認知症ケアを行う資格にはいくつかありますが、その中でも「認知症ケア専門士」という資格は、より実践域な知識やテクニックを有する資格です。専門知識と経験を存分に発揮できる資格であり、認知症の方本人だけでなく、家族など周りも含めた総合的サポートも視野に入れていきます。認知症の知識があまりない人のためにも、認知症ケアに係る最先端技術や理論を伝える架橋的役割です。高齢化が進む日本において、認知症ケア専門士はまさに注目の資格でしょう。
ここでは認知症ケア専門士の資格について詳しくご説明していきます。ご興味お持ちの人は必見です。
認知症ケア専門士とは、国家資格ではなく日本認知症学会主催の民間資格です。認知症ケアに対する専門知識と高度な技術、論理を持ったエキスパートとして定義されています。
認知症患者に対して、専門的観点から対応できるプロフェッショナルを育成するための資格でもあり、2005年からスタートしました。有資格者はすでに全国に31000人以上にものぼっています。全国分布にはばらつきがあり、2016年8月時点では、保有者が一番多い都道府県は大阪府、次に東京都という順になっています。
認知症ケア専門士は誰でも受けられる資格というわけでなく、実務経験が必要となります。
<受験資格>
認知症ケア関連機関において受験年の3月31日から10年以内に3年間の実務経験があること
認知症ケアの関連機関とは、必ずしも認知症専門の介護施設や病棟でなくても構いません。
ただし認知症の方の受け入れをやっていないと実務経験としてとらえられない場合があるので注意しましょう。勿論ボランティアや実習も考慮されません!
受験資格に介護、看護系の資格をすでに持っているかどうかは問われませんが、実際には地域包括センターや訪問介護センター、デイサービスなどでの実務経験も経て、多くの人がこれらの資格もとっています。
施設から「3年間の実務経験」を証明してもらう事ができれば、年齢関係なく誰でも受験する事ができるので、まずは認知症関連の仕事に就いてみるところから始めてみるといいでしょう。
実務経験を事業所などから証明してもらう事ができれば問題なく受験できます。試験は毎年行われ、7月頃に行われる4分野の1次試験と11月頃に行われる面接試験の2段構成です。
<受験にかかる費用>
まず「受験の手引」から認知症ケア専門士用の願書を購入しましょう。同封された申請書類に油性ボールペンで必要事項を記入していきます。作成した申請書類のコピー(副2部)と共に封筒に入れ、簡易書留で提出します。普通郵便を使って書類がちゃんと届かないと受験不可になる恐れがあるので、必ず指定の封筒に入れて簡易書留で送るようにしましょう。
<1次試験(筆記試験)>
毎年7月頃に行われ、各分野とも正答率70%が合格ラインです。分野は以下の4つに分けられます。
それぞれ試験問題数は50問で試験時間は1時間です。
テキストや試験対策専用の書籍も読みながら実力を養いましょう。ある程度慣れておくと実際の試験も余裕を持って解けるはずです。
1次試験4分野全部合格ラインであれば2次試験へ進む事ができます。もしも1~3分野が不合格でも落ち込む必要はありません。なぜなら合格した分野は5年後まで有効なので、翌年からは不合格した分野だけ受験する事ができます。5年間の間に全て合格できればいいのです!
<2次試験(論述・面接試験)>
1次試験に合格したら論述試験を郵送で送り、11月頃に
を受ける事になります。
認知症ケア専門士の試験は2日間に渡って実施されます。1次試験が筆記形式に対して、2次試験では記述形式と面接試験が待っています。
論述試験→事例問題2問
これに対しての答えを期限内に郵送します。試験問題は「受験の手引」を購入する事で取り寄せる事ができます。
面接試験は、6人一組のグループとなってグループディスカッションが行われます。その時のテーマは毎回変更されるので、以前と同じお題が出されるわけではありません。
テーマ例
「認知症だという事実を家族や本人にどのように通知すればいいか」
「認知症患者が暴力的だった場合どうやって対処するか」
「身体拘束をどのように考えるか」
一次試験は毎年7月頃に開催され、下記の4分野の筆記試験が行われます。出題内容については下記をご参考にしてみてください。
具体的なケアの進め方や家族へのサポートを含めたトータルケア実践の全て
認知症の人が社会生活をする上で欠かせない
「インフォーマルサポート」
「フォーマルサービス」
一次試験では一つの分野50問のマークシート方式で行われます。一回の試験で一気に4分野に合格する必要はなく、一度合格した分野は5年間有効となります。100%を目指すのではなく、合格ラインである70%を目指すのがポイントです!
2次試験では1次試験の内容がちゃんと理解できているかを確認されます。実際の現場でどのように知識を活かせるかが問われるのです。しかし、受験者の中には人前で話すのがどうしても苦手、過度に緊張してしまうという人も中にはいるはずです。そんな方にとって面接試験やグループディスカッションは過酷な試練となりますよね…。
グループディスカッションは6名で1グループという構成です。試験当日は午前&午後で集合時間が分けられ、早めに待合室に入ると試験開始までかなり待ってしまう事になります。事前に受験票に記されたグループの机に通されますが、この待ち時間に同じグループの方々と談話してもお咎めはありません。
同じグループの受験者はライバルであり戦友です。早めに仲良くなっておけば本番もスムーズにディスカッションできそうですよね。試験前にどういう人かお互い話してみる事で雰囲気も和み、緊張感がなくなっていくでしょう。逆に全く誰とも話さずにグループディスカッションに望むのは厳しいです…。
面接の試験問題は試験室に入る直前に発表されます。この2つの試練を突破できるかどうかは40~50%の合格率です。
ここでは、認知症ケア専門士の資格を取得する事によって、どんな利点が得られるか挙げてみます。
認知症ケア専門士には資格手当が出る施設とそうでないところがあります。実際、まだ手当を支給する施設はそれほど多くなく、支給される場合は月に1万円前後ならかなりいい方でしょう。認知症ケア専門士の資格は国家資格ではないので、特別な手当てが出る事を期待していると的外れになる事があります。あくまで自分のスキルアップとしてとっておく事をおすすめします。手当はつかなくても、仕事の幅を広げられるチャンスです!
認知症ケア専門士の資格がないと就職できないという職場は実際ほとんどないです。しかし持っていると選考の時に信頼や説得力、やる気などが高く評価されて有利になるはずです。
認知症ケア専門士になると、「認知症の事ならあの人が何でも知っている!」と信頼され、今までよりさらに頼りにされるでしょう。認知症のスペシャリストとして期待され、責任もそれなりに伴うという事ですね。認知症という病気について十分理解した上で、本人やそのご家族のニーズに沿ったサポートを提供していく事は、認知症ケア専門士にとっても大きなやりがいとなるのではないでしょうか。
日本の現代では超高齢社会が問題になっており、高齢者が認知症になるケースも多発しています。10~20年経てば、団塊の世代が70~80歳になり、さらに認知症患者が続出すると考えられます。そのためこれからの時代、専門的な知識と技能で適切なケアができる「認知症ケア専門士」の需要がますます高まっていくでしょう。今のうちに認知症ケア専門士の資格を勉強しておき、加速する超高齢社会に備えておくのもいいですね。活かせるシーンがたくさん出てきそうです。