介護職のキャリアアップの中で、ケアマネージャーを目指したい方とって共通の通過点とも言える“生活相談員(生活支援員)”。目標にしている介護士の方も多いようですが、人と人の間に入る調整役としての役割を担う生活相談員は、常日頃からストレスが溜まりやすく、「辛い」と感じる方も少なくないのが現状です。生活相談員は、周囲からも「マルチに働けるなんでも屋」のように捉えられ、職場内において様々なことを頼られがちな立場です。本来の相談援助や窓口業務に加えて、ケアプランやモニタリングなどの数々の書類作成、現場の介護業務まで、介護職におけるほぼ全ての業務をこなしているといっても過言ではない仕事なのです。そんな過酷とされる生活相談員の業務を再確認した上で、過度なストレスが生じてしまう原因や、その解消法を当記事でご紹介します。また、生活相談員の方で転職をお考えの方にとっても必見の、注意すべきポイントもお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
それでは、改めて“生活相談員”という職種が、介護の職場においてどのような立場にあるのかを理解していきましょう。
本来、生活相談員は特別養護老人ホームやショートステイ、デイサービス(通所介護)での“施設の顔”として、利用者やその家族に対して入所から生活までの相談援助、施設の説明や受付、契約をすることが仕事です。しかし、実際の介護の職場における生活相談員は、業務範囲が法的にも明確に定められていない職種の為、“介護現場の オールラウンダー”、言ってしまえば“便利屋さん”として活躍しています。
したがって、生活相談員の仕事内容は多岐に渡り、利用者との相談・契約業務はもちろんのこと、利用者一人ひとりに沿ったケアプランなどの書類作成といった事務作業、ケアマネや介護士の窓口としての役割、施設長のサポートの裏方部分も担い、更には表舞台となる介護現場の仕事を兼任することも少なくありません。時には利用者の送迎であったり、人手不足の職場ではイベント行事の企画も任されたりしているそうです。
上記のように、生活相談員の役職位置というのは、介護の職場において“中間管理職”のような立場であることが分かります。その為、介護職員の間に立つことが多いとされ、かつ職場内だけでなく利用者やその家族からの相談業務も請け負うため、“人間関係”から生じるストレスが、どうしても溜まりやすい立場であると言えましょう。
それでは、生活相談員のストレスが溜まりやすい、具体的な原因について追及していきましょう。
生活相談員の主な本来の業務内容は下記になります。
実際にはこれに加えて、介護現場の仕事も兼任していることが大きな心身的負担となっています。上述したような本来の仕事のみであれば、比較的ストレスを感じずにこなすことができるのですが、法令上でも生活相談員の業務内容に規定はない為、人手不足や職場の職員の配置によって、または経験によっては、業務の幅が著しく広がってしまうのです。
多くの生活相談員は、現場の様子を見ながら相談や事務作業、他職員のサポートをします。簡単そうに見える事務作業も、使い回しができる資料作成ではなく、利用者一人ひとりに応じた内容の資料やケアプラン作成をする必要があるため、常に気を遣っていかなければなりません。介護の現場へも駆り出されるため、精神的にも肉体的にもハードな仕事であるのです。
介護の現場の仕事を減らせば、介護士達から「人手が足りないのに何で手伝わないの」と不平不満が出てしまい、本来の相談業務を疎かにすれば、施設長などの上司に怒られてしまいます。双方のバランスを取るべく、全ての業務をこなそうとするあまり、残業や休日仕事は日常茶飯事となり、ろくに休めない環境はストレスが溜まりやすくなります。中には、残業手当や休日手当がきちんと支給されない職場もあり、労働の対価という結果に対しても、モチベーションが下がっています。
生活相談員は、介護士のように施設内に複数人居ることは稀であり、職場内に“一人だけ”ということも少なくありません。その為、職場で気軽に相談ができる人もいないまま、疎外感や孤独感を感じてしまう方が多いようです。そのような環境で、上記で述べたような膨大な業務を一人でこなし、解決していかなくてはならないのですから、生活相談員という仕事がいかに大変か、理解できるというものでしょう。
一般的な対処法として、同僚と相談しながら業務をしたり、仕事を分担し合うなどで、個人の心身的な負担を減らすことができますが、生活相談員はそういった対応も難しい為、どうしてもストレスを溜め込んでしまうとされます。
生活相談員は「利用者」と「職員」、「職員」と「職員」をつなぐ役割を担っているため、人間関係において気苦労が絶えません。
中でも、重要な業務となる「相談業務」では、利用者やその家族と、直接対面して相談を受けることになります。利用者からの相談だけでも神経を遣いながら話を聞くのですが、長く仕事をしていれば、時にはクレームや理不尽な要求を直接受けることがあります。いくらワガママだと思っても、ある程度は仕事だと割り切って、常に笑顔でいる必要もあります。つまり、精神的にかなりタフなタイプでないと、生活相談員は務まらないということです。
とはいえ、いくら忍耐力がある生活相談員の方でも、人と“コミュニケーション”をとる仕事である以上、利用者からのクレームなどを繰り返し受けてしまったら、精神的にも参ってしまいます。更には、生活相談員が担う重要な業務として、介護士・ケアマネ・看護師・利用者・利用者の家族・行政・施設や運営のお偉方などと打ち合わせをし、意見のすり合わせ・調整などの仕事が挙げられます。これだけの色々な価値観を持つ人の間に入って、中心的な役割を担う生活相談員の気苦労は、言葉では言い表せない程です。施設長などの上司からも、現場の介護士達からも、あらゆる意見や愚痴を好き放題に言われたり、不満などのマイナス感情をぶつけられる対象とならざるを得ないのが、生活相談員という立場の難しさなのです。
