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介護の実践に役立つ「実務者研修」徹底解説!

皆さんは、「実務者研修」という言葉を聞いたことがありますか? 実は平成29年1月から、国家資格である「企業福祉士」の受験資格として必須になったこともあり、受講を検討している方が増えているようです。本稿では、そんな「実務者研修」について、詳細に解説していきます。介護業界に興味がある、その後のステップアップについても詳しく知りたい、そんな方々にも、是非ご覧頂きたい記事となっております!

実務者研修の位置づけ

実務研修ってどんな資格?

2013年4月から、資格取得のキャリアパスが見直され、「ホームヘルパー1級」と「介護職員基礎研修」を一本化したのが、「実務者研修」になります。介護職員のキャリアアップの道筋が、よりシンプルかつ明確になったと言えますね。これまでは未経験の方や介護の経験が浅い方に人気のあった「初任者研修」の資格のみでも、介護現場での実務経験が3年以上あれば「介護福祉士」の受験資格がありました。ところが、介護福祉士の資質向上などの観点において、3年以上の実務経験に加えて、6ヶ月以上の「実務者研修」の受講及び修了が受験資格として義務付けられるようになったのです。
「実務者研修」では、幅広い利用者に向けた介護提供能力や技術の習得が目的となっています。介護のプロとして、確かな知識と実践的な技術を学ぶことができるのです。

実務者研修と初任者研修の違いとは?

それでは、実務者研修と初任者研修の違いについて説明していきます。ごく簡単に言えば、実務者研修とは、初任者研修の上位資格、といったイメージです。それぞれの違いは以下のようになっております。

受講が必要な科目数、必要な受講時間数が違う!

受講科目に関しては、初任者研修が9科目、実務者研修が20科目とかなりの違いがあります。また、受講にかかる時間数は、初任者研修が130時間、実務者研修は450時間となっており、実務者研修には、多くの時間を費やす必要があることが分かります。
但し、初任者研修、かつてのホームヘルパー1・2・3級、介護職員基礎研修の修了者に関しては、実務者研修の一部の受講科目が免除になります。

介護福祉士の受験資格として有効か?

先述しました通り、初任者研修は介護福祉士の受験資格にはなりません。実務者研修に関しては、研修終了が介護福祉士の受験資格となります。

実務者研修は修了試験がない!

実務者研修には、修了試験が義務化されておりません。但し、一部スクールによっては修了試験を設けている場合もあるようです。研修前に確認しておいたほうがよいでしょう。
初任者研修は筆記試験を受ける必要があります。合否が出るというわけではなく、研修の内容を把握できているかどうか、といった確認テストのようなものになります。
このように、実務者研修と初任者研修にはいくつかの違いがあります。以下の表にまとめてみましたので、ご参照下さい。

  受講科目 受講時間 介護福祉士の受験資格 修了試験の有無
初任者研修 9科目 130時間 ×
実務者研修 20科目 450時間

実務者研修と初任者研修の共通点について

続いて、実務者研修と初任者研修の共通項について見ていきましょう。

共通の受講科目がある

実務者研修と初任者研修は、以下の9つの科目が共通しています。
・テキスト
・人間の尊厳と自立
・社会の理解Ⅰ
・介護の基本Ⅰ
・生活支援技術Ⅰ
・生活支援技術Ⅱ
・認知症の理解Ⅰ
・障害の理解Ⅰ
・こころとからだのしくみⅠ
・介護課程Ⅰ

主に、基礎的な内容の科目が共通しています。先述しましたように、初任者研修の資格を持っている場合、実務者研修を受ける際にこの9科目の受講が免除されます。実務者研修の受講に介護の資格は必要ありませんが、ある程度の介護知識を持っていることを前提に研修が行われるため、知識に不安のある人は、先に初任者研修を受講した上で、改めて実務者研修に挑戦するのも良いでしょう。そうすることによって、実務者研修の受講科目の免除も行われ、時間の短縮にも繋がります。

どちらも国家資格ではない

実務者研修・初任者研修共に、国家資格ではありません。ですが、特に実務者研修では、学ぶことのできる知識や技術が多く、資格手当がついたり、選考で優遇されたりと就職に有利に働くケースが近年増えてきています。もちろん、実務者研修が必須となる介護福祉士は国家資格になりますので、キャリアアップの為にも実務者研修は重要な資格と言えましょう。

実務者研修の資格取得のメリットについて

それでは、介護福祉士の受験資格という面以外にも、実務者研修を取得しておくことで何かメリットがあるのでしょうか。

メリット① たん吸引・経管栄養の基本研修が免除になる!

平成24年4月の法改正により、医療行為だった「たん吸引」と「経管栄養」に関して、一定の条件を満たした介護職員も実施できるようになりました。実務者研修を修了していることで、条件に必要な研修の一部(基本研修)が免除となるのです。介護職員も実施可能なケアの範囲が広がっている現在、ニーズの高い「たん吸引」と「経管栄養」を実施できる介護職員は、特に要介護度の高い施設などでは、貴重な存在として重宝されることでしょう。

メリット② サービス提供責任者を目指す場合にも、望ましい資格です!

訪問介護事業所などで、「サービス提供責任者」を目指す場合、最低ラインとして実務者研修の資格が望ましいとされています。介護福祉士でもサービス提供責任者として認められますが、今まで説明しましたように、介護福祉士を受けるためには実務者研修の資格が必要となります。
初任者研修の資格を取得しており、実務経験が3年以上あれば、サービス提供責任者として勤務が可能になりますが、平成25年4月より、介護報酬が10%も減額されてしまうことになりました。そのような事情もあり、訪問介護事業所の経営的な観点から見ても、サービス提供責任者を目指す人は、実務者研修の修了が必要だと言えましょう

メリット③ 介護現場で活かせる高度なスキル・知識を学べる!

