介護の業界で多くの方が悩んでいるが高齢者のうつ病などの気分障害です。
今回はうつ病、気分障害の定義や原因、症状などを詳しくご紹介します。
気分の異常な高まりや低下といった症状を示す精神疾患で、気分の変調により、苦痛を感じたり、日常生活に支障をきたします。
気分障害には分類があり以下のように分けられます。
いわいる「うつ病」のことです。
気分の低下や活動性の低下、思考の停止、睡眠障害、自殺念慮、食欲不振などのうつ病相のみが2週間以上続くことで診断されます。
「躁うつ病」のことです。
単純な躁病相のみで発症することはまれで、うつ病相と交互に入れ替わる形で、易怒性や、対人関係における摩擦、睡眠障害、誇大妄想や被害妄想などが出現します。
それぞれの症状や治療法、処方される薬などを表にまとめてみました。
大うつ病性障害 「うつ病」 |
「気分の低下」「思考停止」「睡眠障害」「自殺念慮」「食欲不振」 |
休養 薬物療法 精神療法 |
抗鬱剤 抗不安剤 睡眠薬 |
双極性気分障害 「躁うつ病」 |
精神教育 家族療法 認知療法 対人関係・社会リズム療法 |
気分安定剤 非定型抗精神病薬 |
うつ病の症状とメカニズムについてご紹介します。
◆興味や喜びの喪失
◆食欲の障害
◆睡眠の障害
◆疲れやすさ、気力の減退
◆強い罪責感
◆思考力や集中力の低下
◆自殺念慮など
人間の脳は呼吸や食事、睡眠などの生きていく上でなくてはならない動作を体に命令する働きを持っています。
体に対する命令だけではなく心に対しても命令を出しています。食欲などのような感情や欲求も脳が命令を出しています。
体や心に対して発する命令は、神経伝達物質やホルモンなどを仲介しておこなわれます。
神経伝達物質の中でも、特にうつ病に関連があるのは【セトロン】と【ノルアドレナリン】です。
脳内の神経細胞からセロトニンやノルアドレナリンが放出されると、それを受容体が受け取り、やる気や欲求などが沸いてきます。
これらが何かしらの原因で神経細胞からの放出量が低下すると、脳内のセロトニンやノルアドレナリンの量が低下し、受容体が受取ることができなくなります。
これによってやる気や欲求が低下し身体的な症状も現れてきます。
これがうつ病のメカニズムです。
【正常】
脳からの命令(セトロンやノルアドレナリンの放出) ➤ 受容体が受け取り ➤ やる気や欲求の出現
【うつ病】
脳からの命令(セトロンなどの神経伝達物質放出量の低下) ➤ 受容体が命令を受け取りきれない ➤ 出現したやる気や欲求の低下
体力や気力の衰え、健康への不安、親しい人たちの死別、一人暮らしの孤独感など高齢者特有の原因が挙げられます。
「配偶者がなくなり孤独になってしまった」「子供が自立して使命感を失ってしまった」
「同年代の友達がいなくなってしまった」「老化による体力の減退」などです。
高齢者のうつ病で特徴的なのは、あまり精神症状が目立たず、「耳鳴り」「めまい」「ふらつき」「手足のしびれ」自律神経症状の訴えや「頭痛」「腰痛」「胃部不快感」などの特に原因がなく、身体のあちこちの調子が悪いという訴えです。
他にも「物忘れが増えた」と訴えたり、心気傾向が強く、「心臓が動いていない」「胃の中に虫がいる」のような妄想が現れたりすることも特徴の一つです。
貧困妄想(実際にはお金があるのに「まったくお金がない」と考えてしまう)や罪業妄想(自分を罪深い存在だと自責の念にとらわれてしまう)などが起こることもあります。
高齢者のうつ病は認知症との区別がつきにくいので注意が必要です。
以下の様な危険因子を見つけた場合は注意しましょう。
一般のうつ病治療法と同じく薬物投与を行います。
抗うつ剤は服用を始めてから効果が現れるまでには時間がかかります。効果が出るまでの時間は使用する薬剤、投与量によっても違いますが、特に高齢者には副作用が強く出るという特徴があります。
主に、口の渇き、眠気、めまい、かすみ目、手の震え、排尿困難、便秘などがあります。副作用を心配するあまり、勝手に薬の服用を中止する人も多いようですが、薬効と副作用には時間差があることを理解しておきましょう。
他にも専門家が行う「うつ病の治療法」にグループ療法(行動療法)というものがあります。
同世代の患者グループを作り、互いに病苦や心労だけでなく自分の人生を話し合うことで、心理的療法の効果を得る方法です。
似た境遇の同世代とコミニュケーションを取ることで、孤独感や孤立感の解消につながり、よい刺激を受けてうつ病からの回復を促します。
高齢者に多いうつ病などの気分障害ですが、認知症など誤診してしまい、発見が遅れてしまう場合があります。
しっかりとうつ病などを理解し、適切な対処をしましょう。