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訪問入浴のサービスについて利用条件から費用まで徹底解説!入浴事故の予防・対策も!

いつも清潔な状態でいたいのは介護を必要とする高齢者も同じであり、最低限の欲求でもあります。しかし、病気などで自力で入浴できなかったり、相当な体力を必要とする入浴介助は家族だけの介助ではなかなか難しかったりと、入浴に関して悩まれている方も少なくないでしょう。
そんな悩みを解決してくれるのが今回ご紹介する“訪問入浴”のサービスです。訪問入浴は単に身体を清潔に保つだけではなく、身体の状況把握もできる便利な介護サービスになります。ただし、どなたでもこの訪問入浴のサービスを利用できるわけではなく、サービスを受けるためにはいくつかの諸条件をクリアしなければなりません。そこで今回は訪問入浴のサービスについて詳しい利用条件や気になる費用面について解説していきます!また、高齢者一人での入浴がどれだけ危険なのかについても入浴事故の事例をもとに注意すべきポイントも取り上げていますので、どうぞ最後までご覧ください。

訪問入浴介護サービスって?

訪問入浴とは専用の移動入浴車で看護師1名と介護職員1~2名で、病気や怪我、障がいなどにより自力で入浴が難しい方の自宅に訪問し、専用の浴槽を使って入浴のサポートを行う介護サービスです。
訪問入浴の役割として、安全な環境で身体を清潔に保ち、血液循環、代謝機能の促進、皮膚を清潔にして細菌感染や床ずれの予防・解消など、より良い健康状態へと導きます。また、入浴によるリラックス効果や爽快感を得ることにより、心身の気分転換にも繋がります。さらに温浴効果から快適睡眠もとることができるなど、精神的な効果も期待できるものとして入浴時間の提供を行っています。事業所によっては天然温泉や炭酸温泉、季節感を出した入浴法など、入浴療法でも注目されているサービスを行っている施設があるなど事業所によって特色が変わります。

とくにこんな方に訪問入浴サービスはオススメ!

では、どんな方が訪問入浴のサービスを受けたほうが良いのでしょうか?

特に上述のような方は、看護師による入浴前後の健康診断も行われるため、訪問入浴のサービスを受けることをオススメします。
実は入浴という行為は単に心身が癒されるだけでなく、健康な人であっても身体的負担はかかっています。介助自体に不慣れな家族が行ってしまうと、転倒など予期せぬ事故を引き起こしてしまうこともあり、本人や家族の負担がより大きくなってしまいます。少しでも介助の負担を少なくするためにも訪問入浴サービスを活用してみてはいかがでしょうか。

訪問入浴サービスの利用条件と利用までの流れについて

ただし、冒頭でも述べたとおり“必要としている誰もが”訪問入浴サービスを利用できるわけではありません。下記の条件を満たしている方に限りますのでご注意ください。

訪問入浴サービスの利用条件
・要介護度1~5の認定を受けている
・医師から入浴を許可されている

※要支援度1,2の方向けには“介護予防訪問入浴介護”という「自宅に浴室がない」「他施設での入浴が困難」などの条件付きで訪問入浴を受けることのできるサービスがあります。

したがって、訪問入浴サービスを受けるためには、まずはかかりつけ医に相談してみるのが良いでしょう。

訪問入浴サービス利用までの流れ
①各担当のケアマネージャーに「訪問入浴サービスを利用したいこと」を伝える
②ケアマネージャーが“訪問入浴利用可能な事業所”を探し契約
③ケアマネージャーが作成するケアプランに訪問入浴のサービス利用を記載
④訪問入浴サービスの利用開始

これまでに介護サービスを一度も利用したこのない場合は、まずケアマネージャーへ相談することから始まりますので、近隣の役所の介護保険窓口や地域包括支援センターへ出向きましょう。また、要支援の方の場合は、まずは地域包括支援センターへ相談しましょう。

訪問入浴サービス ―当日の流れ―

一般的な訪問入浴サービスの一日の流れとしては、下記のとおりとなっています。

「全身浴・部分浴・清拭」の違い

全身浴
一般的なお風呂に入ると同様な入浴方法
部分浴
洗髪や陰部洗浄、手足のみなど身体の一部をお湯につけることできる入浴方法
清拭
暖かいお湯でしめられたタオルで身体を拭く方法