実務者研修の内容は、座学を含め、介護の現場で活かせる内容で構成されています。そのため、純粋に介護のスキルアップ、知識量の増加につなげることが可能です。
介護現場における介護士のパフォーマンスの向上は、当然ながら利用者側のメリットにもなります。

メリット④ 介護福祉士の受験資格が得られる

繰り返しになりますが、介護福祉士の受験資格として、実務者研修の資格は必須となりましたので、介護職のキャリアアップの過程がシンプルになった分、受験資格そのものは厳しくなったと言えます。介護福祉士の資格は、介護職にとっては将来を見据える上でも、是非取得しておきたい国家資格となります。その為の手段として、実務者研修は確実に受けておきましょう。

資格取得方法について

※先述したとおり、ある程度の介護知識があるという前提でカリキュラムが組まれておりますので、未経験の方は初任者研修から受講する選択肢も有効と言えます。また、スクールによっては、初任者研修を修了していないと受講できない場合もあるようです。

実務者研修の試験内容、合格率は?

それではここで、実際に実務者研修を受講する上でかかる費用、試験内容や合格率などを解説していきます。

実務者研修受講にかかる費用はどのくらい?

受講費用は取得している資格によって異なります。おおよその費用をまとめてみました。

・無資格
10万円から20万円前後
・初任者研修を修了している方、ホームヘルパー2級を取得している方
14万円から15万円前後
・ホームヘルパー1級を取得している方
6万円から15万円
・介護職員基礎研修を修了している方
3万円から5万円前後

注:受講するスクールやキャンペーン開催期間によって、大幅にかかる費用が変わります。スクールによっては、教育訓練給付金対象のところがあるので、自分の受給資格を確認した上で選ぶようにしましょう。教育訓練給付金に関しては、雇用保険の被保険者期間が3年以上ある方、教育訓練給付金を受けるのが初めてで被保険者期間が1年以上ある方、といったような一定の条件を満たしている人が受給できます。ハローワークで受給資格が調べられますので、確認してみて下さい。

実務者研修のカリキュラム内容と資格別の受講免除時間について

下記の表をご参照下さい。
なお、無資格から受講すると全科目受講で時間数は450時間ですが、取得してある資格によって免除される科目がありますので、合わせて確認してみて下さい。免除科目に関しては空欄となっております。※医療的ケアは別途、演習を修了する必要があります。

受講科目内容 実務者研修時間数 介護職員 ホームヘルパー ホームヘルパー 介護職員
基礎研修 1級 2級 初任者研修
人間の尊厳と自立 5        
社会の理解Ⅰ 5        
社会の理解Ⅱ 30    
介護の基本Ⅰ 10        
介護の基本Ⅱ 20        
コミュニケーション技術 20    
生活支援技術Ⅰ 20        
生活支援技術Ⅱ 30        
介護過程Ⅰ 20        
介護過程Ⅱ 25    
介護過程Ⅲ 45  
発達と老化の理解Ⅰ 10    
発達と老化の理解Ⅱ 20    
認知症の理解Ⅰ 10  
認知症の理解Ⅱ 20    
障害の理解Ⅰ 10    
障害の理解Ⅱ 20    
こころとからだのしくみⅠ 20        
こころとからだのしくみⅡ 60    
※医療的ケア 50
免除後の受講時間数   50 95 320 320

実務者研修の合格難易度について

研修の合格率は、ほとんどのスクールで公表していないようです。修了判定自体、全国一律で決まっているわけでもなく、こちらもスクールそれぞれ多少の違いが存在します。座学については課題の提出が求められ、不備が多ければ再提出となる場合があります。実技試験に関しても、合格点に達するまで繰り返し追試を行っております。講師の説明をよく聞いて、授業内容をしっかりと把握していれば、それほど難しいものではありません。落ち着いて臨むようにしましょう。

実務者研修を実施しているスクールについて

実務者研修を実施している、主なスクールを紹介します。受講者それぞれの希望に沿ったスクールを選ぶようにしましょう。

実務者研修修了者は就職・転職に有利?

即戦力が求められる介護業界において、豊富な知識や技術持った人材は、当然就職でも有利となるでしょう。初任者研修よりも上位資格にあたる実務者研修を修了しておくことで、自己PRにも役に立つかと思います。場合によっては資格手当がついたり、将来は介護福祉士の資格を取得する予定の人材ということで、優遇されることもあるようです。

実務者研修取得者が活躍できる場は?

豊富な知識と技術を得た実務者研修の取得者は、どの介護施設でも重宝される人材です。また、認知症の研修も受けますので、認知症グループホームなどでも活躍が期待できるでしょう。

まとめ
実務者研修の取得者は、より専門的な知識や優れた技術を身に付けることができます。それによって施設の利用者の方々にも質の高い介護サービスを提供できるようになるでしょう。
介護福祉士への受験資格というだけでなく、サービス提供者へのキャリアアップ、喀痰吸引や経管栄養といった医療ケアを行うことできるなど、様々なメリットがあります。出来ることが増えれば、介護士としての自信にも繋がります。介護業界への就職を考えている方は、是非、「実務者研修」を受講することを検討してみて下さい!