日常生活において口の中をきれいにしておくことはとても大切なことです。
高齢者の介護では、口の中を清潔にするための口腔ケアも日常的に行いますが、
この口腔ケアを嫌がる高齢者はとても多く、介助を行う介護職員は対応に困ってしまうこともあります。
今回はそんな口腔ケアをスムーズに行うために、押えておきたいポイントや、方法をご紹介します。
口の中には味覚や触覚などの様々な感覚があり、とても敏感な部分です。
そのため、自分の感覚でやっていた口腔ケアを人にやってもらう事は、様々な違和感から、不快と思う高齢者の方が多くいます。
中でも、認知症のある方は、羞恥心や警戒心、自尊心の関係で、口の中を見せるのが恥ずかしい、口の中に何か入れられる警戒心、何をされるのかわからない恐怖、自分のことは自分でやりたいと思う意思など様々な理由から強く不快感を持ってしまう傾向にあります。
また、歯医者などで痛かった記憶が残っていたり、以前口腔ケアを行った方が強引であったりすることでも不快感を表すことがあるため、高齢者の方の背景を把握しできるだけ不快に思わないようにリラックスして行ってもらえるような状況を作ることが大切です。
口腔ケアをする前の準備をしっかりすることで、スムーズに口腔ケアを行うことができます。
では、どのような準備が必要なのか、簡単に解説します!
緊張していると、口腔ケアを行おうとしても口を開いてくれない事があるため、世間話などをしてコミュニケーションをとる事や、リラックスできる音楽などをかけて、高齢者の方が安心しリラックスできる環境を作りましょう。
高齢者の方は、唾液や水が肺に入り、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまう可能性があるため、しっかり姿勢を整えてから口腔ケアを行いましょう
何をされるのかわからないまま口腔内に触れられる事は警戒や不安に繋がってしまうことがあるため、高齢者の方が安心して口腔ケアを行えるように、「口腔ケアをしましょうね」「口の中をきれいにしましょうね」など簡単に説明してから始めることが大切です。
唇が乾燥していると口を開く際に切れてしまうことがあります、水や保湿剤を塗りマッサージしてから口腔内のケアに入ります。
また、唇のマッサージから入ることで、いきなり口腔内のケアをするよりも、抵抗が少なくなります。
1つ目のあごを引いた状態での口腔ケアは、あごを上げた状態で行ってしまうと誤嚥につながるので注意が必要です。
2つ目も同様に、目線の位置を平行に保つことで、あごが上がってしまうことを防ぎます。
3つ目は、口をずっと開けたまま維持するのは想像以上に疲労するので、負担を軽減させてあげるために行います。
1つ目の注意点ですが、顔も体も仰向けの状態では誤嚥の可能性が高くなるため、注意しましょう。
2つ目は、あごを自分で引かなくても自然にあごを引いた体勢になるように補助します。
3つ目は、口腔ケアの最中に身体があまり動いてしまわないように固定します。
口腔ケアの方法は、大きく3つの種類があり、高齢者の状態などによりその方法は違ってきます。
では、どのような方法があるのか、また効果的な行い方や手順も交えて解説していきます。
口腔ケアの方法の1つ、歯磨きをする際は、歯ブラシを鉛筆のように持ち、ブラシを歯にあててやさしく揺らすように磨きます。
1本ずつ丁寧に磨くようにイメージして進めていきます。
汚れはたまりやすい場所は念入りに磨きますが、力が入らないように気をつけましょう。
口腔ケアで行う、うがいは、口に水を含みほおを膨らませて歯の間をすすぐようなイメージで水を動かし、食べ物のカスや汚れを洗い流します。
嚥下障害でうがいのできない方や体を起こす事ができず口に水を含めない場合に、専用のウェットティッシュなどで口腔内をふき取るケア方法です。
口腔清拭の手順
義歯が汚れていると口腔内も清潔に保つことができないため、きれいにしておくことが大切です。
義歯は、専用のブラシで清掃し、目に見えない汚れは洗浄剤につけてきれいにします。
部分義歯の場合、クラスプの部分に汚れがたまりやすいため念入りに清掃しましょう。
口腔ケアでの各パーツでのケアポイントをご紹介します。
歯ブラシのわきを使い、歯と歯の間に縦に当てて上下に動かします。
あまり強く押し付けずに優しく繰り返し磨いてあげましょう。
歯ブラシのつま先(先端部分)を使って一番奥の歯の左右両方を順番に磨きます。
奥歯の後ろは歯ブラシを動かすスペースが少ないので小刻みに磨いてあげましょう。
歯ブラシの全面を使って磨きます。この際、歯に対して90度にして磨くと良いでしょう。
歯ブラシを強く押し付けすぎると横に広がってしまい、うまく磨けない場合があるので適度な力で磨いてあげましょう。
歯ブラシを縦に使い、歯ブラシのかかと部分で歯を1本ずつかき出す様に磨きます。
必然的に歯の裏側や上あごに触れてしまうので傷つけないように慎重に磨きましょう。
高齢者の場合歯と歯の間の歯が抜けてしまっている場合があります。
うまく歯ブラシが入らないような隙間には歯間ブラシの片面を押し当てるように使って磨いてあげましょう。
介護において口腔ケアは、高齢者の健康を守り気持ち良く生活する上でなくてはならないものです。
高齢者の方が安心して受け入れてくれるよう、しっかり準備をして様々な視点から観察することで、スムーズに口腔ケアを行える環境を作れるようにしましょう。