これらをその日の心身の状況に合わせて行います

入浴に使用する水について

訪問入浴で使用する水の一部は事業所側が持参する場合もありますが、基本的にはご家庭の浴室やトイレの水道水を使用することになります。

部屋の広さ

浴槽を運び入れ、ベッドから浴槽へと移動を行う為それなりの部屋の広さが必要なのかと不安になれる方もいらっしゃるかと思いますが、部屋は2~3畳ほどの広さがあれば十分となります。

他サービス

訪問入浴ごとのサービスによっては、入浴後に健康チェックとともに「保湿ケア」「爪切り」「シーツ交換」等を行っていることもあるので各事業所を確認にしましょう。

訪問入浴サービスにはどのくらいの費用がかかる?

訪問入浴サービスにかかる費用はまず「要介護」か「要支援」かで違いがあり、さらに「入浴したい」「できる部分」によっても費用に差がでます。
これには要支援の方には「要介護にならないための介護予防をする」という目的から可能な限り自分の力で入浴動作を行うことが重視とされており、看護師・介護士の人数も少なく人件費がかからないのです。

介護度 洗浄範囲 1回あたりの費用
要介護1〜5 全身浴 1,250円
部分浴 875円
清拭く 875円
要支援1・2 全身浴 845円
部分浴 592円
清拭く 592円

※介護保険1割負担の場合の自己負担額です(所得により2〜3割負担の場合あり)
※お住まいの地域により変動します。

上表は訪問入浴サービス費用の目安となりますが、訪問する職員に看護師がいない場合や要介護者の訪問入浴を2名(看護師1名、介護スタッフ1名)で行う場合には“減額”がされます。一方、地域加算や介護職員処遇改善加算など各種加算がある事業所を利用した場合には“増額”されます。このように基本的には、介護保険によって費用の基準が定められていますが、加算内容などが事業所ごとに異なりますので、サービス利用開始前に確認しておくと良いでしょう。

訪問入浴サービスにかかる時間について

訪問入浴サービスにかかる時間は、多くの事業所では40~50分前後で準備から片付けまで行っています。また、入浴後に爪切りや保湿ケアなど行う際には延長することもあります。

  サービス内容 時間
入浴前 健康チェック・浴槽の準備・脱衣 約15~20分
入 浴 入浴介助 約10分
入浴後 健康チェック・浴槽の片付け・着衣 約15~20分

健康チェックの内容としては、看護師による入浴前後の血圧・脈拍・対応などの確認を行っています。

介護をする際の【ご家族向け】入浴介助の注意すべきポイント

ここからは訪問入浴サービスを利用せず、ご家族で入浴介助をする場合に注意すべきポイントをご紹介します。
中には訪問入浴の利用条件が合わなかったり、経済的な理由でサービスの利用ができない場合、家族で入浴介助をしなければなりませんが、入浴介助は非常に時間や体力が消耗するためコツが必要になります。
そこで、ご家庭での入浴介助のポイントを”入浴前後””入浴中”とシーン別にご紹介しますので、ぜひ参考にしていただき、介護をするご家族の方にとっても楽しい入浴時間としましょう。

入浴前のポイント

入浴中のポイント

入浴後のポイント

【2019年度最新】入浴中の事故事例

いくら入浴介助の際に注意払っていても、入浴中に事故が起きる可能性をゼロにすることはできません。それは一般家庭だけではなく介護を専門とする介護福祉施設であっても入浴中の事故が起きてしまうこともあります。

通所介護施設で96歳が溺死、入浴時に職員離れ 名古屋
名古屋市北区鳩岡町1丁目の社会福祉法人「愛生福祉会」(増井勇夫理事長)が運営する通所介護施設で1月末、96歳の女性利用者が入浴中に溺れて死亡する事故が起きていたことが、法人などへの取材で分かった。法人は愛知県警や名古屋市に事故を届け出た。事故があったのは、名古屋市東区筒井1丁目の「デイサービスセンター筒井」。法人や施設によると、女性は1月31日正午前、職員の介助で、車いすに座った状態で利用できる浴槽に入った。入浴の際は職員が付き添わなければならなかったが、他の利用者も気になって浴室を離れたという。別の職員が約2分後に浴室を見たところ、女性は顔が浴槽内のお湯につかった状態で、ほぼ意識がなかったという。女性は搬送先の病院で死亡した。
引用出典:2019年3月19日 朝日新聞デジタル

