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生活困窮が原因!?高齢者虐待と高齢者虐待防止法

テレビのニュースなどでも見かける高齢者虐待。
虐待のニュースは見ているだけでも辛いものですが、車椅子生活を余儀なくされていたり認知症を発症したりと様々な衰えのある高齢者に対して行われる虐待は、卑劣極まりない、許しがたい犯罪です。
では、高齢者に対する虐待は、実際にはどういったケースがあるのでしょうか?
また、虐待を防止する策や対処法はあるのでしょうか?
今回は、介護現場でも問題となっている高齢者虐待について、解説していきます。

高齢者虐待は増加している!?

高齢者虐待に関するニュースは多々ありますが、いくつかピックアップしてみましょう。

名古屋市「ケアホームひまわり」 93歳女性ほか 高齢者虐待事件

名古屋市名東区にある「ケアホームひまわり」介護施設(老人福祉法の届出義務を怠っている無届施設)の男性介護ヘルパー3名について、2月21日午後7時55分ごろ93歳の女性入居者の鼻に指を入れる、口に指を差し込み鼻を指で塞ぐなどしたとして、上記介護ヘルパー3人を暴行容疑で逮捕したとの発表がありました。

出典:人となり

被害にあった女性は認知症を発症していたため、事件については「覚えていない」と答えていたそうですが、犯行の動画や男性入居者の下半身を写した画像、虐待を受けて女性が「やめて!」と叫んでいる様子も記録されていたとのこと。
別件で事情聴取を受けた際にたまたまスマホの虐待動画が発覚し逮捕につながった事件ですが、高齢者虐待の恐ろしさと、犯行を防止することの難しさがわかります。
ここで注目すべきポイントは2点!

・認知症を発症していたり痴呆のある高齢者では、被害者自身が虐待されたことを届け出ることが難しい
・介護の現場は他人の目に触れにくいため、第三者による発見が難しい

ニュースで流れたり、実際に犯人が逮捕される高齢者虐待の事件は、氷山の一角なのかもしれません。
被介護者の方が認知症のために虐待されたことを覚えていなかったことが発見を遅らせた、とも書かれていました。

川崎のホーム、元職員に有罪 「あってはならない虐待」

入所者3人が相次いで転落死した川崎市幸区の老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で、別の入所者の女性(当時85)をたたくなどしたとして暴行罪に問われた元職員の渡部拓央被告(29)に対し、横浜地裁川崎支部は18日、懲役8カ月執行猶予3年(求刑懲役1年)の判決を言い渡した。
出典:朝日新聞デジタル

元職員の今井被告が3名の入居者を相次いで転落死させた殺人事件も相当衝撃でしたが、同じく元職員の渡部被告は、高齢者虐待の罪に問われています。
被害者は、認知症と難聴のある女性で、頭を手のひらでたたかれたり、首を手でつかまれるといった暴行を受けていたそうです。
暴行した理由として被告は、「女性に入れ歯を入れるのに抵抗された、文句を言われた」といったことをあげています。
虐待するに足る理由など存在しませんが、実に他愛ない、介護の現場では普通にある状況でしょう。また、被告自身、業務表に沿った分刻みの介護スケジュールに、精神的余裕をなくしていた可能性も示唆されました。
職員の勤怠や状況をある程度把握していたにもかかわらず改善できなかった施設側にも問題があったようです。

高齢者虐待防止法について

高齢者虐待防止法の正式な名称は「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」と言いい、2006年4月に施行されました。

国と地方公共団体、国民の責務、被虐待高齢者の保護措置、養護者への相談・指導・助言などの支援措置を定め、施策の促進と権利擁護を目的としています。
対象となる「高齢者」とは65歳以上(介護を要しない者も含む)で、「養護者」とは家族など高齢者を養護する者を指しています。
高齢者虐待として挙げられるのは次の5つです。

身体的虐待 高齢者の身体に外傷が生じる、又は外傷が生じる恐れがある暴行を加えること。
ネグレクト 高著しい減食・放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置。
心理的虐待 著しい心的外傷を与える言動や行為。激しい叱責(しつせき)や自尊心を傷つけるような罵詈(ばり)、軽蔑,脅迫,差別,拒否など。精神的虐待とも。
性的虐待 性的暴力を含む虐待。力関係の上位にある者が、下位の者に暴力・脅迫を加えて性行為などをおこなうこと。
経済的虐待 高齢者の財産を不当に処分したり、不当に財産上の利益を得ること親族による行為も該当する。

虐待を発見した者は、市町村に速やかに通報する努力義務があります。
特に養介護施設、病院、保健所、医師、保健師、弁護士などは虐待の早期発見に努めなければなりません。
通報を受けた市町村は安全確認をし、必要な場合は地域包括支援センターの職員などによる立入調査や入所措置を講じます。
高齢者虐待の背景には家族の介護疲れがあることを踏まえ、市町村は、養護者の負担軽減に向けた相談支援を講ずることとされています。

経済的困窮が虐待の原因?

