ケアマネージャーの仕事で最も重要とされる「アセスメント」
アセスメントシートの記入の仕方によって、その後のサービス・利用者の生活が変化すると言っても過言ではありません。そんな大切なアセスメントシートってどんなものか知りたくないですか?
介護に携わっている方、介護のお仕事へ転職を考えている方、介護に興味のある方、ケアマネージャー、これからケアマネージャーを目指す方、アセスメントシートの書き方に悩んでいるケアマネージャー、一緒に学びましょう。
介護サービスを提供する前に行う「アセスメント」で使用する「アセスメントシート」って何でしょう。
「アセスメント=assessment」という言葉は多くの方が耳にしたことがあるでしょう。
ある事象を客観的に「評価・査定」することを「アセスメント」といいます。
一般的には環境分野において使用される言葉ですね。
福祉や介護福祉の分野では、介護過程の第一段階において、サービスを提供する前に、利用者が何を求めているのか正しく知るために、生活状況を確認するために行う手続きを「アセスメント」といいます。
利用者さんの状況を把握するための情報を集めて、それらの情報から「課題を見出す分析」をすることがアセスメントです。
その人にとって解決すべき課題を明らかにするのがアセスメントの目的だということはわかっていただけましたか?その時に情報を記載するのが「アセスメントシート」です。
アセスメントの方法は、「面接」です。
「今後どうしたいのか」「どうなりたいのか」利用者と家族との面談を通してニーズを把握していきます。アセスメントの多くは利用者の家を訪問して面接を行います。
もれなく情報を把握し、分析したいのですが、アセスメントに取れる時間はだいたい1時間なので、漏れがないように「アセスメントシート」を使用します。
アセスメントシートはケアプランを考えるときに大切な資料になりますので、大切な記録です。
そのアセスメントシートですが、各事業所によって違います。
厚生労働省が指定する「課題分析標準項目」の23項目を満たせば、独自に作成してもいいのです。
自治体によっては指定があるところもあるようです。
23項目は以下のものです。
居宅サービス計画作成についての利用者受付情報(受付日時、受付対応者、受付方法など)、利用者の基本情報(氏名、性別、生年月日、住所、電話番号など)、利用者以外の家族などの基本情報について記載
利用者の現在の生活状況、生活歴などについて記載
利用者の被保険者情報(介護保険、医療保険、生活保護、身体障害者手帳の有無)について記載
介護保険給付の内外を問わず、利用者が現在受けているサービスの状況について記載
障害高齢者の日常生活自立度について記載
認知症である高齢者の日常生活自立度について記載
利用者本人、及び家族の主訴や要望について記載
利用者の認定結果(要介護状態区分、審査会の意見、支給限度額など)について記載
当該課題分析(アセスメント)の理由(初回、定期、退院対処時など)について記載
利用者の健康状態(既往歴、主傷病、症状、痛みの有無など)を記載
寝返り、起き上がり、移乗、歩行、着衣、入浴、排泄などに関するものを記載
調理、掃除、買い物、金銭管理、服薬管理などを記載
日常の意思決定を行うための認知能力の程度を記載
意思の伝達、視力、聴力などのコミュニケーション能力を記載
社会的活動への参加意欲、社会との関わりの変化、喪失感や孤独感など社会との関わりを記載
失禁の状況や排尿排泄後の後始末、コントロール方法、排泄頻度などを記載
褥瘡の有無や程度、皮膚の清潔状況などを記載
歯や口腔内の状態や口腔衛生に関する項目を記載
栄養、食事の回数、水分量などについて記載
暴言暴行、徘徊、介護への抵抗、収集癖、火の不始末、不潔行為、異食行動などを記載
介護者がいるかどうか、介護者の介護意思について、介護負担、主な介護者に関する情報などを記載
住宅改修の必要性があるかどうか、危険箇所など現在の居住環境を記載
虐待やターミナルケアなど、特別な状況に関する事柄を記載
以上の23項目をカバーしていれば様式は自由になっています。
10~23が課題分析「アセスメント」に関する項目ですね。
アセスメントシートは、ケアプランを考える元となる大切な記録が書かれているシートであることはわかりましたよね。
利用者と家族の家庭環境、生活を送る上での問題点を全て把握し、記録を残すことは、なかなか大変なものです。
厚生労働省が指定する『課題分析標準項目』の23項目を満たせば、独自に作成・運用しても良いのですが、それでは情報がもれてしまうという心配もあり、各機関もアセスメントシートのひな形を作りました。よく使われるものとしては5つあります。
それぞれにメリットがありますので紹介しますね。
「在宅ケアアセスメント表」ともいわれます。
もともとはアメリカで開発され、長期ケア施設の為の「MDS RAPs」を元に、その導入にかかわった各国研究者や非営利団体、インターライによって開発されたのが在宅版の「MDS-HC CAPs」となります。
相談受付の状況や、最終学歴、職歴、身体状況や精神状況、介護者の状況や、疾患、服薬、生活習慣など当てはまるものを記号で選ぶようになっておりかなり細かくチェックしていくようになっています。
この様式を使う場合、事前に情報を整理し、面接を効率よく進める技術が必要になります。しかし、大変な分「落ち度がない」アセスメントを行うことができるともいわれています。
