介護業界の人材不足という問題は、誰でも一度は耳にしたことがあるかと思います。
2017年に公益財団法人介護労働安定センターで実施された「介護労働実態調査」の結果によると、従業員の過不足について「大いに不足」「不足」「やや不足」と感じたのは全体の約66%を占め、4年連続で人手不足感の増加が顕著に表れる結果となりました。
「不足感」の内訳を詳しく見てみると、施設で働く介護職員の不足感が6割程度なのに対して、訪問介護員はおよそ8割もの事業所が不足感を抱いており、非正規職員の離職率が高い介護業界において、訪問介護員のおよそ7割が非正規職員にあたることが不足感の増加をもたらしていることが考えられます。
中小企業の人手不足感の平均が40~50%程度であることを考えると、残念ながら介護業界は、他の産業と比べても人材の不足感が極めて高い業界といえるでしょう。
なぜ、介護業界はこの人手不足問題からなかなか抜け出せないのでしょうか。今回の記事では、その背景から対策までを詳しく解説していきます。
出典:公益財団法人 介護労働安定センター
介護業界の人手不足の背景には「離職率が高い業界」というイメージがありませんか?
今回のアンケート調査の結果によると、実はおよそ8割の事業所が「採用が困難である」ことを人手不足の原因として挙げています。世間のイメージとして強い「離職率が高いから」と答えた事業所は全体の2割程度しかいない結果になっているのです。
介護業界の離職率は、平成29年度「介護労働実態調査」の結果によると、16.2%となっております。他の産業の14.9%と比べてやや高い水準ではありますが、著しく差があるというわけではありません。「採用が困難である」ことを人手不足に陥っている主原因と答えた事業所に対して、さらに「採用が困難になっているのはなぜか?」と質問をしたところ、最も多かったのが「同業他社との人材獲得競争が厳しい(56.9%)」、次いで「他産業に比べて、労働条件が良くない(55.9%)」という回答でした。介護サービスを運営していく上での問題点でも、利用者の獲得や、従業員の教育・研修よりも「良質な人材の確保が難しい」「今の介護報酬では人材確保・定着のために十分な賃金を支払えない」といった回答が半数以上を占めています。高齢者の増加、利用者のさまざまなニーズを満たすために、各社の熾烈な採用競争が増していく中で、そう感じている事業所が多いのかもしれません。介護業界全体をみても、2020年度にはおよそ26万人の介護職員を確保する必要があるといわれている状況を考えると、一刻も早く新たな採用対策をとらなければ、介護業界の人手不足が解消される可能性は極めて低いといえるでしょう。
出典:公益財団法人 介護労働安定センター
介護職の労働環境が良くないとされている原因の多くはやはり人手不足に起因しているように思われますが、具体的にどのような環境なのでしょうか。いくつかピックアップしてみました。
①介護職員の給与の現状 | |
---|---|
介護職員の平均賃金(月給)は211,464 円なのに対して、訪問介護員の平均賃金は198,486円で2016年度の197,041円よりも多少アップはしたものの、唯一20万円の壁を越えられないでいるのが現状です。 2017年度実施された賃金構造基本統計調査(厚生労働省)によると、全産業の一般労働者の平均賃金が304,300円となっているので、他の産業と介護業界を比較した場合、給与の面で労働条件が良くなったとは、現時点では残念ながら言えません。 ただし、この統計調査の「賃金」の定義は、時間外勤務手当や深夜勤務手当、宿日直手当などは含まれていないので、実際は介護職員の平均賃金はもう少し高く、他の産業との賃金格差も縮まっているのかもしれません。 |
引用:公益財団法人 介護労働安定センター 平成29年度 「介護労働実態調査」の結果より
②ハラスメントの実情について | |
---|---|
賃金の介護職の労働条件が良くないとされている原因のひとつがセクハラ・パワハラ問題です。日本介護クラフトユニオン(NCCU)が介護職員78,000名を対象にハラスメントに関するアンケート調査(2018年実施)を行った結果によると、74.2%がセクハラやパワハラといった何らかのハラスメント受けたことがあるとの回答があり、そのうちの9割(複数回答)がパワハラに該当する行為を受けたとの調査結果が出ています。最も多かったパワハラの被害は「攻撃態度で大声を出す(61.4%)」で、次いで「〇〇さんはやってくれた等、他者を引き合いに出し強要する(52.4%)」などがあり、それによって半数以上の介護職員が強いストレスを感じているとのことでした。これらの問題は、介護職員の中でだけでなく、利用者から受けるハラスメントも含まれます。暴言や暴力、セクハラなどを受けたり、介護保険以外のサービスを求められる、といったように様々なハラスメント問題が起きているのです。 |
③有給休暇の取得状況について | |
---|---|
同じく「日本介護クラフトユニオン(NCUU)」が2018年に実施した就業意識実態調査によると、「なかなか取得できない・全く取得できない」と回答した介護職員は半数に上っています。その理由の多くが「人手不足で取りにくい」と回答している現状から、人間関係が原因で希望のシフトが組めない・申請しづらいといったことよりも、人材の採用がうまくいっていないことが現職員への負担増につながっていると推測できます。 |
出典:公益財団法人 介護労働安定センター
労働条件を良くしていくには、まず人手が集まらない原因ともなっている介護職員の賃金ついて改善していくことが必要となるでしょう。
