を参考にしてみて下さい。
上記のデメリット内容も含めて、入居難易度が高い特養では、場合によっては1年以上の入居待機期間がかかることもあります。とはいえ、地域によっては想像以上に待機せず入居ができることもありますので、複数の特養へ申し込みをするなど、各地方自治体へと相談をしてみることが大切です。
ここで特養へ就職または転職希望の方に向けて、職場環境や給料についてもご紹介します。
特養は入所タイプの介護施設となるため、365日24時間体制での介護業務となります。多くは日勤・夜勤・早番・遅番のシフト制となり、拘束時間は各施設で異なります。一般的には夜勤は夜勤手当などの各種手当がつくところが多いです。
給料面は、特養の各施設によって差はありますが厚生労働省のデータによると平均月給約30万円となっており、介護職の中ではトップの給料となっています。したがって年収も500万円に届く可能性が十分にある魅力ある職種です。しかし、各施設によっては手取りが月給15万という特養もあり、同じ特養でも給料や待遇に違いがあるため、職場選びには慎重に行いましょう。当ケア転職ナビのような転職支援サイトへ登録をし、最新の介護施設の情報を得ることをオススメします。
介護士はどこの施設でも体力が必要となる仕事ですが、特養はとくに要介護度が大きく、身体介護の支援負担が多くあるので体力に自信がある方は向いているでしょう。入居者の介護頻度としては、日々の生活をサポートしているため「食事介助>排せつ介助>入浴介助>移動介助>シーツ交換」となっています。そのため、介護業界未経験という方でも、介護士としての知識やスキルが身につきやすい環境だと言えます。
今、特養が抱える課題として、実は4施設に1施設は空室があるという現状あります。言葉通りに捉えるのであれば、「それならすぐに入居ができるのでは」「何が問題なの」と考えてしまいがちですが、裏を返せば、“空室があるにも関わらず入居待機者がいる”という問題が潜んでいるのです。特養には、介護士が多く活躍する施設であるにも関わらず、十分な介護士確保できずに、人員配置基準を満たすことができない程“人手不足”に悩んでいる背景が存在します。「特養の開設・運営状況に関するアンケート調査(2017年3月)」によると、調査時点で「空きがある」と回答した施設が26%、政令指定都市や東京都特別区では31.1%も空室があるという結果となっています。その理由としては「職員の採用が困難(30.1%)」次いで「職員の離職が多い(20.3%)」が続いており、施設の提供体制に問題があることが明らかになりました。このように、「入居待機者が多く空室もあるにも関わらず受け入れができない」という実態が浮き彫りとなった今、今後は特養の施設不足ではなく慢性的な“人手不足”がメインとなって、介護士の処遇改善や職場環境の見直しが必要となってくるでしょう。