介護の仕事の中でも意外と経験やコツを必要とするのが、「おむつ交換」です。
はじめは少し心理的にも抵抗があったり、必要以上に時間がかかってしまったりで、おむつ交換が「うまくいかない」「早くできない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。2013年に内閣府が行ったアンケートでも、高齢者の介護で一番苦労したことで最も多かった回答は、排泄介助となっていて、全体の62.5%を占めているのです。
今回の記事では、介護おむつ交換の正しいやり方や、上手くいくコツについてご紹介していきます。スムーズなおむつ交換ができるようになれば、介護する側にとっての負担が軽減され、利用者の方にも不快感を与えず、快適に過ごしてもらえるようになるでしょう。
介護おむつを使用するかどうかは、利用者の方々からすれば、とても大きな問題です。
たとえば、トイレに行くためにベッドから起き上がって歩行することは、介護される側にとって身体的な負担がかかります。その負担を少しでも減らすために、介護者は介護おむつを使用した方がいいと判断しがちですが、安易に介護おむつの使用を提案した結果、時には利用者の方の尊厳やお気持ちを傷つけてしまうことがあるのです。また、おむつの使用は皮膚トラブルの原因や座った時の姿勢に影響するなど、心身ともに利用者の負担につながるリスクが潜んでいることにも、注意が必要なのです。とはいえ、トイレに行きたいと思っても身体が思うように動かず、排泄が間に合わないなどのトラブルが起きたときに、一番ショックを受けるのは利用者本人です。寝たきりの方や、認知症が進んでいる方はもちろん、失禁のリスクがある方や外出の際に不安感がある方など、自分の意志でトイレに行くのが難しいという方には、おむつとの上手な付き合いが必要になるでしょう。
介護おむつを正しく使用することにより、起き上がる際の身体の負担を軽減させることができたり、転倒のリスクを減らせることもできます。そのほかにも、安心して外出することが出来るようになる、夜も安定した睡眠が確保できるなどメリットもたくさんあります。
介護おむつのメリット |
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・失禁や外出に対する不安の軽減 ・トイレ移動などの動作負担の軽減 ・介護者にとっても、トイレ介助の負担が軽減されます |
介護おむつのデメリット |
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・利用者の自尊心を傷つけてしまう可能性 ・皮膚トラブルや自立支援の妨げになることも ・費用面における負担が増す |
介護おむつを使用する上で、正しい使用方法を理解することはとても大切です。介護おむつの機能をしっかりと発揮させるためにも、いまの使用方法が正しいか一度確認してみましょう。介護おむつを使用の際に注意すべき点を挙げましたので、以下をご参照ください。
1.おむつの重ね使用をしていませんか? |
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排泄物の漏れの不安から、おむつを何枚も重ねて使用する方がいらっしゃいます。しかし、おむつは何枚重ねても効果の補強にはつながりません。それどころか、パッドの重なりから隙間が出来てしまい、そこから漏れが生じてしまうことがありますし、利用者の方にとっては動きにくく不快に感じてしまいます。 |
注意ポイント! ・重ね付けで吸収機能や防水機能は補強されない・ごわごわして蒸れなどが生じ、かえって不快感がある ・ごわごわして蒸れなどが生じ、かえって不快感がある |
2.サイズの合っていないものの着用はしていませんか? |
漏れやずれを気にして小さいサイズを着用すると、被介護者の方にとっては不快感があり、また肌トラブルの原因にもつながります。また、吸収量を気にして大きいサイズのものを選ぶとずれや漏れの原因になります。一人ひとりに合ったサイズを着用する事によって、被介護者の方にとってだけではなく、介護する方の負担軽減にもつながります。 |
