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介護保険制度や公的介護保険について学んでみよう!

2000年に介護保険制度が施行されてから、今年(2019年)で19年が経ちます。介護保険制度は過去に数回ほど改定もあり、あまり正確には理解していないという方も多いのではないでしょうか。介護保険はどういう条件で加入ができて、どのようなサービスが受けることができるのか、今回の記事でおさらいしてみましょう。

介護保険制度ってなに?

「介護保険」という言葉は知っていても、具体的にどんな保険制度なのかよく知らない、という方も多いですよね。介護保険制度は平成12年4月よりスタートした比較的新しい保険制度で、「介護を必要とする高齢者の、治療や階ごとにかかる費用を社会全体で支援するための保険制度」になります。少し堅苦しく聞こえますが、みなさんがイメージする保険と同じように、保険制度の加入者みんなが保険料を負担して、医療費が必要な方に給付される仕組みです。特徴として、介護保険は公的な介護保険制度になるので、年齢が40歳を超える方は全員加入する「義務」があります。普段みなさんが見ている給与明細にも40歳を迎えた月から社会保険料の控除欄の一つに「介護保険料」という費目が追加され、いくらか支給合計から天引きされることになります。この介護保険料は、40歳から納付(控除)が開始され、定年退職後に年金生活を送ることになっても、年金から天引きされ、死ぬまで支払いは続けることになります。
定年を迎えても保険料を支払い続けるということに驚かれた方も多いのではないでしょうか。さらに介護保険料は決して安い金額ではありません。みなさんがお住まいになられている市区町村や世帯収入などによって多少異なりますが、全国の平均で約5,400円ほどといわれています。普段、この介護保険制度を使うことがあれば支払い続けることも苦ではないですが、実はこの介護保険制度を使うことのできる人は限られています。介護保険で受けられるサービスのことを「介護サービス」と呼びますが、この「介護サービス」を受けるには下記のような条件がありますので、ご参照下さい。

介護サービスを受けることができる被保険者とは?

いつからどのようなサービスが受けられるのかというと、まずは年齢で区分されます。
以下のように64歳までと、65歳以上で区分けされています。

・65歳以上(第1号被保険者)
要介護認定において、いつでも介護保険のサービスを受ける事が可能です。
・40~64歳(第2号被保険者)
初期の認知症や、脳血管疾患など老化が原因とおされる疾病(具体的には16種類ある特定疾病)により、「要介護状態」あるいは「要支援状態」と認定された場合に限り、介護サービスを受けることができます。介護保険の対象となる疾病は、以下のようになっております。
介護保険の対象となる特定疾病
1.がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)※
2.関節リウマチ※
3.筋萎縮性側索硬化症
4.後縦靱帯骨化症
5.骨折を伴う骨粗鬆症
6.初老期における認知症
7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病※
【パーキンソン病関連疾患】
8.脊髄小脳変性症
9.脊柱管狭窄症
10.早老症
11.多系統萎縮症※
12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
13.脳血管疾患
14.閉塞性動脈硬化症
15.慢性閉塞性肺疾患
16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
(※印は平成18年4月に追加、見直しがなされたもの)

参照:厚生労働省ホームページより

介護サービスは、介護保険制度に加入していれば受けることができるかというと、残念ながらそうではありません。加入者の中でも65歳以上、つまり第1号被保険者が対象となります。もちろん第2号被保険者にあたる40歳から65歳未満の方にも介護保険料の支払い義務は発生しますが、老化を起因として発症する特定疾病により介護が必要と判断された場合を除いて介護サービスを受けることはできません。一例として若くして特定疾患などの病気になってしまい、介護が必要となってしまった場合、40歳からサービスを受けることができます。しかしながら、介護サービスを受けるのも無料ではありません。介護サービスを受ける側になっても保険料の支払いはもちろんありますし、介護費用の一割を負担しなくてはいけません。そしてそのサービスの内容も介護度に応じて支給限度額が存在します。支給限度額内であれば1割負担となりますが、支給限度額を超えてしまうとその分は全額負担することになります。
※この支給限度額に関しては2015年の制度改正で、一定以上の所得のある利用者に対しては自己負担額を2割へ引き上げとなり、高所得者に関しては、2018年8月より3割となっております(詳しくは後述いたします)。

公的介護保険で受けることができる保障内容とは?

