高齢者の介護を行っているご家庭であれば、介護に関わる知識、経験、対応できる時間などにも限界があるため、介護施設への入所を何度か考えたこともあることでしょう。
しかしながら、介護が必要になった高齢者にしてみれば、長く生活してきた自宅や家族はなにものにも代え難く、できれば家族と一緒に住み慣れた環境で生活したいと考えるのは当然のことです。
そのような高齢者の方の要望を叶えるのに最も適しているのが訪問介護サービスです。
そこで今回は、そうした高齢者の自宅に訪問して介護をする「訪問介護」について、さまざまな角度から詳しく解説していきたいと思います。
訪問看護とは、日常生活を自力で過ごすことが難しくなった高齢者に対して、介護福祉士、介護員養成研修修了者、介護職員初任者研修修了者などの資格を持ったホームヘルパーが自宅まで行き、入浴、排泄、食事などの「身体介護」や、掃除、洗濯、調理、通院時の外出及び移動の補助などをする「生活援助」のサービスです。
また、高齢者の介護は、介護保険サービスに該当する被保険者に対し、どの程度の介護サービスを行う必要があるのかを判定する「要介護認定」の仕組みにより、「要介護(1~2)」もしくは「要支援(1~5)」といった介護度を設定し、その介護度に合わせて自立した生活が送れるように支援します。
訪問介護の場合は、「要介護認定」において「要介護(1~2)」「要支援(1~5)」の全てが対象となりますので、覚えておきましょう。
訪問介護のサービスを大別すると、前述したように、「身体介護」と「生活援助」の2種類があります。この「身体介護」と「生活援助」については、主には介護者のからだに直接触れて行う介護であるかどうかといった点に違いがありますが、介護者が自立して生活を送れるように支援するためには、介護者の状態を判断して見守ることも大切です。
訪問介護においては、介護者の手足となって何でも手助けてしまおうと誤解しがちですが、それぞれの介護の役割や意図をしっかりと理解し、介護者の状態を見極めたケアを心掛けるようにしましょう。
更に「身体介護」と「生活援助」を詳しく説明すると、「身体介護」には、「介護者のからだに直接触れて行う介助」「日常生活動作及び意欲の向上を図ることを目的に介護者と介護職員が一緒に行う介助」「専門的な知識や技術を必要とする介助」に分類することができ、具体的には次のような対応を行い
身体介護サービスの事例 |
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・食事介助 ・排泄、更衣、洗面、清拭、入浴の介助 ・体位変換、移乗、移動の介助 ・通院や外出時の歩行介助 ・介護者が家事を行う際、安全を確保するための声掛けや見守り ・介護者と介護職員が一緒に行う調理や掃除などの家事 ・服薬の介助 |
一方の「生活援助」は、訪問介護を担当する介護職員が介護者に代わって下記のような対応をしますが、基本的には「介護者の当事者に向けた内容であること」もしくは「介護者のために家族が行えないこと」が介助の範囲となります。
生活援助サービスの主な事例 |
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・食事の支度(買い出し、調理、配膳、片づけまで) ・掃除 ・洗濯 ・買い物 ・薬の受け取りや受診の手続き ・見守り 等 |
ここまで訪問介護のサービスを紹介してきた中で、ケアする線引きが難しいと感じた方も多いのではないかと思いますが、対象外となるサービスとはどのようなものでしょうか。
ケアの線引きの考え方としては、介護者である当事者に向けた内容であるかどうかが大前提となりますが、例えば介護者の日常生活に関係のないペットの世話などは対象外となりますし、他にも専門的な知識や技術を必要とする医療行為等は行いません。
介護職員が誤解をして医療行為をしてしまっているケースもあるようですが、介護福祉士や介護職員が行える医療的なケアは、服薬介助、軟膏塗布(床ずれの処置は除く)、湿布を貼る、目薬を差す、座薬を挿入する、体温計で体温測定、自動血圧測定器での血圧測定、酸素濃度測定器の装着、軽い擦り傷や切り傷の処置などです。
この他にも、耳アカを取り除く、爪切り、綿棒による口腔ケア、自己導尿補助、カテーテル(医療用に用いられる柔らかい管)の準備、市販の浣腸器による浣腸などは、要介護者に異常が見られない場合に限って許可されている行為となりますので、しっかりと覚えておきましょう。
生活援助サービスの対象外となる主な事例 |
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・ペットの世話 ・住宅修繕 ・車のメンテナンス ・庭の草むしり ・家具の修理 ・窓ふき ・インスリン注射 ・摘便 ・床ずれの処置 ・血糖測定 ・点滴の管理 ・喀痰吸引、経管栄養 など |
※喀痰吸引、経管栄養は、実地研修(2種類)を終了し、認められた介護福祉士のみが行えます。
