「リハビリテーション」(リハビリ)というと、理学·作業療法士·言語聴覚士などが行う、何らかの事情で低下した身体機能を回復する訓練などが想像されるかと思いますが、医療機関で行われるリハビリと、介護施設などで行われるリハビリに、それぞれ違いがあることはご存知でしょうか?「医療リハビリ」と「介護リハビリ」それぞれの適用される保険や内容、目的などの違いを、今回は学んでいきましょう!
医療保険によるリハビリは、病院や医療施設などに外来·入院して行われるリハビリです。医師の治療、リハビリ職が行う訓練によって、病気や怪我などの理由で低下した身体機能の回復、日常生活への復帰を目指すことを目的としています。リハビリは、医師の指示に応じて理学療法士(PT)、作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)などの専門職員が担当します。医療リハビリは、このように医師の治療も含めて、多彩かつ充実したリハビリが受けられる特徴があります。但し、医療リハビリは入院·通院問わず受けられる日数に制限があります(病気や怪我の程度により変わります)ので、長期間のリハビリが受けられないということには注意しましょう。
急性期 | 発症日~2週程度の期間。治療と並行して行われるリハビリ |
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回復期 | 発症後2週~3ヵ月程度の期間。身体機能の回復を中心としたリハビリ |
維持期(生活期) | 発症後3ヵ月~6ヵ月以降程度の期間。現在の状態を維持するためのリハビリ |
※2019年4月より、要介護·要支援の認定を受けている高齢者に対する維持期·生活期のリハビリテーションは、医療保険からの給付が終了し、介護保険へ完全移行しました。
介護保険は、「介護を必要とする高齢者の、治療などにかかる費用を社会全体で支援するための保険制度」です。公的な介護保険制度になりますので、40歳を超える方は全員加入する義務があります。介護保険サービスの利用は、要介護認定の申請を行う必要があります。要介護·要支援の認定を受けると、少ない自己負担でリハビリ·サービスの利用が可能となります。
特徴としては、医療機関との違いとして、リハビリを受ける期間に制限がなく(入所型を除く)、長期間に渡るリハビリを受けることができるという点です。また、リハビリの目的としては、「現在の状態や身体機能を維持·衰えを防止する」といったものになります。高齢者の方々にとっては、日常生活全般の動作が介護予防に繋がるといった視点で、リハビリを行っていきます。
介護保険を利用したリハビリには、大きく分けて「訪問型リハビリ」、「通所型リハビリ」、「入所型リハビリ」の3種類があります。それぞれのリハビリには、どのような特徴があるのでしょうか。
訪問リハビリテーションは、ケアマネジャーなどが作成したケアプランに基づいて、医療機関や介護施設などに所属する理学·作業療法士、言語聴覚士といったリハビリ職が利用者の自宅を訪問して行うリハビリです。身体機能の維持·回復や日常生活の支援、利用者のご家族へのアドバイスなども行います。利用者の方々にとっては、実際の生活環境の中での訓練が可能となるため、気持ちの上でもリラックスできるというメリットがあります。
対象となる方については、要介護1~5といった要介護認定を受けた方、または医師から訪問リハビリが必要であると認められた方などが対象となります。要支援の方に関しては、「介護予防訪問リハビリテーション」のサービスを受けることができます。
尚、介護保険が適用されない40歳未満の方や、40~64歳で特定疾病に該当しない方は、医療保険による訪問リハビリの利用が可能です。
訪問型リハビリのメリット |
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·リハビリ専門職による、きめ細やかな個別のリハビリを受けることが可能 ·住み慣れた自宅で、日常生活に沿った訓練を受けられる ·専門職に自宅の中を見てもらい、様々なアドバイスを受けることができる |
訪問型リハビリのデメリット |
·施設のような充実した設備·器具を使った訓練は受けられない ·医師や看護師がいるわけではないので、何か問題が起きた時に若干の不安がある ·他の利用者との交流などは期待できない |
訪問型リハビリの利用手順一例 |
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1.担当のケアマネージャーと相談の上、訪問リハビリの事業所を決定 2.事業所への依頼、相談 3.利用者の担当主治医などによる判定 4.事業所と契約後、ケアプランの作成 5.利用開始 |
通所リハビリテーションは、利用者が自宅または老人ホームなどから、施設に通って受けるサービスです。主に身体機能の回復を目的としたリハビリに重点を置いているデイケアと、日常生活の支援及び地域社会の参加、他の利用者との交流などを中心としたデイサービスの2種類があります。対象となる方は、要介護1~5の認定を受けた方などです。要支援1·2の認定を受けた方に関しては、「介護予防通所リハビリテーション」のサービスを受けることができます。
通所型リハビリのメリット |
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·リハビリの為の設備が整っている施設のサービス利用が可能 ·他の利用者との交流が生まれ、引きこもり解消などにも繋がる ·食事や入浴介助といった支援も受けられる |
通所型リハビリのデメリット |
·大勢の利用者がいる施設では、個別で対応してもらえる時間が少なくなってしまう ·自宅の階段を用いた昇り降りなど、実生活に即したリハビリを受けることはできない ·施設に通う必要があるため、利用者の状態によっては肉体的負担も大きい |
通所型リハビリの利用手順一例 |
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1.担当のケアマネージャーと相談の上、通所リハビリの事業所を決定 2.事業所への依頼、相談 3.利用者の担当主治医などによる判定 4.事業所と契約後、ケアプランの作成 5.利用開始 |
介護老人保健施設(老健)などで、要介護度1~5の認定を受けた高齢者の方々に対し、日常生活への復帰を目的としたリハビリ及び介護・看護等を行います。
老健には常勤医師や看護師のみならず、リハビリ専門職の配置も義務付けられています。故に、リハビリテーションの訓練設備などが充実しているところも特徴です。また、短期間だけ老健に入所してサービスを受ける「ショートステイ」があります。但し、老健は在宅復帰を目指した施設になりますので、入所は3~6ヵ月の期間が定められていることが基本となります。
入所型リハビリのメリット |
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・リハビリ専門職の配置が義務付けられており、しっかりとしたリハビリ訓練が受けられる ・常勤医師・看護スタッフも一定数勤務しているので、手厚い医療ケアが受けられる ・老健は公的な施設のため、初期費用は無料。月額費用も民間施設と比べると比較的安い |
入所型リハビリのデメリット |
・基本的に在宅復帰が目的の為、入所期間が3~6ヵ月と限られている ・入浴・食事介助のサービスは受けられるが、洗濯や買い物代行などのサービスはあまり充実していない ・多床室が中心で、個室もしくは2人部屋は特別室料が加算される |
入所型リハビリの利用手順一例 |
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1.介護認定を受ける 2.施設へ直接申し込みます。在宅介護の場合はケアマネージャーに相談 3.利用者本人、ご家族との面談 4.施設に必要書類提出、入所判定を行います 5.契約後、利用開始 |
医療リハビリ | 介護リハビリ | |
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目的 | 病気やケガによって低下・失われた身体機能の回復 | 要介護認定を受けた方に対して、日常生活全般の機能回復・維持を目指す |
特徴 | 医療施設でリハビリを行うため、職員も多く充実したリハビリが可能。但し、長期のリハビリは難しい | 「訪問型リハビリ」「通所型リハビリ」「入所型リハビリ」の3種類がある。入所型以外は日数制限がないため、長期に渡るリハビリが可能 |
日数制限 | 有り | 無し |