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老人ホームの食事について入居前に調べておきたいこと

健康でいるためには、バランスの取れた毎日の食生活が重要ですが、栄養成分などの話とは別に、「食事が美味しいこと」「食事をする環境が楽しいこと」はとても大切でしょう。
老人ホームにおいては、食事は高齢者の健康面に配慮し、調理方法や食材選びには様々な工夫やアイデアが盛り込まれた食事が提供されています。しかし、利用者の健康状態や、好みの味付けなどもあり、個別対応ができるにしても限界はあることでしょう。そこで、老人ホームの見学・試食で自身が好む食事であるかチェックするのが有効な方法の1つとして挙げられますが、他にも事前にどのようなことを確認すれば良いのかなど、記事で取り上げてみたいと思います。

老人ホームの選定基準の1つに食事をチェックする意識を持つこと

老人ホームの見学では、住環境となる建物などの状態や、介護職員のスタッフの対応などに意識が向いてしまう傾向にありますが、同様に毎日の食事は非常に重要となるので、食事のサービスについても、しっかりと確認する意識を持つことが大切になります。
例えば、老人ホームで提供される食事には、食べやすさ、彩り、香り、形状、盛り付けなどが工夫される「高齢者食」、かむ力、飲み込む力などを補う「介護食」、様々な献立メニューから好みの食事などを選ぶことができる「セレクト食」、バイキング形式などで食事が楽しめる「イベント食」などの形態があり、入所を希望する施設でどのような食事が提供されるのか確認すると良いでしょう。
そして、できるだけ、見学の際には実際に試食をして、自身が好む傾向の食事が提供されるか「味」を確かめるべきです。また、入居を希望する老人ホームにおいて、調理施設は自営であるか、もしくは給食センターなどの業者に一部もしくは全部委託しているのか、施設の方針として食事にも力を入れているのかなどをチェックすると、そこからサービス内容が見えてくると思います。こうしたことに加え、毎日の食事となるので、食事の共用スペースは衛生管理が行き届いているか、どうしても苦手なメニューがあった場合には代替対応が可能であるか、提供される料理の温度は適温かにも目を向ける必要があります。

老人ホームの食事は薄味で味気ないは事実なのか?

最近は、老人ホームの食事に力を入れる施設も増えてきており、入居者が飽きないようにするため、バラエティー豊かなメニューを用意して、工夫する施設も増えてきました。
中には、専属シェフを配置して、素材を吟味した安全な素材を利用し、栄養価、カロリーへなどの健康に配慮したメニューのほか、調理方法、温度や堅さなどにまでこだわりところもあり、ホテル並みのグレードで食事を提供する施設もあります。老人ホームの食事は、シンプルで栄養価ばかりを注視し、野菜、魚、煮物などが多く、薄味で味気ないといったイメージを持っている人もいると思いますが、決してそんなことはありません。
例えば、出汁を丁寧に取るなどして薄味と感じさせないように工夫されていたり、揚げ物や肉もしっかりと提供されていたり、時にはうなぎや寿司などのメニューが入ることもあります。
まずは、こうしたことも把握したうえで、先入観を持たずに、入居希望の施設の食事がどうであるのか、冷静に見るようにすると良い判断ができるのかもしれません。

老人ホームでの食事の献立の一例

しかし、老人ホームにも、社会福祉法人や地方公共団体が運営している施設もあれば、民間が運営している施設もあり、予算や人員の都合上から選択の余地が殆どないようなケースがあるのも事実です。例えば、公共団体が運営している老人ホームの場合は、基本的に個別対応は難しいところが多く、食事に関しての選択肢は少ない傾向にあるでしょう。また、前述したような専属シェフを配置しているような施設が多い訳ではありませんので、ここでは一般的な老人ホームの献立として、どのようなものが提供されているのか、具体例を挙げておきたいと思います。

朝食メニュー例
CASE1:洋食/パン、スクランブルエッグ、フルーツヨーグルト、牛乳
CASE2:和食/ごはん、焼サケ、味噌汁、ふきの金平、とろろ、お茶
昼食メニュー例
CASE1:豚ごぼううどん、卵豆腐のあんかけ、オクラのポン酢和え
CASE2:焼きそば、いかしゅうまい、肉団子のスープ、フルーツヨーグルト
CASE3:ごはん、豚の角煮、もやしのナムル、カニの中華風スープ、フルーツ
おやつメニュー例
CASE1:オレンジゼリー、お茶、コーヒー、紅茶
CASE2:ブラウニー、牛乳
CASE3:水まんじゅう、お茶、コーヒー、紅茶
夕食メニュー例
CASE1:鶏そぼろ丼、あさり入り卯の花、ごま和え、みそ汁、フルーツ
CASE2:豚肉のスタミナ焼き、大根のえびあんかけ、ブロッコリーサラダ、みそ汁
CASE3:さわらの西京焼き、冬瓜の含め煮、甘酢和え、山芋の磯辺揚げ、すまし汁

老人ホームの食事サービスに対する利用者の意見(苦情)はどのようなものか?

