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給与アップも夢じゃない?!グループホームにおける給与の実態と今後の見通し

皆さんは、介護が必要となった原因で何が一番多いかご存じでしょうか?
厚生労働省が平成28年に実施した「国民生活基礎調査」によると、介護が必要となる原因の中で、最も割合が高かったのは「認知症(18.0%)」でした。認知症の方を受け入れる老人ホームとしては、特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などがありますが、その1つに「グループホーム」も挙げられます。「グループホーム」は、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送りながら、介護サービスが受けられる施設です。そこで今回は、これから「グループホームで働こう」と考えている方に向けて、グループホームの賃金の実態について迫りたいと思います。

グループホームで働く職員の平均年収はどのくらい?

「グループホーム」で働く人の平均的な賃金は、厚生労働省の「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」を見ると、認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム)は月収にして276,320円(常勤※賞与などの手当も含む)であることが分かりましたので、年収にすると推定で平均3,315,840円(276,320円×12カ月)になります。ちなみに、この調査では、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、訪問介護事業所、通所介護事業所、認知症対応型共同生活介護事業所の6つに分類して調査をしていますが、この分類の中では5番目に位置していますので、全体的に見ても「グループホーム」の賃金は低いのが実態と言えるでしょう。但し、日給でみた場合には、認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム)が10,380円(非常勤の者)で最上位となっていましたが、常勤と非常勤の働き方(各種手当や労働契約など)も異なるので、一概に合計の金額だけで善し悪しの判断はできません。

[認知症対応型共同生活介護事業所の平均月収]

■認知症対応型共同生活介護事業所
常勤の者 276,320円(平均年齢45.3、平均勤続年数6.7、実労働時間数165.2)
非常勤の者 180,410円(平均年齢49.7、平均勤続年数6.6、実労働時間数113.9)

出典:厚生労働省「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」第56表 介護職員の平均給与額等(月給の者)、サービス種類別、勤務形態別、加算(I)~(V)を取得している事業所

[介護施設毎の給与比較/日給の場合の比較]

■介護職員数(累計対象数)
常勤の者 7,690円(平均年齢48.9、平均勤続年数6.4、実労働時間数20.0)
非常勤の者 8,680円(平均年齢54.8、平均勤続年数6.4、実労働時間数14.5)
■介護老人福祉施設
常勤の者 7,440円(平均年齢46.9、平均勤続年数6.4、実労働時間数20.7)
非常勤の者 8,520円(平均年齢55.1、平均勤続年数7.7、実労働時間数14.8)
■介護老人保険施設
常勤の者 7,410円(平均年齢46.4、平均勤続年数6.5、実労働時間数20.1)
非常勤の者 10,100円(平均年齢49.6、平均勤続年数4.5、実労働時間数15.2)
■介護療養型医療施設
常勤の者 …円(平均年齢…、平均勤続年数…、実労働時間数…)
非常勤の者 …円(平均年齢…、平均勤続年数…、実労働時間数…)
■訪問介護事業所
常勤の者 8,240円(平均年齢52.6、平均勤続年数8.7、実労働時間数18.8)
非常勤の者 8,320円(平均年齢53.3、平均勤続年数4.4、実労働時間数15.9)
■通所介護事業所
常勤の者 7,670円(平均年齢48.0、平均勤続年数5.3、実労働時間数19.8)
非常勤の者 8,140円(平均年齢54.2、平均勤続年数7.3、実労働時間数14.3)
■認知症対応型共同生活介護事業所
常勤の者 7,580円(平均年齢49.4、平均勤続年数5.5、実労働時間数20.7)
非常勤の者 10,380円(平均年齢58.2、平均勤続年数6.3、実労働時間数12.4)

出典:厚生労働省「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」第101表 介護職員の平均基本給額等(日給の者)、サービス種類別、勤務形態別、加算(I)~(V)を取得している事業所

注1)通所介護事業所には地域密着型通所介護事業所を含む。
注2)平成29年と平成30年ともに在籍している者の平均給与額を比較している。
注3)勤続年数は平成30年9月までに勤続した年数。
注4)勤続年数について、同一法人の経営する施設・事業所における勤続年数は通算して計上している。
注5)年齢は平成30年9月30日時点の年齢。
注6)計数のない場合は「-」、統計項目のあり得ない場合は「・」、集計対象数が10未満の場合は「・・・」と表章している。
注7)金額は、10円未満を四捨五入している。

グループホームにおける賃金設定は?

