介護士として現場での経験を積み、将来的なキャリアアップを考え「ケアマネージャーとして働きたい!」とお考えの方は大勢いらっしゃるでしょう。しかし、ケアマネージャーは実務経験のみでなれるわけではなく、まずは介護支援専門員資格の取得をしなければなりません。そこで今回は難易度が高いといわれる介護支援専門員実務研修受講試験、通称「ケアマネ」の合格率や難易度、勉強方法・試験対策のポイントについてご紹介します。
実は、2018年度の受験者数は前年に比べて60%も減少しています。今回はその理由についてもお伝えしながら、これからケアマネージャーを目指す方・ケアマネ試験へ挑戦する方の参考となる記事内容になりますので、どうぞ最後までご覧ください。
厚生労働省が一番最近の第21回(平成30年度)介護支援専門員実務研修受講試験(以下、ケアマネ試験)の受験者数と合格者数、合格率の発表をしました。
ケアマネ試験合格率推移 | |||
---|---|---|---|
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
第1回(平成10年度) | 207,080 人 | 91,269 人 | 44.10% |
第2回(平成11年度) | 165,117 人 | 68,090 人 | 41.20% |
第3回(平成12年度) | 128,153 人 | 43,854 人 | 34.20% |
第4回(平成13年度) | 92,735 人 | 32,560 人 | 35.10% |
第5回(平成14年度) | 96,207 人 | 29,508 人 | 30.70% |
第6回(平成15年度) | 112,961 人 | 34,634 人 | 30.70% |
第7回(平成16年度) | 124,791 人 | 37,781 人 | 30.30% |
第8回(平成17年度) | 136,030 人 | 34,813 人 | 25.60% |
第9回(平成18年度) | 138,262 人 | 28,391 人 | 20.50% |
第10回(平成19年度) | 139,006 人 | 31,758 人 | 22.80% |
第11回(平成20年度) | 133,072 人 | 28,992 人 | 21.80% |
第12回(平成21年度) | 140,277 人 | 33,119 人 | 23.60% |
第13回(平成22年度) | 139,959 人 | 28,703 人 | 20.50% |
第14回(平成23年度) | 145,529 人 | 22,332 人 | 15.30% |
第15回(平成24年度) | 146,586 人 | 27,905 人 | 19.00% |
第16回(平成25年度) | 144,397 人 | 22,331 人 | 15.50% |
第17回(平成26年度) | 174,974 人 | 33,539 人 | 19.20% |
第18回(平成27年度) | 134,539 人 | 20,924 人 | 15.60% |
第19回(平成28年度) | 124,585 人 | 16,281 人 | 13.10% |
第20回(平成29年度) | 131,560 人 | 28,233 人 | 21.50% |
第21回(平成30年度) | 49,333人 | 4,990人 | 10.10% |
※出典:厚生労働省「第21回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」
このグラフから見ても分かるとおり、なんと第21回のケアマネ試験の合格率は過去最低の10.1%を記録しました。これは公認会計士や行政書士などの合格率と同等であり、実務経験が必要な資格試験としては稀に見る合格率の低さです。
合格率が下がった主な原因は、ケアマネ試験の受験資格が厳格化したことにより、そもそもの合格率の母体となる受験者数が著しく減少し、さらにはケアマネ試験の難易度と合格基準点も高くなったことが挙げられます。
ちなみに、職種別の合格者数で第1回~第21を通して最も多いのは介護福祉士の307,360人(43.9%)、次いで看護師・准看護師(24%)、相談援助業務等従事者(11.2%)、社会福祉士(6.3%)、保健師(3.9%)となっています。
ケアマネ試験の合格率の下がった原因はハッキリしています。2018年度のケアマネ試験から受験資格が厳格化してしまい、受験するまでの“カベ”が高くなってしまったことが大きな原因となっています。
それを具体的に表したのが下記の表になります。以前までの受験資格と比較してみましょう。
ケアマネ試験の受験資格(下記のいずれかを満たすこと) | |
---|---|
2017年度まで | 2018年度から |
「国家資格等に基づく業務経験5年」 国家資格を保有かつ、各資格の業務に5年間従事 |
変更なし |
「相談援助業務経験5年」 介護施設などで相談援助業務に5年間従事 |
