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介護業界に必要不可欠な存在!精神保健福祉士(PSW)とは?

精神的なハンディキャップを抱える方を支える精神保健福祉士(PSW)は、福祉系の三大国家資格の一つであり、介護福祉士や社会福祉士ともに介護業界には欠かせない職種のひとつです。
近年はとくに“心”の時代となり、高ストレス社会の中で精神的なサポートを必要とする方が年齢問わずに増えています。日本は世界に比べると精神的な障害を抱えた方への支援や理解には疎いところあります。
そんな環境下の中で最新の医療知識を得ながら、国民の精神保健保持に尽くのが精神保健福祉士の役割でもあります。そのため精神保健福祉士は医療・保健・介護福祉にまたがる領域で活躍していますが、その実態についてはあまり知らないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は「精神保健福祉士」について、その仕事内容から資格取得方法に至るまで詳しく解説していきたいと思います。

精神保健福祉士について

精神保健福祉士(英称・ Psychiatric Social Worker、略称・PSW)は、厚生労働省の認定を受けた国家資格者です。別名「精神科ソーシャルワーカー」とも呼ばれ、精神保健福祉士法の基で、精神的に援助が必要な方の相談や助言、生活支援から社会復帰への訓練、環境調整まで様々なサポートを精神科の領域に特化して行ってる仕事となります。
平成9年(1997年)の精神保健福祉士法施行により制定されたため、比較的新しい資格という印象ですが、1950年代から精神科医療機関で医療チームとして活躍してきた精神科ソーシャルワーカーが基盤となっており、歴史のある専門職です。医療だけではなく保健や福祉など幅広い分野で活躍しています。
なお、精神保健福祉士は“名称独占”の資格なので、資格所持者だけが「精神保健福祉士」と名乗ることができますが、実際の業務自体は資格を保有していない方であっても行うことが可能です。

精神保健福祉士はどんな仕事をしているの?

精神保健福祉士の主な仕事としては、躁うつ病や統合失調症など、精神や心に病を抱えてしまった方からの相談を受け付けながら、利用者一人ひとりに合った指導計画を練り、患者が自分の力で社会復帰や日常生活に適応できるようになるまで見守り・支援します。
働く職場によっては同じ精神保健福祉士でも仕事内容は若干異なってきます。病院等の医療機関で勤務している精神保健福祉士の場合は、入院生活のサポートが中心的な業務となり、生活相談室を拠点に患者さんやそのご家族からの相談に応じながら、入院から退院まで医師や看護職員と情報共有しながら、精神的な病を抱えている患者さんを支援します。規模の大きな病院では、病棟専任、デイケア専任、外来専任と担当を決めているところもあります。
病院以外では、精神保健福祉センターや保健所などで市民のメンタルヘルス啓発活動に携わったり、養護(介護)施設では精神障がいのある方の健康管理や作業訓練などのリハビリテーションプログラムの提供、福祉施設では地域社会の貢献として生活を支援する目的で相談支援や生活訓練・就労支援などを行ったりしています。行政機関においては相談に加えて、利用者の住居の確保や各種手続きを行ったり、給付金制度の案内などをすることもあります。
以前までは精神保健福祉士の印象として、病院内で限られた人や関係機関とのやりとりだけを行っているイメージが多くみられましたが、担当する患者が社会へ適応できるように、外との繋がりも持った地域社会への積極的な取り組みが増えてきています。

精神保健福祉士の1日のスケジュール例

精神保健福祉士の1日のスケジュール例
※心療内科デイケア勤務の場合
8:00 出勤
  院内の清掃、診療準備をして患者の受付スタート
8:25 朝礼と打ち合わせ
  ・医師や看護師等と全体ミーティング
・デイケアルームの準備やデイケアスタッフとのミーティング
 指導、支援の計画確認や患者の情報を共有します。
8:30 午前の診療
  デイケア利用者を出迎え、体操や体調確認
11:30 デイケア利用者の昼食
  基本的には給食は当番制で、配膳など手伝います
12:00 昼休み
  職員はお弁当を職場で食べることが多く、職員同士で午前の気になった利用者の情報共有を行います
13:00 午後の診療
  デイケアのケア計画に沿ってゲームや作業を一緒に行い過ごします
15:00 デイケア利用者の見送り
  ・利用者のとともに掃除や片付けを行ってから見送ります
その後、担当の利用者に関する書類作成など行います
17:00 事務作業やミーティング
  ・職員全体でのミーティングで、今日の利用者の様子などしっかりと意見交換をアセスメントとすり合わせをする
・利用者の個人記録や活動記録を作成する
17:30 退勤
  自主勉強や精神保健福祉士に関する勉強会に参加して帰宅

精神保健福祉士はどこで、どんな方を対象として働いてる?

