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サービス付き高齢者向け住宅が抱える問題点を徹底解説!安全体制を判断するチェックリストつき!

サービス付き高齢者向け住宅(通称:サ高住・サ付き)は、2011年から開設が始まり、株式会社や医療法人などの民間事業者が運営する「介護認定されていない自立している高齢者の方」あるいは「軽度の要介護高齢者の方」を対象とした賃貸住宅のことを指します。
有料老人ホーム等の介護施設もよりも高齢者にとって自由度が高い施設となっており、様々な生活支援サービスを受けることができます。また、介護士にとっても入居者一人ひとりの生活に寄り添える環境なので、人気の職場となっています。
しかし、昨今ではサービス付き高齢者向け住宅は他介護施設に比べて開設規制が緩いことから事故やトラブルを招き、2014年には行政による「サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会」が立ち上げられるほど問題が続出しています。
果たしてサービス付き高齢者向け住宅が抱える問題点とは何なのでしょうか、今回の記事ではメリット・デメリットも含めてご紹介しますので、いま介護士として働く方もどう入居者と向き合い、サービスを提供をしていけば良いのかを考えて頂くきっかけにもなればと思います。

サービス付き高齢者向け住宅における3つの問題点

さて、サービス付き高齢者向け住宅(以下“サ高住”)で問題視されているトラブルとは主に3つが挙げられます。

サービス付き高齢者向け住宅の問題点①「囲い込みによる不当な介護報酬」

近年、サ高住の運営会社による特定の事業者の介護サービスを入居者に受けさせる“囲い込み”が問題視されています。サ高住では基本的に安否確認と生活相談のサービスしか付帯されていないため、入居者の介護度が上がってしまった時は、外部の介護サービスを別途受ける必要があります。本来であればこの介護サービスにおいても入居者には選択の自由がありますが、悪徳なサ高住の運営会社では、自社の担当ケアマネージャーの変更までも入居条件に入れ、訪問介護やデイサービスの事業者を指定した過剰な介護サービスを入居者に受けさせることによって不当な高い介護報酬を得ていることがあります。このような囲い込みが一度起きてしまうと、似たようなサービスで過剰提供がサ高住業界でも横行してしまい、必要のない介護サービスまで強要されて受けてしまうことで入居者の負担が余計にかかってしまうケースも多々あります。この問題は、決して入居者だけが被害を受けているわけでありません。過剰な介護サービス提供による売上の大元は“税金”です。入居者にとっては数千円の支払いだとしても、税金の負担は数万円になることもあります。そのためこのサ高住の囲い込みは、税金を支払っている日本国民全体の問題であり介護保険の財政にさらなるダメージを与えていることに繋がります。
これらの背景には民間業者が運営していることで、行政の管理が行き届いていないという背景もあります。また、サ高住は介護保険などの公的な財源が入った福祉事業という面も持ちながら、介護事業の中では自由競争という2つの特徴があります。したがって民間事業者だけに運営を任せていると不正が起こってしまうこともあるようです。くわえて入居開始には介護度の低い方を中心に受け入れているので自然と介護報酬が少なくなり、経営が厳しくなっている現状もあります。そのせいか、入居費用を低く抑えて、介護サービスの利用で利益をあげようという悪徳な業者が現れてしまいました。
しかし解決策に厚生労働省と国土交通省も乗り出し「高齢者居住安定確保計画」の通知に、適正な規制を設けています。
サ高住の登録を認める際の基準として明確に、

  1. 「入居者が必要とする在宅介護のサービスについて、提供できる事業所が近隣にある」こと
  2. 「地域のサービス情報を網羅的に広く紹介し、事業所を限定しない」こと

上記2点を位置づけて入居者に介護サービスを自由に選択できる状態にし、より良い介護サービスの提供と質の向上を目的に設定しました。さらに、過度の囲い込み対策として厚生労働省は、サ高住の併設事業所が訪問介護を提供する場合に「介護報酬の1割減額する」といった制度も設けています。

サービス付き高齢者向け住宅の問題点②「利益重視による増設」

サ高住の施設数は開始された2011年には全国で3,448戸としかありませんでしたが、2019年3月時点では244,054戸にまで増設され右肩上がりとなっています。

