今回は、介護保険サービスを受けるために必要な要介護認定について、その申請方法から認定後の流れについて詳しく説明します。
初めて介護保険サービスの利用される方にもわかりやすい内容となっていますので、ぜひ参考にてみてください。
要介護認定とは、介護保険サービスに該当する被保険者に対し、どの程度の介護サービスを行う必要があるのか判定する仕組みとなります。
介護保険サービスを受ける場合、国や市区町村から7割~9割の費用を介護者に保険から給付されますので、1~3割の負担でサービスを利用することができます。
そして、介護保険の被保険者は65 歳以上の方(第1号被保険者)と40 歳から 64 歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)に分け、第1号被保険者は原因を問わずに要介護・要支援の認定を受けた方で、第2号被保険者は加齢に伴う疾病(※特定疾病の場合は、末期のがん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症など)が原因で要介護・要支援と認定された方を対象とし、介護者の介護度に応じて、入浴、 排せつ、食事、調理、洗濯、掃除等の介護サービスを訪問介護や介護施設などを通じて行われます。
※要介護と要支援は、別コラムにて詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
https://care-tensyoku.com/column/oyakudachi/5545
また、要介護認定では、市区町村の職員か介護支援専門員(ケアマネジャー)などが被保険者の心身の状況を訪問によって調査しますが、市区町村から被保険者の主治医にも意見書を提出してもらうほか、保険、福祉、医療の学識経験者などで構成する「介護認定審査会」が審査を担当し、要介護や要支援の状態にあるのか、要介護状態にあるとすればどの程度なのかを判定します。
要介護認定の基準については、コンピュータによる1次判定と、その判定結果を踏まえて「介護認定審査会」の学識経験者が約5名程度で行う2次判定の2段階で結果を出していることを把握しておきましょう。
順を追って詳しく説明すると、コンピュータによる1次判定では、介護老人福祉施設や介護療養型医療施設等の施設に入所・入院した3,500人の介護者のデータが使われていますが、このデータは48時間でどのような介護サービスがどれ位の時間で行われたかを調査した「1分間タイムスタディ・データ」を基準として、介護の手間として必要になる時間を下記の「要介護認定等基準時間に関する5つの分類」や「要介護認定等基準時間」にあてはめるのです。
つまり、被保険者の心身の状況を参考にしながら、同様の特徴を持った高齢者から提供された介護の手間のデータと照らし合わせ、被保険者の介護量を統計的な手法を用いて、要介護認定等基準時間に変換するといった仕組みで判定されています。
次に、2次判定では、1次判定をベースにして被保険者の状態・改善可能性にかかる審査判定をしますが、要介護状態の軽減または悪化を防止するため、申請者が統計的な推定には馴染まないような場合や、申請者固有の手間があったりする場合を考慮して、1次判定の結果にかかわらず要介護度を修正したり、変更したりする場合があります。
「要介護認定等基準時間」の推計は、被保険者を下記①~⑤までの5つに分類して、要介護認定等基準時間を算出した後、その時間と認知症加算の合計を基に要支援1から要介護5を判定しています。
[要介護認定等基準時間に関する5つの分類] |
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① 直接生活介助 入浴、排せつ、食事等の介護 ② 間接生活介助 洗濯、掃除等の家事援助等 ③ 問題行動関連行為 徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等 ④ 機能訓練関連行為 歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練 ⑤ 医療関連行為 輸液の管理、じょくそうの処置等の診療の補助 |
※出典:厚生労働省「介護保険制度における要介護認定の仕組み
[要介護認定等基準時間の目安] | |
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要支援1 | 要介護認定等基準時間が25分以上32分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要支援2 要介護1 |
要介護認定等基準時間が32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護2 | 要介護認定等基準時間が50分以上70分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護3 | 要介護認定等基準時間が70分以上90分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護4 | 要介護認定等基準時間が90分以上110分未満又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護5 | 要介護認定等基準時間が110分以上又はこれに相当すると認められる状態 |
※出典:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」
要介護認定の申請方法は、申請者が住んでいる市区町村の窓口もしくは、インターネットで申請書を入手して郵送で手続きを行うことが出来ます。
市区町村の窓口で手続きを行う場合、本人、家族、その他の代理の方などで申請書類を提出することになりますが、本人以外が申請を代行する場合には印鑑の持参が必要です。
