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特別養護老人ホーム(特養)の入居条件や待機状況について

特別養護老人ホームは、略して特養と呼称されていますが、在宅での生活が困難になった介護認定を受けた要介護者(介護度3以上)の入居が対象となり、老人福祉法に基づいて社会福祉法人や自治体などが運営している公的な介護保険施設です。特養は、終身利用もでき、入居一時金がなく月額費用のみとなるので料金を安く抑えられることもあって、入居希望者数が多く、待機期間が長いことが社会問題となっていましたが、政府が進める「1億総活躍国民会議」において、待機者を2020年代初頭までに解消することが目標として掲げられ、施設の整備、人材確保を行うなど、新たに50万人分以上の受け皿を用意する方針が打ち出されています。今回の記事では、こうした特養の入居や待機についてなど、何かと話題に上がることも多いので、現在の状況を取り上げてみました。

現在の特養の入居基準は要介護3以上が該当

特養の入居基準は、「介護度が要介護3以上で感染症などの医療的処置を必要としない方」
「特定疾病(※1)が認められた要介護3以上で40歳~64歳までの方」「特例(※2)による入居が求められた要介護1~2の方」となります。
特質すべき点は、2015年の介護保険法の改正により、特養の入居基準が要介護1以上であったものが、原則として「要介護3以上」の高齢者などに設定されたことでしょう。こうしたことによって、従来は対象となっていた要介護者1~2の方が他の施設を選択することになり、法改正の前に比べると特養の入居希望者数は少なくなっています。

40歳から64歳までの特定疾病(※1)

特定疾病は、下記の16種類の病名となり、厚生労働省の「介護保険法施行令第二条」に記載されていますので、その内容を紹介します。

1.がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
2.関節リウマチ
3.筋萎縮性側索硬化症
4.後縦靭帯骨化症
5.骨折を伴う骨粗鬆症
6.初老期における認知症
7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
8.脊髄小脳変性症
9.脊柱管狭窄症
10.早老症
11.多系統萎縮症
12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
13.脳血管疾患
14.閉塞性動脈硬化症
15.慢性閉塞性肺疾患
16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

要介護1~2の特例要件(※2)

特例要件に該当することの判定に際しては、居宅において日常生活を営むことが困難なことについてやむを得ない事由があることに関し、以下の①~④の事情を考慮することとされています。

①認知症である者であって、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること、
②知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さ等が頻繁に見られること、
③家族等による深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困 難であること、
④単身世帯である、同居家族が高齢又は病弱である等により家族等による支援が期 待できず、かつ、地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であること

出典:厚生労働省「介護保険法施行令」「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999129&dataType=0&pageNo=1
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc0609&dataType=1&pageNo=1

特養の待機者の状況について

厚生労働省の「特別養護老人ホームの入所申込者(特養に入所できなかった方=待機数の状況」によると、法改正前の平成26年では523,584人であった状況に対し、法改正後の平成29年(令和元年の時点で最新)では295,237人となっていましたので、要介護1、2と要支援等が対象に含まれなくなったことも含め、数字上の比較では大幅に待機数が減ったことが分かります。また、特養の待機者が多いとされていた東京都についても調べてみたところ、「平成29年度東京都内特別養護老人ホーム入所(居)待機者に関する実態調査 報告書」によれば、直近数年の推移を確認してみると、数字上は待機者が減少していることが分かりました。主な要因としては、同報告書を見ると、法改正後の対象が変わったことに加え、ここ数年で特養が新設したことが挙げられます。こうした数字は、あくまで参考値となりますので、入所を希望するエリアや時期によっても、状況が大きく変わることがあるでしょう。特養の満床もしくは空床の状態などは、厚生労働省や東京都では取りまとめていませんが、市区町村単位で把握している場合もあるので、エリアによっては最新の状況が分かる場合もあります。更に詳しくは調べたい方は、市区町村の公式HPなどを確認しましょう。

特別養護老人ホームの入所申込者の状況(平成29年3月27日)

特別養護老人ホームの入所申込者の状況

[全体] 
要介護3 115,270(39.0%)
要介護4 103,658(35.1%)
要介護5 76,309(25.8%)
合計 295,237(100.0%)
[うち在宅の方]
要介護3 56,750(19.2%)
要介護4 40,356(13.7)
要介護5 26,118(8.8)
合計 123,224(100.0%)
[うち在宅でない方]
要介護3 58,520(19.8%)
要介護4 63,302(21.4%)
要介護5 50,191(17.0%)
合計 172,013(100.0%)