しかし、この裏には全国で263件ものサ高住の廃業や登録取り消しがありました。原因は1戸あたり最大100万円の補助金が支給されることに対して高齢者のニーズを正確に調査せず、ニーズのない地域に多くのサ高住が建設してしまったからです。
それにより地域の高齢者の人口に対し、施設の数が見合っていないという問題が生じ、需要と供給のバランスが崩れて廃業という結果となってしまったのです。
また、周りの環境も考えずに建設すると、医療や介護サービスが少ない地域では、サ高住が孤立してしまう恐れがあります。サ高住は介護職員の24時間体制を敷いていることは多くなく、介護職員がいても人数が少なく、安否確認することが主な仕事なため、適切な対応が直ぐに取られない可能性があるのです。くわえて、高齢者がサ高住に移り住めば住むだけ、住んでいた住宅が空き家となっています。空き家は、景観悪化など地域への悪影響や犯罪の温床、住宅の価値が下がってしまうなど様々な不利益な影響を及ぼしてしまいます。
この解決策としては、2016年1月から補助金を申請する際は立地する市町村の同意を得ることが義務付ける自治体が増えてきた動きが見えてきています。これにより立地制限や総量規制が進められています。

サービス付き高齢者向け住宅の問題点③自由度の高さの現実

他介護施設に比べて「自由度の高さ」が特徴のサ高住ですが、昨今では運営側に管理されているところが増えてきている問題も浮上しています。
サ高住の設備が普通の賃貸住宅とは異なる点としては、キッチンと浴室が個別についているとは限らないことです。キッチンや浴室が共用の場合があり、特に風呂は危険が大きいので居室には浴室をつけず、共用にしているところが多いそうです。しかし予算面からユニットバスを交代で使うようなところも多く、タイムスケジュールを職員が管理していて、次の人が来ると「そろそろ出てください」などと言われ、のんびりしたり長湯はできない環境となっています。
また、キッチンが共用の場合でも一人の方がキッチンを長時間独占すると、他の入居者が使えないと入居者同士のトラブルにも繋がってしまうこともあります。これを防ごうとキッチンでの調理は入居者にさせずに、運営側が提供する食事で済ませるところも少なくありません。その場合、朝昼晩の食事で安否確認ができるように各戸に配られるのではなく、食堂に集まって食べるところがほとんどです。サ高住の食費の相場は1日3食で約1,500円、1ヶ月4万5000円から5万円といったところです。もちろん栄養士が高齢者の健康に配慮した献立を考え、味にもこだわった手作り料理を出すところもありますが一方で、冷凍食品をレンジで温めて出すだけというサ高住も存在し「自由」とはかけ離れてしまっています。

サービス付き高齢者向け住宅の運営体制と入居者の介護度の問題について

さらに深刻な問題として挙げられるのが“入居者の介護度とサ高住宅の受け入れ体制”の問題です。
冒頭でも述べましたとおり、サ高住は「介護認定をされていない自立している高齢者の方あるいは軽度の要介護度の高齢者の方」を対象に、入居者が安心安全に暮らせるように“生活相談サービス”と“1日1回の安否確認”が義務付けられている住宅施設です。したがって、この条件さえ整えられていれば生活相談員として有資格者が1人以上いればよい人員体制なため、夜間でも緊急通報システムがあれば職員は常駐しなくてもよいことになっています。福祉施設というよりどちらかと言えば「見守り機能がついた住宅」といった方が近い位置づけになります。
ところが近年は「入居希望者からのニーズ」「運営側が空室を埋めたい」二つの希求により、要介護者や認知症高齢者も受け入れる施設が増えてしまっているのが実態です。

サービス付き高齢者向け住宅の入居者割合
要介護認定(要支援を含む) 88%
要介護3以上 30%

上表のような調査結果が朝日新聞(2017年5月)から出ており、さらに民間機関の調査では入居者の4割が認知症の方というデータもあります。
このような入居者状況の中で、24時間定期巡回している施設や随時対応型の小規模多機能型居宅介護などの事業所を併設しているサ高住も少なく尚且つ生活相談サービスと1日1回の安否確認さらに相談員が1名体制では、当然入居者全員の安全確保は厳しいことでしょう。また何か相談したいことがあっても職員も忙しくすぐに相談にのってくれることもは難しいとされています。
そのため、2015年1月から約1年半の間にサ付高で起きた事故報告として、死亡や骨折などの事故は3,000件以上あったことが報告されました。全国のサ高住を管理する計114地方自治体のうち97の自治体からの事故報告書によると、2015年1月~2016年8月末の事故は計3,362件にのぼり一番多い事故としては1337件もの入居者の骨折だったそうです。事故の発生場所は半数以上の1,730件が個室であり、時間帯は全体のうち991件が午後5時~翌午前9時と“職員の体制が手薄”だとされる時間帯で起きています。さらに、2015年の夏には、サ高住の居室内で孤独死していたとの報道もありました。自分らしく生活できるという反面、職員の目が行き届かないという危険な運営体制の問題があります。現在では国土交通省が改善に乗り出していますが、一刻も早い解決策と防止案が求められます。

