訪問介護は、利用者の自宅へ訪問して介護サービスを提供します。基本的には訪問介護員(ホームヘルパー)と利用者の1対1で介助が行われるので「あまり人間関係に悩むことはないのでは?」と思われることも多いようですが、実際は職員同士や利用者との人間関係に頭を抱えている介護士さんが多いのが現状のようです。
本記事では対職員・対利用者とのより良い人間関係を築くためのポイントをご紹介していますので、人間関係に悩む訪問介護員の方にぴったりの内容となります。ぜひ最後までご覧ください!
有料や特養など、いわゆる老人ホームといわれるような一般的な介護施設の場合、フロアごとに職員が配置され、閉鎖的な環境で仕事を行うため人間関係についての悩みも多いようですが、訪問介護の場合、事業所以外で職員と顔を合わせることはほとんどないので、施設での人間関係にうんざりした介護士さんが“訪問介護”へと転職をするケースは少なくありません。
訪問介護は基本的に一人で利用者の自宅へ伺い、限られた時間内でスケジュールに沿った介助を行うので、施設のように介護職員同士の仕事の押しつけ合いや派閥などに巻き込まれることが少なく、職場内の人間関係によるトラブルも起きにくいとされています。
ただし、人間関係のトラブルが介護施設と比較して少ないというだけで、人間関係の悩みが全くないというわけではありません。
訪問介護員は正規雇用者でも73.6%が女性、非正規雇用の訪問介護員となると95.0%を女性が占めています(公益財団法人 介護労働安定センター「平成29年度介護労働実態調査」より)。それゆえ、女性が多い職場で起こりがちな人間関係の問題は実際少なくありません。
もちろん職員同士の人間関係だけでなく、利用者との人間関係に悩みを持つ職員もいます。訪問介護員は利用者一人ひとりと密接に関わることが多いため、きちんと利用者やそのご家族と信頼関係を築かないと利用者からの嫌がらせやクレームに繋がることがあるので、自宅に訪問するたびに憂鬱な気持ちになってしまいます。そこでまずは“訪問介護員同士”と“利用者”それぞれの人間関係について見ていきましょう。
訪問介護は、一人の利用者に対して一つの事業所がすべてのサービスを請け負い、毎回同じ訪問介護員が朝・昼・夕方に自宅を訪れているわけではありません。
実は、利用者のケアプランに則って、複数の事業所から訪問介護員が自宅に伺い、介護サービスを提供しています。なので、一人の利用者に対して複数の訪問介護員が担当しているケースは珍しくなく、事業所同士が利用者の情報をしっかり共有できるように連絡用ノートというものがあります。
利用者の状況を訪問介護員が把握できる便利な連絡用ノートが、意図して陰湿な悪口へと変貌するときがあります。いつも通りノートを開くとそこには引継ぎ事項と合わせて、他社への批判や嫌味などが書かれてあるそうです。なぜそのようなことが書かれることがあるかというと、
…などが挙げられますが、あまりにも利用者視点ではない人への配慮に欠けたこのような行動は、決して快適な労働環境とはいえない訪問介護の現状を作りだしています。
訪問介護は、自宅から利用者宅へ直行直帰でき、事業所に週1~2度出勤して上司へ報告書を提出する。あとは基本一人で業務に集中できるので気楽というイメージがあるかもしれません。
しかし、事業所によっては職員同士の仲間意識が強く、ミーティングや会議が多い多いところもあったり、その一方で驚くほどヘルパーに無関心な事業所もあるので、タイプはさまざまです。
共通しているのは、やはり女性が多い職場であること。
いくら真面目に仕事をしていても、職員同士のランチや飲み会を断ったり、勤務歴の長いベテランヘルパーを差し置いて本部に評価された場合に、根拠のない噂や陰口などを叩かれることはよくあるそうです。
それだけなら事業所に戻るときだけ我慢すれば良いのですが、ひどいときはわざとブラックリストの介護先のルートばかり組まれてしまい、被害を受けてしまうことも。最悪の場合、自己都合でを会社を辞めるように仕向けられたりするほどの酷い仕打ちに合うことも珍しくないそうです。
訪問介護は、身体介護の場合は入浴から排泄、食事など介助を行い、生活支援の場合は料理、洗濯、掃除、買い物などが主な仕事となります。このように生活の一部に入りこむため、ついつい利用者に関わりすぎてしまうことがあります。その分利用者のことを理解した上で介護サービスを提供することができるのですが、距離間を間違えてしまうと依存されてしまったり、利用者やその家族から苦情が出る事態となってしまうのです。
訪問する利用者の家庭ごとに環境は異なるので、利用者それぞれの生活のこだわりなどを理解して対応することが必要となってきます。しかし100%利用者のことを理解することは難しく、訪問介護員として要望通りに対応しているつもりでも、利用者からしてみれば納得していないことも多く、結果として苦情やクレームに発展することもあります。
