少子高齢化が急速に進む現代において、介護職員の人手不足は非常に大きな問題となっています。今や介護職員の有効求人倍率は3倍を超えており、積極的に採用活動を行っても、容易に有資格者や経験者を確保できる状況ではなくなっています。そのような状況下で介護サービスを提供する企業の中には、研修制度を充実させ、未経験の介護職員の採用を積極的に行っているところが増えてきています。事実、両親の介護をきっかけに介護業界への転職するといった、未経験から介護職へチャレンジする方も増えてきているそうです。
この記事では、介護職にキャリアチェンジしようと考えている方に向けて、具体的な介護の仕事内容や、就職するときに役立つサービス内容についてもわかりやすくご紹介していきますので、ぜひ参考にして下さい!
介護の仕事は、介護施設の分類や方針によって、仕事内容が変わってきます。
最初に介護施設の分類や方針について把握していきましょう。
介護施設は、主に社会福祉法人や自治体などが運営する公共型の介護保険施設と、民間の事業者が運営する2つに分類することができ、その中で介護者の介護度によって入居する施設が異なります。
介護度とは、介護者が介護サービスを受けるために「どのような介護がどの程度必要になるのか」要介護認定の判定を必要とし、市町村の介護認定審査会において判定されることになっています。
更に詳しく説明すると、要介護認定には「要支援」「要介護」の2つがあり、要支援は1~2、要介護は1~5の計7段階で分けられ、介護者の心身の状態や生活環境に応じて判定されています。例えば、特別養護老人ホームであれば要介護3以上の方が入居していたり、介護付き老人ホームであれば大きな制限などがなかったりと、施設によっても様々な入居者の方がいます。
こうした介護者の介護度をベースとして、在宅での生活が困難な要介護者が入居する「特別養護老人ホーム」、自治体の認可を受けて運営する「介護付有料老人ホーム」、医療やリハビリを必要とする要介護者が入居する「介護老人保健施設」、認知症高齢者を対象に少人数で共同生活する「グループホーム」、一時的に施設に入所して介護サービスを受けることができる「ショートステイ」、軽度の要介護高齢者が入居する「サービス付き高齢者向け住宅」などに介護施設は分けられています。
就職を希望する施設には、どのような介護者の方が入居しているか、しっかりと確認しておきましょう。
どの介護職を選択するかにもよりますが、介護者の介護度や、その介護度に応じた介護施設に種類があることなど、基本的なことだけでも知っておいて損はありません。
介護度に関する要介護認定の基準についても基本を押さえておくと役立ちます。
〈要支援〉 |
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・要支援1 日常生活において、基本的なことの大半は自分で行うことができるものの、部分的に介助が必要とされる状態。適切な介護サービスを受け、要介護状態になるのを予防します。 ・要支援2 要支援1に比べて、歩行などの運動機能に若干の低下が見られたり、立ち上がったりするのがやや困難で介助が必要とされる状態です。要支援1と同様に、適切な介護サービスを受けることで、要介護状態になるのを予防します。 |
〈要介護〉 |
・要介護1 身の回りのことは大半ができているものの、要支援2に比べ、運動機能、認知機能、思考力、理解力が低下しており、部分的に介護が必要な状態です。 ・要介護2 要介護1に比べ、日常生活を過ごしていくうえで混乱や理解力の低下が見られ、食事や排せつなど、身の回りのことについても介護が必要な状態です。 ・要介護3 立ったり歩いたり、食事や排せつなどが困難となるほか、いくつかの不安行動や全般的な理解の低下が見られ、身の回りのことについての大半の介護が必要な状態です。 ・要介護4 要介護3と比べ、日常生活を送るうえで必要な基本的な動作の能力が低下し、日常生活全般に介護が必要な状態です。 ・要介護5 一人で日常生活を送ることは困難な状態にあり、コミュニケーション、食事、排せつ、着替えなど、生活のあらゆる面で介護が必要な状態です。 |
次に介護職にはどのような業務内容があるのか、より詳しく紹介していきます。
介護職の業務内容は、主に介護者の身の回りのお世話をして自立支援を行う介護福祉士や介護ヘルパーをはじめ、介護者の心身の状態を確認してケアプランを作成するケアマネージャーや、介護給付費明細書や請求書などを発行する介護事務の仕事などが挙げられますが、一口に介護職と言っても業務内容や範囲は多岐に亘ります。自分自身がどのような仕事をやりたいのか具体的にイメージできるようになっておきましょう。
