介護療養病床(介護療養型医療施設)とはどのような介護サービスを提供している場所なのか、なぜ廃止されようとしているのか、廃止後、入居者の方たちはどうしたら良いのかなど、介護療養病床のこれからについて知りたいと思っている方、介護の仕事に興味があり介護の現状を知っておきたいと考えている方の参考になるようにわかりやすく解説します。
介護療養病床(介護療養型医療施設)は退院して治療が済んでいてもまだ、医療が必要な時がある方を対象に、機能訓練や医療ケアなどのサービスを行う施設であり、特別養護老人ホームや介護老人保健施設と同様に食事や排せつの介助などの介護サービスも提供されます。
では、何故廃止の方向なのかというと、介護療養病床は他の介護施設と違い、医療施設であり、医師や看護師が多く配置されており、医療施設であるにもかかわらず介護保険が適用されるため国の負担が大きくなってしまっていることから進められるようになりました。
「病院」なのに「介護保険」適用という性質が問題視された
出典:厚生労働省
また、介護療養病床は医療の必要性が必ずしも高くない高齢者も利用することから必要性について考えた結果となったようです。
とはいえ、介護療養病床が廃止されると、入居していた方たちはとても困ってしまいます。新たな受け入れ先が考えられており用意することになっていますが、全員がきちんと受け入れてもらえるのか?!介護難民がでてしまうのではないか!?と懸念されているのが現状です。
参考:厚生労働省
介護療養病床のこれまでの経緯は、昭和48年に老人の医療費が無料化になり、高齢者が施設の代わりに病院を利用することが増えてしまったため、その問題を解決すべく、昭和58年に医師や看護師を減らし介護職員を増やした特例許可老人病院が制度化されました。
さらに平成5年、病院で長期入院患者が増え、他の入院の受け入れが困難になってしまうことから長期に療養を必要とする方のための療養型病床群が創設されるようになりました。
平成12年には、介護保険法が施行され、療養病床の一部を要介護者のための介護療養型医療施設(介護療養病床)としました。
また、平成13年には、医療法改正に伴い、上記であげた2つの施設である療養型病床群と特例許可老人病院を1つにまとめ、療養病床としました。
H18(2006) 医療保険制度改革/診療報酬・介護報酬同時改定
介護療養病床のH23年度末での廃止決定
出典:厚生労働省
平成18年には、国の医療費を減らすために、医療施設であるのに介護保険が適用されている介護療養病床に着目し、医療の必要性が低い患者を他の介護施設に移し、平成23年までに介護療養病床を廃止する方向に決まりました。
しかし、介護療養病床からその他介護施設への転換がスムーズにいかず、平成23年に、転換期限を平成29年までに延長することになり、現在も進められています。
慢性期の医療・介護ニーズへ対応するためのサービス提供類型(イメージ)
出典:厚生労働省
介護療養病床廃止後は、医療の必要性が低い方は、介護老人保健施設や特別養護老人ホームへ転換するということになっていますが、医療の必要性が高い高齢者は行き場を失ってしまいます。
そんな方の転換先として、新たな施設創設が考えられています。
それは、住居と医療の機能を合わせた「一体型」というものと、住居の近くに医療機関を置く「併設型」というものであり、いずれも介護療養病床からの転換先としてこれから進められていくことになっています。
介護療養病床は平成29年度末までに廃止ということになっており、今年度末と期限は迫っています。
しかし、平成18年~平成27年までの介護療養病床数は、減少しつつも6.3万床となっておりまだ多く残っています。
療養病床数の推移
出典:厚生労働省
これまでは、医療的ケアをあまり必要としない方の転換などで、順調に減少していたかもしれませんが、医学と介護両方必要な方たちはなかなか転換先が決まりません。
その理由は、介護療養病床の入居者で経管栄養や24時間点滴、喀痰吸引の医療ケアが介護老人保健施設などの他の介護施設よりも頻繁にあり医療と介護両方が充実した施設でなければ転換が難しいからです。
そのような方たちのためには、医療と介護が充実した施設を廃止する前に準備する必要があり、まだまだ廃止するには不十分な状況であると言えます。
介護療養病床の廃止は、3年~4年おきの実態調査の結果に基づき見直しの検討がされるということなので、平成29年度末まででどれだけ入居者を転換させ療養病床を減らせているかにもよりますが、期限延長の可能性もまだあるという事になります。
医療も介護も必要であり、介護療養病床が廃止されたら困る方がたくさんいると思いますが、焦らず今後の措置に期待しましょう。
日本では病院で看とりをすることが他の国よりも多くなっています。
介護療養病床の廃止が進められるにつれ、看とりを自宅で行う方も増えてくるのではないかと思います。
そのため、これから医療と介護が必要な方を在宅で支えられる質の高い介護サービスや、介護職員が求められ介護職の必要性もより高くなることでしょう。
介護の仕事に携わるすべての方が、介護療養病床の廃止について考え今後の介護職のあり方を自分なりに考え今できることや、これからの目標を立てることで、職員や介護サービスの質の向上に繋げられると良いですね。