それではいざ自分や、自分の親が介護を必要だと思った場合、どのようにしたら介護保険を受けられるのでしょうか?介護サービスを受けるには「要介護認定」されなくてはいけないので、まず申請をする必要があります。申請を行う場所は、現在お住まいになられている市町村の窓口で行えます。その後、介護が必要な状態かどうか訪問調査が行われます。これは市町村の職員や、市町村から委託された介護支援専門員が家庭訪問し、調査票に記入します。その後、要介護認定が下りれば申請手続きが完了になります。

介護サービスを受けるには、
1.要介護認定されていること
2.ケアマネージャーが作成するケアプランに組み込まれていること

以上の2点が必要になるので、要介護認定をされたらケアマネージャーとの面談後にプランを作成してもらいます。他の制度でも同様ですが、サービスを受けるには積極的な申請が必要です。何もしなくてもお金は天引きされますが、申請をしなければサービスを受けることは出来ません。ざっくりとした計算になりますが、所得が290万円以上の方であれば、40歳から払い始めて、65歳になるまでに約30万円ほど支払うことになります。数字だけ見ると、少々高く感じますよね?しかし、介護が必要な状態になれば、すぐに「元」はとれます。もちろん、介護が必要にならないような生活を送ることができるのが一番ですが。もし介護サービスを受けたいと思ったら、市町村の窓口又は地域包括支援センターに電話してください。「介護認定を受けたい」と言えば担当窓口につないでくれます。この「介護あるいは支援を要する状態」は下記の通り、全部で7つの段階に分けられています。それぞれの“目安”を記載しておきます。それぞれに支給限度額も設定されています。要支援と要介護の一番大きな違いは、要支援者は施設に入所する「施設サービス」を受けることは出来ません。

要支援1 食事、排泄など、日常生活のほとんどは自力でできるが、掃除や起き上がる際に支えてもらう等、多少の支援を必要としている状態
要支援2 要支援1よりも、さらに、支援を要する幅が広くなった状態
要介護1 一人暮らしするには少し厳しくなってくる、家族の同居が望ましい状態
要介護2 車椅子を使用していたり、一人暮らしするには厳しい状態
要介護3 食事、排泄など生活に欠かせない行為が自力では難しく介護を必要とする状態
要介護4 日常生活全般的に、介護の手が必要な状態。家族の助けだけでは厳しいレベル
要介護5 寝たきりの状態。経管栄養や終末期医療など、介護の最終段階をさす

介護保険制度で受けられる内容とはどんなもの?

介護保険制度で受けられるサービスは、主に以下の通りです。

・ホームヘルパーサービス
・ショートステイ
・デイケア(リハビリ)
・デイサービス
・訪問介護
・訪問入浴介護
・訪問リハビリ

※この他にもあります。サービス内容は、要介護状態区分によって異なります。

・自宅で生活する人を対象としたサービス…居宅サービス
・施設に入所する人対象のサービス…施設サービス
・高齢者の方が、馴染みある環境や地域できめ細かく配慮されたサービス…地域密着型サービス

要介護認定を受けていれば、居宅と施設、いずれのサービスも受けられます。
しかし、公平に介護サービスを受けられるよう「区分支給限度基準額」が定められているので、必要以上に贅沢なサービスを受ける…といったことはできないようになっています。
要支援1<要支援2<要介護1<要介護2<・・・<要介護5
の順に、1ヶ月ごとのサービス利用限度額が大きくなっていきます。
例えば、「居宅介護サービス費等及び介護予防サービス費」における限度基準額は、要支援1では50030円/月ですが、要介護5では360,650円/月となっています。
より高いサービスを必要としている方に、高いサービスを受けてもらえるよう、定められている仕組みなのですね。護保険は施工から5年後を目途に、必要な見直しを行うことになっていましたので、2005(平成17年)、2011年(平成23年)、2014年(平成26年)に改正されました。制度が変わるとそれまで受けていた介護サービスを受けることが出来なくなることもありますので、現場では対応に追われます。

保険料の控除は何歳から?どうやって金額は決まるの?