それでは具体的に精神保健福祉士はどんな方を対象に、どんなところで働いているのでしょうか。

精神保健福祉士が対応する利用者は?

精神保健福祉士の活躍の場

精神保健福祉士の活躍場所
医療機関 精神科病院診療所、総合病院精神科、精神科クリニック
生活支援サービス 相談支援事業、地域活動支援センター、グループホーム・ケアホーム、就労移行支援事業、就労継続支援事業、自立訓練事業、救護施設(生活保護法)、児童養護施設(児童福祉法)など
行政機関 自治体・保健所、福祉事務所、精神保健福祉センター
精神障害者施設 精神障害者福祉ホーム、精神障害者復帰施設など
司法施設 矯正施設、保護観察所など
その他 障がい者支援施設、社会福祉協議会、ハローワーク、介護保険関連施設、教育機関、企業など

このように利用者となる地域住民の方が相談しやすい場所で勤務していることが多いのが分かります。
就職先として、精神保健福祉士の中ではやはり安定した公務員(行政機関)が人気ですが、最近では子どもが複雑な環境の家庭で育つ事例が多く、スクールソーシャルワーカーとして教育機関からのニーズが高いことや、認知症やうつ病を発症してしまった高齢者も多い老人保健施設での活躍も増えています。心を病んでしまうことが多い現代社会では精神面をサポートする相談援助のプロフェッショナルとして、これからの活躍がもっと期待される資格といえますね。

精神保健福祉士の魅力について

精神保健福祉士の魅力としては、なによりも“社会貢献度の高さ”でしょう。また、前述のとおりに精神保健福祉士は名称独占の国家資格ですので、無資格でも精神的な方の支援はできます。しかし、精神保健福祉士は信用度の高い国家資格であるからこそ堂々と自信を持って支援ができ、かつ利用者も安心して相談を受けることができる為より専門的なサポートを行うことができます。
さらにストレスで悩む現代社会、今後も精神的な支援は途絶えることはないといえます。以前までに見られなかった「就労者のメンタルヘルスを向上させる産業メンタルヘルス」「裁判手続の中での心神耗弱者のサポート」また年間3万人にもなる「自殺対策」にも、その精神保健福祉士の役割の発揮が期待されています。このことから医療機関だけでなく、教育機関現や企業、行政機関までも精神保健福祉士を求めている現状に今後もさらに精神保健福祉士の需要は高まり、この傾向は続いていくものと思われます。実際に有効求人倍率も年々上がってきており、関東・関西の都心部ではかなり精神保健福祉士の募集が集中しているほどです。このような就職・転職状況の好調さは魅力といえるのではないでしょうか。

精神保健福祉士のやりがいについて

では、実際の精神保健福祉士が「この仕事に就いてよかった」と思えるやりがいはどんなものでしょうか、下述をご覧ください。

日々実感できる利用者の快復と人の支えになれる!

精神保健福祉士が扱う心の問題は、身体の快復よりも難しく時間がかかるものです。教科書通りに話が進むことはほとんどなく、デリケートで複雑な問題を抱えている利用者一人ひとりと向き合わなければなりません。また。利用者の些細な変化や何気ない仕草から解決する糸口を探っていくため、単純に寄り添って支援するといっても容易ではありません。だからこそ、利用者が心を開いてくれたり、口数が増えただけでも嬉しさはひとしおです。その後、治療の経過も良く、利用者の笑顔が見れた時には大きなやりがいを得られます。くわえて共に頑張って問題を解決した患者さんが社会生活に足を踏み出していく姿は、人の支えとなっている実感にも繋がります。

問題を解決するまでのやりがい・楽しさ!

