「介護の仕事」と聞くと、どうしても身体的・精神的にもハードな印象を持たれることが多い職業ではありますが、実は介護職でしか味わうことのできない、たくさんの魅力があることはご存知でしょうか?介護保険制度が施行されてから、介護職員の数も増加傾向にあります。「介護業界に興味はあるけど、やりがいや将来性ってどうなんだろう?」といったように、どうしても最初の一歩を踏み出せない方に向けて、今回は気になる介護の実情や楽しさ、魅力について詳しくご紹介していきます。
平成30年10月1日 | ||||
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総数 | 男 | 女 | ||
人口(万人) | 総人口 | 12,644 |
6,153 |
6,491 |
65歳以上人口 | 3,558 |
1,546 |
2,012 | |
65〜74歳人口 | 1,760 | 840 (性比)91.3 |
920 | |
75歳以上人口 | 1,798 | 706 (性比)64.6 |
1,092 | |
15〜64歳人口 | 7,545 | 3,818 (性比)102.4 |
3,727 | |
15歳未満人口 | 1,542 | 789 (性比)104.9 |
752 | |
構成比 | 総人口 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
65歳以上人口(高齢化率) | 28.1 | 25.1 | 31.0 | |
65〜74歳人口 | 13.9 | 13.7 | 14.2 | |
75歳以上人口 | 14.2 | 11.5 | 16.8 | |
15〜64歳人口 | 59.7 | 62.1 | 57.4 | |
15歳未満人口 | 12.2 | 12.8 | 11.6 |
単位:万人(人口)、%(構成比)
「令和元年版高齢社会白書」によると、平成30年の時点において、日本の人口は約1億3,000万人。そのうちの約30%にあたる約3,500万人を65歳以上の高齢者が占める超高齢化社会となった現在、介護職は社会の根幹を支える重要な職業であることに異論のある方はいないでしょう。ただ、その重要性とは対照的に、世間では“3K(きつい、汚い、危険)”といったマイナスなイメージが根強く残っています。もちろん、決して楽な仕事ではないことは事実ですが、実際に介護の現場で働いている職員の方からは、「こんなにやりがいのある仕事は他にない!」「利用者さんの笑顔で元気になる!」といった声をよく聞きます。誰かに感謝される職業は他にありますが、介護の仕事は、その人一人ひとりの日々の生活を支えていくという、現代社会において非常に貴重な職業になります。だからこそ、感謝の言葉を頂いた時などの喜びは格別なものになりますし、利用者の人生を支えている、ひいては地域社会に貢献しているという実感も生まれやすいのかもしれません。その他にも、日勤や夜勤専従のように自分の生活スタイルに合った働き方ができたり、資格があれば年齢や働く場所を選ばず活躍することもできます。
このように介護職の魅力は、現場でのやりがいや楽しさだけにとどまりません。働き方や将来性についても、多くの可能性がある職業であると言えましょう。
全体 | 正規職員 | 非正規職員 | |
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回答労働者数 | 21,250 | 15,497 | 5,207 |
働きがいのある仕事だと思ったか | 50.1 | 51.0 | 47.9 |
資格・技術が活かせるから | 35.5 | 35.4 | 36.0 |
人や社会の役に立ちたいから | 29.7 | 29.9 | 29.2 |
今後もニーズが高まる仕事だから | 29.0 | 30.6 | 25.1 |
お年寄りが好きだから | 22.9 | 23.0 | 22.5 |
介護の知識や技術が身につくから | 20.0 | 18.0 | 25.6 |
自分や家族の都合のよい時間(日)に働けるから | 16.0 | 9.2 | 35.5 |
身近な人の介護の経験から | 14.1 | 13.4 | 15.9 |
生きがい・社会参加のため | 12.9 | 11.8 | 15.5 |
他によい仕事がないため | 10.5 | 10.5 | 10.3 |
給与等の収入が多いから | 4.8 | 4.8 | 4.9 |
特に理由はない | 3.9 | 4.3 | 2.7 |
その他 | 5.2 | 5.4 | 4.9 |
無回答 | 0.8 | 0.8 | 1.0 |
引用:公益財団法人 介護労働安定センター「平成29年度 「介護労働実態調査」の結果」より
介護のお仕事に初めてチャレンジしようと考えている人の多くは、利用者の着替えや入浴、食事の介助などといった、身の回りのお手伝いをすることが介護士の主な仕事というイメージを持っている方がほとんどだと思います。もちろん、食事、入浴、排せつなどのサポートも欠かすことのできない大事な仕事のひとつですが、それ以外にも介護士が担う役割はたくさん存在するのです。現在の介護士という職業の意義を理解するためにも、「介護保険制度」の理念について説明していきましょう。