老人ホームの食事に対するサービスについて、実際の利用者の評価を調査してみると、ポジティブな評価もネガティブな評価ありました。
ここでは、公平に見るためにも、あえてネガティブな評価をした人の意見も見ていきたいと思いますが、公益社団法人全国有料老人ホーム協会「苦情処理委員会(後援:厚生労働省)」が実施した「有料老人ホームなんでも相談有料老人ホーム110番」によると、次のような内容が寄せられていることが分かりました。
調査が限定されているので部分的な意見ではありますが、利用者の率直な意見として参考になりますので、ここでも紹介しておきたいと思います。

苦情相談(※一部抜粋)
①2017/7/12 電話 入居者本人 登録ホーム 苦情相談種別:契約内容の変更
[相談内容CASE1]
今年の秋から食費が値上げ(喫食数によらず、一定額を徴収する等)となる予定なのだが、サービス料金の値上げについての規制はないのか。
[対応内容CASE1]
利用料の改定については、有料老人ホーム設置運営標準指導指針において、「利用料等の改定のルールを入居契約書等に明記すること、また改定に当たっては、その根拠を入居者に明確にすること」とされている。費用を改定する際は、一方的に行うのではなく、所定の手順によって行われる。ただし、運営懇談会で の入居者全員の了承がなければ、料金を改定することが出来ないということではない。納得できない場合は、行政や第三者機関の相談窓口に相談する方法もある旨アドバイス。
②2017/7/12 電話 入居者本人 登録ホーム 苦情相談種別:食事サービス
[相談内容CASE2]
食事の改善が全くなされない。メニューは良く書いてあるものの、食事のまずい理由は、冷凍食品を解凍したものばかりのせい。半分くらい食べて残すような状態なのに、食事業者に直接苦情は言えないことから、ホーム側に苦情を述べても一向に改善されない。
③2017/1/23 11:30~11:50 電話 入居者家族 不明ホーム 苦情相談種別:費用、生活
支援サービス
[対応内容CASE2]
通常は食事業者が残食の状況をみながら自主的に改善向上させるものだが、このような自主的改善がなされないときは、入居者とホーム側と話し合う事が大切であり、改善されるまで、ねばり強く改善要求しないと良くならない。
[相談内容CASE3]
食事代について、3食欠いたら1,080円返金されるが、欠食の連絡は前日の5時までとなっている。当 日2食欠食した場合には、お金を支払わなければならないのか。
1時間の散歩については介護保険サービス内となっており、1時間を越えた場合には、1,080円の実費 が必要である。過去6年間は散歩のついでに、ポストに葉書をいれても、
のどが渇いたのでのど飴を 買っても介護保険サービスの範囲内だったが、新しい施設長になったら散歩の目的外だから、散歩中にはできないと言われた。
[対応内容CASE3]
食事代については、入居契約書上そのような規定になっていれば、当日欠食でも、お金を払う必要が ある。通常、委託業者などは前日に翌日の仕込みをするので、質問のように欠食は前日5時までとして いるのではないか。
散歩の範疇をどの程度にするかという点については、厳密に言えば散歩の目的範囲外という見方も出 てくると思うが、通常、弾力的に運営される余地もあるので、現施設長に家族としての希望や要望について交渉してはどうか。

出典:
公益社団法人 全国有料老人ホーム協会
平成29年度「有料老人ホームなんでも相談有料老人ホーム110番」
※相談の受付は、平成29年と平成30年の2回で行われました。
第1回)平成29年7月11日(火)~7月13日(木)3日間
第2回)平成30年1月23日(火)~1月25日(木)3日間

入居前に食事する環境をチェックしておきたい5つのポイント

最近は食堂のような形態ではなく、リビングのような環境で他の利用者と一緒に食事できる施設が増えてきました。しかし、老人ホームによっても、食事する環境も違えば、ルールもそれぞれに違いがあります。
そこで、入居前には、食事する環境として、以下の5つを確認すると良いでしょう。

食事の環境のチェックポイント
①食事の時間の指定は限定されているのか、もしくは時間に幅があるのか
②座席は、自由に座れるのか、もしくは指定されているのか
③入居者同士が仲良く楽しそうに食事と会話を楽しんでいるか
④机や椅子などに食べカスなどが落ちていないか
⑤閉鎖された空間で食べていて息苦しさなどは感じないか

老人ホームで食事の個別対応がどこまでできるか確認すること

老人ホームの食事で確認しておきたいこととして、やはり個別対応がどこまで対応が可能なのかも大切です。特に、入居者の方の中には、アレルギーがある場合や、体調不良になることもあるでしょうから、そうした不安材料は事前に個別対応が可能か確認しておくべきでしょう。

老人ホームで食事に関する個別対応が可能か確認したいポイント
・治療食の個別対応が可能であるか?
・苦手な食材や食事がある場合は代替食などの個別対応は可能であるか?
・食物アレルギーがある場合の個別対応は可能であるか?
・体調不良の場合、どのような食事の個別対応が可能であるか?
・大勢の人がいると食べにくいので、食べる時間をずらすなどの変更は可能か?
まとめ
老人ホームの食事は、設備やスタッフの対応と同じように、不安や疑問がある方も多いことでしょう。こうした不安や疑問は、ネガティブな意見がイメージとして刷り込まれているのかもしれませんが、実際に筆者が調べてみただけでもだいぶ印象が変わりました。食事は、慣れ親しんだ家庭の味や習慣などもあることなので、一概に善し悪しを他人が決められませんが、やはり実際に老人ホームの見学で試食し、自身に合うか合わないかを総合的に判断することが必要なのだと感じます。