介護の仕事をしていると必ず書かなくてはいけない書類が「介護記録」です。
開所に係わっている方の中では、記録をつけることに時間を取られてしまい大変という人もいるのではないでしょうか。
直接利用者に係わらずに行うデスクワークに、「必要なの?」と思いながら書いている方もいるかもしれません。
でも、介護記録はとても大切なものです。必要性を意識すれば、きっと書きやすくなりますよ。
今回は、介護記録の必要性とポイントをレクチャーします。
介護に携わっている方、介護のお仕事へ転職を考えている方、介護に興味のある方みなさんも「介護記録」がどんなものか知ってくださいね。
さて、それでは介護記録はなぜつけるのでしょう。
介護記録の目的は2つです。
利用者により良いサービスを提供するため、この原則を忘れてはいけません。
介護記録を付けることで利用者により良い介護サービスを提供できるのです。
利用者の状態は日々変化していますよね。
そして、1人の人が24時間365日介護するわけではなく、様々な介助者がサポートに当たります。その中で一貫性をもったサポートをするためには、職員間の情報共有は最も大切になります。
口頭で伝えることも大切ですが、「言った、言わない」は不毛の争いですし、情報が伝わらないことで介護がおろそかになってしまっては困ります。
的確に利用者の現状やニーズを伝えることは介護のレベルを上げる事になります。そのためにも介護記録を媒体として、介護を組織的に行うことが大切になるのです。
行った介護内容が記載されていると、ケアプランを見直すときに重要な資料になります。「介護記録」を基礎としてケアプランを見直すことが出来るのです。今行っている介護プランが適切かどうかの見直しをする事もできます。
さらにヒヤリハットなどの状況を分析し、同じことがないように精査することが出来るのが記録です。
そして、介護記録は、利用者・職員だけでなく家族の方とのコミュニケーションツールにもなります。入所施設など家族が直接看ることのできない場面であっても、きちんと様子がわかるものがあると安心するものです。また、家族の要望や意見などを記録に残すことで利用者・家族とのコミュニケーションを深めることが出来ます。
介護記録の目的②の行った介護内容を証明するためというのは、記録の大切な目的になります。
介護サービスというのは物を作るのと違い形には残らないので、記録をもとにサービスを行ったという証拠を残しておく必要があります。その必要性はそれぞれの介護福祉施設の基準にも記されています。
介護保険の加算の場合にも大切ですが、「自分を守る」ということがふくまれます。不慮の事故などで利用者が怪我をしてしまったり、死亡してしまうことがあった時、どのような介護をしていたのか警察に話をしたり、もしかしたら訴訟を起こされる可能性もなくはありません。そういったときに、どのような対応をしたのか記録があるときちんと説明をすることができます。自分やスタッフを守ることになるのです。
監査対策といわれるとなんだか身構えてしまうかもしれませんが、自分を守る大切な役割があることを忘れてはいけません。
それぞれの自治体で定められている事が違いますし、事業所や施設の形態によっても記録は違うのですが、記録の種類は大きく4つに分けられます。
事業所ごとにテンプレートが用意されているはずなのでそれに従って記録をとりましょう。
記録の一覧を書いておいて、業務終わりに書いたかチェックしていくと漏れがなくていいですし、「これ書いたかな?」と考える時間を減らすことが出来ますよ。
具体的に介護記録の書くときのポイントを教えます。
記憶というのは時間と共にあいまいになってしまいます。
そこで、直接援助をしているときは、記録に残すべきことは簡単にメモを取っておきましょう。そして、情報共有するためにも早めに記録に残します。
そして以下のことを意識して書いてみましょう。
介護記録は介護保険法に基づいた公式の記録なので、「~である」「~だ」と書きます。これは「常体」という文章の形式です。公式の記録では常体表現を用いるのが一般的ですので慣れていきましょう。時間の経過をわかりやすくするために、現在形と過去形は使い分けましょう。
「5W1H」英語の時間にやりましたね。
介護記録の書き方でも重要になってきます。
WHEN (いつ)
WHERE(どこで)
WHO (誰が)
WHAT(何を)
WHY (なぜ)
HOW (どうした)
この5つを意識するだけで文章の主語がはっきりし、時間などもきちんと記録されます。
誰が読んでもわかるように書きましょう。そして、この文章に主観、つまりあなたの感想はいれません。事実のみを正確に書きましょう。
記録が読みにくくなっていたら5W1Hです。
当てはめて書くとすっきりした記録になりますよ。
特に「事故報告書」「苦情報告書」「議事録」などは5W1Hを意識し書く必要があります。
利用者や家族に様をつけるのか呼び捨てで記録に残すのかは事業所によって異なります。介護記録に敬語の必要はありませんが、敬称については事業所で統一する必要がありますので事前に確認しましょう。
記録を書く際に正確な時刻を書く方がよい場合があります。
利用者から訴えがあった場合や、利用者の状態に変化があった場合、処置を行った場合などです。
「暴力を受けた」「暴言をはいた」などはとらえ方による主観が入ってしまっています。
正確には「腕を引っ張られた。」「あっちに行けと言われた」などと事実を書く必要があります。利用者には暴力を振るおうとした意思がないのかもしれないことが、「暴力」と書いてしまうことで真意がねじ曲がってしまうかもしれないからです。
×久しぶりに入浴した → ○4日ぶりに入浴した
×少し食べた → 1口食べた
などと具体的な数字を記載することでより明確に状況を伝えることが出来ます。
複数の人が記載する記録だと誰がいつ記載したのかわかる必要があります。
以前は手書きでの記録が多かったので筆跡で分かった部分もあるのですが、今はパソコン入力も増えてきましたので、誰がいつ入力したのか記載する必要があります。
ここで実際に記入例を教えます。
利用者が脱衣所でうつぶせになっていました。
その際の正しい記録は「脱衣所でうつぶせ状態になっていたのを発見した」と書きます。
その際に回りが水でぬれていたのならば、状況として「周りに水がたれていた」と書けばいいのです。
しかし、思わずその水で滑って転倒したと考えて(主観) 記録を書くと「脱衣所の水にすべって転倒した」などと書いてしまいます。
実際は水に滑ったのではなくて、発作が起きたという可能性もあるかもしれません。
記録というのは主観が入ると大きな間違いを引き起こすかもしれないということです。
「倒れていた」「床がぬれていた」という客観的状況を書き、
その後対応した「意識があるか声をかけ、返事があったので座らせた」という処置を書きます。
その後「滑って転んでしまったと本人が言っているので外傷がないことを確認し、着替えて自室で安静にしてもらった。」という反応などを記録に残します。
夜間巡礼の時に利用者に変化がなかったので記載する内容がないので「特になし」
これはよくあるのではないでしょうか。
毎日同じだと思っても「寝息」「寝具をかけているか」「体位」など観察すれば記録する内容は多くあります。無駄に多くの記録を書く必要はありませんが、何か書くつもりで観察する事はケアの向上にもつながりますし、些細な変化を見逃さずにすみます。
介護記録の必要性について書きましたが、慣れていないと時間がかかりますよね。
決して記録ありきの介護になってしまってはいけませんが、記録に必要な視点や表現力を身に着けることで介護そのもののスキルが上がっていきますので、正しい記録の書き方を学んでください。
新しい施設であったり、1人体制で教えてもらえないなどの場合は、研修に参加したり、「介護記録・表現文例集」などのような本も出ていますので読んで勉強するのもいいと思います。