虐待の原因として「経済的困窮」が挙げられます。
日常的にお金が少ない、収入が少ない状態が長く続く慢性的な困窮は、高齢者虐待が発生しやすい環境を作り出していると言えます。
家族が自分の食べる分だけでも精一杯であると、介護が必要な高齢者がいても介護サービスを十分に利用出来なかったり、介護に必要な物を買えなかったり、適切な医療を受けられないことがあります。

経済的な部分以外にも養護者は不安やストレスを感じることが多いでしょう。
「認知症がこれ以上進行したら面倒を見切れるだろうか…」、「ぎりぎりで支えている自分がもし失業したらこの先どうなるだろう…」、「給料が今より減ったら…」、「また徘徊してご近所に迷惑をかけたりしないだろうか…」
様々な不安や悩みを抱えながら、日々仕事と介護の両立に負われているご家族もたくさんいると思います。
しかしながら、そんな状態から脱出できず、最適解も見出せないまま日々の介護に追われてしまうと、ある時高齢者虐待に手を染めてしまうという可能性もあるのです。
家族の介護ではなく介護職員として日々利用者のケアをしている方でも、「利用者との折り合いが悪い」、「暴言を吐かれる」、「仕事に心底くたびれる」といったリスク要因が重なると、虐待につ那賀ってしまう場合もあるのです。
環境要因としても、ただでさえ閉鎖的な環境にある介護施設内で、一人ひとりの職員の精神状態や言動、勤務態度を事務所側で把握しケアすることができないと、つもり積もったストレスや鬱憤を利用者へ虐待という形で発散してしまう危険性があります。
高齢者虐待防止法はまさに高齢者を守るためのものですが、養護者を守るための対策がまだ足りていないことが原因の一つになっているとも言われています。

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ケアマネージャーにできること

高齢者虐待に対して、ケアマネージャーにできることはないのでしょうか?
例えば、アセスメントの段階で生活に困っていないと言っていたとしても、高齢者の収入が年金のみだったり、家族が無職又は定職についていない場合は注意しておく必要があります。
実際に介護サービスを利用するにあたって、具体的に充てられる金額を聞いたり、こちらから金額を提示してその反応を見たりして困窮の状態を確認しておきましょう。
十分な介護サービスを受けられなかったり、介護に必要な物を買えない状態は、介護負担が大きく厳しい状況に陥りやすいのです。
介護を必要としている家族に対し、必要なケアをせず放置することそれ自体も、「虐待」の一つ。
経済的にも精神的にも、逼迫した状況になってしまう前に、できるだけ早い段階から、NPOなどによるボランティアの事業を利用したり、相談窓口へ相談し、家計の支出を抑えることで介護負担を軽減させることもできるのです。
他に、医療に関しても、無料だったり低額で受けられる無料低額診療事業を実施している医療機関も存在します。
一度、都道府県に問い合わせてみるとよいでしょう。

経済的に厳しいと精神的余裕もなくなってきます。
例えば、友人と外食をするなどのちょっとしたことが実現できないと、段々と孤独に陥ってしまいます。
相談や愚痴などを聞いてもらい息抜きのできる時間が失われてしまうと、精神的な負担も大きくなるばかりで、周囲に気づいてもらえないまま追いつめられてしまう場合もあります。
家族の介護を強いられている方は、ケアマネジャーとの関係も含め、新しい人間関係を再構築できるように促してあげましょう。
同じように介護に直面している方が身近に1人でも多くいると、介護に関する悩みや苦しみ、介護の中での小さな喜びを分かち合い、支え合いながら乗り越えていく力になるものです。
介護は、一人で抱え込むものではありません。

<まとめ>

高齢者虐待の原因は1つではなく、様々な要因、多くの負担が重なり、そのはけ口や改善策が見出せない状態が続くと危険でしょう。
高齢者のためにも養護者のためにも、介護に携わる方はお互いに同僚のちょっとした変化や状況に目を配り、高齢者虐待防止に取り組んでいく必要があるでしょう。

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