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介護事故を未然に防ぐ!介護現場での事故報告の必要性

近年ニュースをにぎわす介護事故。介護事故を起こさないようにするためにも、ヒヤリハットを含めた事故報告が大切です。介護事故とは、介護サービス中に発生した事故全般のことであり、介護側の過失の有無にかかわらず「介護事故」になります。
ベッドや階段からの転倒、転落、食べ物や唾液の誤嚥や誤飲、おむつ交換時や体位変換時の骨折、ノロウィルスによる食中毒や、インフルエンザの感染などがあります。
では、どのようにすれば介護事故を防げるのか、また介護事故が起こってしまった時、どのような対応をすれば良いのかわかりやすく解説していきます。

どんな事故が起きているの?

介護の現場ではどのような事故が起きているのか、具体的な例をいくつか紹介し、何が原因でそのような事故に発展してしまったのか?また、どのように対処すればよかったのかを解説します。

【事例1 誤嚥 卵丼で死亡例もあり】

満97歳を迎えたX子さんは、社会福祉法人Yが経営する特別養護老人ホームAに入所していました。当日は、月に一度の昼食に出前を取る日であり、X子さんは、玉子丼を選びました。X子さんは、食事中、かまぼこ片等を誤嚥し、窒息の状態に陥ったのです。
出典:札幌 中小企業法務相談

食事中にX子さんが口から泡をだしていることに気付き吸引処置を行い、かまぼこ片を吐き出し容体が安定したように見えたため、様子を見ることにしました。
しかし、その後、顔面蒼白でぐったりしているX子さんに気付き救急で病院への手配をしましたが、その一年後、病院で死亡となりました。
結果、法人側はX子さんの子らに対し損害賠償金を支払うことになりました。
【原因と対応】
介護職員の自己判断で、経過を観察することにしてしまったことが原因となります。
介護職員は、医療の知識はないため、吸引し容体が安定したように見えても医療の専門家に連絡し適切な処置をするか、直ちに救急車を要請する必要がありました。

【事例2 転倒支えきれずに骨折】

事故が発生したのは、デイケアが終了し送迎バスで自宅マンションの前に戻ったときです。
介護士佐藤さんは、山田さんを送迎バスから降ろした後、踏み台の片付けやスライドドアを閉めるなどの作業をしていました。
そのとき、山田さんの声が聞こえたので振り返ると山田さんが転倒しかかっていたので手を差し伸べたのですが、転倒を防ぐことができず山田さんは転倒してしまいました。

出典:特定非営利活動法人 医療・介護法務支援ネットワーク

デイケア送迎の際、転倒した利用者を支えることが出来ず、転倒により右大腿頸部骨折と診断されました。ベッドに寝たきりの状態になり、食欲も低下…そして、約1ヵ月後に肺炎に罹患し治療をしましたが、約4ヵ月後に転院先の病院で肺炎が原因で死亡してしまった事例です。
裁判所は、山田さんの妻らに損害賠償金の支払いを命じました。
【原因と対応】
デイケアの送迎は、毎日同じパターンを繰り返すため、介護職員に慣れが生じてしまい利用者の転倒を予測できなかったことに原因があります。
いつもの場所だから大丈夫だと思っても、転倒の可能性を常に考え行動し、転倒しそうになった時にすぐに支えられる位置にいるようにすることが重要です。

【事例3 ショートステイでの転倒死亡事故】

(京都地裁 平成24年7月11日)

本件は、介護老人保健施設に入所中の95歳の女性が、自室のポータブルトイレの排泄物を捨てるために汚物処理室に赴いた際に仕切りに足を引っかけて転倒し負傷したという事故について、施設経営法人に対し、債務不履行および土地工作物の管理責任に基づき、537万2543円の損害賠償を命じた事例である。
出典:独立行政法人 国民生活センター

介護老人保健施設に入所中の要介護2に認定されている95歳の女性が、自室のポータブルトイレの排泄物を捨てるために汚物処理室へ足を運び、その際に仕切りに足を引っかけて転倒し、負傷したという事故。施設経営法人に対し、損害賠償が命じられた事例です。
事例3のケースは、利用者が使わないであろう場所での転倒事故です。
【原因と対応】
介護事故の8割は転倒、転落事故ともいわれていますので、転倒が起きそうな場所や物を床に置くなどは気をつけているのでしょうが、思わぬ時に思わぬ場所で起こるのが転倒です。事例3はスタッフしか入らないと思っていた場所の仕切りにひっかけてしまったという事例ですが、そもそも利用者が排泄物を片付けなくてはいけない、もしくは片付けたいと思うような状況に置いたことが原因と言えます。
適切な対応としては、定期的な清掃、もしくは、排せつした際に、職員に片付けることをお願いできるような信頼関係を日頃から築く必要性がありました。