また、家族が何らかの事情で窓口に行くのが難しい場合には、市区町村の地域包括支援センター、居宅介護支援事業者、介護保険施設に申請を代行してもらうこともできます。
このほか、申請者が病院に入院しているような場合には、病院の介護支援専門員が市区町村の地域包括支援センターに代理で連絡し、手続きを進めることになります。
なお、申請の際に必要な書類は、次の通りです。
[申請に必要なもの] | |
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要介護 要支援認定申請書 |
申請書は、市区町村の窓口もしくは、市区町村のWEBページなどで入手可能です。 |
介護保険の被保険者証 | 第1号被保険者(65歳以上)は必要です。 |
健康保険被保険者証 | 第2号被保険者(40~64歳)は必要です。 |
マイナンバーの個人番号 |
申請書にはマイナンバーの個人番号の記入が必要になりました。本人の番号が確認でき る住民票や、マイナンバー通知書も手元に用意しておきましょう。 |
身分証明書 | 運転免許証やパスポートなど、顔写真付きの身分証明書が必要です。 |
ここまで説明してきた内容を要約すると、要介護認定は下記の表に記載したstep1~step5の流れで認定を進めることになります。加えて、もしも要介護認定の認定結果が納得できないような場合、その対処方法も紹介していきますので併せてご覧ください。
Step1. 必要書類の提出 |
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必要書類を提出します。書類が受理された後、介護保険被保険者証の代わりに、介護保険資格者証を受け取ります。 |
Step2. 市区町村の担当者や介護支援専門員による訪問調査 |
介護認定調査は、市区町村の職員か介護支援専門員などが申請者の心身の状況を訪問によって調査します。 |
Step3. コンピュータによる1次判定 |
訪問調査で得られた情報を基に、「要介護認定等基準時間」に当てはめ、コンピュータを使って分析し、基礎となる要介護認定の判定が出ます。 |
Step4. 「介護認定審査会」の学識経験者が行う2次判定 |
訪問調査で得られた情報を基に、「要介護認定等基準時間」に当てはめ、コンピュータを使って分析し、基礎となる要介護認定の判定が出ます。 |
Step5. 要介護認定の通知 |
要介護認定の結果は、申請から30日以内に認定証と介護保険被保険者証が郵送されます。 |
要介護認定の通知が届いた後、認定結果に納得ができないような場合には、市区町村の介護保険課認定審査係に行き、認定結果の理由を確認してください。
その説明を受けても納得ができない場合、条件を満たしていれば、2つ方法によって再審査を依頼することになります。
1つ目は、都道府県に設置されている介護保険審査会に審査請求をする方法です。
審査請求とは、要介護認定の取り消しを申し立てることになりますが、通知を受け取った日の翌日から3か月以内であることや、審査請求に理由があると認められた場合に限られています。
2つ目は、要介護認定の区分変更を申請する方法です。
区分変更の申請とは、認定の再調査や介護認定審査会の再判定をしてもらう方法になりますが、申請者の心身の状態が著しく変化したようなケースが該当し、そうした状態が認められた場合、認定有効期間内であれば更新時期を待たずに区分変更の申請をすることができます。但し、第2号被保険者(40~64歳)に該当する場合は、国が定める特定疾病(16種類)が原因で介護が必要になった場合と限定しています。
いずれの方法についても、特定の条件を満たしている必要があり、再審査が実現したとしても取り消しの判定までには数カ月かかるうえ、最初から要介護認定の申請をすることになりますので、必ずしも被保険者の希望通りの結果になるとは限りません。
要介護認定の判定結果が「要介護1~5」の方は、居宅介護支援事業所に連絡すると、介護支援専門員が最適な介護サービスを受けることができるようサポートしてくれます。
ここでは、自宅及び介護施設で介護サービスを受ける場合について、それぞれ説明していきます。
自宅で介護サービスを受ける介護者の場合には、介護支援専門員のいる居宅介護支援事業者へ連絡してください。
居宅介護支援事業者は、市区町村のホームページなどで支援業者を調べることができますが、選定などが難しければ、地域包括支援センターに相談してみましょう。
その後は、介護支援専門員が介護者に合わせたケアプランを作成してくれますが、事前に要望などがあれば伝えておく必要があります。
そして、ケアプランを基にしながら、訪問介護やデイサービスなどの通所サービスの事業者と契約を交わし、サービス内容や費用について確認します。
この事業者との契約の際に、介護者が認知症などで判断できないような場合には、「任意後見人」を選任した代理人が契約を交わす流れになります。
「任意後見人」とは、自分で判断ができるうちに、自分の判断能力が衰えてきた時に備えて、あらかじめ支援者(任意後見人)を誰にするのか、将来の財産管理や身の回りのことについてその人に何を支援してもらうかなど、自分で決めておくことができる仕組みです。
介護施設で介護サービスを受ける場合には、自分で介護施設を選定するか、もしくは地域包括支援センターなどに相談して介護施設を選びましょう。
介護施設の選定にあたっては、事前に見学して、施設の特徴やサービス内容、介護職員などの対応、サービスにかかる費用などを確認します。
入所にしてからは、介護者のケアプランを施設の介護支援専門員に相談しながら作成してもらい、サービスを受ける流れとなります。
「自立、要支援1~2」と認定された方は、地域包括支援センターに行き、要支援認定を受けた高齢者に対する介護予防のケアプランを作成しますが、主には移動範囲や移動能力、家庭生活を含む日常生活の状態、社会参加、コミュニケーション、健康管理、メンタルなどの状況と課題の分析をして、介護状態になる可能性がある高齢者には介護予防サービスや制度などを紹介しています。