誰しもが40歳を迎えると介護保険の加入者となり、保険料の支払いがスタートすることは先ほどお話しましたが、ここではさらに詳しく、保険料の決め方や算出方法についてご説明したいと思います。保険料を決まるのは被保険者の種別によってその算出方法が異なり、年齢によって種別が分かれています。40歳から64歳が第2号被保険者、65歳以上は第1号被保険者となります。第2号被保険者は、それぞれが加入している健康保険組合によって計算式が異なり、協会けんぽなど職場の医療保険に加入されている方は、標準報酬月額(標準賞与額)に介護保険料率をかけて算出されます。「標準報酬月額(標準賞与額)」「介護保険料率」ってまた難しそうな言葉が出てきましたね。協会けんぽを例に説明すると、標準報酬月額とは第1級(5万8千円)から第50級(139万円)までの50段階に区分された保険料額表から当てはまる等級を選び、そこに記載されている月額が標準報酬月額となります。つぎに標準賞与額とは、賞与の査定期間が3カ月以上ある場合の賞与から千円未満を切り捨てた金額のことを指します。※標準報酬月額は、給料や俸給、各種手当の他にどのような名称のものであっても、労務の対価として受け取るすべてが含まれます。介護保険料率は標準報酬月額とはちがい、年度や健康保険組合によって料率が異なります。こちらも協会けんぽを例に出すと、平成30年の3月分から1.57%となっています。文章だけだとわかりにくいので、一度計算してみましょう。下記の例をご参照下さい。

例:都内に住むAさんが月額21万円で賞与が35万5,500円と仮定すると、介護保険料は以下のように算出されます。
東京都の場合、月額21万円は第17級に該当するので、
200,000(標準報酬月額)×1.57%(介護保険料)=3,140 
355,000(標準賞与額)×1.57%(介護保険料)=5,573
となり、この金額から事業主と折半する金額を差し引くと月額の介護保険料は1,570円となり、賞与に対する介護保険料は2,786円となります。

上記の例を元に一度、ご自身の介護保険料を計算してみてはいかがでしょうか。
なお、補足になりますが、被扶養配偶者は個別に介護保険料を負担する必要はありません。
つづいて、65歳以上が対象の第1号被保険者について説明します。介護保険料は市区町村ごとに基準額が定められており、対象者本人の所得や世帯の所得によって6段階の料率が設定されています。それによって算出された介護保険料は年金から天引きされますが、働いている場合であっても、65歳以上になるとお住まいの市区町村へ保険料を納付する必要があるのです。

介護保険被保険者証ってどこでもらうことができるの?

・第1号被保険者(65歳以上の方)
65歳を迎えた月に介護保険被保険者証がお住まいの市区町村の介護保険課などからご自宅へ郵送されてきます。
・第2号被保険者(40歳から65歳未満の方)
特定疾病によって介護認定を受けていない限りは、原則発行はされません。

もし保険証を紛失してしまった場合は、身分証明書とマイナンバーが確認できるものを持って、お近くの出張所や各総合支所保健福祉課などに行っていただくと再交付の手続きを行うことができます。尚、現在は介護保険証に有効期限はありません。ただし、要介護・要支援認定に関しては有効期限があるため、注意が必要です。

介護保険でどんなサービスが受けられるの?

それでは、「介護保険」で受けることのできる、肝心のサービスの内容はどのようなものがあるのでしょうか?
サービス内容は様々な種類がありますが、主なサービスをいくつか紹介していきます。

居宅サービス(自宅に住みながら利用できるサービス)
・訪問介護(食事や掃除、排泄などの介助、家事全般のサポートなど)
・訪問入浴介護(移動式の浴槽を用いて入浴の介助を行う)
・訪問看護(医師の指示に基づいて、床ずれの予防やたん吸引など医療処置や医療機器の管理を行う)
・訪問リハビリテーション(主に理学療法士などが利用者の自宅にてリハビリの指導を行う)
・デイサービス(送迎車に乗って施設まで向かい、リハビリやレクなどの提供を受ける)
・デイケア(主に介護老人保健施設や病院などで理学療法士や作業療法士からのリハビリ指導を受ける)
・短期入所型介護(ショートステイなど数日から数週間を目安に施設へ宿泊し、食事や排泄の介助やリハビリ・レクの提供を受ける)
・福祉用具貸与(車椅子や介護ベッドといった福祉用具のレンタル)
・住宅改修費支給(バリアフリーに向けた自宅の改修工事を行う際に20万円を上限に補助金が支給されるサービス)
施設サービス(施設に入居して利用できるサービス)
・介護老人保健施設(一定期間入居して、食事や排泄などの介護とあわせて医療処置も受けることができる)
・特別養護老人ホーム(長期間入居して、食事や排泄の介護とリハビリやレクの提供を受ける)
・介護療養型医療施設(医学的管理のもと、食事や排泄などの介護を受けることができる)
地域密着型サービス(介護が必要になった利用者が住み慣れた地域で生活するために、地域一体となって支援するサービス)
・訪問・通所型サービス(自宅住まいの利用者を施設に受け入れる、または訪問して生活支援や介護などのサービスを提供する)
・認知症対応型サービス(自宅住まい、またはグループホーム内に入居する患者に対して、生活視線や認知症ケアなどのサービスを提供する)
・施設・特定施設型サービス(特別養護老人ホームや有料老人ホームに入居する方に、生活視線や介護・リハビリなどのサービスを提供する)