当時この通所介護施設の利用者は27名、職員人員体制も基準を満たす6名で対応していたとされています。体制としては整っていたものの“少しなら目を離してもいいだろう”という「慣れ」という慢心が引き起こしてしまった事故だといえます。

入浴介護中、86歳女性が溺死 川口の福祉施設、車いすのまま入浴 介護士、次の入所者の介助で目を離す
川口市西新井宿の介護老人福祉施設「川口かがやきの里」(中沢修施設長、定員120人)で7月30日、入居者の女性(86)が入浴介護中に意識不明となり、死亡する事故があった。武南署によると、1日の司法解剖の結果、死因は溺死と分かり、同署は業務上過失致死容疑を視野に捜査を進めている。
引用出典:2018年8月1日 埼玉新聞

介助していた介護士が、次に入浴する入所者の脱衣介助するために目を離してしまった際に溺水させてしまったとされます。

90代夫婦、風呂場で倒れて死亡 認知症の妻を夫が介護
12日午後9時半ごろ、東京都大田区南馬込4丁目の無職野沢三四蔵(みよぞう)さん(93)宅で、三四蔵さんと妻チイさん(90)が風呂場で倒れていると、同居している長男(60)から119番通報があった。2人は搬送先の病院で死亡した。警視庁によると、2人は浴槽内で衣服を着けずに倒れていた。長男の話では発見時、浴槽に顔が入った状態だったという。人は長男との3人暮らし。チイさんは認知症で、三四蔵さんがチイさんを介護しながら入浴するのが習慣だった。入浴は普段1時間ほどだが、この日は2時間が経過しても出てこないため、長男が見に行くと倒れていたという。2人に目立った外傷はなく、池上署は死因を調べている。
引用出典:2019年1月13日 朝日新聞デジタル

またどういった経緯なのかなど詳細なことが分かってはいませんが、老々介護の状態での入浴はかなり危険だということが明らかとなった事故ですね。これらの入浴中の事故事例の見方としては、事故の前兆がなく、日常の一コマだったとしても、入浴中は入浴介助の職員、もしくはご家族は常に緊張感を保ち、細心の注意を払うことを忘れてはいけないことを肝に銘じる必要があることがわかります。
命を失なってしまっては”うっかり”では済まされません。入浴前後、最中は必ず目を離さずに、”もしかしたら事故が起きてしまうかもしれない”と常に意識しておくことが大切です。

【2019年度最新】入浴事故の現状と入浴中急死のメカニズム

つづいて入浴事故の現状と具体的な入浴中の事故対策をご紹介します。AIの進化や介護技術の高まりをみせる現代ですが、高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による死亡者は未だ増加傾向にあり、その中でも自宅や居住施設の浴槽における事故が大半を占めています。

入浴中の死亡事故が増えていることはグラフを見ての通りとなりますが、「後期高齢者」の死亡者数が飛躍的に伸びしまってることが下図を見て分かります。

入浴中急死のメカニズム

入浴中の急死のメカニズムは、身体が気温や室温、湯温などの温度や水圧の影響を受け、心・血管反応や発作が起こり意識障害が現れてしまうことが発端となる可能性が考えられます。
特に高齢者は体力も内臓機能弱っていることから、意識障害が起こってしまった場所が浴槽内なら心疾患や溺死事故に、浴槽以外の浴室ならば転倒や湯あたりの事故に繋がることになるでしょう。
法医学の観点からも入浴中の急死の三大原因は①虚血性心疾患などの心疾患②脳血管障害③溺死となっており、このうち心臓疾患が半数以上を占めるとされています(日本法医学会企画調査委員「浴槽内死亡事例の調査」より)。ちなみに、急死に繋がることの多い溺死での救急搬送者が多い季節は下図のとおりとなります。

このように11月~3月にかけての冬場が一番気温の寒暖差が激しくなりヒートショックの症状が多発し、集中して溺死事故が発生しているとみられます。また、夏場はシャワーのみで入浴を済ますケースが多いため、搬送者数も少ないことが考えられます。

入浴事故リスクを避ける予防策とは?

