介護の仕事には、ホームヘルパー(訪問介護員)やケアマネージャー(介護支援専門員)、サービス提供責任者など様々な役割を担う役職があります。
今回はその中で、介護サービスの計画やヘルパーさんへの指示などを行う、いわゆる調整役ともいえる「サービス提供責任者」について詳しく解説していきたいと思います。
これから介護業界へご転職をお考えの方、介護の仕事に興味をお持ちの方に、介護職として目指すキャリアの方向性を決める一助となると幸いです。
サービス提供責任者とは、訪問介護事業所においてサービスの品質管理をはじめ、ホームヘルパーの労務管理や育成指導などを行う職員のことです。
訪問介護サービスの利用者が質の高いサービスが受けられるよう、介護職員、ケアマネージャー、医師・看護師、ご家族などの協力者とも連携を図りながら、上手に利用者をサポートしていくことがサービス提供責任者の大切な仕事です。
こうしたサービス提供責任者ですが、略して「サ責」とも呼ばれており、介護の業界では略語が使われることも多いので覚えておいてください。
そして、訪問介護事業所にはサービス提供責任者を配置することが義務化されていますが、サービス提供責任者となって仕事することになれば、コミュニケーション能力を高めなければならないことのほか、チームワークや組織力を活かして仕事する重要な役割を担うことになりますので、サービス提供責任者にしかできない責任のある仕事は多く、介護職の中でも大変やりがいのある職業になるでしょう。
◇訪問介護の計画作成 |
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介護支援専門員(ケアマネージャー)が作成したケアプランの内容をもとに、さらに具体的に支援内容や手順、提供加減などの訪問介護計画を立てます。 利用者本人の希望はもちろんのこと、ご家族の希望も取り入れ生活の環境や状況から判断し1人ひとりに合った計画書を作成するため利用者の方やご家族と話し合いながら進めていく形になります。 |
◇情報を繋げるパイプ役 |
利用者の方の生活状態やその変化などの情報を、サービス提供記録の確認やサービスを提供したホームヘルパーから聞き情報を集め遅れることなく他のサービス提供者に伝え繋げます。 |
◇サービス担当者会議への出席 |
ケアマネージャーが開く担当者会議に出席し利用者本人やその家族、かかりつけの医師、訪問看護員、ヘルパー、リハビリ職員で話合い意見交換しながら利用者の方の希望や目標設定を把握すると同時に、介護サービス提供者の役割を明確にします。 サービス提供責任者はすべてを把握し具体的なサービス提供方法を思案します。 |
◇ホームヘルパーとして |
サービス提供責任者もヘルパーとしての大事な要員であるため、現場にでて訪問介護サービスを行います。 ※この他にも介護事務やクレーム、トラブル対応など様々な役割があります。 |
サービス提供責任者になるためには、どのような知識を高め、経験を積めば良いのでしょうか。そんな疑問を持つ方も多いと思いますが、前提としては、介護保険法によって定められた資格取得していたり、実務経験などの条件は満たしていなければなりません。
ここでは、介護の経験が少ない方によって、サービス提供責任者を目指すために必要な「条件」「資格」「おすすめのスクール」などのパートに分けて説明していきましょう。
サービス提供責任者になるための条件は? |
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1.「介護福祉士(国家資格)」を取得している 2.「介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)」を取得しており実務経験が3年以上ある ※「介護職員初任者研修」は「ホームヘルパー2級」の研修が廃止になり新しくなった資格です。 3.「実務者研修」を終えている ※現在は廃止されている下記資格でも、取得していると、サービス提供責任者になることが可能です。 ・「ホームヘルパー1級」を2013年3月までに取得している ・「介護職員基礎研修」を2013年3月までに終えている 「介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)」取得と実務経験3年以上の条件でサービス提供者にした場合、事業所側で介護報酬が10%減算されることになります。 そのため「介護福祉士」の有資格者と「実務研修」を修了していたほうが事業所にとっては都合が良いため優先される傾向にあります。 上記の条件のいずれかを選ぶ場合、介護福祉士の資格取得か実務経験の終了からサービス提供責任者になることをお薦めします。 |
サービス提供責任者になるために必要な資格は? |
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サービス提供責任者を目指すなら、最初から「介護福祉士」の資格の取得を狙うのも良いですが、段階的に進めるなら「介護職員初任者研修」と「実務者研修」の2つにチャレンジすることになります。 「介護職員初任者研修」は、新人向けの入門的な資格として位置づけており、介護職に対する理解、認知症や障害などについても学びことが出来ます。 最速で3週間程度で取得することが可能ですが、「介護福祉士」の受験資格にはならないことや、医療的なケアの方法までは学ぶことが出来ない特徴があります。 次に、「実務者研修」は、無資格でも約6ヶ月程度で取得は可能で、介護に必要な人間の尊厳と自立、コミュニケーション技術、生活支援技術、介護過程、心とからだの仕組みなどについて学び、「介護福祉士」を目指した基礎知識や技術が修得できます。 この2つの資格はどちらからでも受験することは可能ですが、先に「介護職員初任者研修」を取得しておけば、基礎から順番にしっかりと学べるほか、「実務者研修」の受講料や受講時間の一部が免除となるのでお薦めです。 これに加えて、「介護福祉士」は介護福祉における国家資格となりますが、サービス提供責任者に留まらず、キャリアアップには大いに役立つ重要な資格となるでしょう。 「介護福祉士」になれば、介護者の食事、入浴、排泄、歩行などの介助に加え、介護者の家族を支援したり、キャリアが浅い介護職員に指導やアドバイスをしたりすることができるようにもなります。 |
