世界に先んじて超高齢化社会へ突入した日本では、年々高齢者率が上がる中で、社会における医療施設や介護施設の需要がますます高まりをみせています。そこに付随して課題となるのが、看護士や介護士といった医療・福祉分野における人材の不足です。現在でも人手不足に悩む病院や介護施設は多く、ベッドに空きがあるにもかかわらず、国が基準として定めている職員数を施設側で確保することが難しい状況にあり、入居者を受け入れることができないという現実があります。そのような状況の中で、近年注目を集めているのが、病院やクリニックなどの医療現場で看護師の補助的な役割をする“看護助手(看護補助者)”ですが、病院によっては「ヘルパー」「ナースエイド」などと呼んでおり、2010年に診療報酬が改訂され、新しく看護補助者体制加算ができたこともあって、看護助手の求人数は増加の一途を辿っています。また、看護助手は、看護師のように国家資格を持たなくとも仕事に就くことができるので、将来的に看護士を目指している方など、現場経験を積む目的で看護助手として働くケースも増えてきました。そこで今回は看護助手にフォーカスにて、看護助手仕事内容や、やりがい、給料事情に至るまで詳しくご紹介していきます!
まずは、看護助手の平均年収を日本の全職種の平均年収と比較してみましょう。
看護助手の平均年収 約281万円 |
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198,000円(月収・所定内賃金)×12カ月+434,700(年間賞与など)=2,810,700円 |
全職種の平均年収 約375円 |
268,300円(月収・所定内賃金)×12カ月+540.100(年間賞与など)=3,759,700円 |
参考:厚生労働省「平成30年度賃金構造基本統計調査」
※企業規模計(10~99人)を基準に計算しました。
※所定内給与額を基準に計算しました。
この全職種の平均年収と比較してみると、看護助手の年収は全職種の平均年収よりも下回っていることが分かります。但し、職種によっても賃金は大きく変わるため、比較対象とする職種は難しいところですが、同じ病院内で働く医療事務を比較してみると、看護助手の平均年収のほうがやや上回っていることが分かりました。
医療事務アシスタントの平均年収 | 255万円 |
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一般事務アシスタントの平均年収 | 266万円 |
(doda職種図鑑より)
次に、看護助手における年齢別の年収・月給・ボーナスの推移はどうなっているのでしょうか。
看護補助者(男) | |||
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年齢 | 年収 | 月給 | ボーナス |
~19歳 | – | – | – |
20~24歳 | 239,9 | 176.6 | 280.7 |
25~29歳 | 280,2 | 206.7 | 322.2 |
30~34歳 | 316,1 | 225.6 | 454.4 |
35~39歳 | 299,4 | 211.3 | 458.6 |
40~44歳 | 326,9 | 220.2 | 627.3 |
45~49歳 | 300,8 | 210.1 | 487.0 |
50~54歳 | 313,8 | 220.7 | 489.6 |
55~59歳 | 327,2 | 230.6 | 504.9 |
60~64歳 | 199,3 | 149.4 | 200.5 |
65~69歳 | 254,8 | 169.8 | 51.1 |
70歳~ | 227,0 | 172.5 | 200.0 |
看護補助者(女) | |||
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年齢 | 年収 | 月給 | ボーナス |
~19歳 | 192,8 | 151.1 | 11.5 |
20~24歳 | 234,0 | 176.8 | 218.5 |
25~29歳 | 249,4 | 178.1 | 357.1 |
30~34歳 | 374,8 | 187.2 | 1502.3 |
35~39歳 | 299,7 | 210.9 | 467.0 |
40~44歳 | 297,2 | 206.8 | 490.6 |
45~49歳 | 322,8 | 224.6 | 533.0 |
50~54歳 | 283,1 | 199.6 | 435.8 |
55~59歳 | 312,9 | 213.7 | 565.5 |
60~64歳 | 233,3 | 180.0 | 173.6 |
65~69歳 | 209,0 | 166.7 | 90.2 |
70歳~ | 218,2 | 170.2 | 140.0 |
出典:厚生労働省「平成30年度賃金構造基本統計調査」
※上記の単位は千円となります。
※計数のない場合は「-」としています。
この推移からも分かるとおり、看護助手は年齢そして経験を重ねるごとに昇給をするチャンスが多いため、緩やかにではありますが、年収に合わせてボーナスも増額していき、男性では55~59歳で約327万円、女性では45~49歳で約322万円がピークを迎えています。
ちなみに看護助手の生涯で得られる給料は下表のようになることが推定できます。
看護助手の平均生涯賃金 約1億1,611万円 ※看護補助者(女)で計算 |
全職種の平均生涯賃金 約1憶4,794万円 |
※看護補助者(女)の年収を基準に計算しました。
※企業規模計(10~99人)を基準に計算しました。
※所定内給与額を基準に計算しました。
※全職種の平均生涯賃金は、男女の合計で計算しました。
参考までに全職種の平均生涯賃金と看護助手の平均生涯賃金を比較してみると、約3,183万円の差がありました。看護助手の平均年収が他の職種に比べて低いことや、比較的緩やかな増額推移が要因として挙げられるでしょう。
では、非正規雇用であるパート・アルバイトや派遣社員として働く看護助手の時給相場はいくらぐらいなのでしょうか?