訪問サービスには様々な種類があって細分化されていますが、ここでは代表的な4つの分類からそれぞれの内容を説明していきます。
訪問サービスの種類 | |
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①訪問介護 | 介護者の自宅に訪問し、掃除、洗濯、買い物、食事、排せつなどの介助を行う。 |
②訪問入浴介護 | 介護者の自宅に訪問し、移動式の浴槽を使って入浴を行う。 |
③訪問看護 | 介護者の自宅に訪問し、医師の指示に基づく医療処置、医療機器の管理、床ずれ予防・処置などを行う。 |
④訪問リハビリテーション | 介護者の自宅に訪問し、リハビリテーションの指導や支援などを行う。 |
次に、介護者や家族の方が訪問介護における事業所を選定する場合、どのような点から選ばれているのでしょうか。
それは、サービスを提供する上で基本的なことになりますが、職員の対応が丁寧であるか、介護や保険などに関しての経験や知識が豊富であるか、周囲からの事業所の評判はどうか、サービスや費用については明瞭であるか、急な変更やキャンセルにも柔軟に対応をしてくれるかなどが重視される傾向にあることを覚えておきましょう。
介護者が疑問や不安を感じるとサービスを提供する事業者をいつでも変更できますので、サービスの基本要件には細心の注意が必要です。
そして、訪問介護における費用とは、どのくらいかかるものなのでしょうか。
訪問介護を利用する場合、利用できる介護保険の支給限度額が要介護度によって定められています。
費用は、介護者の所得にもよっても異なりますが、支給限度額の範囲内でサービスを利用した場合は1割負担となり、2015年8月からは介護者の合計所得金額が160万円以上(単身で年金収入のみの場合、年収280万円以上)あって、同一世帯の65歳以上の方の年金収入や、その他の合計所得金額が単身280万円以上、2人以上世帯346万円以上の場合には自己負担が2割となりました。
以下、訪問介護における支給限度額をまとめましたので参考にしてください。
支給限度額 | 自己負担分(1割) | 自己負担分(2割) | |
要支援1 | 50,030円 | 5,003円 | 10,006円 |
要支援2 | 104,730円 | 10,473円 | 20,946円 |
支給限度額 | 自己負担分(1割) | 自己負担分(2割) | |
要介護1 | 166,920円 | 16,692円 | 33,384円 |
要介護2 | 196,160円 | 19,616円 | 39,232円 |
要介護3 | 269,310円 | 26,931円 | 53,862円 |
要介護4 | 308,060円 | 30,806円 | 61,612円 |
要介護5 | 360,650円 | 36,065円 | 72,130円 |
※限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分が全額自己負担となります。
※介護サービスの料金は、サービス毎に「単位数」が決められています。
1単位の単価は、10円を基準とし、地域によって0%~20%の範囲で割増が行われます。上記の支給限度額は、標準的な地域の例(1単位10円)となりますので、都市部などは更に高くなる可能性があります。
最後に、これまで説明したまとめになりますが、訪問介護サービスを開始するまでの流れを説明します。
Step1:要介護認定を申請する |
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要介護認定を希望する当事者が住んでいる市区町村の窓口で申請します。申請者は、市区町村の窓口もしくは、インターネットで申請書を入手して郵送で手続きを行うことも出来ます。※要介護認定の申請方法の詳細は、別コラムの「要介護認定の申請方法は?申請方法から認定後の流れまで詳しく解説!」も併せてご覧ください。 |
Step2:訪問調査と要介護認定 |
要介護認定の審査のため、市区町村から訪問調査の日程に関する連絡を受け、市区町村の担当者などが介護希望者に聞き取り調査を行います。 その後、要介護認定は、介護認定審査会が判定し、申請から30日以内に認定証と介護保険被保険者証が郵送されてきます。 |
Step3:介護支援専門員などの決定やケアプランの作成 |
要介護認定の結果が要介護1~5の場合は、居宅介護支援事業所に介護支援専門員の選任を依頼し、どのようなサービスが必要となるかの「介護サービス計画書」が作成してもらいます。また、要介護認定の結果が要支援1、2の場合には、地域包括支援センターに連絡を入れ、地域包括支援センターの職員が「介護予防ケアプラン」を作成します。 |
Step4:事業者の選定と契約 |
介護支援専門員などが作成したケアプランに基づいて、実際にサービスを受ける訪問介護事業所を選定し、費用の確認や契約をして介護サービスの開始を準備します。 |
Step5:介護サービスの開始 |
事業者との契約が完了しましたらサービス開始となります。 |