増え続ける入浴事故ですが、そのような事故を引き起こさないように前もって対策しておくことが重要です。まずは高齢者を一人で入浴をさせないこと。そして下記のポイントを予防策として実行し、入浴習慣を見直していきましょう。

入浴事故の10個の予防策ポイント

さらに、下記は入浴事故の分かりやすい予防・対策法の動画ですので、ご参考にどうぞ。

浴室の構造・環境にも入浴事故のリスクが隠されています!

入浴事故は必ずしも高齢者本人の体調や介助者の不注意ばかりが原因ではありません。浴室の構造や環境自体にも問題があり、事故を起こすリスクが高めてしまうことが挙げられます。では、一体どのような浴室が入浴事故の危険が高いのか?詳しく見てみましょう。

お湯を計る“温度計”がない

身体がお湯に浸かり、体温が暖まると、脈拍や血圧が上がっていき、血管などに負担がかかっていきます。そのため、高温のお湯が身体に与える負荷は大きく、適温である41度以下かかりつけ医が薦める温度にする必要があります。温度計がないと重要な温度が分からないため、一目で適温が分かるように温度計を使用するようにしましょう。

暖房設備が整っていない

冬場の室温は、リビングなど部屋が部屋が暖かくとも廊下や脱衣所、浴室は冷えていることが多く、服を脱いで、気温が低い浴室に入ることで、血圧や脈拍に変動が起こり、心筋梗塞や脳梗塞になる所謂ヒートショックを起こしてしまう危険性があります。中でも築年数が古い家では機密性も低く部屋と浴室の温度差が開きやすくなっています。したがって、必ず脱衣所や浴室をよく温めてから入浴することをオススメします。

時計がない

案外見落としがちなのが“時計”の存在です。入浴事故リスクの回避策として、入浴時間の調節や脈拍数の自己測定も非常に有効になります。入浴時間は短ければ短いほど事故リスクを避けることができます。高齢者の方の脈拍が上昇してしまうと何らかの疾患や障害を持っていると悪化してしまう恐れがあるため、防水の時計があると大変便利になります。

浴室や脱衣所の床が滑りやすい

水で滑りやす床は転倒の原因となり非常に危険です。少しでも転倒リスクを減らすために滑り止めや滑りにくい素材のリフォームする等の対策を講じましょう。

手すりや掴まるところがない

身体を洗うために座ったり、浴槽に浸かる際に立って跨いだり座ったりと意外にも多く動作が必要となります。簡単な動作のようですが、筋肉が衰えた高齢者にとってはひと苦労で、加えて浴室は上述の通り滑りやすくなっています、そのため動作の補助の為にも手すり等の設置がないと転倒の危険性が上がってしまいますので、高齢者の目線に合った場所に手すり等の補助を設置することをオススメします。

まとめ
いかがでしたでしょうか。高齢者の方の中には見ず知らずの他人に身体を触られたり、見られることが嫌で、入浴サービスを拒否をしてしまう場合も少なくはないかもしれません。
しかし、身体的にも精神的にも入浴は生活上とても大切な行為になるので、快適な入浴時間となるように、入浴介助スタッフとの相性も考慮して、ケアマネージャーやサービス事業所に「スタッフの性別は選べるのか」「どのようなスタッフが入浴介助を行うのか」と事前に確認しておくと良いでしょう。
ちなみに訪問入浴のお仕事をしたい看護師・介護士の方は、なによりも利用者が快適にリラックスできる空間作りを心掛けましょう。また、事故リスクを高めない為にも利用者からは目を離さず、チームメンバーと協力し合いながら介助を行いましょう。訪問介護の場合、1日6~7件ほどの利用者宅を回りますが、利用者一人ひとりに対して丁寧な介護を行いたい方にとっては、とても働きやすい環境といえるでしょう。