看護助手の時給相場 | |
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パート・アルバイト | 950~1,100円 |
派遣社員 | 1,200~1,550円 |
※地域や各派遣会社の基準給料により異なります。
※職場によりますが、大幅な昇給は期待できません。
※介助業務ができれば時給アップは可能です。
※ボーナスは支給されるケースは少なく、出ても寸志程度です。
実際に看護助手として働く方の多くは、正社員よりも非常勤(パート・アルバイト・派遣社員など)を選ぶ傾向にあります。理由としては、結婚や出産、子育てなどライフステージが変わりやすり女性の職員が多いこともあり、家族との時間を確保するためや子どものお迎えなどの為に比較的自由度の高い非常勤での働き方を選ぶことが挙げられます。
看護助手の給料は、その多くが経験年数によって給料に反映されています。”無資格”でも働ける看護助手とは反対に、仕事内容が似ている介護士の場合は経験と合わせて資格でも給料の差をつけることできます。特に国家資格である“介護福祉士資格”は、医療の知識と介護の技術などを取得できるため、手当がつくことで基本給に反映されやすいです。看護助手は、正社員の他に契約・パート・アルバイト・派遣といった働き方があり、このような各雇用形態でももちろん給料の反映に差が出てきます。看護助手としてしっかり稼ぎたいなら、正社員での採用を希望し、フルタイムかつ夜勤もこなすことで高収入を目指すことができます。
正社員で常勤とし働くのはちょっと厳しい・・・という方に看護助手の給料アップへのコツをご紹介します。ぜひ参考にして、効率良く働いてモチベーションを上げましょう!
さすがに勤続1年では給料アップの交渉に取り合ってもらえることは少ないですが、勤続3年を過ぎてもなんらかの昇給がない場合や新たに資格取得した際には上司に給料についての相談をしてみましょう。
前項でも触れていますが資格取得などのスキルアップは直接給料アップに繋がります。介護職員初任者研修、実務者研修を取得できたら次は介護福祉士と目指していくことオススメします。
給料をアップされるためには、経験や勤続年数を重ねていき、経験実績を基本給に加算を狙うことも良いでしょう。また勤続年数を積むと、能力や周囲の評価に寄りますが役職につくことができます。介護施設勤務の看護助手の昇格例としては「看護助手→介護主任→ケアワーカーリーダー」と、年数を追うごとに役職が上がる可能性があります。役職がない施設の場合もありますが、リーダー手当などが見込めます。さらに朗報として、行政が介護人材の処遇改善として「勤続年数の長いものに処遇改善をする」とう政策を表明しています。今後も勤続年数を重視した給料アップが期待されることでしょう。
体調管理は必須となりますが夜勤回数を増やすことは、給料アップには欠かせません。施設によっては夜勤手当が10,000円/回というところもありますので、夜勤の回数を増やすことで確実に給料が上がります。
元から給料の相場が高い施設で働くことは、効率よく給料アップができる方法です。看護助手の求人数は比較的に多く、施設によって仕事内容も幅広く今までに経験していない経験が積める職場もあります。自分がどういったスキルも持ち、身に着けたいかそしてそれに見合った給料はいくらくらいなのかをしっかりと考えて転職を視野に入れてみましょう。また、介護福祉士の資格を持っていれば児童発達支援事業所などの福祉施設でも働くことができます。
□ 経験年数を考慮してくれる! |
きちん基本給に「経験年数により考慮」や「経験年数加算」などいった文言があることをチェックしてください。しっかりと経験を聞いてくれる職場ということも分かります。 |
□ ボーナスや昇給制度をチェックする! |
昇給額やボーナス額が例え微々たるものだとしても、制度や支給の有無は雲泥の差を生みます。看護助手は基本的にはボーナスは年2回、夏冬合わせ3.50ヶ月分~5.00ヶ月分支給されることが多いです。 |
□ 交通費や福利厚生が整っている! |
交通費は職場によって支給される限度額など規定が決まっています。交通費が全額支給される職場なら何ら問題はありませんが「上限月2万円」や「△△Km以内は交通費なし」等が各職場の規定ありますので、損をしない為にもきちんとチェックをしてしましょう。さらに職場によっては、結婚祝い金や出産祝金の支給制度などの職員に嬉しい福利厚生を完備しているところもありますよ。 |