※各都道府県が把握した特別養護老人ホームの入所申込者の状況について集計した※平成28年4月 1日時点における特別養護老人ホームへの入所申込者について、重複申込等(複数の施設への申し込み、申し込み後の死亡等)を排除して集計するよう各都道府県に依頼したもの。ただし、一部の都道府県では、調査の時点や手法 (対象が在宅のみ等)が異なっている。
※要介護度が把握できていない一部の申込者については、本調査における要介護度 別の割合の全国平均を基に按分。
※数値は四捨五入のため、合計に一致しないものがある。

特別養護老人ホームの入所申込者の状況(平成26年3月27日)※改正前の状況

[全体] 
要支援等 9,425(1.8%)
要介護1 67,052(12.8%)
要介護2 101,874(19.5%)
要介護3 126,168(24.1%)
要介護4 121,756(23.3 %)
合計 172,013(100.0%)
[うち在宅の方]
要支援等 5,302(1.0%)
要介護1 41,860(8.0%)
要介護2 59,769(11.4%)
要介護3 66,262(12.7%)
要介護4 51,473(9.8%)
要介護5 35,164(6.7%)
合計 259,830(49.6%)
[うち在宅でない方]
要支援等 4,123(0.8%)
要介護1 25,192(4.8%)
要介護2 42,105(8.0%)
要介護3 59,906(11.4%)
要介護4 70,283(13.4%)
要介護5 62,145(11.9%)
合計 263,754(50.4%)

※入所申込者は、各都道府県で把握している状況を集計したもの(平成26年3月集計/調査時点は都道府県によって異なる)。
※各都道府県に対しては、平成25年度における特別養護老人ホームに入所申し込みを行っている入所申込者について、重複等(注)を排除して集計するよう依頼したものだが、一部の都道府県では独自の調査等に基づき、時点が異なったり、重複等を含んだものとなっている。
(注)①1人で複数の施設に申し込んでいる場合、②他の特別養護老人ホームに既に入所している場合、③申し込んだままお亡くなりになる場合等
※要介護度別に把握できていない4府県(神奈川県、京都府、大阪府、鳥取県)は、 前回調査時(平成21年度)の要介護度別の割合等を基に推計。

東京都内特別養護老人ホーム入所(居)待機者に関する実態調査による待機者の状況
[23区・従来型]

平成26年11月1日現在
35,509人 461人(1施設あたりの平均)
平成28年11月1日現在
26,694人 333人(1施設あたりの平均)
平成29年11月1日現在
26,448人 326人(1施設あたりの平均)

出典:
厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」
東京都社会福祉協議会 東京都高齢者福祉施設協議会「平成29年度東京都内特別養護老人ホーム入所(居)待機者に関する実態調査 報告書」
東京都社会福祉協議会 東京都高齢者福祉施設協議会「東京都内特別養護老人ホーム入所(居)待機者に関する実態調査 報告書」

特養に早く入所する方法はあるのか?

特養に早く入所する方法はあるのでしょうか。そのような疑問をお持ちの方も多いでしょう。まず、特養の入居判定は、要介護3以上が基準ではありますが、その中でも申し込みの先着順ではなく、要介護者「緊急性」が重視される傾向があります。したがって、申込の際には、特記事項を記入できる欄がありますので、「どのくらい緊急を要しているか」を具体的に書くと良いでしょう。
例えば、「家族などで介護できる人間がおらず、有料老人ホームに入居したものの、年金では支払い費用も不足しており、子供夫婦まで共働きして助けてもらっているが、この状況を続けることが困難」など、金銭や生活面での厳しい状況を訴えることで、緊急性が感じられると繰り上げ当選されることもあります。
緊急性が高ければ入居も早くなる可能性が高いため、介護度や状況に変化があれば、その都度報告するようにすると有効です。
また、特養には、多床室の「従来型」と個室の「ユニット型」の2種類があり、月々の費用を3万円程度多く支払うことができるのであれば、ユニット型のほうは価格が高いこともあって競争率が低い傾向にあります。このほかにも、特養の探すエリアを広げてみると、例えば、東京でも多摩西部は施設形態に関わらず入所者が少ないため、待機することなく入所できる場合もあるでしょう。

特養の入所が難しそうな場合の対処法

次に、特養の入所が直ぐには難しそうな場合、どのような選択及び対処が考えられるのか、取り上げていきたいと思います。要介護者の状態にもよりますが、家族などの介護で対応が難しい場合を想定し、前述した特養のユニット型、短期生活入所介護となるショートステイ、デイサービスなどがあるほか、一時的に近隣の入居金を必要としない有料老人ホームへ入所するなど、ここでは特養の待機を前提として、経済的な負担が少ない選択肢をそれぞれ詳しく説明していきます。