中には訪問介護員に対して意地悪をすることを楽しんでいる利用者や、わざと調理器具を隠して「失くした、早く作れ」と理不尽な文句を言われるケースもあります。利用者は「知らない人に敷居をまたがれている」という意識が高いので、相性やコミュニケーション次第では気に入らない訪問介護員に対して暴言を吐いたりきつくあたったり、嫌がらせを行ったりなど人間関係が上手くいかずどんどんと悪化してしまう事態になる可能性も十分にあります。
訪問介護は第三者の目が入ることが難しく、事業所側が訪問介護員の仕事の様子をリアルタイムで確認できないため、利用者と訪問介護員の信頼関係が非常に重要となります。
では、介護職員同士や利用者とうまく人間関係を築いていくにはどのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。そこで、訪問介護の職場における良い人間関係を構築するためのポイントをご紹介します。
訪問介護には“時間”が決められており、時間を過ぎてしまうと利用者や次に来る訪問介護員に迷惑をかけてしまいます。最初は時間内に終わらせることにいっぱいいっぱいになってしまうかもしれませんが、慣れて少し余裕が出てきたら、「雨降りそうだから洗濯物を部屋に入れておこう」「冷蔵庫の中身を整理しておこう」など、ほんの少しの配慮をするだけで良い人間関係を築くきっかけとなります。利用者だけでなく、後に来る他の事業所のヘルパーさんにも気配りや配慮をすることを心掛けましょう。
何かとストレスが溜まってしまう介護現場だからこそ、“感謝の気持ち”を伝えて、明るい雰囲気を作りを心がけましょう。職場や家庭でのストレスで些細なことで悪口や批判ばかりが横行してしまいがちですが、そこをグッとこらえて、深呼吸してポジティブな言葉を発するようにしましょう。言葉はいずれ自分に返ってきます。
介護の職場には経験年数が長く、現場を仕切るようないわば”ボス”のような職員が一人はいるはずです。そんなジャイアン気質な人は意外と頼られることを嬉しいと感じる性格が多く、「この利用者さんとどうしたら距離を縮められますか?」など、素直に教えを乞うてみると、案外親切に教えてくれるはずです。一度タイミングを見つけてコミュニケーションをとってみてはいかがでしょうか。
女性は特に“共感”を求めることが強く、「でも」などの否定の言葉に敏感で、率直に意見したつもりが反感を買ってしまう恐れもあります。相手の話を聞くときは、「うん、うん」とうなずきながら、言葉を受け止め、「そうなんですね~」「へぇ~」など共感を促すような会話すると円滑な人間関係を築くことができます。
人間関係のトラブルに巻き込まれないためには、そもそも派閥やグループに入らないことでが鉄則です。
わざわざ「混ざる気はない」と断言する必要はありませんが、適度な距離間を保つことは重要です。偏った発言や意見は最初は控えるようにして、ゆっくりと自分の立ち位置を見つけていきましょう。
女性が多い職場ではどうしても悪口や噂話が飛び交うもの。それはどこの職場でもあるものなので、あまり気にしないで良いことかもしれませんが、一度悪口や陰口に同調してしまうと、最終的に自分のせいにされてしまうこともあります。隣で職員同士が悪口や噂話をしていても決して賛同せず、受け流すことをオススメします。コミュニケーション能力が高い方は話題をうまくズラすのも良いでしょう。
プライベートを共有するなど、自己開示することで相手もあなたに対して開放的になり、お互いの信頼度が増すことがあります。ただ、話題選びには十分に注意しましょう。自慢話やノロケ話などは引かれたり、嫉妬を買う恐れもあります。相手との共通点をうまく見つけて、相手が話し始めたら聞き役に徹することがベストです!
訪問介護にとってまず利用者のことをよく知ることが大切です。他愛のない会話から利用者の家族との思い出や、今なにに興味があって、どういうことに感動するのか、を知ることでより利用者との関係を深くすることができるでしょう。また、洋服や趣味など褒めることも大切です。どんな人でも褒められると嬉しいもの。褒めて受け入れることで、利用者は居心地が良いと思い、自然と家族との悩みも打ち明けやすくなり、心を開いてくれやすくなります。これは人間関係の基礎となる信頼関係を築くのに非常に重要になります。
共通点が見つかると相手の警戒心が和らぎ、親密感が生まれます。利用者の好きな話題や共通点を積極的に会話に取り入れて距離を縮めていきましょう。盛り上がった内容を連絡ノートやメモに書き留めて、他の職員とも連携をはかりましょう。
利用者から何か意地悪なことを言われたとしてもすぐに苛立ってはいけません。訪問介護のプロという意識と自信を思って仕事にあたることが大切です。また、人としての礼儀やマナー、身だしなみを整えて清潔感のある恰好で介護をすることは利用者だけでなく、そのご家族からの信頼を得ることにも繋がります。