看護助手は看護師や准看護師と違い“公的な看護助手資格はありません”。したがって、誰でも看護助手になることができます。また看護師になるには学校へと行かなくてはなりませんが、看護助手は看護師と比較しても社会人からの転職でも目指しやすいとされます。しかし昨今では民間資格での看護助手資格があり、取得しておけば就職・転職において確実に有利ですし、働いてからも聞き慣れない医療用語がだいぶ理解できるようになるので、より医師や看護師とのコミュニケーションがスムーズになるでしょう。看護助手において代表的な民間資格としては「看護助手実務能力認定試験(R)」「メディカルケアワーカー(R)」などがあります。取得のためには、ユーキャンやヒューマンアカデミーといった通信講座で学び各資格取得が可能となります。看護助手は誰でもなれる職業ですが、事前知識や準備なしでは働くうえで大変苦労してしまいます。また、医療や介護現場では前向きな知的好奇心がある方は大歓迎されますので、ぜひ資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。
それでは、上記で取り上げました民間資格である“看護助手資格”の難易度はどのくらいなのでしょうか。“看護助手資格”自体の難易度は決して難しくはありません。通信講座で受講し修了して申請をするだけで、看護助手実務認定資格が取得できます。ですが「全国医療福祉教育協会 看護助手実務能力認定試験(R)」と「医療福祉情報実務能力協会 メディカルケアワーカー(R)」では、それぞれ合格率が異なりますのでどちらの資格取得をしようか悩んでいる場合は合格率を参考にしても良いかもしれません。
合格率 | |
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全国医療福祉教育協会 看護助手実務能力認定試験® |
60~80% |
医療福祉情報実務能力協会 メディカルケアワーカー® |
1級45.7% 2級54% |
それでは看護助手は、職場ではどんな役割をしているのでしょうか。看護助手はいわば病院や介護施設の職場内のパイプ役となり、主に医師・看護師のサポート役として医療行為以外の業務ほぼ担っています。そう公的な医療の資格保有者ではないため、採血や点滴などの医療行為は一切行うことができません。したがって、病室の清掃やシーツなどの交換・消毒・使用した器具の滅菌作業・備品管理・簡単な事務補助まで行っています。また、書類やカルテを医師から看護師、看護師から医師に持っていったり検体を検査室に届けたりという仕事もしているためメッセンジャーとしての役割でも活躍をしています。さらに最もメインとなる仕事として、医療行為に該当しない範囲で患者さんのケアもしています。
病気や怪我、手術後の経過観察により、患者さんが一人では難しい動作などのサポートを中心に身の回りの生活全般の支援をしています。このように看護師や医師の仕事を支え、患者さんの命を預かる職業の補助に特化をしているのが看護助手です。補助とはいえ正確な報連相を行い患者さんの変化に注意をしなければならず責任のある仕事です。ちなみに看護助手の制服は看、護師と准看護師と見分けがつくように、違う形の白衣や色の違う医療ユニフォームを着ていますよ。
そんな様々な仕事をしている看護助手ですが、やりがいや魅力は一体何でしょうか。看護助手の多くは医療事務よりも人と接したいから就職した方が多いとされているため、患者さんと接することが仕事の看護助手は大変魅力的でしょう。患者さんから「ありがとう」とあたたかい言葉をもらい、元気になっていく姿を目にすることは、自分がサポートしてきたことが決して無駄ではなく仕事を認めてもらえたと充実感を得ることできます。また、忙しい医師や看護師を支えていることもあり、人の役に立てている実感もやりがいに繋がります。看護助手は必然的に雑用の仕事が増えてきてしまうのですが、医療行為以外のなんでもこなせる“施設の何でも屋”として万能的な立ち回りができ、頼られることにやりがいを感じる方もいらっしゃいます。くわえて医療行為ができない分血が苦手な方も活躍ができ、看護師よりも重圧がなく適度な緊張感をもって働くことができるのも魅力の一つです。