高齢者が新たに住まいを考えなければならないような時、定年などで収入が少なくなっていたり、健康面におけるリスクも懸念されることから、賃貸契約などを結ぶことは難しくなります。
しかし、”住み慣れた地域で自立した生活を送りたい”とお考えの方や介護を必要とする高齢者の方は大勢いらっしゃいます。そのような高齢者の方にとって「サービス付き高齢者向け住宅」は非常に心強い存在となることでしょう。
そして、これから「サービス付き高齢者向け住宅」で働くことをお考えの方は、今回の記事でサービス付き高齢者向け住宅におけるサービスの理解を深めれば、きっと面接や現場などで役立てることができるはずです。
「サービス付き高齢者向け住宅」では、住宅内に医療や介護の有資格者が常駐するなどして、主には日中に入居者の安否確認や生活支援サービスを提供しています。
また、「サービス付き高齢者向け住宅」は、国土交通省と厚生労働省が所管する法律「高齢者住まい法」に基づいた住宅として、主に民間企業が運営し、都道府県単位で認可する仕組みです。こうした特徴を持っているのが「サービス付き高齢者向け住宅」となります。
「サービス付き高齢者向け住宅」に入居する場合には、主には敷金、家賃、水道光熱費などを支払うことになりますが、入居者の方の心身の状態に合わせ、介護不要の「一般型」、あるいは介護サービスを提供している「介護型」の選択によって費用が変わってきます。
ここでは、「一般型」「介護型」の価格の違いや、毎月かかる費用の内訳なども紹介しておきますので、ぜひ参考にしてください。
「一般型」の場合 |
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・契約形態:基本は賃貸借契約の方式を採用 ・初期費用:敷金として数十万円程度(平均的には月額利用料の2〜3ヶ月分程度) ・月額費用:家賃と管理費で5万円~25万円程度 ※家賃は周辺の賃貸マンション・アパートの相場に準じています。 |
「介護型」の場合 |
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・契約形態:基本は利用権契約の方式を採用 ※利用権方式は、介護サービスを含む住宅利用の権利を購入するものです。 ・初期費用:入居一時金として数十万円~数千万円程度 ※特定施設などの場合、有料老人ホームと同様に入居一時金が必要です。 ・月額費用:家賃と管理費に加え、食費も含めて15万円~40万円程度 |
入居後については、家賃のほかにも、水道光熱費や管理費、日用品などの費用、介護サービスを受ける場合には介護保険を適用して1割負担、もしくは一定以上の収入がある場合は2~3割負担となりますので、別途費用が必要になります。
以下、費用相場がイメージしやすいように、実際の「サービス付き高齢者向け住宅」で提供されている複数社の価格を参考にしながら、サービスの内訳(参考モデル)を作成してみました。
サービスの内訳(参考モデル) | |
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家 賃 | 70,000円程度 |
食 費 | 50,000円程度 |
生活支援サービス費 | 30,000円程度 |
共益費 | 20,000円程度 等 |
合計 170,000円程度 |
「サービス付き高齢者向け住宅」で提供されるサービスは、入居者の安否確認と生活支援が中心となりますが、入居者が充実した生活を送れるようにするため、サークル活動の促進やレクリエーションなどが行われています。
主には、安否確認と生活支援は、定期的に居室を訪問したり、入居者の介護や生活についての相談に対応したりしています。
こうした安否確認や生活支援に加え、排せつや入浴などの身体介護や機能訓練などが必要な場合には、外部の介護事業所に依頼しなければなりません。
但し、「サービス付き高齢者向け住宅」において、厚生労働省による特定施設の指定を受けた「介護型」の住宅であれば、医療や介護の有資格者が常駐しており、住宅内の介護職員から直接介護サービスを受けることが可能となります。
「サービス付き高齢者向け住宅」の建物や設備の特徴としては、個室は25㎡以上(十分な面積の共用設備を設けている場合は18㎡以上)、廊下幅78cmなどの規定をクリアしたうえで、各専用部分は台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備えるといった一定の基準を満たす必要があり、廊下幅、段差解消、手すりなどはバリアフリーにすること義務化されています。
共有スペースについては、食堂、リビング、温泉などの大浴場、スポーツジム、カラオケ、シアタールーム、園芸庭園などが設置され、入居者の趣味を広げたり、入居者同士で交流が図れるような工夫がなされています。
最近では、介護サービスに対する需要も高いため、訪問介護やデイサービスなど、いわゆる介護保険サービス事業所を併設しているケースもあり、介護サービスの連携を強化する住宅も増えてきました。
サービス付き高齢者向け住宅」の入居条件については、「高齢者住まい法」によって定められていますが、60歳以上の高齢者、または要介護または要支援認定を受けた60歳未満の方を対象としつつ、介護不要の自立された高齢者や軽度な介護が必要な方を受け入れる住宅として定着してきました。しかし、最近では、重度の要介護者や認知症高齢者の方も受け入れる事業者が増えてきているのが実情です。
ちなみに、同居の条件としては、住宅によっても違いはありますが、一般的には要介護または要支援認定を受けている配偶者、60歳以上の親族、60歳未満で要介護または要支援認定を受けている親族などが認められています。
高齢者の健康を保つためには、毎日の食事の栄養バランスを考えることが大切です。