介護サービスの申請方法って?

サービスの内容については上述したとおりになりますが、実際に介護保険を利用するには申請が必要になります。まず現在お住まいの市区町村の窓口に行っていただきます。その際にご準備いただくものは、要介護認定申請書(窓口で入手可能)、介護保険被保険者証、マイナンバー、身分証明書の4点です。書類が受理されたら、役所の担当者が自宅まで訪問調査を行いに来る日程を調整します。調査は一次と二次に分かれており、一次では訪問調査で得られた情報(家族構成、生活・認知機能、要介護レベルなど)をもとに、全国一律で定められた判定方式によって、要介護度の判定が行われます。一次の判定結果と主治医の意見書をもとに、介護認定審査会による要介護度の最終判定となります。申請から認定が出るまで、およそ30日から2カ月程度かかるので、早めに申請を行っておくと良いでしょう。
無事、要介護認定となったら、介護サービスを利用できるようになりますが、利用する前に「介護サービス計画書(ケアプラン)」を作成しなければなりません。このケアプランの作成を行うのが、介護支援専門員(ケアマネジャー)になります。ケアマネージャーについては、お住まいの市区町村または地域包括支援センターなどで一覧のリストをもらえるので、その中から人柄や知識・経験、コミュニケーション能力などをみて、一番自分に合いそうな人を選びましょう。ケアプランの内容やケアマネジャーの対応に不満を感じたら、サービスの途中であってもケアマネージャーや事業所を変更することも可能ですが、面談などを通じて介護の状況や利用者の性格といった、多くの情報をケアマネージャーに伝えることによって、最適なケアプラン、充実した介護サービスに繋がっていきますので、不安に思うことがあればどんなに小さいことでもケアマネージャーに相談してみると良いでしょう。

介護予防にも利用できる!予防給付について

予防給付(介護予防サービス)は、要支援1・2と判定された方が対象となります。
要支援1は、食事や排泄は一人でなんとかできるが、日常生活の一部(例えば掃除など)が介助がないとできないという状態を指しており、要支援2はそれに加え、立ち上がる時などに介助が必要な状態を指しています。そのような状態の要支援者に対して、生活機能の維持や向上を図るために予防給付(介護予防サービス)が提供されているのです。予防給付でも、要介護認定された方と同じように、ケアプランの作成、訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタルから住宅のリフォームといったサービスを利用することが可能です。自己負担の割合も1~3割と変わりません。ただし、支給限度額が要介護と比べて低い水準となっています。

自己負担の割合は?

介護保険は要介護度別に支給限度が決められていて、その限度額内で利用したサービスの費用の1~3割が自己負担となります。この支給限度を超えるサービスを利用した場合は、限度額を超えた分を全額自己負担とすることになります。それでは、限度額内でサービスを利用できる場合、自己負担の割合はどのようにして決まるのか、気になるところですよね。元々、自己負担の割合は原則1割とされていましたが、2015年の介護保険制度の改正により、一定以上の所得がある方に限り、自己負担の割合が2割に引き上げられ、さらに2018年からその2割負担者の一部のみ3割負担へ引き上げられています。
それでは「一定以上の所得」とはどのくらいなのでしょうか。まず3割負担になるのは、65歳以上の方で、合計所得金額(年金収入+その他の収入)が220万円以上の方が該当します。ただし例外として、合計所得金額が220万円を超えていても、単身世帯で340万円未満、2人以上の世帯で463万円未満であれば3割負担の対象外となり、2割もしくは1割負担となります。つづいて2割負担になるのは、65歳以上の方で、合計所得金額が160万円以上220万円未満の方が該当します。こちらも例外として、160万円以上であっても単身世帯で280万円未満、2人以上の世帯で346万円未満であれば2割負担の対象外となり、1割負担となります。それ以外の65歳以上で合計所得金額が160万円未満の方は1割負担となっています。
表にまとめてみましたので、下記をご参照下さい。

