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入所待ちの高齢者に朗報!?最近増えている「無届け介護ハウス」とは?

無届け介護ハウスって知っていますか?
保育園でいう無認可保育園と同様、無認可であり、無届の介護施設をこのように呼んでいます。
今、無届介護ハウスが増えていることを知っていますか?
介護県制度のひずみを浮き彫りにしている「無届け介護ハウス」を知り、介護について考えてみましょう。介護に携わっている方や、介護のお仕事へ転職を考えている方、無届け介護ハウスへの入居を検討している方は、必見の内容です。

無届け介護ハウスが増えている!?

基本的に高齢者を対象として食事サービスや相談や介護などの生活支援サービスを行う場合、行政に届け出を出し登録をする必要があります。しかし、行政の指導や監査を嫌がり登録も届け出もしない施設が数多くあるそうです。
届けも出していないので数などの現状はきちんと把握できませんが、全国に2000か所以上あると言われています。そして急増していると言われています。
2015年1月にNHKのクルーズアップ現代でも放送され話題になりました。
最近、無届であることで摘発された施設があります。

無届けで介護サービス 容疑の運営会社、書類送検 警視庁

無届けの有料老人ホームで入居者に介護サービスを提供したなどとして、警視庁生活環境課は4日、老人福祉法違反などの疑いで、東京都練馬区の運営会社「ロハス」と男性社長(52)を書類送検した。同課によると、無届けの介護施設を同法違反容疑で摘発するのは珍しいという。

同社はマンションの2部屋を有料老人ホームとして利用。1人当たり1カ月16万~18万円の入居料を徴収し、平成24年から3年間で約1億8千万円を得たとみられる。

書類送検容疑は26年2月~27年7月、無届けで東京都練馬区に有料老人ホーム「ほほえみガーデン」を設置、入居する72~92歳の男女6人に入浴など介護サービスを提供するなどしたとしている。
出典:産経ニュース

無届け介護ハウスの摘発は初めてのことで、珍しさもあってか大いに注目されました。
ではなぜ、これまで摘発されなかったのでしょう。
それには必要に迫られている人が多くいるのに、それに対応しきれていない行政が、無届け介護ハウスに頼らざるを得ない現状にあるからです。

国は高齢社会に向き合うために、平成12年に介護保険制度を始めました。もう16年前の事になりますね…。
その制度は、在宅介護と施設介護の2本柱でしたが、国は在宅介護に重きを置いていました。
その結果、急増する高齢者が入所待ちを余儀なくされるという現実を招いたとも言われます。
24時間365日の介護が必要なのに、家族の支援が受けられない高齢者はどのようにして生活すればよいのでしょう。施設に入るという選択肢を選ぶとします。しかしながら、特別養護老人ホームの入所待ちは52万人います。前もって体調が悪くなるのがわかるわけでもないですし、そもそも元気なうちに申請はできないので、施設に入りたい状況になってから待機せざるを得ません。
待機の間の生活は、どうすればいいのでしょう。
有料老人ホームに入る選択肢もありますが、利用料は平均で25万円かかり、入居の際の一時金として、数百万支払わなくてはいけません。高いところですと3500万という施設もあります。とうてい、誰もが支払える金額ではないですね。
今まで行き場のない老人がいたとされる病院も、患者の7割以上を“在宅”に帰さなければ、診療報酬が加算されなくなりました。医療費を削減し、次々と高齢者を退院させて社会保障費を抑制しようという流れになっています。

安くて介護してもらえる場所として、病院や自治体からも紹介されるのが、「無届け介護ハウス」だったのです。
無届け介護ハウスは、設備や職員の数など国の指針に従う必要がため、設備費や人件費を抑えることができ、少ない金額で入所することができます。
「無届け」と言いますが、それ自体が悪い訳では決してなく、使命を持ち少人数で行っている施設もあれば、残念ながら、規模ばかり拡大させて高齢者を拘束しているようなところもあります。
届け出を行っていないので、どのように生活しているのか、安全なのかといった実態が把握しにくいのが現状です。
しかしながら、あまりに需要がありすぎるため、増加傾向が続いているのです。

無届けであるが故、国が定める老人ホームの基準(主に施設面)を満たしておらず、行政の指導も入っていないため衛生管理も十分に確保できていないという現状もあり、感染症が蔓延し、多くの高齢者が短期間に亡くなっていた施設もありました。
しかしながら、行き場のない高齢者の受け入れ先として必要視されていましたので、行政は、監査はしない、指導もせず黙認するような格好だったのです。
そんな現状の中で、ほほえみガーデンの摘発は驚くものでした。

無届け介護ハウス増加の背景

無届け介護ハウスが増加しているのはなぜかといえば、「需要があるから」の一言に尽きるでしょう。
需要があるところにはビジネスが始まります。
高齢者の数が増えているのに、施設の受け入れ先が足りていない中に、格安で入れる施設があれば、希望者が殺到するのは火を見るより明らかです。身寄りのない高齢者や、高額な費用が用意できない高齢者には、格安で入所できることは、魅力的です。
医療の発展もあり、平均寿命も延びてきている昨今、多少病気であっても長く生きることができます。しかしながら、介護という手助けをしてもらう必要があります。
しかし、国の政策の在宅介護は「家族」という無料のヘルパーを利用して不足分は訪問介護などを利用するというものでした。
そのため施設整備が遅れているのが現状です。