「一般型」の場合であれば、居室に自炊できるキッチンがあることが多いので、殆どは入居者が自分で好きなものを作り、好きな時間に食事を済ませています。
一方、栄養があってバランスの取れた食事の重要性は高いため、事業社が食事提供サービスや宅配サービスなどと契約している住宅も増えています。こうした食事提供サービスを利用すれば、食事のことで困ることは殆どありません。
このほかにも、「介護型」の場合には、食事は提供サービスの中に含まれていることが多いので、介護者の状態に合った介護食が提供されます。
[メリット] | |
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① 生活の自由度が高い | 一般的な介護施設は入居者の外出に許可や付き添いが必要になりますが、「サービス付き高齢者向け住宅」は外出や外泊のほか、来客などにも制限がないところが多く、一般の賃貸マンションなど同様、自由度が高い生活を送ることができます。 |
② 食事に困ることが少ない | 居室にキッチンがあることが多いので自炊もできるほか、事業者が契約している食事提供サービスなど利用すれば、偏り少なく栄養バランスが取れた食事ができるので、食事に困ることは殆どありません。 |
③ バリアフリーで過ごしやすく、プライバシーも守られる |
住宅は、バリアフリーが義務づけられていますので、入居者にとって、建物全体が住みやすく優しい構造になっています。 また、居室空間は個室となりますので、一般の賃貸マンションと同様でプライバシーが守られます。 |
[デメリット] | |
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① 事業者によっては、介護度が高くなると退去の可能性ある | 住宅の方針は各社異なりますが、入居者の介護レベルが高くなった場合、退去を求められる場合があります。 |
② 介護保険サービス事業所に委託すると、支払い総額が高額になる場合がある | 住宅の介護に対するサポート体制にもよりますが、別途介護保険サービス事業所に介護を委託した場合、その程度にもよりますが、介護サービス利用料の限度額をオーバーしたり、医療費用などの経済的負担が大きくなったりすれば、支払う費用の総額が結果的に高くなるような場合が考えられます。 |
③ 事業者によってサービスなどが違うため、ミスマッチが起こる | 各社の設備やサービスには違いがあるため、比較検討することが難しく、細かなところまで把握できていないと、利用してからミスマッチが起こる可能性があります。 |
ここでは、「サービス付き高齢者向け住宅」「住宅型有料老人ホーム」の違いについて説明していきましょう。ポイントとしては、入居者とサービス提供に関する方針やスタンスの違いが挙げられます。
具体的には、「サービス付き高齢者向け住宅」の場合、いわゆる賃貸住宅の一種となりますので、入居者の生活は自由度が高く、必ずしも介護に趣が置かれている訳ではありません。
このように入居されている高齢者の心身の状態もそれぞれの施設で違いがありますので、
例えば「有料老人ホーム」の場合には外出や外泊に許可が必要となりますが、「サービス付き高齢者向け住宅」であれば外出や外泊の許可も不要ありません。
「サービス付き高齢者向け住宅」「シニア向け分譲マンション」も違いを比べてみましょう。こちらも簡潔にわかりやすく説明すれば、サービスや設備は類似する点も多いのですが、「シニア向け分譲マンション」は高齢者を対象にした分譲住宅となりますので、賃貸か分譲の違いが挙げられます。
シニア向け分譲マンションの特徴をもう少し説明すると、民間事業者が販売する分譲住宅となりますが、購入するためには数千万円から数億が必要となり、高齢者に配慮したバリアフリーやマンションにコンシェルジュが常駐するなど、高齢者が住みやすい環境が整備されています。
最近は、「シニア向け分譲マンション」の中にテナントに訪問介護サービスの事業者やクリニックなどが入るケースもあり、「サービス付き高齢者向け住宅」とはサービス形態が違う介護や医療を受けることができるようなマンションも存在します。
「サービス付き高齢者向け住宅」の契約とは、賃貸借契約が基本となり、事業者から入居者に請求する費用は敷金、家賃、サービス対価のみで、権利金や礼金、更新料等を事業者が徴収することはできないことになっています。このため、想定入居期間の家賃を最初にまとめて支払う有料老人ホームの「入居一時金」のような費用は、「サービス付き高齢者向け住宅」の契約条件に含まれません。
「サービス付き高齢者向け住宅」は、事業者の方針や介護サービスなどの体制にもよりますが、介護度が低い方を対象にしている住宅が多いため、重度な介護が必要な状態になれば退去しなければならないケースがあります。このほかにも、例えば、虚偽などによる契約上の違反行為や周囲に影響を与えるような迷惑行為、賃料やサービス料の滞納、事業者の倒産などで居住できなくなるケースが挙げられますが、入居者もしくは事業者のそれぞれに退去理由は挙げられるでしょう。
人は、いつか必ず死期を迎えます。
看取りは、近い将来、死が避けられないとされた人に対し、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和及び軽減するため、人生の最期まで尊厳ある生活を支援することです。
この看取りについて、厚生労働省が「サービス付き高齢者向け住宅」における看取りの実施状況を平成24年に調べていますが、看取りの実施が可能と回答した事業者が約58パーセントあり、このうち実施していると回答した事業者が約25パーセント、実績はないが対応は可能とした事業者が約32パーセントでした。
この調査結果を見ると事業者の看取りに関する対応意識は高いことがわかりますので、「サービス付き高齢者向け住宅」で働くなら看取りについて事業者の対応状況も知っておいてください。