単身世帯 夫婦世帯 負担割合
年金収入等 340万円以上 年金収入等 463万円以上 3割
年金収入等 280万円以上 年金収入等 346万円以上 2割
年金収入等 280万円未満 年金収入等 346万円未満 1割

自己負担が3割というのは相当高い数値と感じますが、厚生労働省の試算によると、介護保険受給者496万人に対して、3割負担になるのは約12万人。全体の約3%に留まるとされています。つまり、現時点では影響を受ける世帯はそこまで多くはない、と言えましょう。
参照:厚生労働省「介護保険制度の見直しについて」より

介護保険は月間で利用できる上限金額が決まっている

先ほど支給限度額の話が少し出ましたが、介護保険は要支援・要介護度によって支給限度額が定められています。ケアマネジャーは基本的にこの支給限度額を超えない範囲でケアプランの作成を行います。介護度が高くなるほど、それに比例して限度額も高くなっていきます。お住まいの地域によって多少異なりますが、サービスの単価は1単位およそ10円で計算されています。一例として表にまとめてみましたので、参考までにご覧ください。(平成30年3月末時点より)

介護度 給付限度額  
要支援1 5,003単位(50,030円~57,034円程度)
要支援2 10,473単位(104,730円~119,392円程度)
要介護1 16,692単位(166,920円~190,288円程度)
要介護2 19,616単位(196,160円~223,622円程度)
要介護3 26,931単位(269,310円~307,013円程度)
要介護4 30,806単位(308,060円~351,188円程度)
要介護5 36,065単位(360,650円~411,141円程度)
介護度 1割負担 2割負担 3割負担
要支援1 5,003円 10,006円 15,009円
要支援2 10,473円 20,946円 31,419円
要介護1 16,692円 33,384円 50,076円
要介護2 19,616円 39,232円 58,848円
要介護3 26,931円 53,862円 80,793円
要介護4 30,806円 61,612円 92,418円
要介護5 36,065円 72,130円 108,195円

介護保険の負担限度額認定制度って?

所得の低い方を対象に、一定の条件を満たせば、介護保険施設を利用する際に必要な住居費や食費を軽減できる制度があります。お住いの市区町村に必要書類等を提出した上で申請して、認定された場合に認定証が発行されます。

介護保険制度の歴史

日本における介護保険制度は、1960年代の老人福祉政策が始まりとされており、その時代の高齢化率は5.7%と、アメリカやスウェーデンよりも低い水準にありました。ちょうどこの時代に、訪問介護事業が創設されます。1970年代に老人医療費の無料化が施行され、ショートステイやデイサービスが創設されていきます。1980年代には、社会問題として社会的入院や寝たきり老人が話題となり、この頃から医療費が高騰し始めます。高齢化率も9.1%を占め、介護施設の整備が喫緊の課題となってきたのです。その後、1990年代になると高齢化率は12%になり、約5人に1人が高齢者を支えていく時代になりました。これを危惧して厚生省に高齢者介護対策本部が設置され、介護保険法が成立したことによって、2000年代から介護保険制度が施行されました。これによって、従来の老人福祉制度などでは補えなかった部分までカバーし、高齢者の介護を社会全体が支え合う仕組みが誕生しました。

引用:総務省統計局「平成27年国勢調査

介護保険制度の改正と今後について

介護保険制度は創設されてから18年が経過し、65歳以上の被保険者数の増加とともに、サービスの利用者数もおよそ3倍にまで増加しています。各市区町村は3年に1回のペースで介護保険事業計画を策定し、高齢化の進展にあわせて3年ごとに内容の見直しを行っています。現在の試算で、保険料が全国平均で2020年には6,771円、2025年には8,165円にまで上昇することが見込まれているため、介護保険制度が今後も高齢者やその家族の方の支えとなるよう、地域包括ケアシステムの構築とあわせて、費用負担の公平化や重点化・効率化がより一層求められています。