介護施設としての届け出を出すには、様々な基準があります。例えば、部屋を「個室」にする。スプリンクラーを付ける。廊下の幅など、制度で決められている基準を守らなくてはいけません。安全な暮らしを提供するための基準なのですが、新たに施設を建設するだけでなく、既存の建物を利用するとしても多くの費用がかかることがわかります。
しかし、無届け介護ハウスは既存の建物を利用することができます。例えば、普通の一軒家を再利用したり、アパートを1棟買い取り、相部屋にして利用したり、つぶれたラブホテルを利用しているところもあります。
部屋も個室ではなく相部屋にし、1部屋を4人で使用しているところもあるようです。
そうすることで多くの人をまとめて介護することができ、人件費と設備費を節約する事ができ、費用を安くすることができるのです。
24時間の手厚い介護体制で、食事付きで月10万いかない金額で生活できれば、年金で支払うことができます。
場所がどこであれ、そこが安全に特化しているわけではなくても介護をしてもらえて食事を食べされてもらえることで生き抜くことができる人もいるのです。
需要があるのでビジネスとして運営する人も増え、急増しているのです。

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無届け介護ハウスの見分け方は難しい!

介護というのは一言では表せない様々なサービスの集まりなので、必要な設備やサービスも人によって違います。
名称や呼称も多くあり、わかりにくいかもしれません。
ここで少し、介護施設を整理してみましょう。介護施設にはは、以下のようなものがあります。

  • 介護付き有料老人ホーム
  • 住宅型有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅
  • グループホーム
  • ケアハウス
  • 軽費老人ホーム
  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設

上記の名称がついていなければ無届けハウスの可能性があります。
施設側からの説明事項と照らし合せてどの施設に該当するのか確認すると良いでしょう。
名称だけだと紛らわしいものもあります。
例えば、「介護付老人ホーム」は「介護付き有料老人ホーム」と間違えやすいですが、指定を受けずに介護サービスを提供している可能性もあります。少しの名称の違いですね。
「高齢者向け賃貸住宅」と書いてあると、「サービス付き高齢者向け住宅」かと思いますが、違うかもしれません。単に高齢者を優先的に受け入れている賃貸住宅かもしれません。
他にも、「グループハウス」とあると「グループホーム」と間違えやすいですね。
紛らわしいのですが、正式名称に似せた名称を用いることで、無届けとわかりにくくしているところもあるようです。
そして、無届けであっても、病院や役所で紹介されることもあるので、その施設が無届けだとは知らずに入所している人もいるようです。
前出したように、ラブホテルを再利用していたり、拘束していることが目に見えてわかれば無届けであるとすぐにわかる場合もありますが、無届けでも熱意をもって介護と真摯に向き合っているところもあります。
入所する前に無届けなのか、国の定めている介護施設なのか聞いてどの名称に当てはまるのか確認しておくといいでしょう。
無届けであることが一概にダメなわけではありませんが、事故が起きた後の対応などが変わってきますので、自分や、自分の両親が生活する場所がどんな施設なのか正しく知っておくことは大切だと思います。

自治体・介護制度との関係は?

それでは、無届け介護ハウスの増加は自治体にとってどのような影響があるのでしょう。
無届けとはいっても、受け入れる場所があることはありがたくもあります。しかしながら、自治体としては無届け介護ハウスが増加することは財政負担になっています。
というのも、介護保険制度では、「住所地特例」と呼ばれる制度があります。
高齢者がほかの自治体から施設に引っ越してくる場合、介護報酬はもともと住んでいた自治体が負担するというものです。しかしながら無届けの場合、住所地特例は適応されません。
単純に引っ越しをしてきているように見えるからです。届が出ていないので、ただの住居であるという場所なので、認定されないのです。
それでは無届け介護ハウスがある自治体は介護報酬が増加します。
この状況は想像していなかったことだと言います。
そして、老人徘徊や、不測の事故、火事などが起きた時に無届けのために監督することができず、大きな被害を招いてしまうこともあります。
近隣住民からの通報で介護ハウスの存在を知るということも良くあるようです。
しかしながら、無届けであるがゆえに指導をすることができないというジレンマも自治体は抱えているようです。

<まとめ>

無届け介護ハウスについて整理できたでしょうか。
お金や身寄りのない高齢者にはなくてはならない存在ですが、監査がないということは、虐待が放置されていたり、介護報酬が過剰に請求されているケースもあります。
無届け介護ハウスと知りながら、ニーズに合っているため利用する場合もあるでしょう。しかし一方で、行政の目が行き届かないため、感染症が蔓延したり、事故が起きた時の対応も様々になってしまします。
それもまた、無届け介護ハウスの一面です。
行き場のないお年寄りや介護することができない家族の救いの手になっていることも事実です。
老々介護で自ら命を絶ってしまうという悲しい事件が起きるよりも、他者の手を利用することは良いことかもしれません。
介護保険制度のひずみが招いている「無届け」という介護ハウス。行政も必要性を認識しているため紹介するのに、指導はしないという現状が問題視されています。今後どのように行政が関わっていくのが、見直しの必要な時期に来ているのかもしれません。今後の政府の対応にも注目です。

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