介護施設ではレクリエーションを取り入れる事も多いです。その目的や効果にはどのようなものがあるのでしょうか。また、介護で行うレクの種類は豊富ですがどんなものがあるのでしょうか。今回は、介護現場で行われるレクリエーションの目的と効果についてまとめてみます。
介護施設では、高齢者が身体や脳を使って気軽にできるレクリエーションを導入しています。といってもその人の介護状態によって適したレクは違ってきます。
介護でレクを行う時、毎回同じようなレクや単純すぎるレクだと高齢者の方も退屈しますし、飽きてしまいますよね。介護レクは種類も豊富なので、色々なバリエーションを取り入れてあげた方が高齢者の方たちも喜びます。もしもあなたが現在介護スタッフとして働いていて、どんなレクリエーションをやっていこうか迷っているのであれば、下記のジャンルを参考にしてみてください。
代表的なのはダンスです。無理せずその人の体力や体調に合ったやり方で行いましょう。
また、普段は車椅子生活でも運動レクを楽しむ事はできます。レクの中にはその場でもできるエクササイズやダンスなどがあります。一人でやるだけではなく時にはチーム、ペアでやるなどして実施すれば、交流も深まり和やかなムードになるでしょう。
ただし、高齢者の方はその日によって身体の具合や気分が変わるため、その人の健康状態をその都度確認し、無理させないようにレクを実施します。体調に合わせてレクの難易度も調節してあげましょう。
老人ホームや介護施設で安定的な人気を誇るのが歌などの音楽レクです。歌う事でストレス発散になる他、肺も使うので心肺機能を鍛える事にもつながります。音楽レクは、音楽の特性を利用して「音楽療法」として全国に広がりつつあります。心身の回復や機能維持、生活の質向上にも役立つのでぜひ積極的に取り入れましょう。
高齢者向けレクの中でも、認知症予防に効果的なのがクイズや計算など頭を使った遊びです。最近ではネットを用いて取り組む脳トレ用のレクもダウンロードできるようになっています。うまく活用すれば高齢者の方も刺激を受けて楽しむ事ができ、飽きずに取り組めるはずです。遊び感覚で楽しめると同時に、脳の老化も防げるので一石二鳥ですね。
近代的なレクですが、ロボットと交流して楽しむレクもあります。現代では、動いたり会話できるロボットが登場してきています。その代表例が富士ソフトの「PALRO」です。
「会話できるロボット」として今注目されており、話しかければ答え、「踊って」と言えば踊ってくれるなど、意味を理解して反応してくれるので楽しいです。食事に関する豆知識も持っていて、まるで本当の人間のように温もりある介護をしてくれます。将来的に介護施設にも積極的に取り入れられると期待されています。
子供との触れ合いがこれにあたります。例えば子供に伝統的な遊びを教える機会を作れば、子供との交流を楽しめるだけでなく、子供への文化・教養につながるので社会貢献になりますよね。手作りした小物をバザーで売るイベントもこのレクに含まれます。
参加者たちの交流が深まり、みんなで楽しめるのがゲームレクです。パズルや漢字ゲームがあてはまります。認知症予防や進行防止につながりますが、あまりにも難しいと逆にストレスになってしまうので気をつけましょう。
高齢者にレクリエーションを行う機会をあえて作っているのには目的があります。その一つは、脳が衰えるのを防ぎ活性化させるためです。手先や頭を使う事によって脳が活発化すれば、認知症発症を防ぐ、遅らせるなどの効果が出ます。また、音楽療法や回想法なども認知症に役立つと考えられ、現在でも研究が進められています。計算や言葉遊びなどの脳トレは脳を活性化する事ができ、
などの行動を生み出すので認知症やボケ防止になります。その他にも
などのレクも認知症に良いとされています。すでに認知症にかかっている方でも、これらのレクで進行を食い止める事ができます。ただし、認知症の人は認知能力が低下しているので、ルールが複雑なものだとレクに参加意欲がなくなってしまうので、できれば簡単なルールで直観的に楽しめるレクを選んであげましょう。認知症の人は自発的に何かに興味を持つ事が困難なので、興味がわくような声かけや、楽しいレクの導入が必要です。介護スタッフの間でも協力し合い、積極的に声かけしていくといいでしょう。