では、肝心の生活相談員におけるストレス解消法をご紹介します。それぞれにピッタリの解消法で、少しでも働きやすい環境を目指ししてください。
介護現場の全ての業務を引き受けていては、到底ストレスの解消には繋がりません。施設長などと話し合いをして、日々の業務の優先順位などを決めていきましょう。メインとなる生活相談と他業務を兼任する“時間”を決めたり、優先しなければならない事がある場合には、しっかりとしたタスク管理を心掛けるようにします。
本来の生活相談員として、やるべき事ができていないのでは意味がありませんので、場合によっては“きちんと断ること”も大切です。仕事の効率化は、ストレスを溜めないうえでとても重要ですよ。
生活相談員の方は、人一倍責任感が強い方が多く、一人ですべてを背負いがちです。現場に出る際には、周りの職員との交流を意識的に深めてみてはいかがでしょうか。そうすることによって、周囲の協力を得やすくなったり、指示や提案に対して反発されてしまうことが少なくなり、仕事全体が前向きな方向に進みやくなります。
また、可能であれば、たった一人でもいいので“相談に乗ってくれる、信頼できる人”を作りましょう。これは職場内外問わず、“個人的な悩みを話せる相手”がいる、ということが心の支えになります。
生活相談員の方は、その責任感の強さから、全ての相談や業務に手を抜かず、真剣に向き合う傾向にあります。それは大きな長所と言えますが、時には自分の為にも、聞き流すことや受け流すことを覚えてみませんか。適度に肩の力を抜いて、バランス良く業務に取り組んでいくことが大切です。
勿論、適当に物事を進めていくというわけではありません。膨大な仕事量の中でも、上述したように優先順位を決めるなどして、柔軟に対応していくような姿勢を忘れないようにしましょう。
毎日の仕事に忙殺されていると、何を目指して生活相談員をしているのか忘れてしまいがち。生き生きと働き続けるためには、「施設長になる!」といったような具体的な目標を持って、生活相談員を足がかりに、どのようなキャリアを築いていきたいのかをイメージして業務にあたることも重要です。
仕事以外の、個人的なプライベート時間を作ることは、精神衛生上とても大切です。24時間365日仕事のこと考えていては、ストレスが蓄積される一方となってしまいます。勤務時間の調整や休暇制度を活用し、仕事とプライベートを両立させてストレスを発散していきましょう。
極度のストレスで限界を感じているような生活相談員の方は、働くことができない身体になる前に、転職を視野に入れてみることもオススメします。他介護施設での生活相談員の求人を閲覧することで、今の職場との待遇の比較ができます。自分の置かれている生活相談員としての立場はどのくらいの収入位置で、好待遇を受けることができるのかといったことに気付くきっかけにもなります。
また、介護施設では生活相談員の配置が義務付けられているため、急に辞められては施設側は困ってしまいます。それだけ重要なポジションだからこそ、上司に転職を示唆してみるというのも手です。より働きやすい環境へと変える為の相談に乗ってくれることも、十分期待できます。
ここで、ストレスの限界により“転職”の選択をお考えの生活相談員の方へ、注意すべきポイントをご紹介します。
業務量の多さが原因で転職を検討している生活相談員の方は、相談員業務に専念できる職場を希望される方が多いかと思います。しかしその際には、介護現場の業務を行わない以上、当然ながら「介護職員処遇改善加算」は付かず、その分給与は減少してしまいます。
また、キャリアアップという点に関しても、やはり相談員業務以外の兼業が求められてきますので、将来的なことや収入面に不安がある方は、特に注意が必要です。
どのような“生活相談員”になりたいかを思い描くことは、転職を検討する際にとても重要となります。自分の中での“理想の生活相談員像”が固まっていないと、仮に転職が上手くいったとしても、結局は“何でも屋”としての立ち位置を要求され、仕事の優先順位も明確にならないまま業務過多といったような結果になってしまいます。
正社員なのか非正規雇用なのか、相談員の業務に専念したいのか、他の業務も兼業を前提にするのかといったようなことを、きちんとイメージした上での転職を心掛けましょう。
職場内の人間関係に悩まされて転職を決意した方は、出来る限り転職先の雰囲気を掴んでおくことが、転職に失敗しないコツです。また、当然ながら見た目だけではわからないことはたくさんあります。転職支援サイトなどを利用して、介護業界に詳しいコンサルタントに、転職を希望する介護施設で働く職員にはどのような人が多いのか、どんな考え方で介護しているのか、といった点を尋ねてみて下さい。現場の職員の人となりといったものが、どういった傾向にあるのかが、おのずと見えてくることでしょう。
このようなポイントに気を付けながら、自分の希望条件を整理して前向きに転職活動をして下さい。
実は、介護施設が特に求めている人材が生活相談員となります。これまで説明してきたように、業務量の多さやその中間的な立場の辛さなどから、人気職とは言い難い面があります。介護施設によっては、生活相談員の配置義務が定められているため、人手不足に悩む施設側にとっては、早めに人材確保をしたいというのが本音なのです。
このような現状から、生活相談員が転職を希望する場合、給料面や待遇面の交渉には大変有利とされており、給料や手当を上げてでも、人手不足の介護現場で活躍ができる生活相談員を求めている、といった施設も少なくありません。もちろん、パートでの生活相談員も有効求人倍率としては高く、勤務時間や勤務日などの希望も通りやすい傾向にあります。
損な役回りが多い生活相談員ですが、出来る限り待遇面などの妥協はせずに、快適な職場を探すことをオススメします!無理を重ねてストレスを溜めるよりも、生活相談員として正当に評価してくれる職場で活躍しましょう。