介護サービス利用者にとって、毎日の食事は大きな楽しみにもなれば、苦痛にもなります。食事を提供する側としては、喜んで残さず食べてもらいたいところですが、毎食となると、なかなかそう上手くはいきませんね。
今回は、そんな介護の食事に関してお悩みを抱えている方にオススメの情報を紹介します。
高齢の方は、噛む力、唾液の分泌、消化機能など、様々な機能の低下がありますので、特段の注意を払う必要があります。
高齢者への食事の注意点をご紹介します。
高齢者になると嚥下(えんげ)や咀嚼(そしゃく)等の機能が低下するので、その人の症状や状況によって食事の種類も変えていかなければなりません。
咀嚼が弱い人には、やわらかいものを選び、場合によっては火を通してやわらかくしたりペースト状にするなどの調理を加えてください。
飲み込むのが苦手な方へは、とろみをつけたり、スープなど液状にするなどの工夫が必要です。
むせやすい方へは、口当たりのよいものを選ぶなど、その日の体調や状況ごとに、選ぶ食材や調理法に気を配りましょう。
高齢になると特に不足しがちな栄養素として、「ビタミン」、「ミネラル」、「たんぱく質」、「食物繊維」が上げられます。
他にも、体調を加味して必要な栄養素をしっかり摂取できる献立を用意しましょう。
また、水分をしっかり摂取することもポイントです。
食事の際に注意したいのは、食べ物が食道ではなく誤って気道や肺に入ってしまう「誤嚥」です。
高齢の方では、「誤嚥性肺炎」という肺炎の原因にもなりますので、十分注意しましょう。
特にきざみ食は、誤嚥の恐れがあるので要注意です。
介護食を作るにあたり、具体的にお年寄りが食べやすい食品、そして食べづらい食品を食べやすくする工夫をまとめてみました。
おかゆ、パンがゆ | おかゆ状になっているもの |
ポタージュ、カレー、シチュー | とろっとしたとろみがついているもの |
かきたま汁 | とろみがついているもの |
軟らかいつくね、つみれ、ハンバーグ | ひき肉やミンチ状になった食材を使う |
茶碗蒸し(具なし)、葛豆腐、卵豆腐、ムース、プリン | やわらかくのど越しが良いもの |
ゼリー、水ようかん、葛ようかん、煮こごり | ゼリー状にまとまっているもの |
果物缶詰、リンゴ煮のミキサーかけ、ピューレ | ネクター、ピューレ状のもの |
ヨーグルト、飲むヨーグルト、アイスクリーム | 液状化のもの |
パン、パスタ | パンがゆにする、マカロニを使い軟らかく煮込む |
肉 | 叩いて軟らかくする、脂身を取る、細かい切り込みを入れる |
生野菜 | ゆでる、蒸す |
繊維の多い野菜(ごぼう、もやし、セロリ、筍など) | 繊維部分を切るようにカットする、すりつぶす |
皮が固い野菜(トマト、なす、かぼちゃなど) | 皮をむく |
味噌汁、スープ | 片栗粉などでとろみをつける |
酢の物、辛い物 | 味付けを控えめにする |
ぼそぼそ、パラパラとしたもの(焼き魚、そぼろ、チャーハンなど) | あんかけにする |
わかめ、のり、こんにゃく | 細かく刻み、とろみをつける |
介護の食事に関するQ&Aをご紹介します。
A1、嚥下障害の方は固形の食べ物だけではなく、飲み物もスムーズに飲み込めず、むせることもありますので、汁物はゼリー状にしたり、食品の特性をうまく使ってとろみをつけた料理を工夫してみると良いでしょう。片栗粉、コーンスターチ、とろみ調整剤などを上手に利用しましょう。
A2、手が不自由な人でも、ホルダーが付いているスプーンやフォークなどの自助具がありますので、できる限り自力で食事を行ってもらいましょう。
リハビリにもなりますので、大体45~60分の間で食べられるように、適度に介助することをおすすめします。
A3、まずなぜ食事を拒むのかを考えましょう。
体調が悪いときや発熱している場合は食欲も出ません。
他にも口内炎など口の中のトラブルがある場合や精神的なストレスがある場合、もう食べたと勘違いしている場合など、多くの原因があります。
また、食べる姿勢も大事ですし、もしかすると、良いと思って作った食事の固さが実は食べづらい場合も考えられます。
第一に、なぜ食事を拒否するのか、原因を見極めるのが大切です。
拒食が長く続いてしまうと、体力の低下と脱水症状が心配されます。
どうしてもわからない時には一度医師に相談してみましょう。
利用者に、毎日の食事を楽しみに思ってもらうのはとても重要なことです。
元気の源は食事!楽しんで食べることで唾液も多く分泌され、消化もスムーズに進みます。
利用者に食事を楽しんでもらうための工夫やポイントをご紹介します。
刻み食、ミキサー食、ペースト食などの素材の原形をとどめていない食事メニューばかりでは、なかなか食べる気も起きないと思います。
そんなときは「ソフト食」を作ってみてはいかがでしょうか?
「ソフト食」とは出来上がった料理を素材ごとに細かくすり潰し、味を調え、固め直し、元の料理のように盛り付けるというものです。
一手間がかかりますが、見た目や味を一般食に近付けることで、食べてみようという気持ちが湧いてくるかもしれません。
在宅介護の場合なら、家族と一緒に。
施設の場合なら、利用者同士顔を合わせて食べられるといいですね。
同じテーブルに着くのが難しくても、ベッドから家族の顔が見えるような位置にしたり、少しでも他者とコミュニケーションが取れるような場にすると、食事も楽しいひと時に変わります。
食べさせてもらわなければならない方もいると思いますが、可能な限り、食器を工夫するなどして、自分で食べさせてあげるようにしましょう。
その他にも、季節感やイベント性を取り入れたり、ちょっとした工夫で食事を楽しく行うことが出来ます。
介護の食事は毎日続くものです。基本的には、普通食に手を加えて、食べやすい介護食を作ることで賄えますが、献立の内容によっては、介護食には向かないメニューであったり、調整が難しい場合もあるでしょう。また、介護食を作る人がストレスなく続けるためには、市販の介護食を上手に取り入れると良いでしょう。
介護食はスーパーなどで購入できるほか、ネットや宅配など、その種類も様々です。主な介護食メーカーをまとめてみました。
このほか、通販や宅配介護食の種類も豊富です。
多くの介護食メーカーで、無料で資料請求ができるほか、お試し送料無料やお試し試食セットなどを扱っているところもあります。気になる会社には問い合わせをしてみましょう。
年を重ねるにつれて味覚や嗅覚の機能が低下し、飲み込む力も弱くむせる事が多くなります。
また内臓機能も衰えるため栄養を取りにくくなってきます。
点滴からの摂取に切り替えるのは容易ですが、「口から食べる」ことで五感が刺激され、食べる喜びを感じることが出来ます。
様々な工夫をして、介護されるお年寄りもぜひ楽しめる食事を提供してあげてください。