介護保険制度の基本理念 | |
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・自立支援 | 単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援することを理念とする |
・利用者本位 | 利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられる制度 |
・社会保険方式 | 給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用 |
引用:厚生労働省 「平成30年度 公的介護保険制度の現状と今後の役割」より
介護保険制度とは、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みです。“自立支援”という理念のもとで、介護士は利用者の自立を支援していきます。そうすることで、利用者本人のQOLの向上や、介護度の改善などに繋がり、利用者がこれまでと同じように自由度の高い有意義な生活を送れたり、自宅で介護を行うご家族の負担も減ったりなど大きなメリットをもたらすのです。
また、援助者側の考え方や価値観で介護サービスを選ぶのではなく、被介護者本人が自由に選択して、総合的なサービスを受けられることを目的とした、“利用者本位”という利用者の視点に立った在り方も求められております。現在の介護は、地域社会で支え合いながらサービスの充実を目指していくものとなっているのです。介護士という職業には、そのような社会的な意義があります。だからこそ、介護スキルやコミュニケーション能力だけでなく、そういった基本的な理念をきちんと理解した介護士が求められている、と言えましょう。
介護の現場で働いたことのある方であれば、利用者からの「ありがとう」という言葉に救われた方も多いのではないでしょうか。認知症の方への対応や、排泄時のケアなど、はじめは苦労したり、くじけそうになるときもあると思います。それでも、利用者の方はもちろん、そのご家族の方からも感謝やお礼の言葉をもらったとき、これまでの苦労や辛かったことが報われるような気持ちになりますよね。この感謝の言葉が、介護の仕事に対して真筆に向き合っている証であり、現場で働く職員にしか味わえない介護の魅力のひとつといえるでしょう。ここで実際に、介護の現場で働いていた方のエピソードをいくつかご紹介したいと思います。
「食事をあまり召し上がらないおばあちゃんがいて心配になり、ご家族に聞いてその方の好きな食べ物を食事に取り入れたり、食べやすいように調理を工夫してみました。そうすると『すごい美味しかったわ。明日の食事も楽しみ』と言っていただけて、とても嬉しかったのを覚えています。」
「レクリエーションで、手が不自由な方とリハビリも兼ねて一緒に折り紙を作ることがありました。徐々にリハビリの効果が出始め、ついには一人で折り紙を折れるまでに回復をしました。これまでできなかったことができることへの喜びを互いに共有することができて、介護の醍醐味を味わえたように思えました。その方とは、それをきっかけにまた新しいことにチャレンジしようと話してます。」
以上のように、利用者一人ひとりと日々関わっていく中で、その方の価値観やこれまでの半生、人柄などを知ることによって、「一緒にリハビリを頑張ってもらうにはどうしたらいいだろう?」や「どうしたら毎日楽しい日々を送ってもらえるだろう?」と考えて、小さなことでもアクションを起こしてみることで、介護の新たなやりがいや魅力に気づくことがあるかもしれません。
介護のお仕事は、ごみ収集や土木作業など同じように労働条件の厳しい職種を指す3K(きつい、汚い、危険)と言われることがありますが、最近ではそれに2K(くさい、給与が低い)が加わって、“5K”と呼ばれるなど介護現場が過酷であるという認識が世間一般に広がっているようです。たしかに、利用者の排泄のお手伝いや、インフルエンザなどの感染症を患っている方への介助、自分より体格の大きな方の移乗介助など、介護職にまだ慣れていない方からすれば、大変な仕事だと感じることは当然あるでしょう。さらに介護業界が慢性的な人手不足であることから、スタッフ一人当たりの業務負担が過度に増えたり、長時間労働を強いられる・・・・・・といった負のイメージを連想してしまう方も少なくないと思います。現実の介護現場はどのような環境なのでしょうか。実際は、みなさんが思うほどきついだけの仕事ではないようです。以下の例をご参照ください。
時間の自由がきく! |
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介護の仕事は確かにハードな職ではありますが、常に長時間労働で夜勤も多い、というわけではありません。雇用形態を選ばなければ、日勤帯のみの就業ができる求人も多数あります。もちろん、深夜手当がつく夜勤専従という働き方で、日勤帯よりも少ない勤務日数で高い給与をもらうこともできますし、パートや派遣勤務で異なる2つの施設を掛け持ちすることにより、自分の望む時間帯での勤務や経験を積むこともできるでしょう。 |