介護職の業務内容ついては前述したとおりですが、なかでも介護職の代表的ともいえる介護士(介護福祉士)について、どのような内容の仕事をしているのかご説明します。
介護福祉士は社会福祉専門職の介護に関する国家資格を取得した者のことを指します。介護福祉士の仕事は、介護者の食事や入浴、排泄など、身体的な介助のほか、看護職員とも連携を取り、介護者の健康管理や、理学療法士などのリハビリ専門スタッフと協力しながら、身体機能の維持や回復などをサポートします。
このほかにも、介護者のご家族に様に日々の状況を報告しながら、ご家族から介護者の情報をヒアリングして、介護者とコミュニケーションを図ることも大切な仕事の1つになっています。
次にデイサービスとデイケアサービスについて説明します。
デイサービスとは、通所介護のことで、デイサービスセンターや特別養護老人ホームなどの施設で行います。
仕事内容としては、食事、入浴、レクリエーション、機能維持のための訓練などを行い、利用者の方にとって気分転換になるような環境作りをすることです。
そして、デイケアサービスは、通所リハビリテーションのことで、介護老人保健施設や病院などの医療施設で行います。
主治医の指示のもと、療法士による作業療法や理学療法、ほかにも言語聴覚療法などのリハビリテーションなどを行います。
これまで施設内の介護を中心に説明してきましたが、ここでは介護施設内ではなく、自宅で暮らす介護者の日常生活の援助を行う訪問介護サービスについて説明します。
訪問介護サービスにおける介護は介護保険上「訪問介護員」と呼んでいますが、時間を決めて介護者の自宅を訪問し、介護者の状態の応じて適切な対応をしなければなりません。
仕事の内容としては、排せつ、食事、着替え介助、入浴などの身体介護や、掃除、洗濯、買い物、調理、薬の受け取りなど生活援助などに至るまで、その範囲や内容は介護者やその家族との間で相談して決めることになります。
最後に、病院における介護士の仕事内容は、介護施設の場合とは少し異なります。
病院で働く介護士は、看護助手ともいわれ、入院患者の食事、入浴、排泄、移動などの介助業務を行い、看護師の補助としてサポートする業務が中心となります。
また、介護施設での介護士の仕事とは異なり、患者のカルテの整理や医療器具などの整理など、病院ならではの仕事を担当することが多数あります。
介護の業界では、女性職員の割合が高く、女性が活躍できる仕事して、結婚・出産で退職した後も、復職して続ける人が多いと言われています。介護職は、資格の取得を目指せば更にステップアップできる制度も整ってあり、無資格、未経験から仕事を始めて、介護福祉士やケアマネージャーなどにキャリアアップする人も多くいます。
介護職の経験者に仕事のやりがいは何かを聞いてみると、「介護者や家族から感謝された時」と回答する人は多いようで、「人から必要とされて生きることの充実感」が大きな魅了の1つになっているようです。
介護福祉士に求められる仕事は、高齢者だけでなく、障がいのある方もいますので、介護者が感情をコントロールできなくてイライラをぶつけてきたり、何度も同じことを根気よく丁寧に説明しなければならないこともありますので、しっかりと介護者に寄り添った対応をしなければなりません。
日々の生活の中で介護者に危険が及ぶことがないかを察知し、素早く的確に状況を判断して介護者の負担を少しでも軽減するため、ちょっとした変化に気づくことも必要です。
そのような意味では、忍耐力も必要な仕事になります。
介護職は、特に未経験者にとっては資格・経験の必要か否かは気になる方が多いと思いますが、必ずしも「無資格、未経験だから介護職はできない」という職業ではなく、資格が無くても介護助手や介護補助として活躍している人も沢山いますので、安心して働くことができます。
もちろん介護の専門的な知識があるに越したことはないですが、介護福祉士やヘルパーになることを目指すなら、前提として介護者の立場になって物事を考え、思いやる気持ちを持って接していくことが大切になります。
介護職で役立つ資格としては、介護の基礎知識を学んで実践で活用する「介護職員初任者研修」、介護職員初任者研修の上位にあたる「実務者研修(介護職員基礎研修及びホームヘルパー1級相当)」、介護職で唯一の国家資格となる「介護福祉士(国家資格)」、ケアプランの作成などが出来るようになる「ケアマネージャー」などが挙げられます。
介護の資格のついて詳しく知りたい方は、当サイトのコラム「介護の資格」を併せてお読みください。