相談援助業務 ・生活相談員 ・支援相談員 ・相談支援専門員 ・主任相談支援員 上記の職種業務の経験を5年間従事 |
「介護資格+介護等業務経験5年」 介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)等の資格を保有し5年間介護等の業務に従事 |
資格要件から除外 |
「介護等業務10年(無資格可)」 10年間介護等の業務に従事 |
資格要件から除外 |
上表のように、以前までは受験可能であった受験者の大半を占める「介護現場での実務経験が10年以上ある方」「実務経験が5年以上ある介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)などの有資格者」といった対象者が受験資格から除外されたことによって受験者そのものが減少してしまいました。
受験者数が減少することや合格率が下がることは容易に予測できたはずですが、なぜケアマネ試験の受験資格を厳しくしたのでしょうか。理由としては2点考えられます。
厚生労働省曰く、「介護支援専門員に係るさまざまな課題が指摘されている中で、今後、介護支援専門員に求められる資質や、介護支援専門員の専門性の向上を図っていくことが必要である」とされ、この意図から受験資格を厳しくして、量より質といったような、専門性の高いケアマネージャーを求めるようになりました。
ケアマネージャーの主な仕事として、利用者が介護サービスをどれだけ利用するのかを決める計画書である“ケアプランの作成”がありますが、これは「どれだけ利用者とその家族の意思をくみ取り、最良で最善のプランが作れるかどうか」ということが求められています。また、サービス提供を行う各施設での原案にもなるため、ケアマネージャー自身が持つ専門的で卓越した知識や経験を活かしたプランを立てなければなりません。
したがって、介護保険に関する専門的な知識だけでなく、利用者のニーズをしっかりと聞き出し引き出すヒアリング能力、介護施設や医療機関との調整を行う調整能力、関係者を集め利用者にとって最適なケアプランの遂行を進めるマネジメント能力や応用力などさまざまなスキルが必要になります。
このように現場の介護知識だけではなく、多様な知識・経験が必須なことから受験資格を初めから限定し、今までよりも質の良い人材を集めていこうという狙いがあります。
そもそもの合格が難しいとされるケアマネ試験は、その年によって合格基準点に変動があります。おおよそ正答率70%が目安となり、その年の問題の難易度によって補正がかかりますが、「介護支援分野」では25問中13問正解、「保健医療福祉サービス分野」では35問中25問正解が合格ラインと考えておくと良いでしょう。
また、ケアマネージャー試験の合格には、「介護支援分野」「保健医療福祉サービス分野」どちらも合格ラインを上回る必要があります。
ケアマネ試験の分野別合格基準点(計60点満点 1問1点) | ||
---|---|---|
介護支援分野 (総得点25点) |
保健医療福祉サービス分野 (総得点35点) |
|
第21回(2018年) | 13点 | 22点 |
第20回(2017年) | 15点 | 23点 |
第19回(2016年) | 13点 | 22点 |
第18回(2015年) | 13点 | 25点 |
第17回(2014年) | 14点 | 25点 |
上表から前回は前々回に比べて「介護支援分野-2点、保健医療福祉サービス分野-1点」となっており、いっけん合格基準点は低いようにも見えますが合格者数の結果から試験の難易度が高かったことが考えられます。
では具体的にケアマネ試験の難易度が分かりやすいように、介護福祉士資格と比べてみたいと思います。
ケアマネ | 介護福祉士 | |
試験概要 | 試験時間120分で60問 マークシートによる五肢複択方式 |
試験時間220分で125問(筆記試験) マークシートによる五肢択一方式 |
合格率 | 10~20% | 60% |
受験資格 | 以下の1~5を通算して業務経験が5年以上、かつ当該業務に従事した日数が900日以上であること 1.法定資格保有者 2.生活相談員 3.支援相談員 4.相談支援専門員 5.主任相談支援員 |
業務経験が3年(1,095日)以上、 かつ従事日数540日以上で実務者研修の修了が必須 |
まずケアマネ試験では、1つの問題に対して選択肢が5つありその中から適切なものを複数選ぶ方式「五肢複択」、一方介護福祉士試験は1つの問題に対して解答の選択肢が5つありその中から適切なものを1つ選ぶ「五肢択一」方式です。ケアマネ試験の解答は一つとは限らない為、当たり前ですが当てずっぽうでの合格は到底不可能であり、きちとした知識の整理をして解答をしなければならずケアマネ試験の方が点数が取りにくいとされます。
この点については介護福祉士の方が試験時間も長く問題数も多いため集中力と問題を読解する時間も必要なことを考えると、ケアマネ試験よりも解答スピードが求められる試験ということになります。