特養の「ユニット型」の特徴
従来型との多床室とは異なり、ユニット型は月々の費用を3万円程度多く支払うことになりますが、一般的な有料老人ホームの価格に比べると安く入居することができるので、選択肢に入れるべきでしょう。1ユニットで約10人程度の単位となりますが、居室自体は個室タイプになっているのでプライバシーも守られ、ユニット単位で介護職員が担当するので、充実した介護ケアが期待できるのが特徴です。
特養の短期生活入所介護「ショートステイ」や「デイサービス」の特徴
特養には、30日以内で入居する「ショートステイ」や、日帰りの「デイサービス」も実施しています。「ショートステイ」は、短期入所することで、日常生活の世話、レクリエーション、リハビリなどを受けることができます。ショートステイは連続30日までが上限となりますので、上限に達したら1日帰宅し、その時々で状況は変わりますが、再び30日使うといった方法も不可能ではありません。また、「デイサービス」は、基本的に1日単位で通い、介護保険の1割負担の方を例に挙げると利用料金は600円程度(要介護1)~1,000円程度(要介護5)、昼食は1,000円程度で、生活の世話、レクリエーション、リハビリ、昼食、入浴などのサービスもあり、車での送迎などが行われています。「ショートステイ」や「デイサービス」の場合、基本的には在宅介護も行わなければなりませんが、こうしたサービスを積極的に利用していき、頻繁に使うほど必要性が高いと認識されれば、要介護度が同じくらいの人たちが順番待ちをしている場合、早期入所の可能性を上げることにも繋がります。
有料老人ホームの特徴
有料老人ホームは、月払い方式で、入居一時金が必用になるケースが多いものの、入居一時金が不要の有料老人ホームを選ぶと一時的な経済的負担を軽減することが出来るでしょう。但し、入居一時金が不要の施設の場合、月額費用が高くなっているケースもあるので、その点には注意が必要です。また、入居一時金には、クーリングオフが適用されますので、契約から90日以内に契約を解除した場合、一時金は全額返還されます。有料老人ホームのサービスとしては、食事、洗濯、清掃などの生活支援をはじめ、排せつ、入浴などの身体介護、機能訓練、レクリエーション、サークル活動などのサービスが受けられます。費用相場は、月額にして平均して15~35万円程度、入居一時金の相場は0~数千万円とも言われており、施設によって違いがあるでしょう。なお、有料老人ホームの場合、ベッドや寝具、収納家具は、特養では備品になり、自身で用意しなければなりませんが、購入よりもレンタルの方が安くなります。

特養への入居手続きや注意事項とは?

特養への入居までの手続きについて、その流れを解説していきましょう。基本的には、下記のような流れで進めることになります。このうち、手続きを進めるにあたって、健康診断書の提出が必要になりますが、指定された項目の検査を受けていなければならず、検査項目が足りないような場合には、検査を予約してから検査結果が送付されるまでには2週間程度かかることもあるので、特養への入所手続きが遅れるようなことがないように注意が必要です。

特養への入居手続きの流れ

①資料請求
希望する施設を調べ、電話やメールなどで問い合わせをして資料請求をします。
②入居申込書(入所申込書)の提出
主に以下の3つの必要書類の提出を求められます。
③審査
「入所調整基準」「優先入所基準」「特別養護老人ホームへの入所指針」などを基にして、サービスを受ける必要性を判断されます。
④優先順位通知
一定の期間で入所希望者の状況を知らせる通知が届きます。
⑤入居候補者に対する面談
入所候補者になると、その施設から申込者に直接連絡を入れ、面談を受けた後、健康診断書の提出を行います。
⑤入居候補者に対する面談
入所候補者になると、その施設から申込者に直接連絡を入れ、面談を受けた後、健康診断書の提出を行います。
⑥入所
面接と健康診断書の提出した後は、最終的な入居の可否を決める協議があり、入居可と判断されると、ベッドが空き次第入居になります。
⑦入所
重要事項の説明を受けた後、契約書を交わして、施設での生活を開始します。

特養に入所する前にチェックしておきたいこと

特養は、終身利用もできるため、利用者の方によっては、施設で最期を迎える方もいます。
それだけに、「自身が快適に暮らせそうだと思えるとこか」「場所は自宅にも近い住み慣れたところか」「医療機関との連携や体制はどうか」「介護スタッフの対応は印象としてどうか」「入居者と介護職員の信頼関係は築けていそうか」などをしっかりとチェックしておきたいところです。特養に入所して後は、他の特養の空き状況もあり、簡単には移ることができませんので、慎重に選ぶべきでしょう。

まとめ
今回は、特養の待機状況については、まだ十分な受け皿があると言えませんが、法改正後に解消されてきた状況が見えてきているのも事実です。しかし、経済的もしくは終身利用などが魅力の特養に限ったことではありませんが、要介護者である当事者が充実した生活を施設で送れることが大切なので、自身が気になることにしっかりと目を向けて施設を選ぶことが最良となるでしょう。