認知症の方を介護する場合、どうしてもお世話をすることがメインになってくると思います。しかし、介護は毎日続くものですから、介護される側も介護する側もできるだけ負担なく続けることが理想です。
この料理療法は、薬に頼らないリハビリケアとして、着目されています。料理というと、安全面で躊躇されることもありますが、認知症の方でもできることはたくさんあります。
今回は、認知症における料理療法について詳しく見ていきましょう。
認知症の症状を和らげ、リハビリも兼ね備える方法として“料理療法”があります。
料理を作るということは、バランスの良い2~3品の献立を考え、冷蔵庫にあるもの、これから購入するものを見極め買い物に行く、適切な大きさのボールや鍋を使いながら完成時間を予想しつつ作り上げる、といったプロセスが必要です。また、出来上がった料理を盛り付け配膳し、後片づけまで考えると、実は、相当のリハビリケアにつながります。また、実際においしく食べられるということで達成感や満足感の得られやすい活動ともいえるでしょう。認知症の進行を遅らせる予防としても効果的になっています。
下記のように、料理療法の報告事例もあります。
高齢者施設における「料理療法」の試み
-片麻痺認知症高齢者を対象とした事例報告-
高齢者施設の料理活動を介入調査により,片麻痺の認知症高齢者に対する料理活動の支援方法を考察した。その結果,調理操作は,混ぜる,丸める,味付けなどの多様な調理操作が可能であった。は
さみの使用や,やわらかい野菜を準備するなど,工夫次第で切る調理も可能であった調理操作は,混ぜる,丸める,味付けなどの多様な調理操作が可能であった。はさみの使用や,やわらかい野菜を準備するなど,工夫次第で切る調理も可能であった。グループにおける調理活動の方法は,「出来ること」の少ない人から役割を決定すると個々の対象者の能力に応じた役割分担が可能だった。さらに料理活動参加により,コミュニケーション増加や,自信回復の機会となった。料理活動を行うことで認知症緩和の可能性もあることが示唆された。出典:京都教育大学紀要
それでは、認知症のケアとして、料理を取り上げるとき、どんな点に注意したら良いのかを具体的に見ていきましょう。
まず、一番肝心なことは、けがをしないようにすることです。料理は、火や刃物などを使うので、気を付けなければいけないことがたくさんあります。ただ、一概に危ないと避けさせる必要はありません。料理を作ることが長年、生活の営みだった高齢者にとっては、少しの注意点を伝えるだけで、上手に包丁を使える場合もあります。個々の能力に応じて慎重に判断しましょう。
具体的には
メニューを見ただけで出来上がりのイメージがしやすい一般的なメニューを取り入れる。またメニューを紙に書き、料理中、目につくところに貼っておくとよい。
認知症の程度によってできることも異なります。総合的に料理がスムーズに進むようなグループを作成する。
調味料を加える、火をかけるなど、特に料理の出来に大きく左右するポイントは、必ず声掛けをし、誘導する。
などがあげられます。
・小麦粉 100グラム ・卵 2個 ・長いも 100グラム ・キャベツ 1/2~1/3(400グラム) ・長ネギ 1/2本 ・水 200グラム ・豚バラ肉または小間切れ 200グラム ・和風だしの素(顆粒タイプ) 小1 ・揚げ玉 30グラム ・紅ショウガ 20グラム ・ソース お好みで ・マヨネーズ お好みで ・かつお節 お好みで ・青のり お好みで ・サラダ油 大2 ☆このほか、エビやイカ、きりいかなどお好みの具を加えるとよい。 |
・牛乳 200グラム ・卵 1個 ・砂糖 大1 ・あればバニラエッセンス 数滴 ・砂糖(カラメル用) 大1 |
いかがでしたか?認知症になると、最近のことはわからなくなっても、昔のことはよく覚えている、といった症状を耳にします。特に女性の場合、昔から作り続けてきたお料理になると、身体が覚えているので味見をしなくても、好みの味に仕上がったりするものです。
皮の剥き方が雑だったり、味付けに変化はあると思いますが、多少のことにはこだわらず、ぜひ認知症の方をお料理の先輩として、学び習得する気持ちで、介護をする自分自身も楽しんで積極的に料理療法に関わっていけたら良いですね。