安全なサービス付き高齢者向け住宅を判断するチェックポイント!

しかし全てのサ高住で、事故やトラブルが起きるわけではありません。施設の安全体制が自分が理想としている環境であるかどうかを入居希望の際にチェックすることで問題を未然に防ぐことができます。ぜひ、下記のチェックポイントリストを参考にしてみてください。

サービス付き高齢者向け住宅の確認しておきたいチェックポイントリスト

相談員
相談スタッフの人員体制の確認
※望ましい日中の人員体制は、概ね15~20世帯につき相談員1人以上です。要介護者・認知症高齢者の場合は10人つき相談員2人以上の配置が理想的とされています。
相談スタッフの緊急時の対応経験や研修の有無
夜間
夜間配置の有無
夜間配置がない際には緊急時の体制についての確認
緊急通報システム
緊急ボタンの設置箇所
緊急ボタンの設置場所は事故が起こりやすい場所や生活動線を想定しているのか
相談員不在時の連絡・通報先
相談員不在時、誰が駆けつけるか
その他
将来要介護状態や認知症を発症した際にどこまでの医療ケアサービスの対応がしてくれるのか
検討しているサ高住の運営が1年以上経過しているのにもかかわらず入居率50%を下回っていないか

このような要点を踏まえて、施設の隅々まで確認してください。決してパンフレットやホームページだけで判断をしないようにしましょう。
また、サ高住へ入居希望の方の下記の3点を心得ておくと認識のズレを解消できます。

要介護レベルが上がった方や認知症の高齢者の選択肢は?

では、要介護状態や認知症を発症してしまった高齢者の方はどうしたら良いでしょうか。
できれば“介護付き有料老人ホーム”や“特別養護老人ホーム”などの要介護者を対象にした施設への入居をオススメします。入居費用は高額となりますが、その分、介護サービス費用を定額で利用でき、さらに介護度が高くなっても対応可能な場合も多くあります。
しかし是か非でもサ高住に入居したい方は、担当のケアマネージャーときちんと相談をして、見守りの体制や安否確認を強化することができる「介護保険外のサービス」の利用を考え、サービス内容を充実させるなどの将来に向けての対策をしっかりと準備しておきましょう。
また“介護型”のサ高住も増えてきています。介護型においては、介護を受けながら安心して生活をすることができ、職員が入居者に対して直接介護を行える「特定施設入居者生活介護」も導入されています。他の有料老人ホームなど介護施設と変わらない介護サービスを受けられるのが特徴となっています。そのうえ医師や看護師が常駐し、医療的ケアも完備しているところも増えている傾向にあります。この介護型のサ高住は、有料老人ホームなど公的な介護施設には待機入居者の増加問題を救う「公的な介護施設に代わる住宅施設」としての期待も高まっています。初期費用ついては数十万円から数千万円、月額利用料においても十数万円程度から五十万円程度までと利用する介護型のサ高住によって大きな幅があるのでご確認を忘れずにしましょう。

サービス付高齢者向け住宅のメリット・デメリット

さいごに、上述してきましたサ高住の問題点も加味したメリットとデメリットをご紹介します。

サービス付き高齢者向け住宅のメリット

気ままで自立した生活が可能!

有料老人ホームなど他介護施設では、1日のスケジュールを決められていますが、あくまでもサ高住は“住宅”なので1日をどう過ごそうが入居者の自由としています。買い物やお散歩・外食などの外出や外泊、友人や家族が遊びにくることなども自由に楽しめます。くわえて、入居者個人専用の生活設備があるのでプライバシーが守られ自立した生活もできます。

共有のスペースも充実さと馴染みやすさ抜群!