身体を適度に動かす事で身体機能がキープでき、向上させる事が可能です。高齢者の方は、日常的に身体を動かす機会がどうしても減ってしまいがちです。運動する機会に乏しいと筋力はどんどん衰え、介護度も上がっていき、やがて自分一人では何もできなくなってしまいます。これに認知症も加わったら本当に厄介で生活しづらくなってしまいますよね。
総務省の統計によると、65歳~74歳のお年寄りの一日の時間の使い方は、下記のような結果になっています。
このような習慣を続けていると適度な運動をする時間が大幅に減り、身体機能はどんどん衰えていきます。これを防ぐためにも、身体を使うレクが大きな効果をもたらしてくれるのです。身体を使うレクは、普段身体を動かす機会が減ってしまった高齢者にとってとても貴重な時間となるでしょう。要介護者の人なら無理しない程度に身体を動かしていく事によって、機能回復効果も期待でき、自立支援につながります。要介護でない人にとっても、毎日適度に身体を動かす事は、身体機能を維持するために不可欠です。
昼間身体を適度に動かしていれば自然とお腹がへりますし、睡眠もスムーズになるといったように、生活リズムや体内時計も整い、健康面でメリットが増えます。身体を動かすという目的だけならリハビリもありますが、リハビリは本人にとって楽しむというより「訓練」という意識が強いので、なかなかリラックスして身体を動かす事はできないでしょう。ゲーム感覚のレクリエーションであれば楽しく身体を動かせますし、精神的にも充足して気分転換もはかれます。
高齢者の中には毎日寝たきりの生活をしている人や車椅子で生活している人もいて、それぞれ身体能力に差があります。車椅子の人なら、座ったままでも手足を動かせるエクササイズを取り入れてみましょう。くれぐれも身体能力の高い老人しかできないようなレクは選ばないようにしましょうね。
身体を動かす行為にはストレス解消効果があります。しかし高齢になってくると、意識しないとなかなか自発的に運動する事がなくなってきますよね。実際、日常的に散歩やスポーツなど運動している高齢者の人は少ないです。このような環境だと高齢者の方はなかなかストレスを発散できません。ストレスは認知症や糖尿病、心臓病のリスクも高めてしまい、あらゆる病気のきっかけとなってしまいます。
歌を歌う事だけでもストレス解消につながります。また、身体を動かしたり他の人と触れ合えるレクを通して、老人性うつ病や認知症を予防できるとも言われています。ちなみにレクリエーションをやる時、「今から~をやりましょう!」と指示して行うより、「今日は何がやりたいですか?」と選択できるように高齢者に声かけすると、積極的にレクに取り組んでくれるでしょう。
高齢者は身体も弱ってくるとどうしても引きこもりがちになりますが、自分ができる範囲のレクに参加していけば日々の活力へとつながり、こうした小さな積み重ねによって生活に「楽しみ」が生まれます。楽しみな事が増えればストレスもためにくく、毎日元気に生活でき、精神的にも安定してくるはずです。
フィンランドで行われた1400人以上を対象としたある調査では、趣味を持っている人ほど
記憶力がいいという結果が出ています。レクを趣味にして楽しく運動し、ストレスを吹き飛ばせるといいですね。
レクリエーションを通じて他の人とコミュニケーションする時間ができます。他の人と言葉を交わす事によって生きがいも生まれ、高齢者の生活はより豊かになっていきます。
生活に適度にコミュニケーションを入れる事で高齢者に良い影響がもたらされるでしょう。例えば、高齢者と子供が触れ合える機会を設け、幼稚園児と高齢者が積極的に接触できるレクを企画してみると、高齢者もコミュニケーションを楽しめる機会ができます。趣味を持つ事や社会と関わりを持つ事で、認知症予防ができるとも言われています。
いかがでしたか。レクリエーションと一言で言っても、色々なジャンルのレクがあるのが分かっていただけましたか。人は年齢がいくつになっても人間らしく生きるため、健康的に生きるためにレクリエーションが欠かせません。脳・身体・社会貢献、これらの観点から介護用レクを考えていきましょう。最近話題の、時代に合ったロボット導入も視野に入れてみるといいですね。