受験資格である業務経験が、ケアマネでは5年と介護福祉士では3年という大きな2年の差があります。たかが2年の差ですが、この受験資格を得るまでの尽力は相当なもののためケアマネ試験の方が道のりが困難ということになります。
ここで介護福祉士以外の資格とも、どのような難易度の違いがあるのか比べてみましょう。
国家資格である社会福祉士試験は合格基準の正答率は60%で、合格率は26~27%となっています。このことだけを見るとケアマネ試験の方が難易度が高いといえるでしょう。しかし、社会福祉士試験はケアマネ試験よりも受験資格の条件基準がさらに厳しいため、その反面試験の難易度は抑えているということが考えられます。
精神保健福祉士資格は、試験会場が全国に7ヵ所でしか実施されていないのでそもそも精神保健福祉士試験は受験しにくいと言えます。かつ、試験科目も16科目と多く全てにおいて満遍なく得点が必要となります。したがって、ケアマネ試験よりも精神保健福祉士試験の方が困難な可能性があります。
セラピストの中でも人気のある理学療法士(PT)の試験は解剖学・生理学などの筆記試験の他に、臨床心理学・リハビリテーション医学などの実地問題もあり問題数は合計200問とボリュームがあります。実地試験ともあり、現場さながらの問題文の事例から解答を導き出さなければいけない為相応の難しさがあるでしょう。しかし117点中41点以上が合格基準点なのでそこまで正答率は高くなく、ケアマネ試験よりも比較的合格しやすいといえます。
さいごに難易度が高いケアマネ試験のオススメの勉強方法(独学・通学・通信講座)や試験の対策ポイントをご紹介します。
勉強方法には人それぞれ向き不向きがあり、とくにケアマネ試験内容は学習量が多く勉強にも工夫が必要です。ぜひ、そのことを踏まえて自分に合った勉強方法で最後まで諦めずに合格を目指していきましょう!
勉強方法の一つとして、低費用で自分のペースや隙間時間で勉強できる“独学”での勉強が方法があります。独学では、ぜひ小さい目標を立てコツコツと知識を増やしていきましょう。たとえば過去問で1ヵ月後に何点を取る等「明確で無理のない目標」を決めて、モチベーションを維持していくことがポイントです。なぜなら独学は勉強期間が長ければ長いほど、競争相手も見えない為モチベーションが下がる可能性があります。そんな時は将来像を思い浮かべ直して、明るい未来への期待を胸に頑張っていきましょう!そして重要なことは苦手分野を作らないことです。ケアマネ試験では、これまでの業務経験では体験していないことについて問われることもあります。人は経験がないとイメージがつきにくいもの、受験を決めたタイミングで未経験なところをカバーできるようにすぐに勉強を始めましょう。なお合格だけを意識するのであれば、計60問すべての満点を取ろうとするのではなく目安である介護支援分野13点、保健医療福祉サービス分野25点の合格ラインを勉強すれば確実に合格が狙えます。また、ケアマネ試験の問題集や参考書は必ず最新の2019年度版のテキストを利用し、最新の情報を得て勉強することオススメします。
通学の時間や費用が10万円以上かかってしまうなどデメリットが目立ってしまう“通学”での勉強方法ですが、なんといっても、試験問題を解くためのポイントや最新の知識などを専任の講師から直に得られ学べることは、頭にも残りやすく学ぶことから離れていた方には最適ではないでしょうか。さらに志を共にした仲間と学べることは励みにもなり、負けたくないと向上心にも繋がり良い刺激になり集中もしやすいでしょう。
しかし通学で気を付けたいことが“受講期間”です。よくチェックした上で計画を立てないと「ケアマネ試験日にギリギリで復習に間に合わない」「定員が達してしまって受講できない」なんてことになりかねませんよ。
通学よりも費用が抑えられ、勉強しやすい教材で学ぶことができる“通信講座”での勉強方法。自分のペースに合わせて学ぶこともでき、指導サポートもバックアップされていて安心です!独学で多く使用される一般的な参考書は難解なことが多く、見やすいとは言えないのですが通信講座での教材は比較的に万人向けにされており知識を学びやすいでしょう。くわえて通信講座は添削された返却課題で自分の弱点を知れることや質問もできる環境になるので、どうやって勉強を進めていいか分からない方にはピッタリの勉強方法です。
ケアマネ試験時間は120分の中で、計60問ある五肢複択方式の問題を回答しなければなりません。このことから1問につき約2分程度の時間があることになりますが、全ての問題をそんなにサクサクと答えられるとは限りません。そこで下記の2つのポイントを念頭におきましょう。
このようにスピードの短縮と正答率のアップを心得て、とくに「介護支援分野」は毎年難易度が高いため策を練り試験にあたることをオススメします。
試験本番は誰しも緊張をするものです、もし途中で頭が真っ白になり回答に悩んだ時には一度気持ちを落ち着かせてみましょう。また、日頃の勉強している時に1問がどのくらいかかっているか計測してみても時間間隔を掴むことも良いかもしれません。