施設内の共有スペースの設置状況は各施設によって異なってきますが、レストランや温泉、シアタールームなどの娯楽を整備しているところもあり入居者同士が親睦を深めるのに役立っていますよ。また、要介護度が低い方が多いため若いうちから入居してもあまり目立つことなく馴染みやすいのも魅力の一つです。

元気な高齢者には安心のサービス!

サービスとして1日1回は必ず安否確認を行い、定期巡回も実施され受付には24時間体制で職員がいます。夜間については、常駐は義務付けられていませんが、何かあったときに速やかに駆けつけることができるサポート体制が義務化されています。

高額な初期費用が不要!

サ高住はあくまでも賃貸住宅のため、敷金のみで入居が可能となります。また敷金は退去時に返還となりますので、実質入居時費用は無料で入居しやすいとされています。

退去基準のハードルが低い!

「高齢者住まい法」が適用されているサ高住は、入居者の同意のない一方的な契約解除が禁じられています。つまり突然退去させられる心配がなく、入居後の安定した暮らしが確保できます。

サービス付き高齢者向け住宅のデメリット

入居・退去基準にバラつきがある

サ高住の運営会社によっては、入居基準と退去基準に大幅に開きがあるので選ぶに苦労する方がいらっしゃいます。すべての施設が、統一して「終身まで入居可」や「認知症の方入居不可」といった規定を設けているわけではないため、根気よく1軒1軒の比較検討をしなくてはいけません。伴って、重度の介護が必要になってしまうと退去をしなければならない場合があります。入居時には自立できていたとしても、入居後に体調を崩したりして要介護度が高くなった場合には、退去(転居)しなければならない施設もあります。

常に介護サービスを受けられるわけではない

サ高住は必ずしも介護に重きを置いていないので、医師・看護師が常駐していないことの方が多いんです。契約次第では、例えば病気になったり怪我をしたりした時に自分で病院を見つけられなかったり、通院の付き添いに金銭的負担がかかってしまうこともあります。つまり、健康面や介護面でのサポートが確約されているわけではないという点はデメリットになってしまいます。

夜間の見守りが手薄なことも

開設条件である人員体制も相談員として有資格者が1人以上いればサ高住として運営ができます。ですから、夜間の対応は施設に職員が常駐している場合は職員がしますが、緊急通報システムによって外部の警備会社など協力会社につながる場合も多いです。そうなってしまうとやはり時間が生死を分けてしまいかねない緊急事態では、そうした見守り体制に不安を覚えてしまうことでしょう。

生活費や外部サービスによって高額な自己負担の可能性もあり

初期費用は不要となっているサ高住ですが、賃貸住宅のため毎月、家賃・管理費・食費・水道光熱費などの生活を支援するサポート費は自己負担となります。運営している会社によって、設定金額に差がありますが概ね月額5,000~30,000円が相場となります。サービスを使っても使わなくても定額の支払いとなることが多いので、使用しない方には不利益な部分が出てしまう可能性があります。
また、介護が必要となった場合に外部の介護事業所とも別途契約が必要です。したがって「住宅を借りる契約」「介護サービスを利用する契約」の2つの契約が必要となり月額利用料に加えて別途費用が掛かります。初期費用はかかる有料老人ホームなど他介護施設よりかは安めとなっているものの、状況によっては、高額になることもあるため注意が必要です。
このようサ高住は、その施設によって行われているサービスに大きな違いがあります。入居する前に必ずサービス内容について詳しく確認しておくことが大切です。

まとめ
ご紹介してきましたサービス付き高齢者向け住宅の問題は、行政や各自治体主導において前向きな解決に取り組んでいます。そして今後さらに全国で60万戸の増設を目指しているそう。これは良いサ高住がもっと増え、公的な介護施設への入居待ち問題への対策となり得るとして大きな期待が寄せられています。
サ高住を検討する際は、身体の具合やライフスタイルに合わせた見方、運営側へ事故・トラブルを防ぐための取り組みなどをよく確認することが大切です。
また、サ高住への就職・転職を考えている介護士の方も、このようなサ高住における問題やトラブルを他人事と考えずに、入居者側に立った気持ちを理解し真摯に受けとめて、入居者の安心安全に徹して職場を選んでみてはいかがでしょうか。
サ高住の入居者に限ったことではありませんが、入居者が安心して過ごせる環境と老後の住み替えの不安を減らせるような寄り添った介護士を目指してください。