注意ポイント! ・おむつのタイプや製品によって、サイズの範囲が異なります ・パンツタイプとベルトタイプはウエストを、テープタイプであればヒップのサイズを測定しましょう |
3.おむつを引っ張って位置の調整を行ってはいませんか? |
寝返りなどにより、おむつがずれてしまった場合に、強引に引っ張って位置を直すと、肌トラブルの原因になります。また、おむつがヨレてしまったり破損の可能性もあります。おむつの位置の調整を行うのであれば体位交換で行い、無理に引っ張ってしまうようなことは止めましょう。 |
注意ポイント! ・高齢者の肌は弱っており、おむつを引っ張って調整などをすると、肌トラブルにつながります |
4.夜中におむつを交換をしていませんか? |
年齢を重ねる中で睡眠は浅くなると言われています。夜中に目が覚めてしまったり、起きる時間が早くなってしまったりと睡眠障害がおこりやすい状況です。そんな中、夜中におむつ交換を行うと被介護者の方の睡眠を妨害してしまったり、場合によっては昼夜逆転の生活リズムになってします恐れもあります。睡眠中におむつ交換をしなくても、安心できるような吸収量のおむつを選ぶといったことも大切です。 |
注意ポイント! ・高齢者の方は睡眠が浅くなるので、夜間のおむつ交換には十分な注意が必要 ・夜間の排尿量に対応できる吸収量のおむつなどを、正しく使用しましょう |
5.尿とりパッドを男性器に巻き付けていませんか? |
尿とりパッドを男性器に巻き付ける事は肌トラブルの原因になります。また、被介護者の方不快感に繋がりかねません。女性と男性ではパッドのつけ方に違いがあります。この違いをしっかりと理解した上で着用すれば、男性器に巻き付けなくても尿取りパット一枚で十分に尿漏れを防ぐことが出来ます。 |
注意ポイント! ・現在は、巻かずに使える男性用尿とりパッドも発売されております |
ではさっそく、おむつ交換をスムーズに行う為の流れとポイントを紹介していきます。
上記では、おむつの交換の仕方について注意すべきポイントと合わせて確認してきました。
しかし頭で理解できても、実際に体をどのように動かすのか、言葉だけでは伝わりにくい部分もありますよね。そこで、これからご紹介する動画をもとに、おむつ交換を実際に行いながら、分かりやすく解説していきます!とても参考になりますので、ぜひご覧ください。
以下の動画では、女性の被介護者の方を対象とした、おむつ交換の方法を紹介しています。
先程説明しましたとおり、男性と女性ではパッドのつけ方に違いがあることに注意しつつ確認してみてください。
こちらは男性の被介護者の方を対象とした、おむつ交換の方法です。
男性と女性、それぞれのパッドのつけ方の違いが理解できましたでしょうか。
最近では紙おむつが主流になってきていますが、布おむつを使用してる介護施設や病院もまだまだあるのではないでしょうか。
紙おむつは吸水性に優れており、安心感があるものです。しかし肌トラブルなどの理由から、吸水性では劣るものの通気性や肌技りもよいと好まれているのが、布おむつです。紙おむつと布おむつどちらにも、それぞれメリットとデメリットがありますので、被介護者の状態などを加味しつつ、上手に使い分けることが大切です。ここでは、そんな布おむつの使い方について紹介していきましょう。
1.大人用布おむつは3枚使います。 |
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すべて縦半分の大きさに折り曲げ、おむつカバーの背中ウエスト部分に、横向きに1枚置きます。 |
2.そしてもう一枚を、縦に置きます。 |
残りの1枚は、男性の場合は性器をくるむ為に、女性の場合は尿道から仙骨までに厚みを持たせる為に適当な大きさで当てます。 |
3.縦に置いた布おむつを腹部に引き上げましょう |
そして横に置いた布おむつでウエストをくるみ、端は陰部方向に斜め下向きにあてます。 |
4.腹部に引き上げた縦の布おむつを折り返して陰部を包むようにしましょう |
最後に布おむつがはみ出ないようにおむつカバーをして完成です。 |
※施設や病院等によって、各おむつの当て方は若干異なることもあります。