精神保健福祉士の仕事として、利用者それぞれが持つ個性をどのように活かして日常生活を送ればよいのか、利用者をじっくり観察して考察を重ねます。そこには追究していく楽しさがあり、知的好奇心が強い方が多い傾向にある精神保健福祉士としてはこれをやりがいとする方も多くいらっしゃいます。

多種多様な人生を学ぶことができる

相談に訪れる利用者の多くは、さまざまな環境下の中で精神疾患を抱えています。それだけに多種多様な人の人生や生活状況について深く知ることができます。それゆえ、症状が重く、対応が難しい方とも向き合うこともありますが学ぶことは多いでしょう。仕事を通じて自分自身の人間性も成長でき、人間の本質を学べる貴重な職種といえます。

精神保健福祉士に向いている人の5つの特徴

精神保健福祉士に向いている人の特徴
①精神保健の分野に強い関心と精神医療等の知識がある
②知的好奇心が旺盛で何事にも積極的に行動が起こせる
③心の病についての正しい認識の元に利用者を“1人の人間”としてきちんと接することができる
④利用者の思いや考えに、親身になって耳を傾けられる
⑤利用者の心に寄り添い、個性を受け止めてあげられるような抱擁力がある

精神保健福祉士は、心の病を抱えている方の“人生”を支え、共に歩む役割を担う非常に責任が重い職種です。だからこそコミュニケーション能力だけではなく、利用者の生活や仕事がスムーズに回り出すように支えていくことも重要なスキルとなります。当然ですが、利用者全員がSOSの声をあげれる方ばかりではありません。小さな表情の変化も見逃さずに、声にならない“叫び”を聞けるような根気強さをもって、積極的に手を差し伸べる意欲も必要です。

精神保健福祉士になるには?

それでは、精神保健福祉士になるためにはどのような手順を踏めば良いのでしょうか。精神保健福祉士は国家資格であり、福祉分野の職業であるため、「なりたい!」と言ってすぐになれるものではありません。
まずは、年に1度行われる“精神保健福祉士試験”を受験してそれに合格し、精神保健福祉士資格取得することから始めましょう。
この試験の受験資格を得るためには、指定の精神保健福祉士の養成施設あるいは養成課程がある機関に入学しなければなりません。入学後、修了して初めて、国家試験の受験資格の取得ができます。そして無事試験に合格し、精神保健福祉士資格取得した後は、希望の各事業所などの採用試験を受けて晴れて精神保健福祉士として働くことができます。

上図のルートのとおり卒業する学校の在学年数、保有資格や経験によって、専門の養成施設への入学や実務経験を求められたりと様々な手順があります。やや複雑でありますが、その人に合ったルートで、精神保健福祉士を目指すことができます。
「通学する余裕がない・・・」という方もご安心ください。社会人からでも最短1年で「精神保健福祉士国家資格」を受験することは可能なです。福祉系の大学でなくとも、一般的な大学を卒業していれば「精神保健福祉士の養成施設を1年以上」通学し、卒業することで受験資格を得ることができます。一般的な短大を卒業した方でも、「精神保健福祉士の養成施設を1年以上」+「相談援助の実務経験1年以上」ほどで受験資格を得ることができます。したがって、社会を一度経験してから精神保健福祉士になる方が多く、20代はもちろん30~40代も決して珍しくなく、中には60代の方もいらっしゃいます。
また、合格率も全体で60%と受験者の半数以上が合格していることからも、難易度はそれほど高くない試験なので、ぜひ社会人の方もスキマ時間などを利用して挑戦してみてはいかがでしょうか。

精神保健福祉士になるまでの費用の相場

最後に気になる精神保健福祉士の資格取得にかかる費用についてご紹介します。
まず、精神保健福祉士の養成施設である大学では、初年度納入金として68万~178万円、専門学校では初年度納入金は80~129万円となっています。どの養成施設でも奨学金や教育ローン、専門実習教育訓練給付制度の利用可能となりますので、学費の支払いが心配な場合は活用することも選択肢に入れておくと良いでしょう。
続いて、国家試験となる精神保健福祉士試験の受験費用としては下表の通りです。

受験内容 受験料
精神保健福祉士のみ受験 17,610円
社会福祉士と同時受験 28,140円
(精神保健福祉士14,160円+社会福祉士13,980円)
精神保健福祉士の共通科目免除による受験 14,080円

詳しい精神保健福祉士試験の受験内容は「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」をご参照ください。

まとめ
いかがでしたでしょうか。精神保健福祉士の魅力や仕事内容などについてお分かりいただけたかと思います。
精神保健福祉士を目指す方の年齢はとても幅広く、介護福祉士として現役で働いている方もキャリアアップの一環としてチャレンジすることが多い資格です。ぜひ「人と深く関わりたい」「人の役に立ちたい」と考えている方は、精神保健福祉士への就職・転職を検討してはいかがでしょうか。