1995年に、介護療養型医療施設連絡協議会・全国老人福祉施設協議会・全国老人保健施設協会の3団体が施設ケアの立場から協力開発したものです。施設における介護・看護に加えて在宅介護も念頭に要介護認定の際に得られる情報をケアプラン作成に有効利用するための目的で開発されました。
「包括的自立支援プログラム」と呼ばれます。
施設中所の利用者に質の高い自立支援、生活支援を目指したケアを提供するためのアセスメント方式として適しています。在宅での使用も想定されていますが、アセスメントに不十分な項目があります。
実施しているケアの分析を中心として生活上のニーズを明らかにしているので、利用者家族がわかりやすいと評判です。
1995年に日本介護福祉士会が、「ケアマネジメント研究会」を設置して、ホームヘルプ活動をベースに実践研究を行った結果作成されたものです。
「生活援助を基礎とした自立支援アセスメント・ケアプラン」といわれています。
要介護者の生活全体を「衣・食・住」「体の健康・心の健康」「家族関係・社会関係」の7領域に分類し、更に領域を46項目に細分化して、具体的に生活障害を把握します。
利用者の望む生活・望ましい生活を営むのに困難な問題を整理していきます。
利用者の生活を主体として考え、利用者の意見を重要視するのが特徴ですので、これまで営んできた利用者や家族の生活リズムを尊重して、意欲や可能性を引き出します。
記述が多いため、チェック方式では得られない細かいニュアンスを表現できますので、具体的で利用者にわかりやすく、利用者自身がケアプラン作成に参加しやすいとのメリットがあります。
1992年に日本看護協会が開発した「訪問看護用高齢者アセスメント用紙」とアメリカのMDS/PAPS(施設内アセスメントとケアプラン表)を統合したものを日本版にして開発したものです。
「成人・高齢者用アセスメントとケアプラン」と言われています。
成人から高齢者まで、幅広い層を対象と出来、23項目を網羅しています。
得た情報をそのままチェックしたり数字で記入すれば自動的に問題・ニーズが把握できるようになっていて、ケアマネージャーによって差が出ない工夫がされています。
3回分のアセスメントを並列して記入できるのでその人の変化や経過がわかりやすいのも特徴です。
在宅・施設のどちらでも共通して使用することが出来ます。
1995年に日本社会福祉会が「ケアマネジメント研究会」を作り、主に在宅介護支援センターでの事例を収集し検討して作り上げたのがこちらの様式です。
開発にあたって福祉関係者だけでなく、保健・医療の研究者に現場の実施者が加わって開発されていて、社会福祉士だけでなくどの職種の人でも使えることを想定して作ってあります。
「日本社会福祉会方式」とも呼ばれています。
在宅にも介護保険施設のどちらのも使用できるようになっています。
介護認定調査票があり、基本調査の82項目を取り入れてアセスメントが出来るようになっています。
特徴が5つあります。
在宅なのか、施設かによっても確認したい項目は違いますし、あったものを利用すればいいでしょう。自分で選ぶということはなく、事業所から指定されていると思いますので、そちらを使用すればいいのですが、様式によって課題への取り組み方も変わりますので、他の様式も知っておいて損はないですよ。
必要であればオリジナルを作ることもいいでしょう。
アセスメントシートの具体的な書き方の前に大切な仕事があります。
アセスメントする前に「情報を集める」ということです。
多くの場合、ケアマネージャーが利用者に会う前に、家族や病院、福祉機関などから情報がもたらされます。事前情報があると、質問すべきことも明確になるはずです。
ただし、家族からの情報などはうのみにせずに、その情報が正しいかどうかを確認していくこともアセスメントでは大切になります。
アセスメントを行う前に必ず情報集めをしてくださいね。
アセスメントシートの記録のポイントは
誰が希望しているのかなどは大切です。
在宅での生活を希望しているのが本人なのか家族なのかではケアが大きく変わるからです。
そして、アセスメントを行う時は
の3つを大切にしてください。
質問項目だけにとらわれるのではなく、自然な会話の中から情報を得るには会話の技術も必要になります。
アセスメントシートを埋めていくプロセスのなかで、利用者のニーズを読み取ります。
それぞれ「実際にしていること」、「実際はできるのにしていないこと」、「努力してもできないこと」などを読み取りながら、利用者とともに考えていきます
直接関係のない情報を興味本位で聞いてはいけません。
アセスメントシートの項目を把握しないでアセスメントしてしまったら、ただチェック項目を1つずつ埋めるだけのアセスメントになってしまいます。
まずアセスメントシートになれて、利用者の声に耳を傾けることがアセスメントであることを念頭におくことが、ポイントです。
ケアマネジメントをする中で、利用者のニーズを解決することが出来ると感謝され、うまく適応しないと責められることもあるかもしれません。
アセスメントの是非が問われることもあるかもしれません。
感謝されてもそこに甘んじず、批判されてもそこに心を砕かず、今できる最善のケアは何かを考えていってください。
アセスメントシートの書き方は場数を踏むことです。何度も書いているうちに項目は頭に入っていきますし、漏れも減ります。そのうえで、利用者とその家族に真摯に向き合って、的確な「アセスメントシート」の作成が出きると、その後のケアの方向性も立てやすくなります。よりよいケアのためにまずはアセスメントシートの特徴を知り、利用者と向き合うツールに利用してくださいね。