介護職での女性介護士の割合は、全体の約80%にも上ります(公益財団法人介護労働安定センター「平成29年度 介護労働実態調査」より)。そのため介護の職場は女性のライフステージにおける変化を考えた積極的な取り組みが必要となりますが、多忙な介護の仕事において子育てとの両立はできるのか疑問を持たれる方や不安に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は子育てと介護の仕事の両立が難しくて日々頭を抱える介護士さんへ、知って得する「介護の仕事と子育ての両立」の方法をお教えしたいと思います!
上記は公益財団法人介護労働安定センター「平成29年度 介護労働実態調査」からの介護士の退職理由のグラフとなります。その中で介護職の仕事を辞めた理由として「結婚・出産・妊娠・育児のため」が最も多いことが分かりました。
介護の現場は、デイサービスを除いた場合、24時間365日稼働していることが多く、どうしても不規則な仕事になってしまいます。さらに人手不足でシフトもカツカツ、利用者ごとの担当制にしている施設お多いためなかなか休みもとれません。一方子どもは、規則正しい生活を送っているので、どちらも同時進行で両立していくのは家族に協力してもらわないと到底困難です。したがって、独り身の時のような仕事配分で不規則なシフトによる働き方では、子育てとの両立は現実的ではないと言えるでしょう。それだけ介護の仕事と子育ての両立が簡単ではないことがうかがえます。
しかし、育児に理解のある職場選びや各自治体の支援など両立させるための工夫次第では働きやすい環境を手に入れることはできます!
まずは、下述から具体的に子育て中の介護士の「仕事と子育ての両立」の問題点や悩みを見ていきましょう。
実際に子育て中の介護士が抱える悩みについてまとめてみました。とくに一人で子育てとの両立で悩んでいる方はこれを読んで安心していただければと思います。
子どもはいつでも健康なわけではなく、急に熱を出したり、突然体調が悪くなることがあります。くわえて台風などの影響で預けている保育園が休園になってしまうことも。そんな時、子育て中の介護士はどうしても仕事を休まなければいけなくなってしまい、シフト調整などで他の介護士に迷惑が掛かってしまうと引け目を感じてしまいます。
実際に子育て中の方が多い職場であってもフォローのし合いはお互い様とはいえ、保育園から呼び出しの電話に突然かかってくることもあります。急に仕事を早退をしたり、休んだりすると穴埋めが大変なのを理解しているからこそ、次第に職場へ休みを伝えにくくなり、子どもにも色々我慢させていることが辛いと感じてストレスを溜め込みやすくなっていきます。
まだ延長保育を行っている保育園は少なく、お迎えの時間が分単位でも遅れてしまうと延長保育料を払わないといけないことも少なくありません。そのため、夜勤や早番・遅番などの各種手当は収入として非常に大きいですが、お迎えの時間を考えるとその時間に働くことは現実的に難しいのが現状です。
子どものいる介護士は仕事に家事に子育てに…と時間がいくらあっても足りないほど多忙な日々を過ごしています。とくに子どもが小さいうちは、出勤前に保育園へ子どもを送ったあとに施設へ向かい、仕事が終わるとそのまま子どもを迎えに行き、家に帰れば、子どもの面倒を見ながら家事に追われ気を失ったように床につきます。十分睡眠がとれれば良いのですが、子どもが夜泣きをしてしまうと、ろくに睡眠時間がとれないまま夜が明け、また多忙な1日が始まります。もちろんこれは子育て中の介護士だけではなく、全国の働く保護者の悩みといえます。
二足の草鞋を履いている状態の子育て中の介護士にとっては、いくら要領がいい方でもどちらも完璧にこなすことは至難の業です。一生懸命にこなしていても、どちらも中途半端になってしまってしまい、責任感の強い方は自責の念に押しつぶされそうとなると悩んでいる方も多いです。
それではこのような悩みを解決し、子育ても仕事もこなしていくにはどうすればよいのでしょうか。独り身だった頃の考え方では上手くいきません、両立させる工夫が必要となります。
一人で子育てをしていくのは初めはなんとか両立できても、次第に無理が生じてきます。とにかく夫(妻)であったり、両親・親戚・近所の方・各自治体・子育て相談の専門機関など周りの人に相談をしていくことが大切です。決してすべてを一人でこなそうとはせずに、身近な方とは協力をし甘えられるところは甘えてましょう。効率良く仕事と子育てを両立させる為にも、夫(妻)と相談をして保育園の送迎や家事を当番制にしたり、家族一丸となって工夫をしているご家庭も多いようです。
「役所に行くのが面倒だ」「説明が難しいそうだ」と思い足を運んでいない子育て中の介護士さんは損をしている可能があります!実は各自治体でさまざまな子育て支援を行っています。給付金はもちろんのこと、預かり保育やベビーシッターの派遣など働く保護者の強い味方になる支援がたくさんあります。ぜひこれを機に自分の住んでいる各自治体のホームページや窓口へ足を運びチェックしてみましょう!