「グループホーム」で働く場合の賃金は、正社員となる常勤の固定給、夜勤専従の日給、パートや派遣などの非常勤となる時給などに分類されるでしょう。
また、賃金設定においては、どこの施設も同じようなことが言えますが、勤続年数、資格の所有、夜勤の対応、役職などによって、基本給や手当が変わります。

グループホームで給料アップを狙うためにすべきことは?

「グループホーム」で賃上げを狙うには、前述の通り、勤続年数が長いこと、資格を所有すること、夜勤の対応をすること、役職者になることなどが近道と言えるでしょう。
下記の調査結果は、介護職員全体の平均的な賃金となりますので「グループホーム」だけの統計ではありませんが、勤続年数や資格の取得によって、どのくらい賃金アップが実現できるのか、1つの目安として参考になります。

介護職員の平均基本給額の状況(月給・常勤の者、勤続年数別)

全 体【平均勤続年数:7.6年】 181,220円(平成30年9月)
1年(勤続1年~1年11か月) 181,220円(平成30年9月)
2年(勤続2年~2年11か月) 168,470円(平成30年9月)
3年(勤続3年~3年11か月) 170,400円(平成30年9月)
4年(勤続4年~4年11か月) 171,540円 (平成30年9月)
5年~9年 175,230円 (平成30年9月) 171,540円 (平成30年9月)
10年以上 200,670円 197,530円 3,140円(平成30年9月)

出典:厚生労働省「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」
注1)平成29年と平成30年ともに在籍している者の平均基本給額を比較している。

注2)平均給与額は10円未満を四捨五入している。

注3)勤続年数は平成30年9月までに勤続した年数であり、同一法人の経営する施設・事業所における勤続年数は通算して計上している。

介護職員の平均給与額の状況(月給・常勤の者、保有資格別)

全 体【平均勤続年数:7.6年】 300,970円(平成30年9月)
保有資格あり 7.7年(平均勤続年数) 303,460円(平成30年9月)
介護福祉士 8.4年(平均勤続年数) 313,920円(平成30年9月)
実務者研修 6.5年(平均勤続年数) 288,060円(平成30年9月)
介護職員初任者研修 6.8年(平均勤続年数) 285,610円 (平成30年9月)
保有資格なし 5.2年(平均勤続年数) 261,600円(平成30年9月)

出典:厚生労働省「平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果」
注1)「実務者研修」とは、実務者研修、介護職員基礎研修及びヘルパー1級をいう。
注2)「介護職員初任者研修」とは、介護職員初任者研修及びヘルパー2級をいう。
注3)平成29年と平成30年ともに在籍している者の平均給与額を比較している。
注4)平均給与額は、基本給(月額)+手当+一時金(4~9月支給金額の1/6)
注5)平均給与額は10円未満を四捨五入している。
注6)勤続年数は平成30年9月までに勤続した年数であり、同一法人の経営する施設・事業所における勤続年数は通算して計上している。

介護業界の賃上げ傾向でグループホームも恩恵を受けるのか?

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の平均年収については前述した通りですが、賃上げ幅を確認してみると、前年比(平成30年と平成29年)では、常勤の場合で9,750 円のプラス、非常勤の場合で4,610円のプラスでした。「グループホーム」に限ったことではありませんが、いま介護の業界は人手不足が深刻化していますので、業界全体で給与・待遇面の改善で職員の定着率を高めようとしている動きがあります。また、政府が2019年10月に予定される消費税率引き上げに合わせ、約1,000億円規模の財源を投入し、勤続10年以上の介護福祉士に平均して月額80,000円相当の賃上げを行う対策を講じる発表しました。施設内に勤続10年以上の介護福祉士がいない場合でも、要件を満たせば、介護福祉士を中心に処遇を改善する「特定処遇改善加算」が取得できるとしています。こうした動きをみる限り、業界全体で徐々に職員の賃金も改善されていくことが期待できそうですが、自身でも資格の取得や経験を積むことが賃上げには欠かせない要件となることに変わりはなさそうです。

まとめ
認知症の高齢者の増加に伴い、今後も「グループホーム」のニーズは益々高まっていくことでしょう。その一方で、入居者の高齢化が進むことで医療措置が必要になった場合、どのように対処するのかが大きな課題にもなっています。最近では、看護師と24時間連絡が取れる体制を導入した「グループホーム」も増えてきているので、そうした動向も目が離せない業態と言えるでしょう。