サービス提供責任者になるために勉強する方法として、スクールや通信講座などを取り上げます。下記を参考にしながら、貴方に合った勉強方法を見つけてください。
【三幸福祉カレッジ】 |
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介護職員初任者研修から実務者研修、介護福祉士国家試験受験対策など初めて介護を学ぶ人からキャリアアップしたい人にもお勧めです。 介護職員初任者研修と実務者研修のセットは受講料が割安になりお得に学ぶことができ、介護福祉士国家試験受験対策では通学コースと通信コースがあり、通信コースでは筆記通信コースとWeb学習コースが選べ、忙しい人でも学べるようになっています |
【ニチイまなびネット】 |
介護職員初任者研修・実務者研修・介護福祉士国家試験受験対策・介護事務の講座が設けられており、現役の介護職員が仕事と両立しながらでも無理なく学べるよう効率を考えた勉強方法が魅力です。 介護福祉国家試験対策講座では通信+通学(2回)のコースと通信コースが選べ時期によってキャンペーンがありお得に受講することができます。 |
【資格の大原】 |
介護福祉士からケアマネージャー、初任者研修が受講できます。 介護福祉士の学習方法には、DVD通信と資料通信があり自分にあったものを選ぶことができ、全国に教室があるためオススメです。 |
サービス提供責任者は、訪問介護事業所に関わるホームヘルパー、ケアマネージャー、医師・看護師など、様々な役割の人たちと連携を取りながらする仕事になりますので、信頼関係が大切になりますし、柔軟で適切な調整力が求められます。他の介護職と比べても、組織やチームとしての一体感、自身のリーダーシップを発揮する調整力が実感できるのも魅了だという人が多いことでしょう。
自身が関わる介護職員などとの信頼関係があることが大切となりますが、周囲の職員から頼りにされたり、訪問介護計画書による育成指導で目に見える成果が出てくれば、大きなやりがいを感じるはずです。
【サービス提供責任者の平均給与】 |
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・年収330万円前後 ・月給20~22万円 ※平均ではこのような数字になっていますが、事業所の大きさや待遇、さらには介護職で長く経験を積んでからサービス提供責任者の資格をとった方など、事業所の規模や勤務年数で大きく変わってくるため、同じサービス提供責任者であっても年収500万円を超える場合もあります。 |
〈Aさんの一日のスケジュール〉 |
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8:30 事業所へ出勤・掃除・シフト確認 9:00 時間によっては事務処理を行い、利用者宅へ訪問 10:00~17:00 ヘルパーと連絡を取り相談、情報交換を行いながら訪問介護3件、合間に昼食 17:00 事業所へ戻り事務処理 18:00 ヘルパーの連絡を受けて情報整理 18:30 状況報告書を作りケアマネージャーへ連絡する 19:00 業務終了 |
〈Bさんの一日のスケジュール |
8:00 事業所出勤前に1件目の訪問介護のお宅に直接行きケア 9:00 事業所に戻り、ヘルパーからの連絡を受けながらシフトや書類の確認 10:30 利用者の方の訪問介護で外出 13:30 事業所に戻り、お昼ごはんを食べながらヘルパーと情報交換 14:30 サービス担当者会議に出席 16:00 事業所に戻り事務処理、ヘルパーからの相談などの連絡を受けながら報告書作成、ケアマネージャーへの連絡 18:00 業務終了 |
※サービス提供責任者の1日のスケジュールは日によって違い、直接訪問介護のお宅へ向かうことや、訪問先からの直帰などもあります。
事業所によってはお昼休憩の時間が決まっておらず、外出先でお昼ごはんをとることや時間がとれる時に食べるという形をとっているところもあります。
訪問介護事業所では、優秀で信頼がおけるサービス提供責任者を求めており、比較的求人は多いのが特徴と言えますが、実際に働くことをイメージしてもらうため、仕事に就くことの難易度、実施の職場で起こる課題、サービス提供責任者の配置基準などを紹介していきます。
サービス提供責任者は、ホームヘルパーからの相談や利用者の方からの要望などその役割は幅広く、洞察力や臨機応変な対応が求められ、介護現場とのパイプ役であることからコミュニケーション能力などが必要であり、仕事における難易度は高いといえます。
ただし、介護ヘルパーとして現場での長い経験を経てからサービス提供責任者というキャリアステップを踏めば、現場での経験を活かせるので、比較的スムーズに仕事にあたることができるでしょう。
サービス提供責任者に限ったことではありませんが、必ずしても良い事ばかりではなく、仕事の中では辛いなと感じることもあるでしょう。
サービス提供責任者として働いている方の経験談の中でも仕事の特性が感じられるケースを例に挙げてみると、「利用者からのクレーム対応にストレスを感じる」「ヘルパーの方が年上でプライドも高く調整が難しい」「デスクワークが中心だと思っていたのに現場の仕事がとても多かった」などの声が寄せられていました。
こうした課題はそれぞれに対処も異なりますが、やはり利用者や職員などとの信頼関係を築くことや、リーダーシップを発揮することが大切で、現場において求められる能力であると言い換えられるでしょう。
訪問介護事業所では、1人以上サービス提供責任者を常勤で配置することが定められており、
その必要員数は、事業所での利用者の数が40人以上になると1人増えて2人必要となり40人の端数が増えるごとにサービス提供責任者の必要員数は1人ずつ増えます。
例として… |
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利用者40人以下 サービス提供責任者・常勤1人 利用者40~80人以下 サービス提供責任者・常勤2人 利用者80~120人以下 サービス提供責任者・常勤3人 といった配置基準になります。 |