・子育てママも働きやすい! |
最近では、施設内に託児所を設けているところが増えてきているので、子育て中であっても安心して働くことができます。パートタイムで働くことのできる現場も多いですし、中には、保育園が併設されている施設もあり、子育てとの両立が可能となっております。 |
現在、介護職の離職率はおよそ16%と少しずつ減少傾向にありますが、まだ不安な気持ちが残る方も多いでしょう。職場見学や、在籍している職員の方との面談の機会をもらう、といったことも可能ですので、具体的に働くイメージを持てるまで、職員の方々とコミュニケーションをとってみるのも良いかもしれません。
介護職といえば、「女性の職場」というイメージが強いですが、実際に、全国男女比は女性が全体の約70%、残りの約30%が男性となっております。介護業界で働く女性の8割がパート勤務であることから、介護職は子育て等の両立がしやすい環境が整っている施設、または事業所が増えてきていることがうかがえます。女性中心の職場であるからこそ、キャリアアップを目指す上で、性別が弊害になることはありません。資格を取得していくことによって、パートタイムからはじまったキャリアがいずれは管理職へ、といった道筋が決して不可能ではないのが、介護という職業だと言えます。
介護職は女性中心、と述べましたが、近年は男性職員も増加傾向にあります。その背景には、介護は体力や腕力を使うことが多いことから男性が重宝されやすく、介護保険制度の改定になどにより、給与や待遇が改善されたことが主たる要因のようです。最近では、両親の介護を経験したことによって、40代の方が未経験で介護業界へキャリアチェンジをするなど、やりがいや手に職をつけたい方の転職事例も増えてきています。介護資格の登竜門である介護職員初任者研修であれば、1カ月程度で取得が可能なので、異業界で10年以上社会人経験を積まれた方であっても、比較的すぐに現場のキャリアを積むことができます。資格取得支援制度が充実している施設も多くあり、施設によっては大学とタイアップして資格取得に向けた取り組みを行なっているなど、「資格を取得したくても忙しくて勉強時間を確保できない」「受講費用を支払うのが難しい」といった悩みを抱えている方にとっても、安心できる体制が整っている職場が増えてきています。介護士として働きながら、実務者研修や、唯一の国家資格である介護福祉士などの資格を取得していくことで、生活相談員やケアマネージャーへのキャリアアップも早い段階で現実となるでしょう。
かつてのリーマンショックのように、日本が予期せぬ大不況に陥ったら・・・・・・などとと心配する必要は、少なくとも介護職においてはありません。厚生労働省の発表によると、2020年度末までに約26万人、2025年には約38万人もの介護職員が不足するといわれており、年間6万人程度の介護人材を確保する必要があるのです。仮に外国人技術実習制度が充実し、AI技術が発達したとしても、介護業界の人手不足が完全には改善されないことは明らかです。ゆえに、介護の職探しに困るようなことはないでしょう。介護職は、年齢があまり足枷にはならないことも特徴の一つです。心身ともに健康であれば、70代の勤務も可能となっており、長く現役で働くことができる職場なのです。もちろん、介護業界と一口に言っても、その仕事内容はさまざまであり、働き方も十人十色です。キャリアアップが目的にせよ、自分のライフワークに合わせた働き方を求めるにせよ、ご自身の描く介護士としての目標に適したキャリアを積むことや、必要な資格を取得しておく必要があるのです。
ここまで介護現場の実情ややりがいについて紹介していきましたが、当然ながら介護の現場は楽しいこと、うれしいことばかりではありません。未経験でも働けるのが介護業界ですが、やはり人間ですので、得手不得手がありますし、合う合わないもあるでしょう。そこで、介護のお仕事に“向いている人”と“向いてない人”には、どんな特徴があるのかを幾つかの例を挙げて紹介していきます。あくまで参考例程度に目を通してみてください。
「介護職に向いている人」の項目に多く当てはまったという方は、介護の現場で大変なことやつらいことがあっても、前向きに介護に取り組んでいくことができるでしょう。
反対に、介護の仕事に興味があるにも関わらず、「介護職に向かない人」の項目にいくつか当てはまってしまったという方がいらっしゃるかもしれませんが、心配しないでください。
”高齢者の方が不憫なく生活が送れるようにサポートしたい”といったように、介護への熱い気持ちをお持ちであれば、上述したことなどは必ず改善されるはずです。
ただし、忍耐力の低さや、自分ひとりで物事を抱え込みやすい方は、介護の現場で事故やミスに繋がりやすい要因となるので、周りの人に助けを求めたり、コミュニケーションをとって協力し合うなどの努力が必要になるでしょう。