介護業界において、「中間管理職」のような立ち位置で、縁の下の力持ちとして働いているのが”生活相談員”(ソーシャルワーカーとも)です。その役目は重要であるのと同時に、ストレスが溜まりやすく、非常に過酷な職業とされています。今回の記事では、”生活相談員”について改めて学んだ上で、既に”生活相談員”として勤務されていて、転職を検討している方に向けた注意点やポイントなどを紹介していきます。ぜひ、ご参考になさってください!
よく勘違いされているのが、”生活相談員”という資格があるわけではない、ということです。生活相談員は介護の職種であり、主に福祉介護施設で活躍している職業となります。介護老人保健施設で働く似たような名前の職種として“支援相談員”がありますが、生活相談員と仕事の内容は同じです。勤務先によって名称に違いはあれど、資格要件や仕事の内容は基本的には同一のものであるため、現場においては単に”相談員”となる場合も多いようです。生活相談員の資格要件、主な仕事内容及び活躍している職場に関しては、以下をご参照ください。
主な資格要件 |
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・社会福祉士(国家資格) ・精神保健福祉士(国家資格) ・社会福祉主事任用資格(任用資格) |
自治体独自が定めた資格要件(一例) |
・介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネージャー) ・介護支援専門員、1年以上介護業務または相談業務に従事した介護福祉士 ・社会福祉施設等で2年以上介護又は相談業務に従事した者 ・特別養護老人ホームにおいて、介護の提供に係る計画の作成に関し、1年以上(勤務日数180日以上)の実務経験を有する者 |
・入所施設の入退所手続き業務 ・通所、短期入所などの居宅サービスの利用開始や中止に係る業務(利用者面接とアセスメント) ・通所、短期入所などの居宅サービスの個別援助計画の作成業務 ・入所施設のケアプラン作成への援助業務 ・利用者とその家族との相談業務 ・ケアマネジャー、介護職員との連絡窓口 ・苦情やクレームの窓口調整業務 ・地域との連携・調整など |
・介護老人保健施設(老健) ・特別養護老人ホーム(特養) ・デイサービス(通所介護) ・デイケア(通所リハビリテーション) ・ショートステイ(短期入所生活介護) ・有料老人ホーム ・養護老人ホーム ・軽費老人ホーム ・障害福祉施設 ・病院 ・クリニック ・グループホーム ・サービス付き高齢者住宅 ・居宅介護支援事業所 ・小規模多機能型施設…等 |
冒頭で述べたように、生活相談員は介護業界においては「中間管理職」のような立場であって、介護職としてのやりがいを感じられるのと同時に、ストレスも溜まりやすい過酷な職種です。
それでは、生活相談員はどのような場面で、またはどういった理由でストレスを感じてしまうのでしょうか。幾つかの例を挙げて、解説していきます。
理由① 業務量の多さ |
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先述しました生活相談員の主な仕事内容は、あくまで業務の一部となります。実際には、相談援助や施設の説明・受付、契約などの本来の業務に加えて、通常の介護職としての仕事や事務作業、他の職種の窓口としての役割も担います。つまり、介護職のあらゆる業務を兼任し、「介護現場のオールラウンダー」として、便利屋さんのような立場を強いられているとも言えるのです。また、勤務する施設によって、求められる仕事内容にも多少の違いがあるようです。 そのような業務になってしまう理由として、業務範囲が法的にも明確に定められていない職種であるということが挙げられます。だからこそ、精神的にも肉体的にもハードな仕事内容となってしまい、退職を余儀なくされてしまうケースも多々あるようです。 |
理由② 人間関係の難しさ |
生活相談員の重要な仕事として、人と人とを繋ぐというものがあります。ケアマネージャーや介護士、看護師といった職場のスタッフ、利用者とそのご家族、行政や施設のお偉方等々、様々な人の意見をすり合わせて、調整していくことは並大抵の努力で実現できるものではありません。 他職種が集まる介護施設では、それぞれの価値観を持って働いている方が多く、全く違う意見や考え方を持っている職員の中で、中心的な役割を担って良好な人間関係を築いていかなくてはならない生活相談員という立場は、非常に難しく気苦労も絶えないと言えるでしょう。 |
理由③ 待遇面の不満 |
基本的には、生活相談員は介護士からのキャリアアップという捉え方をされています。にも関わらず、給与面においては月給にして平均20~25万程度となっています。勤務地域や雇用形態、所持資格、実務経験によって多少の変化はありますが、あまり好待遇とは言えないのが現状です。 また、本来の業務である相談員業務に専念する場合、「介護職員処遇改善加算」が付きませんので、場合によっては現場で介護業務を行う介護士よりも給与が低くなってしまうケースもあるようです。 |
生活相談員の方におすすめのストレス解消法は、以前当コラムでも紹介しておりますが、どうしても転職したいとお考えの方に、幾つかの例や注意点、チェックすべきポイントなどを挙げていきたいと思います。
「生活相談員としては働きたいけど、今の職場では……」と考えている方も多いのではないでしょうか。これまで説明してきたように、業務的な辛さなどで人気の職種とは言い難い生活相談員ではありますが、施設側にとっては、常に欲しい人材であるというのも事実です。介護施設によっては、生活相談員(もしくは支援相談員)の配置義務が定められていることもあり、生活相談員としての転職の際には、給与面や待遇面などの交渉が有利とされています。
待遇面について述べた際に、「介護職員処遇改善加算」について触れました。「介護職員処遇改善加算」とは、介護サービスに従事する介護職員の賃金改善に充てることを目的に創設されたものになります。介護の需要が加速度的に高まっている現代において、介護士の待遇は更に改善されていくことが予想されます。生活相談員の待遇が変わらないのであれば、介護士に戻るという選択も一つの手段です。
せっかく生活相談員としてのキャリアがあるのなら、更なるキャリアアップを目指すという選択肢も検討すべきです。既に実務者研修の資格を保有していて、生活相談員として5年以上の実務経験がある方なら、ケアマネージャーの資格を取得することを目指してみてはいかがでしょうか。決して簡単な道のりではありませんが、介護職としては給料という面においてもトップクラスに高く、生活相談員のキャリアアップとして魅力的な職種と言えましょう。また、社会福祉士や精神保健福祉士、介護福祉士といった福祉系の国家資格を保有している方であれば、それぞれの資格を活かした道に進むということも選択肢の一つに入れておきましょう。
「もう介護や福祉業界では働けない……」となった場合に、生活相談員として働いた経験を活かせる他の職種には、どういったものがあるでしょうか。生活相談員に必要な接客能力、コミュニケーション能力などを活かすのであれば、営業職や接客業を、事務処理の能力を活かすのであれば、事務職や総務などの業種が考えられます。重要なのは、「生活相談員を辞めたい」となった場合に、一体何が不満であるのかを自分自身で明確にすることです。利用者とのコミュニケーションが辛かったという理由であるなら、他の接客業に転職してしまうと、同じような悩みを抱えることになります。生活相談員のキャリアを経て、自分にとって苦手なことを得意なことを見極めた上で、最適な他の職種に転職できるように、慎重に検討することを心掛けましょう。