しかしこの点については以前から何度も議論されてきたはずです。なぜ介護職員の給与の見直しができないのでしょうか。
厚生労働省の調べによると、介護職員処遇改善加算(I)を取得している事業所は、雇用している介護職員の平均給与が2016年と2017年を比較したときに13,660円アップしたという結果があります。しかしながら、介護報酬の改定が行われても、事業所の赤字補填に使用されたり、一時的な手当のみの支給を行った事業所など、介護職員の給与アップに直接的に繋がっている事業所は多くはないようです。事業所側が加算を得られる努力を行うことが、介護職員の更なる処遇改善を進めていく上で重要と言えましょう。
職員のために職場環境の改善やキャリアアップの仕組みを行った事業所に対し、賃金を上げるためのお金を支給するという制度になります。
平成23年度までに実施されていた「介護職員処遇改善交付金」を廃止し、当該交付金の対象である介護サービスに従事する介護職員の賃金の改善にあてることを目的に設置されたのが、「介護職員処遇改善加算」です。さらに、消費税が増税される2019年10月には、新たに「特定処遇改善加算」を創設することが決まっております。
先述しましたハラスメントの問題も、介護職員の労働環境を改善する上で重要な課題となります。日本介護クラフトユニオン(NCCU)が行ったアンケート調査によると、セクハラやパワハラに遭遇したという介護職員の中で、「だれかに相談した」という方はおよそ8割にとどまり、2割の介護職員が相談しない・できない状況にあったことがわかりました。また、相談後何らかの対処が行われたのは半数にとどまり、事態が収まったと答えた介護職員はおよそ2割のみという結果になっています。2017年に厚生労働省が実施した「介護労働実態調査」によると、介護職員が介護業界で働くことを選んだ理由のひとつに半数以上が「働きがいのある仕事」と選んだことを考えると、利用者へのサービスの質の向上に努めながらも、介護職員がやりがいを持って今後も長期的に働いていける環境を整えていくことが、事業所側にとっての大きな課題になります。
尚、2019年4月に厚生労働省が「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」を公表いたしました。この対策マニュアルは、「平成30年度厚生労働省老人保健健康推進等事業」の一つとして、三菱総合研究所が作成したものとなります。今後も、介護業界の職場環境の改善に向けた取り組みが、積極的に行われることに期待しましょう。
内閣府が平成22年に行った「介護保険制度に関する世論調査」によると、介護職に対して「夜勤などがあり、きつい仕事」「給与水準が低い仕事」というイメージが半数以上を占める結果となっています。やはり、こういったネガティブなイメージを払拭し、優秀な人材が集まる業界にしていくためにも、介護業界に存在するあらゆる問題の改善を、国策として取り組んでいく必要があるでしょう。「介護職員処遇改善加算とは?」の項目でも述べましたが、2019年の10月より、従来のものとは別に、新しく処遇改善加算が追加されるなどの方針が決定しております。たとえば勤続年数10年以上の介護福祉士に対して、月平均8万円の処遇改善を行うなど「新しい経済政策パッケージ」が閣議決定となっています。しかし、そういった政策とは裏腹に業界内で介護福祉士の母体数がそもそも不足しているという問題もあるので、外国人労働者などの受け入れの促進など、早急に人材不足への対応をしていく必要があります。
以下に、その対策について幾つかの例を紹介してきます。
介護職員として働いていく上で、どのようなキャリアを積むことができるのかが明確であれば、目標も立てやすく、モチベーションの向上にもつながります。
しかし、多くの介護施設ではどのような要件を満たせば、いつリーダーやサービス提供責任者になれるのかが曖昧だったりします。
ケアリッツ・アンド・パートナーズでは、さまざまなキャリアプランが具体的に提示されていて、役職やポジションごとの研修や勉強会も充実しています。
企業情報
会社名:株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ
設立年月:2008年7月
関東圏で主に訪問介護事業を展開。事業所数は90を超える。現在の従業員数は700名以上。
ホームページURL https://www.careritz.co.jp/
資格取得サポート制度では、介護職員を対象に資格取得にかかる受講料を会社で負担してもらえます。具体的には初任者研修費用(6.5万円)、実務者研修(全額)、介護福祉士試験対策講座(無料)、ケアマネ試験対策講座(無料)といったように入社後のサポートも充実しています。
また、入社した社員だけでなく、その家族も使用できる福利厚生もあります。たとえば医療費補助として年間2万円、インフルエンザの予防接種として年間5千円、こどもちゃれんじゼミ30%OFFなど豊富な種類があります。また、子育て中の方でも勤務ができるように、ベネッセが運営する企業内保育園に優先的に入園することができ、安心して働ける職場環境が整っています。
その他にも結婚、出産、育児、職場復帰など、それぞれのライフステージに合わせた福利厚生も充実しています。詳しくは、下記ベネッセスタイルケアのホームページをご参照下さい。
企業情報
会社名:株式会社ベネッセスタイルケア
設立年月:2003年12月1日
入居型介護サービスを中心に全国に有料老人ホーム、訪問介護事業所を展開。従業員数は約17,000名。
ホームページURL https://www.benesse-style-care.co.jp/