また、いつも健康とは限らない子どもの為にもあらかじめ病児保育所の場所などを抑えておくと、いざという時に焦らずにすみますよ。
仕事も家事も育児も、すべてを一人で完璧にこなそうとはせずに“がんばり過ぎないこと”が上手な両立のコツです。
家族が笑顔で暮らせるのではれば、多少の家事の手抜きも幸せになる為の得策です。とく介護士になる方はもと元々責任感が強く、自分を追い込んでしまう傾向があります。一人で背負込み過ぎずに周りに頼っていきましょう。
子育てに限りませんが仕事と両立をする際では、とにかく無理なシフトを組まないことが大切です。きちんと職場や上司に働くことができる時間や働けない日にちを明確に伝えて、シフトを組んでもらうようにしましょう。正直に伝えずらい職場もあると思いますが、逆に無理をさせて辞められて困るのは介護士不足の事業所側の方なのでハッキリと自分の希望を伝えるようにしましょう。
“早めに相談すること”は、信頼関係を築く上でも大切であり、シフトの交代や早退がスムーズに承認されやすいです。
介護の職場の施設制度自体を変えることは中々難しいでしょう。それならば初めからしっかりと子育て支援に取り組んでいて、理解のある職場への転職が子育てとの両立への近道となります。
介護施設は“福祉施設”ということもあり、子育てにも理解がある職場は多く、中には保育園や職員向けの託児所を併設している施設もあります。また、福利厚生の面でも育児休業や子の看病休暇、育児時短勤務など充実している職場もありますので一度探してみると良いでしょう。
□雇用形態を考えましょう |
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フルタイムで働くとなると、保育園の開園時間より早い早番や、お迎えよりも遅い遅番、子どもが寝ている時間の夜勤など、家族の助けなしには仕事を続けていくのは困難です。少しでもスムーズな子育てとの両立を望むなら、パート勤務がおススメです。 しかし、金銭的にもフルタイムでどうしても働かなければならない方もいらっしゃると思います、その場合には派遣社員での勤務もおススメです。派遣社員は登録している派遣会社の労働条件によりますが、多くは正社員よりもシフトの融通がきいて、残業もほとんど発生しないことが多いので、自分の生活にあった働き方ができるかもしれません。 |
□通勤時間も重要視しましょう |
子育てとの両立で見落としがちなのが通勤時間です。給料など条件が良く自分にピッタリだと思っても、片道1時間以上かかってしまっては、朝遅刻をしてしまったり保育園のお迎えに間に合わなかったり、お迎え行けないからと家族にも負担がかかってしまったり…と後悔してしまうことがあります。 |
□面接にて必ず子育てとの両立を相談しましょう |
面接の際に直接子育てとの両立についての働き方を相談し、制度の確認をしておくことで、お互いの意向のすれ違いを防ぐことできます。その際には実際に働いている介護士で同じように子育て中の方が居るどうかも聞いておくと良いでしょう。協力し合っていく体勢を取ればもっと業務も人間関係も円滑になること間違いなしです。 |
□スキルアップしておきましょう |
転職においてスキルアップをしておくことはとても大切です!資格は決して無くなることありませんし、少しでも待遇が良く給料も高い施設へと転職することを考えているのならば無駄にはなりません。とくに“介護福祉士”の資格取得しておくと、かなり有利になります。 |
子育てがしやすい勤務体制の介護施設をご紹介します。ぜひ視野を広げて、検討してはいかがでしょうか。
ほとんどの通所型は、夜間のサービス提供はなく、利用者に合わせた日中での支援を行っているため夜勤の心配もなく働くことができます。
とくにデイサービス(通所介護)では、要介護度が比較的軽度の方を対象に日帰りでサービス提供しているため身体的負担も働けることにくわえて勤務時間もだいたい8時~18時までと保育園のお迎え時間にも安心して両立できます。残業がある場合でも、ほとんどが勉強会やケアカンファレンスです。子育中の介護士に無理強いをしてまで残業させる職場はあまりないでしょう。さらに少人数制のデイサービスでは、ブランク明けでも対応ができるくらいの人数なので確実に利用者一人ひとりの性格や症状の把握ができるためブランクの隙間を埋められて介護の感覚を取り戻すのに良い施設となります。