平成12年4月 介護保険法施行
平成17年改正(平成18年4月等施行)

・介護予防の重視(要支援者への給付を介護予防給付に。介護予防ケアマネジメントは地域包括支援センターが実施。介護予防事業、包括的支援事業などの地域支援事業の実施)

・施設給付の見直し(食費・居住費を保健給付の対象外に。所得の低い方への補足給付)(平成17年10月)

・地域密着サービスの創設、介護サービス情報の公表、負担能力をきめ細かく反映した第1号保険料の設定など

平成20年改正(平成21年5月施行)
・介護サービス事業者の法令遵守等の業務管理体制の設備。休止・廃止の事前届出制。休止・廃止時のサービス確保の義務化など
平成23年改正(平成24年4月等施行)

・地域包括ケアの推進。24時間対応の定期巡回・随時対応サービスや複合型サービスの創設。介護予防・日常生活支援総合事業の創設。介護療養病床の廃止期限の猶予(公布日)

・介護職員によるたんの吸引等。有料老人ホーム等における前払金の返還に関わる利用者保護

・介護保険事業計画と医療サービス、住まいに関する計画との調和。地域密着型サービスの公募・選考による指定を可能に。各都道府県の財政安定化基金の取り崩しなど

平成26年改正(平成27年4月等施行)

・地域包括ケアシステムの構造に向けた地域支援事業の充実(在宅医療・介護連携、認知症施策の推進等)

・全国一律の予防給付(訪問介護・通所介護)を市町村が取り組む地域支援事業に移行し、多様化

・低所得の第一号保険者の保険料の軽減割合を拡大

・一定以上の所得のある利用者の自己負担を引上げ(平成27年8月)など

平成29年改正(平成30年4月等施行)

・全市町村が保険者機能を発揮し、自立支援・重度化防止に向けて取り組む仕組みの制度化

・「日常的な医学管理」、「看取り・ターミナル」等の機能と「生活施設」としての機能を兼ね備えた、介護医療院の創設

・介護保険と障害福祉制度に新たな共生型サービスを位置づけ

・特に所得の高い層の利用者負担割合の見直し(2割→3割)、介護納付金への総報酬割の導入など

引用:厚生労働省「公的介護保険制度の現状と今後の役割」より

日常生活支援総合事業などの新しい制度

2015年の介護保険制度改正により、新たに「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)が創設されました。2017年4月以降、全国の市区町村にてサービスが開始されております。今までの介護予防制度と違うのは、要介護認定の申請を行わずとも、介護予防のサービスを利用できるようになりました。対象になる方も、要支援者及び何らかの支援が必要な65歳以上すべての高齢者となっております。NPOやボランティア団体、民間企業などによるサービス提供も可能となります。

介護保険外サービスとは?

これまで介護保険サービスについて説明してきましたが、年々高齢化が加速するにつれ、公的なサービスだけでは多様化する介護のニーズに対応できなくなってきている現実も出てきています。そこで利用者のニーズにあった、付加価値の高いサービスを提供する目的で生まれた制度が介護保険外サービスになります。介護保険が適用されないというデメリットがありますが、介護保険サービスでは提供が難しいサービスを受けることができる大きなメリットがあります。たとえば、趣味や学びの機会を提供したり、体操や身体への負荷が少ないスポーツを一緒に行うなど、利用者の趣向や生きがいづくりにフォーカスしたサービス内容となっています。従来の介護保険サービスと組み合わせて、利用者がより良い生活を過ごしていけるように工夫していくといいですね。

まとめ
介護保険制度には細かい審査やルールなどがあり、初めて利用になる方にとってはハードルが高く感じるかもしれませんが、利用者やその家族の方にとっては、非常に頼りになる制度です。要支援・要介護状態の段階や、本人の所得などによって受けられるサービスや支給限度額も異なります。毎月天引きされる介護保険料を無駄にしないためにも、今回の記事をご参照いただいて、介護保険制度について理解を深め、いざ介護や支援が必要となった時に適切なサービスを受けるためにも、上手く介護保険制度を活用できるようにしましょう。