介護事故を分類分けすると見えてくる対策と事故報告

けあまね3

上記の事例でわかるようにひと口に介護事故と言っても大きく分けると危険有害要因は3種類に分けられることがわかります。

①利用者本人に潜むリスクによる事故

事例1の「誤嚥」など利用者本人のリスクにより引き起こされる事故です。転倒事故、転落事故、誤嚥、誤飲などがあげられます。
【対策】
利用者の状況を丁寧にアセスメントすることで防ぐことが可能になります。ただし、利用者の身体の状況は日々変化するので、観察することが大切です。

②スタッフ側に潜むリスクによる事故

(支援者によるケアの提供に伴う介護事故)
事例2の様に支えきれずに骨折させてしまったり、おむつ交換時の骨折などがあります。
これはスタッフ側の様々なリスクが考えられます。介護技能の未熟さや、経験の不足、多方面の知識不足など技能上のリスクです。
【対策】
経験と研修を繰り返していくことで補っていきます。
毎日、命を守り支える重要な責任があることを心がけることも大切です。
また「ヒヤリハット」などの事故報告を常にあげ、職員1人ひとりが様々なリスクを把握することで未然に防ぐことができるため、ささいな事であっても報告し全員で情報を共有する必要があります。

③環境のリスクによる事故

ベッドや物の場所、部屋の間取りなど生活環境において起こる事故のことです。

【対策】
事故防止には老化の段差やベッドの高さ、照明、車いすの品質、スタッフの配置状況等様々な事柄に目を配ることで事故を防止することが出来ます。
昼と夜でもリスクが違うことは言うまでもありません。
また、「なれ」によって環境変化に気がつかないケースや、利用者がいつもと違う環境に置かれた場合などにも配慮する必要があります。
環境リスクは見取り図等で事前にチェックすることも有効です。
これもまた事故報告をすることで、同じ場所での同じ事故をしないよう気を付けることが出来ます。

万全を期していても事故に遭遇してしまったら!?

介護保険事業者及び基準該当事業者は、介護保険事業所及び基準該当事業所において、事故が発生した場合は、利用者の家族と市町村に報告等を行うとともに、必要な措置を講じなければならないと厚生労働省令で定められています。次の事故を起こさないためにも事故報告をすることはとても大切になります。

◆事故が発生したらまず利用者の救命や安全確保を行ったうえで、事故の発生を上司やリーダーに報告します。
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◆事故発生時の状況に関する記憶が鮮明なうちに(48時間以内が望ましいと考えられています)、事故の発見者を中心として利用者を担当する介護スタッフ、現場のリーダーなど参加可能な各職種が事故の現場を検討し、事故の状況に関する詳細な情報を収集したうえで、分析を行います。
単に法的な義務づけというだけでなく、利用者側からの開示請求に応えられるようにすることで「隠蔽」に対する不信感を防ぐことになり、それ以上に、同様の事故の再発防止に役立てるという意味も含んでいます。
法令で具体的に決められている書式はなく、各事業者に委ねられています。
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◆事故の分析や再発防止対策の検討を施設全体で行います。

介護事故の予防と対策

<介護事故の予防・対策ポイント>

【環境を整える】
施設での環境整備や点検の他にも、介護職員など従業員が一体となり、危険な場所や危険な事を考え意見し皆で対策を考えることで、よりよい環境を作ることができます。
事故には発展しなかったが、事故になりそうだった場所で同じ事を繰り返さないようにする対策や、つかまると危険なものには、メモで「つかまると危険です」という貼り紙や、わかりやすく絵で描いたポスターなどを貼っておくのも効果的です。

【介護事故会議を定期的に開催】
介護施設や事業所では、介護事故に関する対策委員があり、起こった事故やヒヤリハットの報告を基に、対策を検討し書面で通達するなどの業務を行っていますが、それだけではなく、介護職員や従業員全体で、定期的に会議を開き、起こった事故やヒヤリハットについてそれぞれ考えてもらう事が重要です。
各自、考えその対策が本当に安全であるか皆で検討することで、多くの解決策を得ること、自分達で考えることで、介護事故に対してより意識して行動することができるなど、介護事故を身近に感じ責任感を持つことができ、介護事故の予防、介護サービスの質の向上に繋がります。

【些細なヒヤリハットであっても報告する】
大きな事故の陰には、軽い事故や、事故には及ばなかったがあぶない事例などがたくさんあります。
事故が起こりそうだった場所や出来事について対策しておけば、大きな事故に発展せず未然に防ぐことができます。
些細な事でも報告を怠らない事や、細かい事にも目を向け気付くように心がけることが事故予防に大切です。

<まとめ>

介護の現場で起こる事故は様々ありますが、ご紹介した事例も含め、多くの事例を知ることで、その原因や対応、改善策などを立てることができます。
また、実際に施設内で起こってしまった事故や軽微な失敗などは、是非施設内で「原因」から「改善策」まで徹底して検証し、共有することが事故の予防に有効です。
命を預かるお仕事ですから、是非、一つ一つの事例に対し、丁寧に対応していってください。

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