また、デイサービスの特徴として、子どもの立ち入りを許可している施設が多く、休みの日に子ども連れてきて「ここがママ(パパ)が働いているところだよ」と見せてあげることもできます。中には、保育園も併設している施設もあるので子育てと両立したい方にはピッタリな職場といえるでしょう。
訪問介護は正社員やパートだけでなく登録制という雇用形態もあり、自分の都合の良い時間で短時間単位で働くことができるのが特徴です。
そのため訪問介護は比較的地元から近い場所で働いているケースが多く、通勤距離や勤務時間の悩める問題も解決ができます。
訪問介護の場合、きちんと事業所に連絡をすれば急な子どもの看病などでどうしても出勤できない際でも、臨時で訪問介護士の手配をしてくれるので、休みの融通も利きやすい環境です。
現場は、ひとりで介護支援をする訪問介護ですが、訪問介護士同士でフォローし合いながらこなしていること多く、人間関係も他施設と比べると巻き込まれたりしないので気が楽だというメリットもあります。
事業所によっては、のちに社員登用からのサービス提供責任者になれるキャリアアップも可能なので、子育てが落ち着いた頃のことも考えられる施設です!
介護施設には夜勤がつきものだとされがちですが上記のオススメの施設以外でも、きちんと相談をすれば常勤でも特例で日勤のみも可能という施設もあります。いろいろな希望を臨機応変に対応してくれる職場は少なくありませんよ。
最後に子育て中の介護士が求める支援をまとめました。これを参考に自分や家族にはどの支援が必要なのかを考えて、支援に積極的に取り組んでいる介護施設を見極めたり、事前知識を得たりと活用して、介護の仕事と子育ての両立を目指していきましょう!
・子の看病休暇制度 |
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子どもが小学校に上がるまでの間、必要に応じて「1年間に5日間、子どもが2人以上の場合は10日間休むことが可能」となる制度です。ただ有給か無給かは、企業や施設によって異なりますので確認が必要です。 |
・育児短時間勤務制度 |
3歳に満たない子どもを育てている職員に対して、1日の所定労働時間を「原則6時間」とする時短制度です。あるいは職場によっては、1日おきの勤務など「所定労働日数を短縮する」こともできます。 |
・フレックスタイム制度 |
必ず勤務すべき時間帯であるコアタイムを除いた、日勤の出勤退勤時刻をずらしては働くことができる制度です。 |
・休憩時間の短縮 |
保育園のお迎えなど育児での理由がある際には、休憩時間を短縮して勤務時間を調整して早めに退勤すること。 |
・夜勤の免除 |
子どもの世話のために、特例として夜勤を免除するものです。 |
・PTA活動の配慮 |
子育てには保護会やPTA活動などの定期的な集まりに参加をしなければいけません。時しては半休から全休を取ることになってしまうので中々遠慮してしまいがちですが、配慮している職場では希望の休みが出しやすくなります。 |
・託児所がある介護施設や宅幼老所 |
介護施設によっては託児所を併設しているところもあり、定員数にもよりますが子どもを預けること可能です。 最近では地域共生を高めるために、幼老複合型(または一体型)施設と呼ばれた保育園と介護施設が合わさった「宅幼老所」という施設が、全国的に増加している傾向にあります。この施設でも職員の子どもも預かることできるので、いわゆる事業所内保育所の役割も持った介護施設となります。 |
・病児保育室 |
病児保育室とは、通常の保育園では預けられない体調不良になってしまった子どもを預かる施設のことです。利用料金は高めでその日の定員数など決められていますが、どうしても休めない働く保護者にとっては強い味方です。 |